恋人形

(それはけしてとりかえせない)

それはけして　とりかえせない

(ふじょうにかけまざったひとしずく)

不浄にかけ混ざったひとしずく

(けしてでられないめいろのなかわたしはいつまでもとじこめられる)

けして出られない迷路の中　わたしはいつまでも閉じ込められる

(かたむきっぱなしのてんびん)

傾きっぱなしの天秤

(ふじなるやまいのきんだんしょうじょう)

不治なる病の禁断症状

(しんせいなるさついをはらんで)

神聖なる殺意を孕んで

(るーるにしたがうそこなしのむじょう)

ルールに従う底なしの無情

(さながらこくいんがごとくに)

さながら刻印が如くに

(まぶたにあかくやきついたあのめ)

瞼にあかく焼き付いたあの眼

(あかくてあかくてあかくてあかくてああおぼれていく)

赤くて赫赫くて赫赫赫くて赫赫赫赫赫くて　ああ溺れていく

(それはひとつのしんこうにもにる)

それはひとつの信仰にも似る

(すりこまれたいろをいまもわすれない)

刷り込まれた色を　今も忘れない

(なにもかも)

なにもかも

(ちぬれのらぶどーるりょうのほおあからめる)

血濡れの恋人形　両の頬赤らめる

(おとめにするみたいにらんぼうにしてね)

処女にするみたいに乱暴にしてね

(かたをゆさぶって)

肩を揺さぶって

(つきとばして)

突き飛ばして

(かべにつよくたたきつけて)

壁に強く叩きつけて

(そうしてわたしをもういちど)

そうして"敵"をもう一度

(あのめでいぬくまで)

あの眼で射抜くまで

(きっとあなたにんげんではない)

きっとあなた　人間ではない

(もっとこんぽんてきにたがえてる)

もっと根本的に違えてる

(だからきっとこれもただしくてそしてそれとどうじにまちがっている)

だからきっとこれも正しくて　そしてそれと同時に間違っている

(ゆめというゆめのいきつくさき)

夢という夢の行き着く先

(ていこうできないぼうりょくしょうどう)

抵抗できない暴力衝動

(あまくにがくひたれるさんどく)

甘く苦く浸れる惨毒

(いちどおちいればせいぎょふのう)

一度陥れば制御不能

(いのちをむしするがごとくに)

命を無視するが如くに

(いまもしんまでふるわせるあのめ)

いまも身芯まで震わせるあの眼

(こわくてこわくてこわくてこわくてああおぼれていく)

恐怖くて畏怖くて怖気くて怖怖くて　ああ溺れていく

(あくまをとらえけしてはなさない)

悪魔を捉えけして離さない

(あなたのそのかげがあくまてきなまでに)

あなたのその影が悪魔的なまでに

(なにもかも)

なにもかも

(ちぬれのらぶどーるむねをたかならせる)

血濡れの恋人形　胸を高鳴らせる

(しゅくじょにするみたいにめちゃくちゃにしてね)

淑女にするみたいに滅茶苦茶にしてね

(ゆかにひきたおして)

床に引き倒して

(ししくみふせて)

四肢組み伏せて

(あざになるくらいなぐりつけて)

痣になるくらい殴りつけて

(そうしてわたしをもういちど)

そうして"敵"をもう一度

(あのめでもやすまで)

あの眼で焼殺すまで

(あどけなさにわらえよしょうじょ)

あどけなさに笑えよ少女

(そのこころは)

その心は

(かせでつながれても)

枷で繋がれても

(よろこびゆれる)

喜び揺れる

(きけよのろいのかぷりちお)

聞けよ呪いのカプリチオ

(がんぜなさにおどれよしょうじょ)

がんぜなさに踊れよ少女

(そのこころが)

その心が

(おりにとじられても)

檻に閉じられても

(こいじはつづく)

恋路は続く

(そのことにきょうきして)

そのことに狂喜して

(なにもかも)

なにもかも

(ちぬれのらぶどーるひとみをうるませる)

血濡れの恋人形　瞳を潤ませる

(しょうじょにするみたいにきずものにしてね)

少女にするみたいにキズモノにしてね

(つめをつきたてて)

爪を突き立てて

(はだひきさいて)

肌引き裂いて

(こいごころごとにぎりつぶして)

心臓ごと握り潰して

(あなたなしではいられないと)

あなた無しではいられないと

(すてきにしょうめいして)

素敵に証明して

(そうしてわたしをもういちど)

そうして"敵"をもう一度

(あのめでこわすまでああ)

あの眼で破壊すまで　嗚呼……