緋のエチュード 24

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タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(それはしわだらけのししにはぶかぶかだった、まるで、)

それは皺だらけの四肢にはぶかぶかだった 、まるで、

(もうろくしたよぼよぼのろうじんにみえた。おとこはしにかけていた。)

もうろくしたよぼよぼの老人に見えた。男は死にかけていた。

(うえとかわきでしにかけていたのだ。)

飢えと渇きで死にかけていたのだ。

(かれはくろうしてけいこくにおり、)

彼は苦労して渓谷に降り、

(そしてみずのありかをさがそうというむなしいのぞみでこのこだかいおかにのぼった。)

そして水のありかを探そうという空しい望みでこの小高い丘に登った。

(いま、こうだいなしおのだいちとはるかなけわしいやまのつらなりが、)

今、広大な塩の台地とはるかな険しい山の連なりが、

(かれのがんぜんにひろがっていた。)

彼の眼前に広がっていた。

(みずのそんざいをにおわせるくさやきのこんせきはどこにもなかった。)

水の存在を匂わせる草や木の痕跡はどこにも無かった。

(このこうだいなけしきに、のぞみはまったくなかった。きた、ひがし、にし、)

この広大な景色に、望みは全く無かった。北、東、西、

(かれははげしくといかけるようなめでみた。そしてかれは、)

彼は激しく問いかけるような目で見た。そして彼は、

(ほうろうがおわりにたっしたことにきづいた。そして、そこ、ふもうのいわやまで、)

放浪が終わりに達した事に気付いた。そして、そこ、不毛の岩山で、

(かれはまさにしをむかえつつあった。「なぜここではいかん?)

彼はまさに死を迎えつつあった。「なぜここではいかん?

(20ねんごはねぶとんのうえでもおなじことだ」かれはつぶやいた。)

20年後羽根布団の上でも同じ事だ」彼はつぶやいた。

(そしてかれはおおきないわのかげにすわった。)

そして彼は大きな岩の陰に座った。

(こしをおろすまえに、かれはつかいみちのないらいふるをじめんになげすて、)

腰を下ろす前に、彼は使い道のないライフルを地面に投げ捨て、

(みぎかたのうえにかけてはこんでいた、)

右肩の上に掛けて運んでいた、

(はいいろのかたかけにつないだおおきなつつみもおろした。)

灰色の肩掛けに繋いだ大きな包みも下ろした。

(それをおろそうとしたとき、かれのたいりょくにはつつみがすこしおもすぎたとみえて、)

それを下ろそうとした時、彼の体力には包みが少し重すぎたと見えて、

(ややらんぼうにじめんにおとした。そのしゅんかん、)

やや乱暴に地面に落とした。その瞬間、

(はいいろのつつみからちいさなふへいのさけびがあがり、そこから、)

灰色の包みから小さな不平の叫びが上がり、そこから、

など

(ひじょうにあかるいちゃいろのひとみのちいさなおびえたかおと、)

非常に明るい茶色の瞳の小さな怯えた顔と、

(そばかすだらけのえくぼがういたこぶしがふたつとびだしてきた。)

そばかすだらけのえくぼが浮いた拳が二つ飛び出してきた。

(「いたいじゃない!」ひなんするようなこどものこえがきこえた。)

「痛いじゃない!」非難するような子供の声が聞こえた。

(「そうかい?」おとこはもうしわけなさそうにこたえた。「わざとじゃないんだ」)

「そうかい?」男は申し訳なさそうに答えた。「わざとじゃないんだ」

(かれはこういいながら、はいいろのしょーるをほどき、)

彼はこう言いながら、灰色のショールを解き、

(5さいほどのかわいらしいしょうじょをかいほうした。しょうじょのじょうひんなくつ、)

5歳ほどの可愛らしい少女を解放した。少女の上品な靴、

(きちんとしたぴんくのわんぴーす、かわいいあさのえぷろん、)

きちんとしたピンクのワンピース、可愛い麻のエプロン、

(すべてがははおやのせわをかんじさせた。そのこどもはあおじろくおとろえていたが、)

すべてが母親の世話を感じさせた。その子供は青白く衰えていたが、

(けんこうそうなてあしは、)

健康そうな手足は、

(しょうじょがそのどうこうしゃよりもくるしみをうけていないことをしめしていた。)

少女がその同行者よりも苦しみを受けていない事を示していた。

(「だいじょうぶかい?」しょうじょがまだこうとうぶをおおっている)

「大丈夫かい?」少女がまだ後頭部を覆っている

(みだれたきんぱつのまきげをさすっていたので、かれはしんぱいそうにたずねた。)

乱れた金髪の巻き毛をさすっていたので、彼は心配そうに尋ねた。

(「きすしてくれたらよくなるわ」)

