江戸川乱歩 D坂③

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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 123 6384 S 6.5 97.7% 350.4 2289 52 41 2024/10/19
2 いっぱんじんA 4726 C++ 4.9 95.7% 461.4 2283 102 41 2024/11/17

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問題文

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(「きみもきづいているようですね」)

「君も気づいている様ですね」

(とわたしがささやくと、かれはそくざにこたえた。)

と私が囁くと、彼は即座に答えた。

(「ほんどろぼうでしょう。どうもへんですね。ぼくもここへはいってきたときから、)

「本泥坊でしょう。どうも変ですね。僕もここへ入って来た時から、

(みていたんですよ。これでよにんめですね」)

見ていたんですよ。これで四人目ですね」

(「きみがきてからまださんじゅっぷんにもなりませんが、さんじゅっぷんによにんも、)

「君が来てからまだ三十分にもなりませんが、三十分に四人も、

(すこしおかしいですね。ぼくはきみのくるまえからあすこをみていたんですよ。)

少しおかしいですね。僕は君の来る前からあすこを見ていたんですよ。

(いちじかんほどまえにね、あのしょうじがあるでしょう。あれのこうしのようになったところが、)

一時間程前にね、あの障子があるでしょう。あれの格子の様になった所が、

(とじるのをみたんですが、それからずっとちゅういしていたのです」)

閉じるのを見たんですが、それからずっと注意していたのです」

(「いえのひとがでていったのじゃないのですか」)

「家の人が出て行ったのじゃないのですか」

(「それが、あのしょうじはいちどもひらかなかったのですよ。でていったとすれば)

「それが、あの障子は一度も開かなかったのですよ。出て行ったとすれば

(うらぐちからでしょうが、・・・さんじゅっぷんもひとがいないなんてたしかにへんですよ。)

裏口からでしょうが、・・・三十分も人がいないなんて確かに変ですよ。

(どうです。いってみようじゃありませんか」)

どうです。行って見ようじゃありませんか」

(「そうですね。いえのなかにべつじょうないとしても、そとでなにかあったのかも)

「そうですね。家の中に別状ないとしても、外で何かあったのかも

(しれませんからね」)

知れませんからね」

(わたしはこれがはんざいじけんででもあってくれればおもしろいとおもいながらかふぇをでた。)

私はこれが犯罪事件ででもあってくれれば面白いと思いながらカフェを出た。

(あけちとてもおなじおもいにちがいなかった。かれもすくなからずこうふんしているのだ。)

明智とても同じ思いに違いなかった。彼も少なからず興奮しているのだ。

(ふるほんやはよくあるかたで、みせぜんたいどまになっていて、しょうめんとさゆうに)

古本屋はよくある型で、店全体土間になっていて、正面と左右に

(てんじょうまでとどくようなほんだなをとりつけ、そのこしのところがほんをならべるための)

天井まで届く様な本棚を取付け、その腰の所が本を並べる為の

(だいになっている。どまのちゅうおうには、しまのように、これもほんをならべたり)

台になっている。土間の中央には、島の様に、これも本を並べたり

(つみあげたりするための、ちょうほうけいのだいがおいてある。そして、しょうめんのほんだなの)

積上げたりする為の、長方形の台が置いてある。そして、正面の本棚の

など

(みぎのほうがさんしゃくばかりあいていておくのへやとのつうろになり、さきにいった)

右の方が三尺ばかりあいていて奥の部屋との通路になり、先に云った

(いちまいのしょうじがたててある。いつもは、このしょうじのまえのはんじょうほどのたたみじきのところに、)

一枚の障子が立ててある。いつもは、この障子の前の半畳程の畳敷きの所に、

(しゅじんか、さいくんがちょこんとすわってばんをしているのだ。)

主人か、細君がチョコンと坐って番をしているのだ。

(あけちとわたしとは、そのたたみじきのところまでいって、おおごえによんでみたけれど、)

明智と私とは、その畳敷きの所まで行って、大声に呼んで見たけれど、

(なんのへんじもない。はたしてだれもいないらしい。わたしはしょうじをすこしあけて、)

何の返事もない。果たして誰もいないらしい。私は障子を少し開けて、

(おくのまをのぞいてみると、なかはでんとうがきえてまっくらだが、どうやら、)

奥の間を覗いて見ると、中は電燈が消えて真っ暗だが、どうやら、

(にんげんらしいものが、へやのすみにたおれているようすだ。)

人間らしいものが、部屋の隅に倒れている様子だ。

(ふしんにおもってもういちどこえをかけたが、へんじをしない。)

不審に思ってもう一度声をかけたが、返事をしない。

(「かまわない、あがってみようじゃありませんか」)

「構わない、上がって見ようじゃありませんか」

(そこで、ふたりはどかどかおくのまへあがりこんでいった。)

そこで、二人はドカドカ奥の間へ上がり込んで行った。

(あけちのてででんとうのすいっちがひねられた。そのとたん、)

明智の手で電燈のスイッチがひねられた。そのとたん、

(わたしたちはどうじに「あっ」とこえをたてた。)

私達は同時に「アッ」と声を立てた。

(あかるくなったへやのかたすみには、おんなのしがいがよこたわっているのだ。)

明るくなった部屋の片隅には、女の死骸が横たわっているのだ。

(「ここのさいくんですね」やっとわたしがいった。「くびをしめられているようでは)

「ここの細君ですね」やっと私が云った。「首を絞められている様では

(ありませんか」)

ありませんか」

(あけちはそばへよってしたいをしらべていたが、「とてもそせいのみこみはありませんよ。)

明智は側へ寄って死体を検べていたが、「とても蘇生の見込みはありませんよ。

(はやくけいさつへしらせなきゃ。ぼく、じどうでんわまでいってきましょう。)

早く警察へ知らせなきゃ。僕、自動電話まで行って来ましょう。

(きみ、ばんをしててください。きんじょへはまだしらせないほうがいいでしょう。)

君、番をしてて下さい。近所へはまだ知らせない方がいいでしょう。

(てがかりをけしてしまってはいけないから」)

手掛りを消してしまってはいけないから」

(かれはこうめいれいてきにいいのこして、はんちょうばかりのところにあるじどうでんわへ)

彼はこう命令的に云い残して、半町ばかりの所にある自動電話へ

(とんでいった。)

飛んで行った。

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