緋のエチュード 15

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タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(「あったあとどうしたらいいんだ?」わたしはたずねた。)

「会った後どうしたらいいんだ?」私は尋ねた。

(「きみはぼくがかれをつかまえるのをみていればいい。ぶきはもっているか?」)

「君は僕が彼を捕まえるのを見ていればいい。武器は持っているか?」

(「むかしのぐんたいようけんじゅうとじゅうだんがしょうしょうだ」)

「昔の軍隊用拳銃と銃弾が少々だ」

(「そうじしてたまをこめておいてくれ。)

「掃除して弾を込めておいてくれ。

(はんにんはじぼうじきになるかもしれない。)

犯人は自暴自棄になるかもしれない。

(あいてがきづかぬうちにつかまえられるとおもうが、)

相手が気付かぬうちに捕まえられると思うが、

(あらゆるじたいにそなえておくのがいいだろう」)

あらゆる事態に備えておくのがいいだろう」

(わたしはしんしつにいってかれのいうとおりにした。)

私は寝室に行って彼の言うとおりにした。

(わたしがけんじゅうをもってもどってきたとき、しょくたくはかたづけられていた。)

私が拳銃を持って戻ってきた時、食卓は片付けられていた。

(そしてほーむずはせっせとばいおりんをひっかく、)

そしてホームズはせっせとバイオリンを引っかく、

(おきにいりのしごとをしていた。)

お気に入りの仕事をしていた。

(「ぼくのけいりゃくはにつまってきたよ」わたしがはいるとかれがいった。)

「僕の計略は煮詰まってきたよ」私が入ると彼が言った。

(「ちょうどあめりかからでんぽうのへんじをうけとったところだ。)

「ちょうどアメリカから電報の返事を受け取ったところだ。

(このじけんにたいするぼくのけんかいはただしいな」)

この事件に対する僕の見解は正しいな」

(「それは・・・?」わたしは、はやるきもちでたずねた。)

「それは・・・・?」私は、はやる気持ちで尋ねた。

(「ばいおりんのげんをかえたほうがよさそうだ」かれはいった。)

「バイオリンの弦を替えた方が良さそうだ」彼は言った。

(「けんじゅうをぽけっとにいれておけ。おとこがきたら、ふつうにはなしてくれ。)

「拳銃をポケットに入れておけ。男が来たら、普通に話してくれ。

(あとはぼくにまかせてくれ。じろじろみておびえさせないようにな」)

後は僕に任せてくれ。じろじろ見て怯えさせないようにな」

(「いま8じだな」わたしはうでどけいをみながらいった。)

「今8時だな」私は腕時計を見ながら言った。

(「そうだ。おそらくあとすうふんでくるだろう。そのとびらをすこしあけてくれ。)

「そうだ。おそらくあと数分で来るだろう。その扉を少し開けてくれ。

など

(それでいい。それからかぎをうちがわからさしこんで。ありがとう。)

それでいい。それから鍵を内側から差し込んで。ありがとう。

(このふるほんはきみょうなほんだよ。きのう、あるみせでかったんだ、)

この古本は奇妙な本だよ。昨日、ある店で買ったんだ、

(みんぞくかんのほうりつ、)

民族間の法律 、

(1642ねんろーらんずのりーじゅでらてんごでしゅっぱんされたものだ。)

1642年ローランズのリージュでラテン語で出版されたものだ。

(このちいさなちゃいろいせびょうしのほんがいんさつされたとき、)

この小さな茶色い背表紙の本が印刷された時、

(ちゃーるずのあたまはまだしっかりどうについていた」)

チャールズの頭はまだしっかり胴についていた」

(「しゅっぱんしゃはだれだ?」)

「出版者は誰だ?」

(「ふぃりっぷどくろい、なにものかな。みかえしに、)

「フィリップ・ド・クロイ、何者かな。見返しに、

(ひじょうにいろあせたいんくで、)

非常に色あせたインクで、

(「ぐるえるみほわいとぞうしょ」とかいてある。)

『グルエルミ・ホワイト蔵書』と書いてある。

(うぃりあむほわいととはだれだろう。たぶん、)

ウィリアム・ホワイトとは誰だろう。多分、

(だれかじつむてきな17せいきのほうりつかだろう。)

誰か実務的な17世紀の法律家だろう。

(このひっせきにはほうりつかとくゆうのくせがある。さあきたようだな」)

この筆跡には法律家特有の癖がある。さあ来たようだな」

(かれがはなしているとき、べるのおとがするどくなった。)

彼が話している時、ベルの音が鋭く鳴った。

(しゃーろっくほーむずはそっとたちあがり、)

