緋のエチュード 14

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タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(たいりょくのよわったわたしにとってごぜんちゅうのかつどうははげしすぎたので、)

体力の弱った私にとって午前中の活動は激しすぎたので、

(ごごにはへとへとになっていた。ほーむずがこんさーとにでかけたあと、)

午後にはヘトヘトになっていた。ホームズがコンサートに出かけた後、

(わたしはそふぁにねころんでにじかんほどねむろうとした。)

私はソファに寝転んで二時間ほど眠ろうとした。

(しかしむだなこころみだった。わたしはすべてのできごとにひじょうにこうふんしており、)

しかし無駄な試みだった。私はすべての出来事に非常に興奮しており、

(おどろくほどきみょうなくうそうやおくそくがつぎつぎにわきおこった。めをとじるたびに、)

驚くほど奇妙な空想や憶測が次々に沸き起こった。目を閉じるたびに、

(ころされたおとこのゆがんだひひのようなかおつきががんぜんにうかびあがってきた。)

殺された男のゆがんだヒヒのような顔つきが眼前に浮かび上がってきた。

(そのかおのいんしょうがあまりにもじゃあくなので、)

その顔の印象があまりにも邪悪なので、

(こんなかおのもちぬしをこのよからとりのぞいたじんぶつに)

こんな顔の持ち主をこの世から取り除いた人物に

(かんしゃするきになってしまうのをこらえきれなかった。)

感謝する気になってしまうのをこらえ切れなかった。

(もしにんげんのひょうじょうのなかに、)

もし人間の表情の中に、

(このうえなくゆうがいでてんけいてきなじゃあくをしめすひょうじょうがあるとすれば、)

この上なく有害で典型的な邪悪を示す表情があるとすれば、

(それはまちがいなくくりーぶらんどのいーのっくj.どればーのかおに)

それは間違いなくクリーブランドのイーノック J. ドレバーの顔に

(きざまれていたものであろう。しかしもちろん、)

刻まれていたものであろう。しかしもちろん、

(さばきはこうせいにつけなければならず、)

裁きは公正につけなければならず、

(かりにひがいしゃがあくにんであったとしても、)

仮に被害者が悪人であったとしても、

(ほうのめからはまったくようしゃされないことは、よくわかっていた。)

法の目からは全く容赦されないことは、よく分かっていた。

(このじけんをかんがえればかんがえるほど、)

この事件を考えれば考えるほど、

(ほーむずのかせつがとんでもないものにおもえてきた。)

ホームズの仮説がとんでもないものに思えて来た。

(このおとこはどくをもられたらしい。)

この男は毒を盛られたらしい。

(わたしはほーむずがくちのにおいをかいだのをおぼえている。そしてまちがいなく、)

私はホームズが口の臭いをかいだのを覚えている。そして間違いなく、

など

(かれはなにかそれをうたがうにおいをかぎとった。しかし、)

彼は何かそれを疑う臭いを嗅ぎとった。しかし、

(もしどくさつでなければこのおとこのしいんはなにか。きずはなく、)

もし毒殺でなければこの男の死因は何か。傷は無く、

(くびをしめられたあともないのだ。だがいっぽうで、)

首を締められた跡も無いのだ。だが一方で、

(ゆかのうえにあれほどたりょうにおちていたのはだれのちか。)

床の上にあれほど多量に落ちていたのは誰の血か。

(かくとうしたこんせきはまったくなかったし、)

格闘した痕跡は全く無かったし、

(ひがいしゃはあいてをきずつけるかのうせいのあるぶきももっていなかった。)

被害者は相手を傷つける可能性のある武器も持っていなかった。

(これらのぎもんがかいしょうされないかぎり、)

これらの疑問が解消されない限り、

(ほーむずもわたしもぐっすりねむれそうもないとおもった。)

ホームズも私もぐっすり眠れそうもないと思った。

(あのおちついたじしんありげなたいどで、)

あの落ち着いた自信ありげな態度で、

(わたしはかれがすでにすべてのじじつをせつめいするりろんをくみたてているとかくしんした。)

私は彼が既に全ての事実を説明する理論を組み立てていると確信した。

(しかしそれがどんなものか、わたしにはまったくそうぞうもつかなかった。)

しかしそれがどんなものか、私にはまったく想像もつかなかった。

(かれはひじょうにおそくになってもどってきた。あまりにもおそかったので、)

彼は非常に遅くになって戻ってきた。あまりにも遅かったので、

(こんさーといがいにもなにかようじがあったことがわかった。)