「キスしてくれたら良くなるわ」

(しょうじょはおとこにけがしたばしょをみせながらおおまじめにいった。)

少女は男に怪我した場所を見せながら大真面目に言った。

(「おかあさんがいつもそうしてくれたわ。おかあさんはどこ?」)

「お母さんがいつもそうしてくれたわ。お母さんはどこ?」

(「おかあさんはいったよ。もうそんなにまたずにあえるとおもう」)

「お母さんは行ったよ。もうそんなに待たずに会えると思う」

(「いった、え!」しょうじょはいった。「へんね、さよならはいわなかったわ。)

「行った、え!」少女は言った。「変ね、さよならは言わなかったわ。

(おかあさんは、ちょっとおばちゃんのところにおちゃにいくときでも、)

お母さんは、ちょっと叔母ちゃんのところにお茶に行く時でも、

(いつもいっていたのよ。それなのにもうみっかもいないわ。ねえ、)

いつも言っていたのよ。それなのにもう三日もいないわ。ねえ、

(すごくのどがかわかない?のみみずかなにかたべるものはないの?」)

すごく喉が乾かない?飲み水か何か食べるものはないの?」

(「いや、なにもないんだよ、じょうちゃん。しばらくちょっとがまんしないと。)

「いや、何も無いんだよ、嬢ちゃん。しばらくちょっと我慢しないと。

(そしたらよくなるよ。こういうふうにわたしにあたまをあずけて。)

そしたら良くなるよ。こういう風に私に頭をあずけて。

(そしたらちょっとらくになるだろう。くちびるがかわくとはなしがしにくいな。)

そしたらちょっと楽になるだろう。唇が乾くと話がしにくいな。

(しかしじょうきょうがどうなっているかはなすのがいちばんいいだろうとおもう。)

しかし状況がどうなっているか話すのが一番いいだろうと思う。

(てにもっているものはなにかな?」)

手に持っているものは何かな?」

(「かわいいでしょ!きれいでしょ!」)

「可愛いでしょ!綺麗でしょ!」

(しょうじょはきらきらひかるうんものかけらをさしあげていきおいよくさけんだ。)

少女はキラキラ光る雲母のかけらを差し上げて勢いよく叫んだ。

(「いえにかえったらぼぶおにいさんにあげるの」)

「家に帰ったらボブお兄さんにあげるの」

(「すぐにもっときれいなものをみるよ」おとこはかくしんをもっていった。)

「すぐにもっと綺麗なものを見るよ」男は確信を持って言った。

(「ちょっとまっておくれ。いまからはなすつもりだから、)

「ちょっと待っておくれ。今から話すつもりだから、

(・・・かわをはなれたときのことをおぼえているかな?」)

・・・・河を離れた時のことを覚えているかな?」

(「ええ」)

「ええ」

(「すぐにべつのかわにでるとかんがえていたんだ。しかし、)

「すぐに別の河に出ると考えていたんだ。しかし、

(なにかおかしいことがあった。じしゃくか、ちずか、なにかだ。)

何かおかしいことがあった。磁石か、地図か、何かだ。

(かわにであわなかった。みずがそこをつきた。)

河に出会わなかった。水が底を尽きた。

(おまえのようなこどものためのほんのわずかをのぞいて、)

お前のような子供のためのほんの僅かを除いて、

(それで、・・・それで・・・」)

それで、・・・それで・・・・」

(「だからからだをあらえないのね」)

「だから体を洗えないのね」

(しょうじょはかれのあかだらけのかおをみながらじゅうだいそうにわりこんだ。)

少女は彼の垢だらけの顔を見ながら重大そうに割り込んだ。

(「そうだ、のみみずもないんだ。ぶれんだーさん、かれがさいしょにいった。)

「そうだ、飲み水も無いんだ。ブレンダーさん、彼が最初に行った。

(そのつぎにいんでぃあんのぴーと、それからまくれがーふじん、)

その次にインディアンのピート、それからマクレガー夫人、

(それからじょにーほーんず、それから、おじょうちゃん、)

それからジョニー・ホーンズ、それから、お嬢ちゃん、

(きみのおかあさんだ」)

君のお母さんだ」

(「それじゃおかあさんもしんだのね」)

「それじゃお母さんも死んだのね」

(しょうじょはえぷろんどれすにかおをおとしてはげしくなきながらさけんだ。)

少女はエプロンドレスに顔を落として激しく泣きながら叫んだ。

(「そうだ。おじょうちゃんとわたしいがいはぜんぶだ。それから、)

「そうだ。お嬢ちゃんと私以外は全部だ。それから、

(このほうこうにみずがみつかるちゃんすがあるとおもって、)

