まなづるとダァリヤ 4/4 宮沢賢治

投稿者カンダタプレイ回数312
難易度(3.6) 1140打 長文タグタイピング 小説 宮沢賢治

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(よがあけはじめました。)

夜があけはじめました。

(そのあおじろいりんごのにおいのするうすあかりのなかで、)

その青白いりんごのにおいのするうすあかりのなかで、

(あかいだぁりやがいいました。)

赤いダァリヤがいいました。

(「ね、あたし、きょうはどんなにみえて。)

「ね、あたし、きょうはどんなに見えて。

(はやくいってくださいな。」)

早くいってくださいな。」

(きいろなだぁりやは、いくらあかいはなをみようとしても、)

黄色なダァリヤは、いくら赤い花を見ようとしても、

(ふらふらしたうすぐろいものがあるだけでした。)

ふらふらしたうす黒いものがあるだけでした。

(「まだよがあけないから、わかりませんわ。」)

「まだ夜があけないから、わかりませんわ。」

(あかいだぁりやは、まるでなきそうになりました。)

赤いダァリヤは、まるでなきそうになりました。

(「ほんとうをいってください。ほんとうをいってください。)

「ほんとうをいってください。ほんとうをいってください。

(あなたがた、わたしにかくしているんでしょう。)

あなたがた、わたしにかくしているんでしょう。

(くろいの。くろいの。」)

黒いの。黒いの。」

(「ええ、くろいようよ。)

「ええ、黒いようよ。

(だけどほんとうは、よくみえませんわ。」)

だけどほんとうは、よく見えませんわ。」

(「あらっ。なんだって、)

「あらっ。なんだって、

(あたしあかにくろのぶちなんていやだわ。」)

あたし赤に黒のぶちなんていやだわ。」

(そのときかおのきいろにとがったせいのひくい、)

そのとき顔の黄色にとがったせいのひくい、

(へんなさんかくのぼうしをかぶったひとが、)

へんな三角のぼうしをかぶった人が、

(ぽけっとにてをいれてやってきました。)

ポケットに手をいれてやってきました。

(そしてだぁりやのはなをみて、さけびました。)

そしてダァリヤの花を見て、さけびました。

など

(「あっ、これだ。これがおれたちのおやかたのもんだ。」)

「あっ、これだ。これがおれたちの親方の紋だ。」

(そしてぽきりと、えだをおりました。)

そしてポキリと、えだをおりました。

(あかいだぁりやはぐったりとなって、)

赤いダァリヤはぐったりとなって、

(そのてのなかにはいっていきました。)

その手のなかにはいっていきました。

(「どこへいらっしゃるのよ。どこへいらっしゃるのよ。)

「どこへいらっしゃるのよ。どこへいらっしゃるのよ。

(あたしにつかまってくださいな。どこへいらっしゃるのよ。」)

あたしにつかまってくださいな。どこへいらっしゃるのよ。」

(ふたつのだぁりやも、たまらずしゃくりあげながら、さけびました。)

ふたつのダァリヤも、たまらずしゃくりあげながら、さけびました。

(とおくからかすかに、あかいだぁりやのこえがしました。)

遠くからかすかに、赤いダァリヤの声がしました。

(そのこえもはるかにはるかにとおくなり、)

その声もはるかにはるかに遠くなり、

(いまはおかのふもとの、)

いまは丘のふもとの、

(やまならしのこずえのさやぎに、まぎれました。)

やまならしのこずえのさやぎに、まぎれました。

(そして、きいろなだぁりやのなみだのなかで、)

そして、黄色なダァリヤのなみだのなかで、

(ぎらぎらのたいようはのぼりました。)

ギラギラの太陽はのぼりました。

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