シャーロックホームズはそっと立ち上がり、

(いすをとびらのほうこうにうごかした。しようにんがほーるをよこぎり、)

椅子を扉の方向に動かした。使用人がホールを横切り、

(そのあととびらをあけるするどいかけがねのおとがきこえた。)

その後扉を開ける鋭い掛け金の音が聞こえた。

(「わとそんはかせはこちらにおすまいですか?」)

「ワトソン博士はこちらにお住まいですか?」

(めいりょうだがすこししわがれたこえがした。しようにんのへんじはききとれなかった。)

明瞭だが少ししわがれた声がした。使用人の返事は聞き取れなかった。

(しかしとびらがしめられ、だれかがかいだんをのぼりはじめた。)

しかし扉が閉められ、誰かが階段を上り始めた。

(あしおとはひじょうにふたしかでよろよろしたものだった。)

足音は非常に不確かでよろよろしたものだった。

(そのおとをきいてほーむずのかおにおどろきのかげがよぎった。)

その音を聞いてホームズの顔に驚きの影がよぎった。

(あしおとはしずかにろうかをとおり、よわよわしくとびらをたたくおとがした。)

足音は静かに廊下を通り、弱々しく扉を叩く音がした。

(「どうぞ」わたしはさけんだ。)

「どうぞ」私は叫んだ。

(わたしのまねきで、そうぞうしていたようなそぼうなおとこのかわりに、)

私の招きで、想像していたような粗暴な男の代わりに、

(ひじょうにとしおいてしわだらけのおんながよろよろとへやにはいってきた。)

非常に年老いてしわだらけの女がよろよろと部屋に入ってきた。

(かのじょはとつぜんあかるいへやにはいってめがくらんだようで、おじぎをしたあと、)

彼女は突然明かるい部屋に入って目が眩んだようで、お辞儀をした後、

(にごっためをしばたかせてわれわれをみながらたっていた。)

濁った目をしばたかせて我々を見ながら立っていた。

(そしてそわそわしたようにふるえるゆびでぽけっとのなかをさぐっていた。)

そしてそわそわしたように震える指でポケットの中を探っていた。

(ほーむずをちらっとみると、かれがひじょうにしつぼうしたひょうじょうをしていたので、)

ホームズをちらっと見ると、彼が非常に失望した表情をしていたので、

(わたしはへいせいをたもつのがやっとだった。)

私は平静を保つのがやっとだった。

(しわくちゃのろうばはゆうかんしをひっぱりだし、われわれのこうこくをゆびさした。)

しわくちゃの老婆は夕刊紙を引っ張り出し、我々の広告を指差した。

(「これでわたしはきました」かのじょはもういちどおじぎしながらいった。)

「これで私は来ました」彼女はもう一度お辞儀しながら言った。

(「ぶりくすとんろーどのきんのけっこんゆびわ。)

「ブリクストンロードの金の結婚指輪。

(これはわたしのむすめのさりーのものです。)

これは私の娘のサリーのものです。

(むすめはけっこんしてじゅうにかげつしかたっていません。)

娘は結婚して十二ヶ月しかたっていません。

(おっとはゆにおんきせんのきゅうじです。)

夫はユニオン汽船の給仕です。

(もしかれがいえにかえってきてむすめがゆびわをしていないのにきづけば、)

もし彼が家に帰ってきて娘が指輪をしていないのに気付けば、

(かれがなんというかそうぞうもできません。きげんのいいときでもたんきなおとこですが、)

彼が何と言うか想像も出来ません。機嫌のいい時でも短気な男ですが、

(さけをのむともっとひどくなります。おねがいです、)

酒を飲むともっとひどくなります。お願いです、

(むすめはさくやさーかすにいきました。いっしょに・・・」)

娘は昨夜サーカスに行きました。一緒に・・・・」

(「むすめさんのゆびわはこれかね?」わたしはたずねた。)

「娘さんの指輪はこれかね?」私は尋ねた。

(「ありがとうございます!」ろうばはさけんだ。)

「ありがとうございます!」老婆は叫んだ。

(「さりーがさぞよろこぶでしょう。そのゆびわです」)

「サリーがさぞ喜ぶでしょう。その指輪です」

(「あなたのごじゅうしょは?」わたしはえんぴつをもってたずねた。)

「あなたのご住所は?」私は鉛筆を持って尋ねた。

(「はうんずでぃっち、だんかんがい13。ここからけっこうあります」)

「ハウンズディッチ、ダンカン街13。ここから結構あります」

(「はうんずでぃっちとさーかすとのあいだにぶりくすとんろーどはないが」)

