海-2-(完)

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問題文
(そんなことをかんがえながらふねのへりをこんしんのちからでつかんだ。)
そんなことを考えながら船のヘリを渾身の力で掴んだ。
(そんなおれにかまわず、ししょうはがちゃりとぼたんをおしこんだ。)
そんな俺にかまわず、師匠はガチャリとボタンを押し込んだ。
(おもわずみみをふさぐ。)
思わず耳を塞ぐ。
(ばらんすがくずれないよう、あしをひろげてふんばったままおれのせかいからは)
バランスが崩れないよう、足を広げて踏ん張ったまま俺の世界からは
(おとがきえて、てれこのまえにかがみこんだままのししょうが、ていしぼたんを)
音が消えて、テレコの前に屈みこんだままの師匠が、停止ボタンを
(おされたようにうごかなくなった。おれはそのすがたからめをはなせなかった。)
押されたように動かなくなった。俺はその姿から目を離せなかった。
(むねがつまるようなしおのなまぐささ。いたごいちまいかはじごく。)
胸がつまるような潮の生臭さ。板子一枚下は地獄。
(ああ、りょうしにとってのあのよはうみなんだな、とおもった。)
ああ、漁師にとってのあの世は海なんだな、と思った。
(なみにあわせてゆれるししょうのかたぐちにひとかげのようなものがみえた。)
波に合わせて揺れる師匠の肩口に人影のようなものが見えた。
(ふたたび、うみにたつかげがふねのすぐまよこをよこぎろうとしていた。)
ふたたび、海に立つ影が船のすぐ真横を横切ろうとしていた。
(かおなどはみえない。どこがてで、あしでというりんかくすらはっきりわからない。)
顔などは見えない。どこが手で、足でという輪郭すらはっきりわからない。
(ただそれがひとかげであるということだけがわかるのだった。)
ただそれが人影であるということだけがわかるのだった。
(ししょうがそちらをむいたかとおもうと、いきなりなにごとかどなりつけて)
師匠がそちらを向いたかと思うと、いきなり何事か怒鳴りつけて
(ふねからはんみをのりだした。すごいけんまくだった。)
船から半身を乗り出した。凄い剣幕だった。
(ふねがいっしゅんかたむいて、はんしゃてきにおれはぎゃくほうこうにからだをかたむける。)
船が一瞬傾いて、反射的に俺は逆方向に体を傾ける。
(ひとかげはたったままやみのなかへきえていこうとしていた。)
人影は立ったまま闇の中へ消えていこうとしていた。
(ししょうはのりだしていたからだをひっこめ、せんびのもーたーにとりついた。)
師匠は乗り出していた体を引っ込め、船尾のモーターに取り付いた。
(おれはばらんすをくずし、おもわずみみをふさいでいたりょうてをふねのふちにつく。)
俺はバランスを崩し、思わず耳を塞いでいた両手を船の縁につく。
(なんだあれ、なんだあれ。)
なんだあれ、なんだあれ。
(ししょうはじょうきしたこえでまくしたて、えんじんをかけようとしていた。)
師匠は上気した声でまくしたて、エンジンをかけようとしていた。
(かいとうしてもどるきだ。)
回頭して戻る気だ。
(そうおもったおれは、そのてにしがみついて、だめですかえりましょうとさけんだ。)
そう思った俺は、その手にしがみついて、ダメです帰りましょうと叫んだ。
(ししょうはおれをふりほどいて、いった。「あたりまえだ、つかまってろ」)
師匠は俺を振りほどいて、言った。「あたりまえだ、つかまってろ」
(すぐにえんじんのおおきなおとがひびき、ふねはきゅうかそくでうごきはじめた。)
すぐにエンジンの大きな音が響き、船は急加速で動き始めた。
(しおからいしぶきがかおにかかるなかでおれはめがねをらんぼうにふきながら、)
塩辛い飛沫が顔にかかるなかで俺は眼鏡を乱暴に拭きながら、
(かすかにみえるとうだいのひかりをおいかける。うしろをふりかえるゆうきは、なかった。)
かすかに見える灯台の光を追いかける。後ろを振り返る勇気は、なかった。
(ごじつ、ししょうがあのときのろくおんてーぷをきかせてやる、といった。)
後日、師匠があのときの録音テープを聞かせてやる、と言った。
(けっきょくおれはまだきいてなかったのだ。)
結局俺はまだ聞いてなかったのだ。
(のどもとすぎれば、というやつでのこのことししょうのへやへいった。)
喉元すぎれば、というやつでノコノコと師匠の部屋へ行った。
(「ありえないのがとれてるから」)
「ありえないのが採れてるから」
(そんなことをいわれては、きかざるをえない。)
そんなことを言われては、聞かざるを得ない。
(てーぶるのうえにらじかせをおいてさいせいぼたんをおすと、)
テーブルの上にラジカセを置いて再生ボタンを押すと、
(くぐもったようななみのおととかぜのおとがとおくからひびいてくる。)
くぐもったような波の音と風の音が遠くから響いてくる。
(みみをちかづけてきいていると、そのなかにまじってなにか)
耳を近づけて聞いていると、そのなかに混じってなにか
(べつのおとがはいっているようなきがした。)
別の音が入っているような気がした。
(ぼりゅーむをあげてみるとたしかにきこえる。)
ボリュームを上げてみると確かに聞こえる。
(ざあざあでもごうごうでもない、なにかきそくただしいおとのつながり。)
ざあざあでもごうごうでもない、なにか規則正しい音の繋がり。
(それがえんえんとくりかえされている。)
それが延々と繰り返されている。
(もっとぼりゅーむをあげると、おとがわれはじめてぎゃくにきこえない。)
もっとボリュームを上げると、音が割れはじめて逆に聞こえない。
(うまくちょうせいしながらひたすらみみをかたむけていると、それはふたつのたんごで)
上手く調整しながらひたすら耳を傾けていると、それは二つの単語で
(できていることがわかった。)
出来ていることがわかった。
(ひとのこえとも、しぜんのおとともとれるなんともいえないひびき。)
人の声とも、自然の音ともとれるなんとも言えない響き。
(そのたんごをききとれたしゅんかん、おれはおもわずこしをうかせていきをのんだ。)
その単語を聞き取れた瞬間、俺は思わず腰を浮かせて息をのんだ。
(それはまぎれもなく、おれとししょうのなまえだった。)
それは紛れもなく、俺と師匠の名前だった。