人間失格【太宰治】18
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ma&ko | 2354 | F++ | 2.6 | 90.1% | 1078.1 | 2850 | 312 | 48 | 2024/11/02 |
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問題文
(それまでちちからつきづききまったがくのこづかいをてわたされそれはもう)
それまで、父から月々、きまった額の小遣いを手渡され、それはもう、
(にさんにちでなくなってもしかしたばこもさけもちいずもくだものも)
二、三日で無くなっても、しかし、煙草も、酒も、チイズも、くだものも、
(いつでもいえにあったしほんやぶんぼうぐやそのほかふくそうにかんするものなどもいっさい)
いつでも家にあったし、本や文房具やその他、服装に関するものなども一切、
(いつでもきんじょのみせからいわゆるつけでもとめられたし)
いつでも、近所の店から所謂「ツケ」で求められたし、
(ほりきにおそばかてんどんなどをごちそうしてもちちのひいきのちょうないのみせだったら)
堀木におそばか天丼などをごちそうしても、父のひいきの町内の店だったら、
(じぶんはだまってそのみせをでてもかまわなかったのでしたそれがきゅうに)
自分は黙ってその店を出てもかまわなかったのでした。それが急に、
(げしゅくのひとりずまいになりなにもかも)
下宿のひとり住いになり、何もかも、
(つきづきのていがくのそうきんでまにあわせなければならなくなってじぶんは)
月々の定額の送金で間に合わせなければならなくなって、自分は、
(まごつきましたそうきんはやはりにさんにちできえてしまい)
まごつきました。送金は、やはり、二、三日で消えてしまい、
(じぶんはりつぜんとしこころぼそさのためくるうようになりちちあに)
自分は慄然とし、心細さのため狂うようになり、父、兄、
(あねなどへこうごにおかねをたのむでんぽうといさいふみのてがみ)
姉などへ交互にお金を頼む電報と、イサイフミの手紙
(そのてがみにおいてうったえているじじょうはことごとくおどけのきょこうでした)
(その手紙に於いて訴えている事情は、ことごとく、お道化の虚構でした。
(ひとにものをたのむのにまずそのひとをわらわせるのがじょうさくとかんがえていたのです)
人にものを頼むのに、まず、その人を笑わせるのが上策と考えていたのです)
(をれんぱつするいっぽうまたほりきにおしえられせっせとしちやがよいをはじめ)
を連発する一方、また、堀木に教えられ、せっせと質屋がよいをはじめ、
(それでもいつもおかねにふじゆうをしていましたしょせんじぶんには)
それでも、いつもお金に不自由をしていました。所詮、自分には、
(なんのえんこもないげしゅくにひとりでせいかつしていくのうりょくがなかったのです)
何の縁故も無い下宿に、ひとりで「生活」して行く能力が無かったのです。
(じぶんはげしゅくのそのへやにひとりでじっとしているのがおそろしく)
自分は、下宿のその部屋に、ひとりでじっとしているのが、おそろしく、
(いまにもだれかにおそわれいちげきせられるようなきがしてきてまちにとびだしては)
いまにも誰かに襲われ、一撃せられるような気がして来て、街に飛び出しては、
(れいのうんどうのてつだいをしたりあるいはほりきといっしょにやすいさけをのみまわったりして)
れいの運動の手伝いをしたり、或いは堀木と一緒に安い酒を飲み廻ったりして、
(ほとんどがくぎょうもまたえのべんきょうもほうきしこうとうがっこうへにゅうがくしてにねんめのじゅういちがつ)
ほとんど学業も、また画の勉強も放棄し、高等学校へ入学して、二年目の十一月
(じぶんよりとしうえのゆうふのふじんとじょうしじけんなどをおこしじぶんのみのうえは)
自分より年上の有夫の夫人と情死事件などを起し、自分の身の上は、
