山本周五郎 赤ひげ診療譚 駈込み訴え 9

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プレイ回数862難易度(4.5) 2505打 長文 長文モード可
映画でも有名な、山本周五郎の傑作短編です。
赤ひげ診療譚の第二話です。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 zero 6336 S 6.5 96.8% 382.7 2507 82 47 2024/11/17
2 pechi 5709 A 6.5 89.1% 393.4 2558 312 47 2024/11/19

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問題文

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(「それでその、まつぞうというさはいはかえっちまいました、ええ」ときんべえはいった、)

「それでその、松蔵という差配は帰っちまいました、ええ」と金兵衛は云った、

(「わたしはろくすけさんのことをはなし、)

「私は六助さんのことを話し、

(いまようじょうしょにはいっているようなしまつだからといったんですが、)

いま養生所にはいっているような始末だからと云ったんですが、

(じぶんのほうではもうするだけのことをしたし、ほんにんのおくにがのぞむのだから、)

自分のほうではもうするだけのことをしたし、本人のおくにが望むのだから、

(こどもたちのことはそのひとにまかせる、というわけです、)

子供たちのことはその人に任せる、というわけです、

(わたしにどうしようがありますか、おまけにこのこはひどいねつをだしている、)

私にどうしようがありますか、おまけにこの子はひどい熱をだしている、

(しようがあるもんですか、かかあがもんくをいうのをしかりつけてこのこをねかし、)

しようがあるもんですか、かかあが文句を云うのを叱りつけてこの子を寝かし、

(とにかくにいでせんせいにみていただいたうえ、)

とにかく新出先生に診ていただいたうえ、

(おちえをかりようとおもってでかけたというわけなんです」)

お知恵を借りようと思ってでかけたというわけなんです」

(きんべえのこどものひとりが、ばんめしのしたくをどうするかと、)

金兵衛の子供の一人が、晩飯の支度をどうするかと、

(「かあちゃんがきいている」とつたえにきた。きんべえはためいきをつき、)

「かあちゃんが訊いている」と伝えに来た。金兵衛は溜息をつき、

(くたびれはてたようにたちあがった。)

草臥(くたびれ)はてたように立ちあがった。

(「どうしてこうやっかいなことばかりしょいこむのかわかりません」)

「どうしてこう厄介な事ばかり背負いこむのかわかりません」

(ときんべえはなげいた、「いつかえきしゃがとおかばかりとまりまして、)

と金兵衛はなげいた、「いつか易者が十日ばかり泊りまして、

(そのえきしゃがいうのには、このいえはくぎがぜんぶぎゃくにうってある、)

その易者が云うのには、この家は釘がぜんぶ逆に打ってある、

(つまりさかさくぎというやつで、それがあくうんをよぶのだというんです、)

つまりさかさ釘というやつで、それが悪運を呼ぶのだというんです、

(くぎがぎゃくにうってあるというのはどういうことかというと、)

釘が逆に打ってあるというのはどういうことかというと、

(それはあたまのほうをうちこんだというようなぞくなことではなくって、)

それは頭のほうを打ち込んだというような俗なことではなくって、

(えきがくのほうのがんりきがないとみぬけないものだそうで、)

易学のほうの眼力(がんりき)がないと見ぬけないものだそうで、

(それはそうかもしれませんが、だからといってあなた、)

それはそうかもしれませんが、だからといってあなた、

など

(このふるやのくぎをぜんぶぬいてうちなおすなんていうことが)

この古家の釘をぜんぶ抜いて打ち直すなんていうことが

(できるわけのものじゃありませんからな」)

できるわけのものじゃありませんからな」

(そしてきんべえはたちあがりながらつけくわえた、)

そして金兵衛は立ちあがりながら付け加えた、

(「ーーそのえきしゃはとおかかんのはたごちんをふみたおしていっちまいました、)

「ーーその易者は十日間の旅籠賃をふみ倒していっちまいました、

(じぶんでさかさくぎのしょうこをみせたつもりですかな、ひどいもんです」)

自分でさかさ釘の証拠をみせたつもりですかな、ひどいもんです」

(はんときあまりたってきょじょうがきた。)

半刻あまり経って去定が来た。

(かれがともをしんさつしはじめるとすぐに、のぼるはきんべえからきいたはなしをつたえた。)

彼がともを診察し始めるとすぐに、登は金兵衛から聞いた話を伝えた。

(きょじょうはだまってしんさつをおわり、きんべえのもってきたちゃをすすりながら、)

去定は黙って診察を終り、金兵衛の持って来た茶を啜りながら、

(やくろうをとりよせてにしゅるいの(すでにちょうごうしてある)くすりをじゅうじょうそこへだし、)

薬籠を取りよせて二種類の(すでに調合してある)薬を十帖そこへ出し、

(てあてのしかたととうやくのかいすうをおしえた。)

手当のしかたと投薬の回数を教えた。

(「すると、なんですかな、その」きんべえはとうわくしたようにいった、)

「すると、なんですかな、その」金兵衛は当惑したように云った、

(「わたしどもでこのこどもたちのめんどうをみる、というわけですかな」)

「私どもでこの子供たちの面倒をみる、というわけですかな」

(「どうなるかわからぬ」ときょじょうがいった、「まちぶぎょうへいってはなしてみるが、)

「どうなるかわからぬ」と去定が云った、「町奉行へいって話してみるが、

(おだわらちょうのながやでひきとればよし、さもなければじゅうきょのきまるまで、)

小田原町の長屋で引取ればよし、さもなければ住居のきまるまで、

(ここでめんどうをみることになるかもしれぬ、ふしょうちか」)

ここで面倒をみることになるかもしれぬ、不承知か」

(「その」きんべえはおとをさせてつばをのんだ、)

「その」金兵衛は音をさせて唾をのんだ、

(「いまもこちらのせんせいにはなしたところなんですが、)

「いまもこちらの先生に話したところなんですが、

(わたしどもはしょうばいもずっとひだりまえ、いっかのくらしもかつかつのところへ、)

私どもはしょうばいもずっと左前、一家の暮しもかつかつのところへ、

(たえずこういうやっかいをしょいこむので」)

絶えずこういう厄介を背負いこむので」

(「ろくすけはきんをのこしていった」ときょじょうがさえぎっていった、)

「六助は金を残していった」と去定が遮って云った、

(「しんだらこれであとしまつをたのむといって、ごりょうとにぶおれにあずけた、)

「死んだらこれであと始末を頼むと云って、五両と二分おれに預けた、

(ここのはたごちんははらってあるときいたが、そうではなかったのか」)

ここの旅籠賃は払ってあると聞いたが、そうではなかったのか」

(「それはその、なんです、へえ」といってきんべえはきゅうにかおをあげた、)

「それはその、なんです、へえ」と云って金兵衛は急に顔をあげた、

(「その、ろくすけさんがきんをのこしていった、とおっしゃるんですか」)

「その、六助さんが金を残していった、と仰しゃるんですか」

(「そうでなくともおまえにそんはさせない」ときょじょうはいった、)

「そうでなくともおまえに損はさせない」と去定は云った、

(「しかしふしょうちならこどもはほかへあずける」)

「しかし不承知なら子供はほかへ預ける」

(きんべえはめんどうをみるとこたえた。)

金兵衛は面倒をみると答えた。

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