この方向に水が見つかるチャンスがあると思って、

(おじょうちゃんをかたにかついでいっしょにあるいてきた。)

お嬢ちゃんを肩に担いで一緒に歩いてきた。

(しかしじたいはよくならなかったようだ。もう、かんぜんにのぞみはたたれた」)

しかし事態は良くならなかったようだ。もう、完全に望みは絶たれた」

(「わたしたちもしぬってこと?」しょうじょがなくのをやめ、)

「私達も死ぬってこと?」少女が泣くのを止め、

(なみだにぬれたかおをあげてたずねた。)

涙に濡れた顔を上げて尋ねた。

(「そういうことになりそうだ」)

「そういう事になりそうだ」

(「なぜもっとはやくいわなかったの?」)

「なぜもっと早く言わなかったの?」

(しょうじょはゆかいそうにわらいながらいった。「わたしをこんなにこわがらせて。)

少女は愉快そうに笑いながら言った。「私をこんなに恐がらせて。

(もちろんわたしたちもこれからしぬのなら、またおかあさんにあえるでしょう」)

もちろん私達もこれから死ぬのなら、またお母さんに会えるでしょう」

(「そうだ。あえるよ、おじょうちゃん」)

「そうだ。会えるよ、お嬢ちゃん」

(「おじさんにもね。)

「おじさんにもね。

(おかあさんにおじさんがほんとうにしんせつにしてくれたというわ。)

お母さんにおじさんが本当に親切にしてくれたと言うわ。

(おかあさんはきっとてんごくのいりぐちのところででむかえてくれるわ。)

お母さんはきっと天国の入り口のところで出迎えてくれるわ。

(おおきなみずさしと、ぼぶとわたしがだいすきなようにりょうがわをやいた、)

大きな水差しと、ボブと私が大好きなように両側を焼いた、

(あつあつのそばこのぱんをたくさんもってね。あと、どれくらいかかるの?」)

熱々のそば粉のパンを沢山持ってね。あと、どれくらいかかるの?」

(「わからないな、・・・そんなにながくはない」)

「分からないな、・・・・そんなに長くはない」

(おとこのめはほっぽうのすいへいせんをじっとみていた。)

男の目は北方の水平線をじっと見ていた。

(あおいてんくうにみっつのちいさなしみがあらわれていた。)

青い天空に三つの小さな染みが現れていた。

(それはひじょうにはやくせっきんしていたので、いっしゅんごとにおおきくなっていた。)

それは非常に速く接近していたので、一瞬ごとに大きくなっていた。

(しみはきゅうそくにさんわのおおきなかっしょくのとりのすがたとなった。)

染みは急速に三羽の大きな褐色の鳥の姿となった。

(それはふたりのほうろうしゃのずじょうをわをかいてまわり、)

それは二人の放浪者の頭上を輪を描いて回り、

(そのあとかれらをかんしできるいわのうえにとまった。せいぶのはげわし、)

その後彼らを監視できる岩の上に止まった。西部のハゲワシ、

(ひめこんどるだった。かれらのしゅつげんはしのまえぶれだった。)

ヒメコンドルだった。彼らの出現は死の前触れだった。

(「にわとりがきたわ」きょうちょうをゆびさしながら、しょうじょはゆかいそうにさけんだ。)

「ニワトリが来たわ」凶鳥を指差しながら、少女は愉快そうに叫んだ。

(そしててをたたいてとりをとびたたせた。)

そして手を叩いて鳥を飛び立たせた。

(「ねえ、このばしょはかみさまがつくったの?」)

「ねえ、この場所は神様が作ったの?」

(「もちろんそうだ」おとこはこのよそうしないしつもんにちょっとおどろいていった。)

「もちろんそうだ」男はこの予想しない質問にちょっと驚いて言った。

(「いりのいもみずーりもかみさまがつくったんでしょ」しょうじょはつづけた。)

「イリノイもミズーリも神様が作ったんでしょ」少女は続けた。

(「このへんはだれかほかのひとがつくったとおもうわ。)

「この辺は誰か他の人が作ったと思うわ。

(あまりうまくできてないから。みずときをつくりわすれているわ」)

あまり上手く出来てないから。水と木を作り忘れているわ」

(「どんなおいのりをささげようか?」おとこはおずおずとたずねた。)

「どんなお祈りを捧げようか?」男はおずおずと尋ねた。

(「まだよるじゃないわよ」しょうじょはこたえた。)

「まだ夜じゃないわよ」少女は答えた。

(「かまわんさ。そんなにきそくてきじゃなくても、かみさまはきにしないよ。)

「構わんさ。そんなに規則的じゃなくても、神様は気にしないよ。

(やくそくする。そうげんにいたころにまいばん、)

約束する。草原にいた頃に毎晩、

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