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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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1 berry 7268 7.4 97.1% 382.2 2861 83 57 2025/10/09
2 Jyo 6134 A++ 6.2 98.1% 457.6 2861 54 57 2025/10/09

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問題文

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(だいがくにかいせいのはるだった。)

大学二回生の春だった。

(そのひはどようのあさからゆうじんのいえにあつまり、がくせいらしくまーじゃんをうっていた。)

その日は土曜の朝から友人の家に集まり、学生らしく麻雀を打っていた。

(さいしょはちょうしのよかったおれも、のーまーくだったおとこにこくしむそうのちょくげきを)

最初は調子の良かった俺も、ノーマークだった男に国士無双の直撃を

(うけたあたりからくもゆきがけしくなり、はんちゃんをかさねるたびに)

受けたあたりから雲行きが怪しくなり、半チャンを重ねるたびに

(ずぶずぶとしずんでいった。)

ズブズブと沈んでいった。

(けっきょくほぼひとりまけのじょうたいで、ぎぶあっぷせんげんをしたときには)

結局ほぼ一人負けの状態で、ギブアップ宣言をした時には

(よるのじゅうにじをまわっていた。)

夜の十二時を回っていた。

(「おつかれ」)

「お疲れ」

(と、みんなつかれきったひょうじょうでそれぞれのきろへちっていく。)

と、みんな疲れ切った表情でそれぞれの帰路へ散っていく。

(おれもじてんしゃにまたがって、みんかのあかりもまばらなさびしいとおりを)

俺も自転車に跨って、民家の明かりもまばらな寂しい通りを

(ちからなくすすんでいった。)

力なく進んでいった。

(きせつがら、むしのおともほとんどきこえない。)

季節柄、虫の音もほとんど聞こえない。

(そのゆうじんたくでのまーじゃんのあとは、いつもこのくらくしずかなかえりみちがいやだった。)

その友人宅での麻雀のあとは、いつもこの暗く静かな帰り道が嫌だった。

(けっしてやまおくというわけでもないのに、すれちがうひともいないみちで、)

けっして山奥というわけでもないのに、すれ違う人もいない道で、

(じぶんのじてんしゃのほいーるがかいてんするおとだけをきいていると)

自分の自転車のホイールが回転する音だけを聞いていると

(なんだかすすきぎみのわるいきぶんになってくる。)

なんだか薄気味の悪い気分になってくる。

(ところどころにもれているみんかのあかり。そのまえをとおるとき、)

ところどころに漏れている民家の明かり。その前を通るとき、

(そのあかりのむこうにはほんとうはにんげんはひとりもいず、)

その明かりの向こうには本当は人間は一人もいず、

(ただまちをもしたはこにわのなかにすえられたくうきょなけんぞうぶつにすぎないのではないかと、)

ただ町を模した箱庭の中に据えられた空虚な建造物にすぎないのではないかと、

(そんなきみょうなそうぞうがのうりをかすめる。)

そんな奇妙な想像が脳裏を掠める。

など

(そのひも、ねむけとそんなうすきみわるさからにげるように)

その日も、眠気とそんな薄気味悪さから逃げるように

(すぴーどをあげてじてんしゃのぺだるをこいでいた。)

スピードを上げて自転車のペダルを漕いでいた。

(せんろぞいのみちからかーぶして、やますそにちかづいていくあたりでのことだった。)

線路沿いの道からカーブして、山裾に近づいていくあたりでのことだった。

(ふいに、ずしんとないぞうにおもいいしをいれられたようなかんかくがあった。)

ふいに、ずしんと内臓に重い石を入れられたような感覚があった。

(めのまえ、きれかけてまばたきをしているがいろとうのしたあたりに、ひとかげがみえたのだ。)

目の前、切れかけて瞬きをしている街路灯の下あたりに、人影が見えたのだ。

(しゃどうだ。がーどれーるのそとがわに、よりそうようになにかがたっている。)

車道だ。ガードレールの外側に、より添うように何かが立っている。

(いようなけはい。おもわずぜんぽうにめをこらす。)

異様な気配。思わず前方に目を凝らす。

(たしかにひとのかたちをしている。よるとはいえ、つきあかりはある。)