(いっぺんしましたがっこうはけっせきするしがっかのべんきょうもすこしもしなかったのに)
一変しました。学校は欠席するし、学科の勉強も、すこしもしなかったのに、
(それでもみょうにしけんのとうあんにようりょうのいいところがあるようで)
それでも、妙に試験の答案に要領のいいところがあるようで、
(どうやらそれまではこきょうのにくしんをあざむきとおしてきたのですがしかし)
どうやらそれまでは、故郷の肉親をあざむき通して来たのですが、しかし、
(もうそろそろしゅっせきにっすうのふそくなど)
もうそろそろ、出席日数の不足など、
(がっこうのほうからないみつにこきょうのちちへほうこくがいっているらしく)
学校のほうから内密に故郷の父へ報告が行っているらしく、
(ちちのだいりとしてちょうけいが)
父の代理として長兄が、
(いかめしいぶんしょうのながいてがみをじぶんによこすようになっていたのでした)
いかめしい文章の長い手紙を、自分に寄越すようになっていたのでした。
(けれどもそれよりもじぶんのちょくせつのくつうはかねのないこととそれから)
けれども、それよりも、自分の直接の苦痛は、金の無い事と、それから、
(れいのうんどうのようじがとてもあそびはんぶんのきもちではできないくらいはげしく)
れいの運動の用事が、とても遊び半分の気持では出来ないくらい、はげしく、
(いそがしくなってきたことでしたちゅうおうちくといったかなにちくといったか)
いそがしくなって来た事でした。中央地区と言ったか、何地区と言ったか、
(とにかくほんごうこいしかわしたやかんだあのへんのがっこうぜんぶの)
とにかく本郷、小石川、下谷、神田、あの辺の学校全部の、
(まるくすがくせいのこうどうたいたいちょうというものにじぶんはなっていたのでした)
マルクス学生の行動隊々長というものに、自分はなっていたのでした。
(ぶそうほうきとききちいさいないふをかいいまおもえば)
武装蜂起、と聞き、小さいナイフを買い、(今思えば、
(それはえんぴつをけずるにもたりないきゃしゃなないふでしたそれを)
それは鉛筆をけずるにも足りない、きゃしゃなナイフでした)それを、
(れんこおとのぽけっとにいれあちこちとびまわっていわゆるれんらく)
レンコオトのポケットにいれ、あちこち飛び廻って、所謂「連絡」
(をつけるのでしたおさけをのんでぐっすりねむりたいしかし)
をつけるのでした。お酒を飲んで、ぐっすり眠りたい、しかし、
(おかねがありませんしかもpとうのことを)
お金がありません。しかも、P(党の事を、
(そういういんごでよんでいたときおくしていますがあるいは)
そういう隠語で呼んでいたと記憶していますが、或いは、
(ちがっているかもしれませんのほうからはつぎつぎといきをつくひまもないくらい)
違っているかも知れません)のほうからは、次々と息をつくひまも無いくらい、
(ようじのいらいがまいりますじぶんのびょうじゃくのからだでは)
用事の依頼がまいります。自分の病弱のからだでは、
(とてもつとまりそうもなくなりましたもともとひごうほうのきょうみだけから)
とても勤まりそうも無くなりました。もともと、非合法の興味だけから、
(そのぐるうぷのてつだいをしていたのですしこんなに)
そのグルウプの手伝いをしていたのですし、こんなに、
(それこそじょうだんからこまがでたようにいやにいそがしくなってくるとじぶんは)
それこそ冗談から駒が出たように、いやにいそがしくなって来ると、自分は、
(ひそかにpのひとたちにそれはおかどちがいでしょう)
ひそかにPのひとたちに、それはお門ちがいでしょう、
(あなたたちのちょっけいのものたちにやらせたらどうですか)
あなたたちの直系のものたちにやらせたらどうですか、
(というようないまいましいかんをいだくのをきんずることができずにげました)
というようないまいましい感を抱くのを禁ずることが出来ず、逃げました。
(にげてさすがにいいきもちはせずしぬことにしました)
逃げて、さすがに、いい気持はせず、死ぬ事にしました。