緋のエチュード 11

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タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(「もしぼくがわざわざでしゃばっててつだいすれば、)

「もし僕がわざわざでしゃばって手伝いすれば、

(せっかくのてがらをよこどりするかもしれない」ほーむずはいった。)

せっかくの手柄を横取りするかもしれない」ホームズは言った。

(「きみたちはひじょうによくやっているので、)

「君達は非常に良くやっているので、

(だれかによこやりをいれられたらふゆかいだろう」はなしているとき、)

誰かに横槍を入れられたら不愉快だろう」話している時、

(かれのこえはひにくたっぷりだった。「こんご、)

彼の声は皮肉たっぷりだった。「今後、

(きみたちのそうさのしんちょくじょうきょうをおしえてもらえば」かれはつづけた。)

君達の捜査の進捗状況を教えてもらえば」彼は続けた。

(「よろこんでぼくができるかぎりのてだすけをさせてもらうよ。それまでのあいだ、)

「喜んで僕が出来る限りの手助けをさせてもらうよ。それまでの間、

(ぼくはしたいをみつけたじゅんさとはなしがしたい。)

僕は死体を見つけた巡査と話がしたい。

(なまえとじゅうしょをおしえてもらえるか?」)

名前と住所を教えてもらえるか?」

(れすとれーどはてちょうにめをやった。「じょんらんせ」かれはいった。)

レストレードは手帳に目をやった。「ジョン・ランセ」彼は言った。

(「かれはげんざいひばんです。けんじんとんぱーくげいとの)

「彼は現在非番です。ケンジントン・パーク・ゲイトの

(おーどりーこーと46にいけばあえるでしょう」)

オードリー・コート46に行けば会えるでしょう」

(ほーむずはこのじゅうしょをかきとめた。)

ホームズはこの住所を書きとめた。

(「いこう、せんせい」かれはいった。「いってこのおとこにあおう。そうだ、)

「行こう、先生」彼は言った。「行ってこの男に会おう。そうだ、

(ひとつこのじけんでたすけになるかもしれないことをいっておこう」)

ひとつこの事件で助けになるかもしれないことを言っておこう」

(かれはふたりのけいぶのほうをむいてこうつづけた。「これはさつじんだ。)

彼は二人の警部の方を向いてこう続けた。「これは殺人だ。

(そしてさつじんはんはおとこだ。はんにんはしんちょうが6ふぃーといじょうのそうねんのおとこだ。)

そして殺人犯は男だ。犯人は身長が6フィート以上の壮年の男だ。

(せたけのわりにはあしがちいさい。)

背丈の割には足が小さい。

(ごわごわしたつまさきがかくばったくつをはいていて、)

ごわごわした爪先が角ばった靴を履いていて、

(とりちのぽりのはまきをすう。)

トリチノポリの葉巻を吸う。

など

(はんにんはころされたおとこといっしょによりんのつじばしゃでここにきた。)

犯人は殺された男と一緒に四輪の辻馬車でここに来た。

(そのばしゃをひいていたうまは、ていてつの3つがふるく、)

その馬車を引いていた馬は、蹄鉄の3つが古く、

(みぎまえあしのひとつがあたらしい。さつじんはんはまずまちがいなくけっしょくのよいかおで、)

右前足の一つが新しい。殺人犯はまず間違いなく血色のよい顔で、

(かれのみぎてのつめはひじょうにながい。これらはちょっとしためやすにすぎないが、)

彼の右手の爪は非常に長い。これらはちょっとした目安に過ぎないが、

(きみたちのたすけになるかもしれない」)

君達の助けになるかもしれない」

(れすとれーどとぐれっぐそんはうたがわしそうにわらって、)

レストレードとグレッグソンは疑わしそうに笑って、

(おたがいをみやった。)

お互いを見やった。

(「このおとこがさつがいされたとすれば、どういうほうほうで?」)

「この男が殺害されたとすれば、どういう方法で?」

(れすとれーどがきいた。)

レストレードが訊いた。

(「どくだ」しゃーろっくほーむずはぶっきらぼうにいった。)

「毒だ」シャーロックホームズはぶっきらぼうに言った。

(そしてつかつかとあるいていった。「もうひとつ、れすとれーど」)

そしてつかつかと歩いて行った。「もう一つ、レストレード」

(かれはとぐちでふりかえって、つけくわえた。)

彼は戸口で振り返って、付け加えた。

(「「rache」はどいつごで「ふくしゅう」だ。)