確かに人の形をしている。夜とはいえ、月明かりはある。

(そしてがいろとうのまたたくあわいあかりも。なのにそれはひとかげのままだった。)

そして街路灯のまたたく淡い明かりも。なのにそれは人影のままだった。

(じっとみつめていても、まっくらで、いろのないひとかげのままだった。)

じっと見つめていても、真っ暗で、色のない人影のままだった。

(じぶんがほどう、つまりがーどれーるのうちがわをはしっていることをかくにんする。)

自分が歩道、つまりガードレールの内側を走っていることを確認する。

(あれと、ちかづきたくなかった。しかしこのみちをとおらないといえにはかえれない。)

あれと、近づきたくなかった。しかしこの道を通らないと家には帰れない。

(おれはいきをとめて、そのひとかげのよこをかけぬけた。)

俺は息を止めて、その人影の横を駆け抜けた。

(がーどれーるのむこうで、まっくろなひとのかたちをしたものが、こちらをむいている。)

ガードレールの向こうで、真っ黒な人の形をしたものが、こちらを向いている。

(ぜんごなどわからない。なのにそれがこちらをみているようなきがする。)

前後など分からない。なのにそれがこちらを見ているような気がする。

(わずか1めーとるのきょり。どうろがわにさらしたにのうでのひふがぞぞぞをなみだつ。)

わずか1メートルの距離。道路側にさらした二の腕の皮膚がゾゾゾを波立つ。

(いっしゅんが、やけにながくかんじられた。)

一瞬が、やけに長く感じられた。

(そのままぺだるをふむあしにちからをこめ、)

そのままペダルを踏む足に力を込め、

(ふりかえりもせずおれはぜんりょくでそこをたちさった。)

振り返りもせず俺は全力でそこを立ち去った。

(いようなけはいはそれでもしばらく、うなじのあたりにちりちりとつづいていた。)

異様な気配はそれでもしばらく、うなじのあたりにチリチリと続いていた。

(そのよくじつ。)

その翌日。

(おれはししょうのいえにいった。おかるとどうのししょうだ。こんなはなしにはめっぽうくわしい。)

俺は師匠の家に行った。オカルト道の師匠だ。こんな話にはめっぽう詳しい。

(きのうたいけんしたことをはなすと、おもいのほかきょうみをひかれたかおでくいついてきた。)

昨日体験したことを話すと、思いのほか興味を引かれた顔で食いついてきた。

(たいけんしたじぶんにはおそろしくても、はなしじたいはそれほどしょうげきてきなところも、)

体験した自分には恐ろしくても、話自体はそれほど衝撃的なところも、

(おどろおどろしいところもなく、)

おどろおどろしいところもなく、

(あびるほどそんなたいけんをみききしてきたというししょうほどになると、)

浴びるほどそんな体験を見聞きしてきたという師匠ほどになると、

(そのていどのはなしでは「ふうん」とはなでわらわれるとおもっていたのだ。)

その程度の話では「ふうん」と鼻で笑われると思っていたのだ。

(そのししょうがみをのりだしてやけにしんけんにきいてくれる。)

その師匠が身を乗り出してやけに真剣に聞いてくれる。

(ぎゃくにきもちがわるい。なのに、そのくせききおわるとこういうのだ。)

逆に気持ちが悪い。なのに、そのくせ聞き終わるとこう言うのだ。

(「それはゆうれいじゃないよ」)

「それは幽霊じゃないよ」

(おれはあぜんとして、「なぜですか」といった。)

俺は唖然として、「なぜですか」と言った。

(「ゆうれいってのが、しにんのしんたいからはなれたにくたいをもたないなにか、)

「幽霊ってのが、死人の身体から離れた肉体を持たないなにか、

(とていぎづけるなら、そいつはちがう」)

と定義づけるなら、そいつは違う」

(にくたい?)

肉体?

(ではあれがにくたいをもっていたというのだろうか。)

ではあれが肉体をもっていたというのだろうか。

(「ちがうちがう」)

「違う違う」

(ししょうはみぎてをひらひらさせる。)

師匠は右手をひらひらさせる。

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