「ハウンズディッチとサーカスとの間にブリクストンロードはないが」

(しゃーろっくほーむずはするどくいった。)

シャーロックホームズは鋭く言った。

(ろうばはかおをまわしてあかくくまどられたちいさなめでかれをきっとみた。)

老婆は顔を回して赤く隈どられた小さな目で彼をキッと見た。

(「このかたはわたしのじゅうしょをたずねられたんです」かのじょはいった。)

「この方は私の住所を尋ねられたんです」彼女は言った。

(「さりーは、ぺっかむ、めいふぃーるどぷれいす3にすんでいます」)

「サリーは、ペッカム、メイフィールド・プレイス3に住んでいます」

(「あなたのおなまえは?」)

「あなたのお名前は?」

(「わたしのなまえはそーやー、むすめはでにす、)

「私の名前はソーヤー、 娘はデニス、

(とむでにすとけっこんしたので、こうかいにでているときは、)

トム・デニスと結婚したので 、航海に出ている時は、

(かしこいはきはきしたひとです。かいしゃではもうしぶんのないきゅうじです。)

賢いはきはきした人です。会社では申し分のない給仕です。

(しかしりくにあがると、おんなとさかやのために・・・」)

しかし陸に上がると、女と酒屋のために・・・・」

(「ゆびわをどうぞ、そーやーさん」わたしはほーむずのあいずにしたがってさえぎった。)

「指輪をどうぞ、ソーヤーさん」私はホームズの合図に従って遮った。

(「あきらかにあなたのむすめさんのものだ。)

「明らかにあなたの娘さんのものだ。

(ほんらいのもちぬしにかえすことができてうれしいよ」)

本来の持ち主に返すことができて嬉しいよ」

(ろうばはこごえでなんどもしゅくふくのことばをつげてはっきりとした)

老婆は小声で何度も祝福の言葉を告げてはっきりとした

(かんしゃのいをひょうし、ゆびわをぽけっとにしまうと、)

感謝の意を表し、指輪をポケットにしまうと、

(あしをひきずってかいだんをおりていった。)

足を引きずって階段を下りて行った。

(しゃーろっくほーむずはかのじょがすがたをけすとどうじにぱっとたちあがり、)

シャーロックホームズは彼女が姿を消すと同時にパッと立ち上がり、

(じぶんのへやにとびこんだ。)

自分の部屋に飛び込んだ。

(すうびょうでかれはあるすたーがいとうとまふらーにみをつつんでもどってきた。)

数秒で彼はアルスター外套とマフラーに身を包んで戻ってきた。

(「かのじょのあとをおう」かれはせわしげにいった。)

「彼女の後を追う」彼はせわしげに言った。

(「かのじょはきょうはんしゃにまちがいない。)

「彼女は共犯者に間違いない。

(そしてかれのところにつれていってくれるだろう。)

そして彼のところに連れて行ってくれるだろう。

(もどるのをまっていてくれ」ほうもんしゃがげんかんのとびらをしめるやいなや、)

戻るのを待っていてくれ」訪問者が玄関の扉を閉めるや否や、

(ほーむずはかいだんをおりた。まどごしにながめると、)

ホームズは階段を降りた。窓越しに眺めると、

(ろうばがよわよわしくとおりのむこうにそってあるいていき、)

老婆が弱々しく通りの向こうに沿って歩いて行き、

(ついせきしゃがすこしはなれてうしろからびこうしていくのがみえた、)

追跡者が少し離れて後ろから尾行して行くのが見えた、

(「かれのりろんがぜんぶまちがっているのか」わたしはひとりかんがえた。)

「彼の理論が全部間違っているのか」私は一人考えた。

(「そうでないにしても、かれはいまなぞのかくしんにせまっている」)

「そうでないにしても、彼は今謎の核心に迫っている」

(かれはわたしにおきてまっているようにいうひつようはなかった。)

彼は私に起きて待っているように言う必要は無かった。

(わたしはかれのついせきけっかをきくまで、ねむるのはふかのうだとかんじていたのだ。)

私は彼の追跡結果を聞くまで、眠るのは不可能だと感じていたのだ。

(かれがでかけたのはくじちかかった。どれほどのじかんがかかるのか、)

彼が出かけたのは九時近かった。どれほどの時間がかかるのか、

(まったくわからなかったが、)

全く分からなかったが、

(わたしはあんりみるじぇーるのらヴぃどぼえーむのぺーじに)

私はアンリ・ミルジェールのラヴィ・ド・ボエームのページに

(ざっとめをとおしながらぼんやりとぱいぷをふかした。じゅうじをまわり、)

ざっと目を通しながらぼんやりとパイプをふかした。十時を回り、

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