「『Rache』はドイツ語で『復讐』だ。

(れいちぇるじょうをさがしてじかんをむだにしないようにな」)

レイチェル嬢を探して時間を無駄にしないようにな」

(こういいのこすと、かれはくちをぽかんとあけた)

こう言い残すと、彼は口をぽかんと開けた

(ふたりのらいばるをのこしてたちさった。)

二人のライバルを残して立ち去った。

(じょんらんせのきょうじゅつ)

ジョン・ランセの供述

(ろーりんすとんがーでん3ばんをでたのはいちじだった。)

ローリンストンガーデン3番を出たのは一時だった。

(しゃーろっくほーむずはわたしをもよりのでんぽうきょくにつれていき、)

シャーロックホームズは私を最寄の電報局に連れて行き、

(そこでながいでんぽうをうった。それからつじばしゃをよびとめ、)

そこで長い電報を打った。それから辻馬車を呼び止め、

(れすとれーどがいったじゅうしょにいくようにぎょしゃにつげた。)

レストレードが言った住所に行くように御者に告げた。

(「しょうげんはちょくせつきくにかぎる」かれはいった。「じっさい、)

「証言は直接聞くに限る」彼は言った。「実際、

(ぼくはかんぜんにこのじけんをはあくしている。)

僕は完全にこの事件を把握している。

(しかしそれでもしるべきことはしっておくほうがいい」)

しかしそれでも知るべきことは知っておく方がいい」

(「きみにはおどろかされるよ、ほーむず」わたしはいった。)

「君には驚かされるよ、ホームズ」私は言った。

(「きみはいろいろとこまかいはなしをしたが、)

「君は色々と細かい話をしたが、

(きっとくちでいうほどかくしんがあるわけじゃないんだろう」)

きっと口で言うほど確信があるわけじゃないんだろう」

(「まちがいようがない」かれはいった。)

「間違いようがない」彼は言った。

(「ぼくがあそこにいってまずめにしたのは、)

「僕があそこに行ってまず目にしたのは、

(えんせきのそばにつじばしゃのしゃりんのあとがにほんのこされていたことだ。さくやまで、)

縁石の側に辻馬車の車輪の跡が二本残されていた事だ。昨夜まで、

(いっしゅうかんはあめがふっていなかった。だからあれほどふかいあとをのこしたのは、)

一週間は雨が降っていなかった。だからあれほど深い跡を残したのは、

(さくやとおったばしゃのはずだ。うまのひづめのあとものこっていた。)

昨夜通った馬車のはずだ。馬の蹄の跡も残っていた。

(そのうちのひとつのりんかくがほかのみっつよりも、)

そのうちの一つの輪郭が他の三つよりも、

(あきらかにくっきりとしていた。)

明らかにくっきりとしていた。

(これはそれがあたらしいていてつだということをしめしている。)

これはそれが新しい蹄鉄だということを示している。

(つじばしゃはあめがふりはじめてからあのうちにきて、)

辻馬車は雨が降り始めてからあの家に来て、

(そしてごぜんちゅうそのすがたをみたものはいない、)

そして午前中その姿を見たものはいない、

(ぼくはぐれっぐそんにたしかめた。ということは、)

僕はグレッグソンに確かめた 。ということは、

(ばしゃがきたのはよなかだ。したがって、)

馬車が来たのは夜中だ。したがって、

(そのつじばしゃにのってふたりのじんぶつがあのいえまでやってきたのだ」)

その辻馬車に乗って二人の人物があの家までやってきたのだ」

(「たんじゅんなはなしのようだな」わたしはいった。)

「単純な話のようだな」私は言った。

(「しかしもうひとりのおとこのしんちょうにかんしては?」)

「しかしもう一人の男の身長に関しては?」

(「おとこのしんちょうは、じゅうにんちゅうくにんまではほはばからわかる。)

「男の身長は、十人中九人までは歩幅から分かる。

(けいさんはたんじゅんそのものだが、きみにけいさんしきをいってもわずらわしいだけだろう。)

計算は単純そのものだが、君に計算式を言っても煩わしいだけだろう。

(そとのじめんとへやのほこりのうえ、ぼくはこのりょうほうでおとこのほはばをはかった。)

外の地面と部屋の埃の上、僕はこの両方で男の歩幅を計った。

(それからけいさんしきにあてはめてけいさんした。にんげんがかべにじをかくとき、)

