夢野久作 いなか、の、じけん 6
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問題文
(はなよめのしたくい)
花嫁の舌喰い
(いちぶらくこぞって、ふどうさまをしんじんしていた。)
一部/落挙《こぞ》って、不動様を信心していた。
(そのなかで、ふうふとこどもさんにんのいっかがゆうしょくのさいちゅうに、)
その中で、夫婦と子供三人の一家が夕食の最中に、
(しゅじんがはしをがらりとなげだして、)
主人が箸をガラリと投げ出して、
(「たったいまおれにふどうさまがのりうつった」)
「タッタ今おれに不動様が乗り移った」
(といいつつすごいかおをしてすわりなおした。)
と云いつつ凄い顔をして坐り直した。
(おかみさんはあわててたたみのうえにひれふした。)
お神《かみ》さんは慌てて畳の上にひれ伏した。
(びっくりしてなきだしたさんにんのこどもも、しかりつけておがました。)
ビックリして泣き出した三人の子供も、叱りつけて拝ました。
(このうわさがつたわると、そこいらじゅうのしんじんかが、)
この噂が伝わると、そこいらじゅうの信心家が、
(あとからあとからおしかけてきて)
あとからあとから押しかけて来て
(「おふどうさま」のごりやくにあずかろうとしたので、)
「お不動様」の御利益《ごりやく》にあずかろうとしたので、
(いえのなかはよどおしねることもできないようになった。)
家の中は夜通し寝ることも出来ないようになった。
(そのまんなかに、もめんのもんつきばおりをひっかけたふどうさまがすわって、)
そのまん中に、木綿の紋付き羽織を引っかけた不動様が坐って、
(おそろしいかおでにらみまわしていたが、やがて、うしろのほうにすわっている、)
恐ろしい顔で睨みまわしていたが、やがて、うしろの方に坐っている、
(べにげしょうしたべっぴんをさしまねいた。)
紅化粧した別嬪《べっぴん》をさし招いた。
(そのおんなはにさんにちまえきんじょへよめいってきたものであった。)
その女は二三日前近所へ嫁入って来たものであった。
(「もそっとまえへでろ。でてこぬとかなしばりにあわせるぞ。ずっとわたしのまえにこい。)
「もそっと前へ出ろ。出て来ぬと金縛りに合わせるぞ。ズッと私の前に来い。
(こわがることはない。つみをきよめてやるのだ。さあよいか。)
怖がる事はない。罪を浄めてやるのだ。サアよいか。
(おまえはまえのしょうにおそろしいつみをかさねている。)
お前は前の生《しょう》に恐ろしい罪を重ねている。
(そのつみをきよめてやるからしたをだせ。もそっとだせ。)
その罪を浄めてやるから舌を出せ。もそっと出せ。
(ださぬとかなしばりだぞそうだそうだ」)
出さぬと金縛りだぞ……そうだそうだ……」
(こういいつつそのしたにかおをさしよせて、じっとにらんでいたふどうさまは、)
こう云いつつその舌に顔をさし寄せて、ジッと睨んでいた不動様は、
(ふいにぱくりとそのしたをほおばると、ずるりずるりとしゃぶりはじめた。)
不意にパクリとその舌を頬張ると、ズルリズルリとシャブリ初めた。
(おんなはしゅうじんかんしのなかでしたをさしだしたまま、めをとじてぶるぶるふるえていた。)
女は衆人環視の中で舌をさし出したまま、眼を閉じてブルブルふるえていた。
(するとふどうさまはなんとおもったかとつぜんに、そのしたをねもとからぷっつりとかみきって、)
すると不動様は何と思ったか突然に、その舌を根元からプッツリと噛み切って、
(ぐるぐるとのみこんでしまった。)
グルグルと嚥《の》み込んでしまった。
(おんなはもんぜつしたままいきがたえた。)
女は悶絶したまま息が絶えた。
(あとでまちからいしゃややくにんがきてとりしらべたけっか、)
あとで町から医者や役人が来て取調べた結果、
(ふどうさまののうずいがずっとまえからばいどくにおかされていることがわかった。)
不動様の脳髄がずっと前から梅毒に犯されていることがわかった。
(このじじつがわかると、そのむらのふどうさましんじんがそのあとぱったりとやんだ。)
この事実がわかると、その村の不動様信心がその後パッタリと止んだ。
(ふどうさまをしんこうするとばいどくになるというので。)
不動様を信仰すると梅毒になるというので……。