コンサート以外にも何か用事があった事が分かった。

(かれがかえってきたとき、すでにゆうしょくはてーぶるにならべられていた。)

彼が帰って来た時、すでに夕食はテーブルに並べられていた。

(「すばらしかったよ」かれはじぶんのせきにすわりながらいった。)

「素晴らしかったよ」彼は自分の席に座りながら言った。

(「だーうぃんがおんがくについてかたったことをおぼえているか?かれのはなしでは、)

「ダーウィンが音楽について語ったことを覚えているか?彼の話では、

(じんるいがおんがくをつくったりかんしょうしたりするのうりょくは、)

人類が音楽を作ったり鑑賞したりする能力は、

(かいわのうりょくをかくとくするずっといぜんからそんざいしていたらしい。)

会話能力を獲得するずっと以前から存在していたらしい。

(にんげんがおんがくにこれほどびんかんにえいきょうされるのは、たぶんそれがげんいんだ。)

人間が音楽にこれほど敏感に影響されるのは、多分それが原因だ。

(せかいがまだうぶごえをあげたばかりのこんとんとしたじだいのきおくがぼんやりと)

世界がまだ産声をあげたばかりの混沌とした時代の記憶がぼんやりと

(われわれのこころにのこっているのだ」)

我々の心に残っているのだ」

(「やけにそうだいなかんがえだな」わたしはいった。)

「やけに壮大な考えだな」私は言った。

(「しぜんをかいしゃくしようとすれば、)

「自然を解釈しようとすれば、

(にんげんのかんがえもしぜんのようにそうだいになるさ」かれはこたえた。)

人間の考えも自然のように壮大になるさ」彼は答えた。

(「どうした?ちょっといつもとようすがちがうな。)

「どうした?ちょっといつもと様子が違うな。

(ぶりくすとんろーどのじけんでどうようしたか」)

ブリクストンロードの事件で動揺したか」

(「じつはそうなんだ」わたしはいった。「あふがんせんそうにいって、)

「実はそうなんだ」私は言った。「アフガン戦争に行って、

(もっとひどいけいけんをやまほどしてきたんだがな。)

もっとひどい経験を山ほどしてきたんだがな。

(まいわんどではどうりょうがばらばらになったのをもくげきしたが、)

マイワンドでは同僚がバラバラになったのを目撃したが、

(どうようなどしなかった」)

動揺などしなかった」

(「わかるな。このじけんには、そうぞうりょくをしげきするなぞがある。)

「分かるな。この事件には、想像力を刺激する謎がある。

(そうぞうりょくがなければきょうふはうまれない。ゆうかんをみたか?」)

想像力がなければ恐怖は生まれない。夕刊を見たか?」

(「いや」)

「いや」

(「このじけんをなかなかうまくせつめいしたきじがある。このきじは、)

「この事件をなかなかうまく説明した記事がある。この記事は、

(おとこがもちあげられたとき、)

男が持ち上げられた時、

(じょせいのけっこんゆびわがゆかにおちたじじつはふれていない。)

女性の結婚指輪が床に落ちた事実は触れていない。

(これがかかれていないのはこうつごうだ」)

これが書かれていないのは好都合だ」

(「なぜだ?」)

「なぜだ?」

(「このこうこくをみてみろ」かれはこたえた。)

「この広告を見てみろ」彼は答えた。

(「ぼくがじけんのちょくご、ちょうかんぜんしにけいさいさせた」)

「僕が事件の直後、朝刊全紙に掲載させた」

(かれはしんぶんをわたしになげてよこした。わたしはしめされたばしょにめをはしらせた。)

彼は新聞を私に投げてよこした。私は示された場所に目を走らせた。

(それは「しゅとくぶつ」らんのさいしょのこうこくだった。)

それは「取得物」欄の最初の広告だった。

(「ぶりくすとんろーど、けさ」こうつづいていた。)

「ブリクストンロード、今朝」こう続いていた。

(「かんそなきんのけっこんゆびわ。)

「簡素な金の結婚指輪。

(ほわいとはーとたばーんとほらんどぐるーぶのあいだのどうろではっけん。)

ホワイト・ハート・タバーンとホランド・グルーブの間の道路で発見。

(こんばん8じから9じまでのあいだにべーかーがい221bわとそんはかせまで」)

今晩8時から9時までの間にベーカー街 221B ワトソン博士まで」

(「きみのなまえをつかってもうしわけない」かれはいった。)

