千年後の世界 1 海野十三

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昭和初期の作家が書いた近未来のはなし

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(れいとうし わかきやしんにみちたかがくしゃふるはたは、ひつぎのなかにめざめてから、)

【 冷凍死 】 若き野心にみちた科学者フルハタは、棺の中に目ざめてから、

(もうなのかになる。 「どうしたものかなあ。もうひつぎのふたを、こつこつとたたくものが)

もう七日になる。 「どうしたものかなあ。もう棺の蓋を、こつこつと叩く者が

(あってもいいはずだ」 かれは、ひたすらひつぎのそとからのっくするおとを)

あってもいいはずだ」 彼は、ひたすら棺の外からノックする音を

(まちわびている。 ひつぎといってもこれはわれわれのしっているあのしらきづくりの)

まちわびている。 棺といってもこれはわれわれの知っているあの白木づくりの

(かんおけではない。なんようせいのもりぶでんのごうきんえむおーきゅうひゃくにばんという)

棺桶ではない。難溶性のモリブデンの合金エムオー九百二番という

(すばらしいきんぞくでつくったごじゅうのひつぎである。またひつぎないは、しらきづくりのひつぎの)

すばらしい金属でつくった五重の棺である。また棺内は、白木づくりの棺の

(ようにかろうじてよこになっていられるだけのせまさではなく、なかなかひろい。)

ように辛うじて横になっていられるだけの狭さではなく、なかなか広い。

(てんじょうのたかいじゅうじょうじきのへやぐらいのひろさだ。そこにべっどもあれば、れいとうきかい)

天井の高い十畳敷の部屋ぐらいの広さだ。そこにベッドもあれば、冷凍機械

(もあり、おんどちょうせつきもあり、がすはっせいきとかはつでんきとかしんごうきとかいろいろの)

もあり、温度調節器もあり、ガス発生器とか発電機とか信号器とかいろいろの

(きかいがならんでいる。また、たくさんのさんこうぶんけんや、そのほかはいざらやはぶらしや)

機械がならんでいる。また、たくさんの参考文献や、そのほか灰皿や歯ブラシや

(あんぜんかみそりなどというせいかつにひつようないろいろなしなものもはいっている。はやくいえば、)

安全剃刀などという生活に必要ないろいろな品物も入っている。早くいえば、

(けんきゅうしつとしょさいとをかんづめにしたようなものである。 かれふるはたは、)

研究室と書斎とを罐詰にしたようなものである。 彼フルハタは、

(このふうがわりなかんおけのなかで、すでにいっせんねんあまりのれいとうすいみんをへたのである。)

この風変わりな棺桶のなかで、すでに一千年余の冷凍睡眠をへたのである。

(れいとうすいみんというのは、にんげんをいきたままひょうけつさせてしまい、ひつようなねんすうだけ、)

冷凍睡眠というのは、人間を生きたまま氷結させてしまい、必要な年数だけ、

(そのままにしておくことである。これはなかなかむずかしいぎじゅつで、)

そのままにしておくことである。これはなかなかむずかしい技術で、

(ことにれいとうのていどをすすめてゆくすぴーどがむずかしい。へたをやれば、)

ことに冷凍の程度をすすめてゆくスピードがむずかしい。下手をやれば、

(それきりにんげんはえいきゅうにしんでしまうのである。うまくこれをやれば、)

それきり人間は永久に死んでしまうのである。うまくこれをやれば、

(みっかごであろうとひゃくねんごであろうと、またかれふるはたのばあいのようにいっせんねんご)

三日後であろうと百年後であろうと、また彼フルハタの場合のように一千年後

(であろうと、れいとうにんげんのせいめいはほぞんされる。そしていいころあいにこのれいとうをといて)

であろうと、冷凍人間の生命は保存される。そしていい頃合にこの冷凍をといて

(ふたたびそせいすることができる。このときまた、れいとうしているじんたいをとかして)

ふたたび蘇生することができる。このときまた、冷凍している人体を融かして

など

(もとにもどすぎじゅつが、なかなかむずかしいのであるが、とにかくかれふるはたの)

もとに戻す技術が、なかなかむずかしいのであるが、とにかく彼フルハタの

(ばあいには、どちらもかんぜんにうまくいった。 )

場合には、どちらも完全にうまくいった。

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