虹猫の話1 宮原晃一郎

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虹色をしたおとぎの国の猫が、雲の国へ冒険するお話
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1 Shion 3400 D 3.5 96.1% 670.4 2375 95 34 2024/10/20

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問題文

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(いつのころか、あるところにいっぴきのねこがいました。このねこはあたりまえのねことは)

いつの頃か、あるところに一匹の猫がいました。この猫はあたりまえの猫とは

(ちがったねこで、おとぎのくにからきたものでした。おとぎのくにのねこはけいろがまったく)

ちがった猫で、お伽の国から来たものでした。お伽の国の猫は毛色がまったく

(べつでした。まずそのはなのいろはすみれのいろをしています。それにめだまはあい、みみたぶは)

別でした。まずその鼻の色は菫の色をしています。それに目玉はあい、耳朶は

(うすあお、まえあしはみどり、どうたいはき、うしろあしはおれんじいろで、おはあかです。ですから、)

うす青、前足はみどり、胴体は黄、うしろ足は橙色で、尾は赤です。ですから、

(ちょうどにじのようになないろをしたふしぎなねこでした。 そのにじねこは、)

ちょうど虹のように七色をしたふしぎな猫でした。  その虹猫は、

(いろいろとふしぎなぼうけんをしました。つぎにおはなしするのはやっぱり、そのうちの)

いろいろとふしぎな冒険をしました。次にお話するのはやっぱり、そのうちの

(ひとつです。 あるひ、なないろのにじねこはひなたぼっこをしていました。すると、)

一つです。  ある日、七色の虹猫は日向ぼっこをしていました。すると、

(なんだか、たいくつでしかたがなくなりました。というのはちかごろ、おとぎのくには)

何だか、たいくつで仕方がなくなりました。というのは近頃、お伽の国は

(てんかたいへいで、なにごともなかったからです。 「どうも、こういつも、あっけらかん)

天下太平で、何事もなかったからです。 「どうも、こういつも、あっけらかん

(としてあそんでばかりいては、からだがわるくなっていけない。」と、ねこはかんがえました。)

として遊んでばかりいては、体が悪くなっていけない。」と、猫は考えました。

(「どれ、ひとつそこいらにでかけて、ぼうけんでもやろうかしら。」 そこで、)

「どれ、一つそこいらに出かけて、冒険でもやろうか知ら。」  そこで、

(ねこは、とぐちにはりふだをしました。 「にさんにちるすをしますから、ゆうびんやこづつみが)

猫は、戸口にはり札をしました。 「二三日留守をしますから、郵便や小包が

(もしるすちゅうにきましたら、どうかえんとつのなかになげこんでおいてください。)

もし留守中にきましたら、どうか煙突の中に投げこんで置いて下さい。

(ーーゆうびんやさんへ。」 それから、ちょっとしたにもつをこしらえて、)

――郵便屋さんへ。」  それから、ちよっとした荷物をこしらえて、

(それをしっぽのさきにつつかけ、えっちゃら、おっちゃら、おとぎのこっきょうまで)

それを尻尾のさきにつつかけ、えっちゃら、おっちゃら、お伽の国境まで

(やってきました。すると、ちょうどそこにくもがむくむくとたってきました。)

やって来ました。すると、ちょうどそこに雲がむくむくと起って来ました。

(「どれひとつ、くものひとたちのところにかおだししてみようかな。」 ねこは)

「どれ一つ、雲の人たちのところに顔出ししてみようかな。」  猫は

(ひとりごとをいいながら、くものどてをのぼりはじめました。 くものくににすまって)

ひとりごとを言いながら、雲の土手をのぼり始めました。  雲の国に住まって

(いるひとたちは、たいへんゆかいなひとたちでした。しごとといっては、べつだんなんにも)

いる人たちは、たいへん愉快な人たちでした。仕事といっては、べつだん何にも

(しないのですが、それでもなまけているからって、よのなかがおもしろくないわけでも)

しないのですが、それでも怠けているからって、世の中が面白くないわけでも

など

(ないのです。そして、みんなりっぱなくものごてんにすまっていますが、ごてんはちきゅう)

ないのです。そして、みんな立派な雲の御殿に住まっていますが、御殿は地球

(からみえるほうよりも、みえないがわがかえってたいへんうつくしいのです。)

から見える方よりも、見えない側がかえって大へん美しいのです。

(くものひとたちは、ときどきいっしょにしんじゅいろのばしゃをはしらせたり、またかるい)

雲の人たちは、ときどき一しょに真珠色の馬車をはしらせたり、又軽い

(ぼーとにのってほをかけたりします。そらのなかにすまっているので、たったひとり)

ボートにのって帆をかけたりします。空の中に住まっているので、たった一人

(こわいものはかみなりさまだけです。なにしろかみなりさまときては、おこりっぽく、よくそらを)

恐いものは雷様だけです。何しろ雷様ときては、怒りっぽく、よく空を

(ごろごろとあしをふみならして、くものひとたちのいえをたたきまわるから)

ごろごろと足をふみ鳴らして、雲の人たちの家を叩きまわるから

(むりもないわけです。 くものひとたちは、なないろのにじねこがたずねて)

むりもないわけです。  雲の人たちは、七色の虹猫がたずねて

(くれたのをたいへんよろこんで、ていねいにあいさつしました。 「まあ、ちょうど)

くれたのを大へんよろこんで、ていねいに挨拶しました。 「まあ、ちょうど

(いいところへおいでなすった。」と、くものひとたちはいいました。「じつは、)

いいところへお出でなすった。」と、雲の人たちは言いました。「じつは、

(かぜのかみさんのおうちで、おおきなおいわいがあるのですよ。それは、あそこのいちばん)

風の神さんのおうちで、大きなお祝いがあるのですよ。それは、あそこの一番

(うえのむすこのきたのかぜさんが、きょう、まほうのしまのおうさまのおひめさまをおよめさんに)

うえの息子の北の風さんが、今日、魔法の島の王様のお姫様をお嫁さんに

(おむかえなさるんです。」 なないろのにじねこは、こんなこともあろうかと、)

お迎えなさるんです。」  七色の虹猫は、こんなこともあろうかと、

(ちゃんとしっぽのさきのふくろに、いろいろのしなものをよういしてきたのでした)

ちやんと尻尾のさきの袋に、いろいろの品物を用意してきたのでした

(ほんとに、びっくりするほどのりっぱなごこんれいだったのです。)

ほんとに、びっくりするほどの立派な御婚礼だったのです。

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