「こころ」1-12 夏目漱石

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問題文
(このもんどうはわたくしにとってすこぶるふとくようりょうのものであったが、)
この問答は私にとってすこぶる不得要領のものであったが、
(わたくしはそのときそこまでおさずにかえってしまった。)
私はその時底まで押さずに帰ってしまった。
(しかもそれからよっかとたたないうちにまたせんせいをほうもんした。)
しかもそれから四日と経たないうちにまた先生を訪問した。
(せんせいはざしきへでるやいなやわらいだした。)
先生は座敷へ出るや否や笑いだした。
(「またきましたね」といった。)
「また来ましたね」といった。
(「ええきました」といってじぶんもわらった。)
「ええ来ました」といって自分も笑った。
(わたくしはほかのひとからこういわれたらきっとしゃくにさわったろうとおもう。)
私は外の人からこういわれたらきっと癪に触ったろうと思う。
(しかしせんせいにこういわれたときは、まるではんたいであった。)
しかし先生にこういわれた時は、まるで反対であった。
(しゃくにさわらないばかりでなくかえってゆかいだった。)
癪に触らないばかりでなくかえって愉快だった。
(「わたしはさびしいにんげんです」とせんせいはそのばんまたこのあいだのことばをくりかえした。)
「私は淋しい人間です」と先生はその晩またこの間の言葉を繰り返した。
(「わたしはさびしいにんげんですが、ことによるとあなたもさびしいにんげんじゃないですか。)
「私は淋しい人間ですが、ことによるとあなたも淋しい人間じゃないですか。
(わたしはさびしくってもとしをとっているから、うごかずにいられるが、)
私は淋しくっても年を取っているから、動かずにいられるが、
(わかいあなたはそうはいかないのでしょう。)
若いあなたはそうはいかないのでしょう。
(うごけるだけうごきたいのでしょう。うごいてなにかにぶつかりたいのでしょう・・・」)
動けるだけ動きたいのでしょう。動いて何かに打つかりたいのでしょう…」
(「わたくしはちっともさびしくはありません」)
「私はちっとも淋しくはありません」
(「わかいうちほどさびしいものはありません。)
「若いうちほど淋しいものはありません。
(そんならなぜあなたはそうたびたびわたしのうちへくるのですか」)
そんならなぜあなたはそうたびたび私の宅へ来るのですか」
(ここでもこのあいだのことばがまたせんせいのくちからくりかえされた。)
ここでもこの間の言葉がまた先生の口から繰り返された。
(「あなたはわたしにあってもおそらくまださびしいきがどこかで)
「あなたは私に会ってもおそらくまだ淋しい気がどこかで
(しているでしょう。わたしにはあなたのためにそのさびしさをねもとから)
しているでしょう。私にはあなたのためにその淋しさを根元から
(ひきぬいてあげるだけのちからがないんだから。)
引き抜いて上げるだけの力がないんだから。
(あなたはほかのほうをむいていまにてをひろげなければならなくなります。)
あなたは外の方を向いて今に手を広げなければならなくなります。
(いまにわたしのうちのほうへはあしがむかなくなります」)
今に私の宅の方へは足が向かなくなります」
(せんせいはこういってさびしいわらいかたをした。)
先生はこういって淋しい笑い方をした。
(さいわいにしてせんせいのよげんはじつげんされずにすんだ。)
幸いにして先生の予言は実現されずに済んだ。
(けいけんのないとうじのわたくしは、このよげんのうちにふくまれている)
経験のない当時の私は、この予言の中に含まれている
(めいはくないぎさえりょうかいしえなかった。)
明白な意義さえ了解し得なかった。
(わたくしはいぜんとしてせんせいにあいにいった。)
私は依然として先生に会いに行った。
(そのうちいつのまにかせんせいのしょくたくでめしをくうようになった。)
その内いつの間にか先生の食卓で飯を食うようになった。
(しぜんのけっかおくさんともくちをきかなければならないようになった。)
自然の結果奥さんとも口を利かなければならないようになった。