「君の名前を使って申し訳ない」彼は言った。

(「もしじぶんのなまえをつかうと、ばかなやつがかんづいて、)

「もし自分の名前を使うと、馬鹿な奴が感づいて、

(くちだししてくるかもしれんからな」)

口出ししてくるかもしれんからな」

(「それはかまわない」わたしはこたえた。)

「それは構わない」私は答えた。

(「しかしだれかがといあわせてきたとしても、)

「しかし誰かが問い合わせてきたとしても、

(ぼくはゆびわをもっていないぞ」)

僕は指輪を持っていないぞ」

(「いや、もってるよ」かれはわたしにゆびわをてわたしながらいった。)

「いや、持ってるよ」彼は私に指輪を手渡しながら言った。

(「これでうまくいくだろう。ほとんどそっくりだ」)

「これで上手く行くだろう。ほとんどそっくりだ」

(「きみはだれがこのこうこくにこたえるとよそうしているんだ?」)

「君は誰がこの広告に答えると予想しているんだ?」

(「もちろんちゃいろいこーとのおとこ、・・・けっしょくよい、)

「もちろん茶色いコートの男、・・・・血色よい、

(つまさきがしかくいわれわれのゆうじんだ。もしかれがじぶんでこないとすれば、)

爪先が四角い我々の友人だ。もし彼が自分で来ないとすれば、

(きょうはんしゃをおくりこむだろう」)

共犯者を送り込むだろう」

(「それはきけんすぎるとおもうんじゃないか?」)

「それは危険すぎると思うんじゃないか?」

(「そんなことはない。もしこのじけんにたいするぼくのみかたがただしければ、)

「そんなことはない。もしこの事件に対する僕の見方が正しければ、

(そしてぼくはあらゆるめんからみてそうだとしんじるにたるこんきょを)

そして僕はあらゆる面から見てそうだと信じるに足る根拠を

(にぎっているが、)

握っているが 、

(このおとこはそのゆびわをとりかえすためにどんなきけんでもおかすだろう。)

この男はその指輪を取り返すためにどんな危険でも冒すだろう。

(ぼくのかんがえでは、かれはどればーのしたいにかがみこんだときそれをおとし、)

僕の考えでは、彼はドレバーの死体にかがみこんだ時それを落とし、

(そのときはきづかなかった。かれはいえをでたあと、)

その時は気付かなかった。彼は家を出た後、

(ゆびわをなくしたことにきづき、いそいでもどった。しかし、)

指輪を無くした事に気付き、急いで戻った。しかし、

(ろうそくをつけたままにしておくというじぶんのおろかなこういによって、)

ロウソクをつけたままにしておくという自分の愚かな行為によって、

(けいかんがすでにへやにいたことにきづいた。かれはもんぴにあらわれたために、)

警官がすでに部屋にいたことに気付いた。彼は門扉に現れたために、

(あやしいにんげんとうたがわれるかのうせいがあったので、)

怪しい人間と疑われる可能性があったので、

(よっぱらいのふりをせざるをえなかった。)

よっぱらいのふりをせざるを得なかった。

(ここでじぶんをおとこのたちばにおいてみよう。じょうきょうからかんがえれば、)

ここで自分を男の立場に置いてみよう。状況から考えれば、

(いえをでたあと、ゆびわをみちにおとしたかのうせいがある、)

家を出た後、指輪を道に落とした可能性がある、

(かれはこうおもったはずだ。そのあとかれはどうするか?)

彼はこう思ったはずだ。その後彼はどうするか?

(かれはしゅとくぶつこうこくにゆびわがのっているかもしれないときたいして)

彼は取得物広告に指輪が載っているかもしれないと期待して

(いっしょうけんめいゆうかんをよんだだろう。もちろん、かれのめはこのこうこくにとまる。)

一生懸命夕刊を読んだだろう。もちろん、彼の目はこの広告に止まる。

(かれはおおよろこびする。なぜわなをおそれなければならないのか?)

彼は大喜びする。なぜ罠を恐れなければならないのか?

(かれのめからみれば、)

彼の目から見れば、

(このゆびわのはっけんがさつじんにかんけいしているとかんがえるりゆうはまったくない。)

この指輪の発見が殺人に関係していると考える理由は全く無い。

(かれはくるはずだ。かれはきっとくる。)

彼は来るはずだ。彼はきっと来る。

(いちじかんいないにきみはかれにあうことになる」)

一時間以内に君は彼に会う事になる」

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