それから計算式にあてはめて計算した。人間が壁に字を書くとき、

(ほんのうてきにめよりたかいいちにかく。)

本能的に目より高い位置に書く。

(あのもじはゆかから6ふぃーとをちょっとこえたところにあった。)

あの文字は床から6フィートをちょっと越えたところにあった。

(かんたんなはなしだ」)

簡単な話だ」

(「ねんれいは?」わたしはたずねた。)

「年齢は?」私は尋ねた。

(「もし、おとこがまったくむりをせずに4ふぃーとはんのほはばであるけるなら、)

「もし、男が全く無理をせずに4フィート半の歩幅で歩けるなら、

(かんぜんにもうろくしているはずはない。)

完全にもうろくしているはずはない。

(これはかれらがよこぎったとおもわれるにわのみちにあったみずたまりのはばだ。)

これは彼らが横切ったと思われる庭の道にあった水溜りの幅だ。

(えなめるぐつはまわりみちをしていた。)

エナメル靴は回り道をしていた。

(そしてしかくいつまさきはうえをまたいでいた。)

そして四角い爪先は上をまたいでいた。

(ここにまったくあいまいなてんはない。ぼくは、)

ここにまったく曖昧な点はない。僕は、

(あのきじのなかでていしょうしていたかんさつとすいりのしゅほうのいくつかを、)

あの記事の中で提唱していた観察と推理の手法の幾つかを、

(にちじょうせいかつにてきようしただけだ。ほかにわからないてんがあるか?」)

日常生活に適用しただけだ。他に分からない点があるか?」

(「ゆびのつめととりちのぽりは」わたしはいった。)

「指の爪とトリチノポリは」私は言った。

(「へやのもじは、ひとさしゆびにちをつけてかかれていた。)

「部屋の文字は、人差し指に血をつけて書かれていた。

(かくだいきょうをつかうとかくにんできるが、かくさい、)

拡大鏡を使うと確認できるが、書く際、

(しっくいがわずかにひっかかれていた。)

漆喰が僅かに引っ掻かれていた。

(もしおとこのつめがきりつめられていればそのようにはならなかったはずだ。)

もし男の爪が切り詰められていればそのようにはならなかったはずだ。

(ぼくはゆかにちらばったはいをすこしあつめた。)

僕は床に散らばった灰を少し集めた。

(それはくらいいろでぱさぱさしていた、)

それは暗い色でパサパサしていた、

(・・・こんなはいはとりちのぽりからしかでない。)

・・・・こんな灰はトリチノポリからしか出ない。

(ぼくははまきのはいにかんしてとくにけんきゅうしてきた。じっさい、)

僕は葉巻の灰に関して特に研究してきた。実際、

(このしゅだいでろんぶんをかいたことがある。じぶんでいうのもなんだが、)

この主題で論文を書いた事がある。自分で言うのもなんだが、

(はまきでもたばこでも、いまあるめいがらのはいならどれでも、)

葉巻でも煙草でも、今ある銘柄の灰ならどれでも、

(ぼくはひとめでみわけがつく。)

僕は一目で見分けがつく。

(じゅくれんのたんていとぐれっぐそんやれすとれーどのようなにんげんとのさは、)

熟練の探偵とグレッグソンやレストレードのような人間との差は、

(こういうなんでもない、こまかいてんにあるのだ」)

こういうなんでもない、細かい点にあるのだ」

(「けっしょくのよいかおは?」わたしはたずねた。)

「血色の良い顔は?」私は尋ねた。

(「ああ、これはどちらかといえばだいたんなすいそくだ。)

「ああ、これはどちらかと言えば大胆な推測だ。

(しかしじぶんがただしいことはうたがっていないがね。)

しかし自分が正しい事は疑っていないがね。

(きみはこのじけんのげんばにいあわせたんだから、)

君はこの事件の現場に居合わせたんだから、

(わざわざぼくにたずねることもないだろう」)

わざわざ僕に尋ねることもないだろう」

(わたしはひたいをてでぬぐった。「あたまがくらくらする」わたしはいった。)

私は額を手で拭った。「頭がクラクラする」私は言った。

(「そのことをかんがえればかんがえるほど、よけいになぞがふかまってくる。)

「その事を考えれば考えるほど、余計に謎が深まってくる。

(どうやってふたりのおとこが、もしふたりのおとこだとすれば、)

どうやって二人の男が、 もし二人の男だとすれば 、

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