僕は鳥じゃない/谷山浩子

(たとえばやさしくてもいじわるでも せいじつでもずるくても)

たとえば優しくても　意地悪でも 誠実でも　ずるくても

(おんなずきでもかたぶつでもきたなくてもきれいでも)

女好きでも堅物でも汚くても綺麗でも

(とりはとりどうでもいいいきるだけ)

鳥は鳥　どうでもいい生きるだけ

(ねむるだけたべるだけはばたくだけ)

眠るだけ食べるだけ　はばたくだけ

(こころがねじれててもまっすぐでも おだやかでもたんきでも)

心がねじれててもまっすぐでも おだやかでも短気でも

(なまけものでもきんべんでもかしこくてもおろかでも)

怠け者でも勤勉でも賢くても愚かでも

(とりはとりどうでもいいなやまない)

鳥は鳥　どうでもいい悩まない

(いっぷんまえのことはもうわすれている)

一分前の事はもう忘れている

(ぼくもとりならきらくでいいのに あたまのなかごちゃごちゃしてつらくなるよ)

僕も鳥なら　気楽でいいのに あたまの中ごちゃごちゃしてつらくなるよ

(ときどきおもう)

時々思う

(でもぼくはとりじゃないとりじゃない しあわせでもみじめでも)

でも僕は鳥じゃない　鳥じゃない 幸せでもみじめでも

(にんげんとしてあるいてきた あるいていくこれからも)

人間として歩いてきた 歩いていく　これからも

(とりはとりどうでもいいそんなこと)

鳥は鳥　どうでもいいそんなこと

(ねむるだけたべるだけはばたくだけ)

眠るだけ　食べるだけ　はばたくだけ

(できることならいままでのかこの あんなことやこんなことぜんぶ)

できることなら　今までの過去の あんなことやこんなこと全部

(きれいさっぱりとなかったことに)

きれいさっぱりと　なかったことに

(でもぼくはとりじゃないとりじゃない )

でも僕は鳥じゃない　鳥じゃない

(のこしてきたあしあとや これからのこすいろんなこと)

残してきた足跡や これから残すいろんなこと

(にもつにしてかかえてく)

荷物にしてかかえてく

(とりはとりどうでもいいそんなこと)

鳥は鳥　どうでもいいそんなこと

(わらわずにあいさずに うまれてしぬ)

笑わずに　愛さずに 生まれて死ぬ

(とりはとりどうでもいいいきるだけ ねむるだけたべるだけはばたくだけ)

鳥は鳥　どうでもいい生きるだけ 眠るだけ　食べるだけ　はばたくだけ