「こころ」1-2 夏目漱石
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 饅頭餅美 | 5273 | B++ | 5.5 | 94.5% | 436.5 | 2442 | 140 | 38 | 2024/10/28 |
2 | スヌスムムリク | 5132 | B+ | 5.1 | 99.2% | 483.4 | 2501 | 20 | 38 | 2024/10/22 |
3 | ヌル | 5072 | B+ | 5.5 | 92.2% | 439.4 | 2434 | 205 | 38 | 2024/09/26 |
4 | mame | 5002 | B+ | 5.3 | 93.9% | 458.2 | 2451 | 159 | 38 | 2024/10/27 |
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問題文
(わたくしはまいにちうみへはいりにでかけた。ふるいくすぶりかえったわらぶきのあいだをとおりぬけて)
私は毎日海へはいりに出掛けた。古い燻ぶり返った藁葺の間を通り抜けて
(いそへおりると、このへんにこれほどのとかいじんしゅがすんでいるかとおもうほど、)
磯へ下りると、この辺にこれほどの都会人種がすんでいるかと思うほど、
(ひしょにきたおとこやおんなですなのうえがうごいていた。)
避暑に来た男や女で砂の上が動いていた。
(あるときはうみのなかがせんとうのようにくろいあたまでごちゃごちゃしていることもあった。)
ある時は海の中が銭湯のように黒い頭でごちゃごちゃしている事もあった。
(そのなかにしったひとをひとりももたないわたくしも、こういうにぎやかなけしきのなかに)
その中に知った人を一人ももたない私も、こういう賑やかな景色の中に
(つつまれて、すなのうえにねそべってみたり、ひざがしらをなみにうたして)
裹まれて、砂の上に寝そべってみたり、膝頭を波に打たして
(そこいらをはねまわるのはゆかいであった。)
そこいらを跳ね廻るのは愉快であった。
(わたくしはじつにせんせいをこのざっとうのあいだにみつけだしたのである。)
私は実に先生をこの雑沓の間に見付け出したのである。
(そのときかいがんにはかけぢゃやがにけんあった。わたくしはふとしたはずみから)
その時海岸には掛茶屋が二軒あった。私はふとした機会から
(そのいっけんのほうにいきなれていた。はせへんにおおきなべっそうをかまえているひととちがって、)
その一軒の方に行き慣れていた。長谷辺に大きな別荘を構えている人と違って、
(めいめいにせんゆうのきがえばをこしらえていないここいらのひしょきゃくには、)
各自に専有の着換場を拵えていないここいらの避暑客には、
(ぜひともこうしたきょうどうきがえじょといったふうなものがひつようなのであった。)
ぜひともこうした共同着換所といった風なものが必要なのであった。
(かれらはここでちゃをのみ、ここできゅうそくするほかに、ここでかいすいぎをせんたくさせたり、)
彼らはここで茶を飲み、ここで休息する外に、ここで海水着を洗濯させたり、
(ここでしおはゆいからだをきよめたり、ここへぼうしやかさをあずけたりするのである。)
ここで鹹はゆい身体を清めたり、ここへ帽子や傘を預けたりするのである。
(かいすいぎをもたないわたくしにももちものをぬすまれるおそれはあったので、)
海水着を持たない私にも持物を盗まれる恐れはあったので、
(わたくしはうみへはいるたびにそのちゃやへいっさいをぬぎすてることにしていた。)
私は海へはいるたびにその茶屋へ一切を脱ぎ棄てる事にしていた。
(わたくしがそのかけぢゃやでせんせいをみたときは、せんせいがちょうどきものをぬいで)
私がその掛茶屋で先生を見た時は、先生がちょうど着物を脱いで
(これからうみへはいろうとするところであった。)
これから海へ入ろうとするところであった。
(わたくしはそのときはんたいにぬれたからだをかぜにふかしてみずからあがってきた。)
私はその時反対に濡れた身体を風に吹かして水から上がって来た。
(ふたりのあいだにはめをさえぎるいくたのくろいあたまがうごいていた。)
二人の間には目を遮る幾多の黒い頭が動いていた。
(とくべつのじじょうのないかぎり、わたくしはついにせんせいをみのがしたかもしれなかった。)
特別の事情のない限り、私はついに先生を見逃したかもしれなかった。
(それほどはまべがこんざつし、それほどわたくしのあたまがほうまんであったにもかかわらず、)
それほど浜辺が混雑し、それほど私の頭が放漫であったにもかかわらず、
(わたくしがすぐせんせいをみつけだしたのは、せんせいがひとりのせいようじんを)
私がすぐ先生を見付け出したのは、先生が一人の西洋人を
(つれていたからである。)
伴れていたからである。
(そのせいようじんのすぐれてしろいひふのいろが、かけぢゃやへはいるやいなや、)
その西洋人の優れて白い皮膚の色が、掛茶屋へ入るや否や、
(すぐわたくしのちゅういをひいた。じゅんすいのにほんのゆかたをきていたかれは、)
すぐ私の注意を惹いた。純粋の日本の浴衣を着ていた彼は、
(それをしょうぎのうえにすぽりとほうりだしたまま、うでぐみをして)
それを床几の上にすぽりと放り出したまま、腕組みをして
(うみのほうをむいてたっていた。かれはわれわれのはくさるまたひとつのほか)
海の方を向いて立っていた。彼は我々の穿く猿股一つの外
(なにものもはだにつけていなかった。わたくしにはそれがだいいちふしぎだった。)
何物も肌に着けていなかった。私にはそれが第一不思議だった。
(わたくしはそのふつかまえにゆいがはままでいって、すなのうえにしゃがみながら、)
私はその二日前に由井が浜まで行って、砂の上にしゃがみながら、
(ながいあいだせいようじんのうみへはいるようすをながめていた。)
長い間西洋人の海へ入る様子を眺めていた。
(わたくしのしりをおろしたところはすこしこだかいおかのうえで、そのすぐわきが)
私の尻をおろした所は少し小高い丘の上で、そのすぐ傍が
(ほてるのうらぐちになっていたので、わたくしのじっとしているあいだに、)
ホテルの裏口になっていたので、私の凝としている間に、
(だいぶおおくのおとこがしおをあびにでてきたが、いずれもどうとうでとももは)
大分多くの男が塩を浴びに出て来たが、いずれも胴と腕と股は
(だしていなかった。おんなはことさらにくをかくしがちであった。)
出していなかった。女は殊更肉を隠しがちであった。
(たいていはあたまにごむせいのずきんをかぶって、えびちゃやこんやあいのいろをなみまにうかしていた。)
大抵は頭に護謨製の頭巾を被って、海老茶や紺や藍の色を波間に浮かしていた。
(そういうありさまをもくげきしたばかりのわたくしのめには、さるまたひとつですまして)
そういう有様を目撃したばかりの私の眼には、猿股一つで済まして
(みんなのまえにたっているこのせいようじんがいかにもめずらしくみえた。)
皆なの前に立っているこの西洋人がいかにも珍しく見えた。