『怪人二十面相』江戸川乱歩34

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(あけちはゆかいそうにおおわらいをしながら、)

明智は愉快そうに大笑いをしながら、

(れいのせんえんさつをにじゅうめんそうのめんぜんでに、さんどひらひら)

例の千円札を二十面相の面前で二、三度ヒラヒラ

(させてから、それをあいてのてににぎらせると、)

させてから、それを相手の手に握らせると、

(「ではさようなら。いずれちかいうちに」といったかと)

「ではさようなら。いずれ近いうちに」と言ったかと

(おもうと、くるっとむきをかえて、なんのみれんもなく、)

思うと、クルッと向きをかえて、何の未練もなく、

(あとをみずにたちさってしまいました。つじのしは)

あとを見ずに立ち去ってしまいました。 辻野氏は

(せんえんさつをにぎったままあっけにとられて、めいたんていの)

千円札を握ったまま呆気にとられて、名探偵の

(うしろすがたをみおくっていましたが、「ちぇ」と、)

後ろ姿を見送っていましたが、「チェ」と、

(いまいましそうにしたうちすると、そこにまたせてあった)

忌々しそうに舌打ちすると、そこに待たせてあった

(じどうしゃをよぶのでした。このようにしてめいたんていと)

自動車を呼ぶのでした。 このようにして名探偵と

(だいとうぞくのしょたいめんのこてしらべは、みごとにたんていのしょうりに)

大盗賊の初対面の小手調べは、見事に探偵の勝利に

(おわりました。ぞくにしてみれば、いつでも)

終わりました。賊にしてみれば、いつでも

(つかまえようとおもえばつかまえられるのを、そのまま)

捕まえようと思えば捕まえられるのを、そのまま

(みのがしてもらったのですから、にじゅうめんそうのなに)

見逃してもらったのですから、二十面相の名に

(かけて、これほどのちじょくはないのです。)

かけて、これほどの恥辱はないのです。

(「このしかえしは、きっとしてやるぞ」かれは、あけちの)

「この仕返しは、きっとしてやるぞ」彼は、明智の

(うしろすがたににぎりこぶしをふるって、おもわずのろいの)

後ろ姿に握りこぶしをふるって、思わず呪いの

(ことばをつぶやかないではいられませんでした。)

言葉をつぶやかないではいられませんでした。

(「にじゅうめんそうのたいほ」)

「二十面相の逮捕」

(「あ、あけちさん、いまあなたをおたずねするところ)

「あ、明智さん、今あなたをおたずねするところ

など

(でした。あいつは、どこにいますか」あけちたんていは、)

でした。あいつは、どこに居ますか」 明智探偵は、

(てつどうほてるからごじゅうめーとるもあるいたか)

鉄道ホテルから五十メートルも歩いたか

(あるかないかに、とつぜんよびとめられて、)

歩かないかに、とつぜん呼び止められて、

(たちどまらなければなりませんでした。「ああ、)

立ち止まらなければなりませんでした。「ああ、

(いまにしくん」それは、けいしちょうそうさかきんむのいまにしけいじ)

今西君」それは、警視庁捜査課勤務の今西刑事

(でした。「ごあいさつはあとにして、つじのと)

でした。「ごあいさつはあとにして、辻野と

(じしょうするおとこはどうしました。まさか、にがして)

自称する男はどうしました。まさか、逃がして

(おしまいになったのじゃありませんよね」)

おしまいになったのじゃありませんよね」

(「きみは、どうしてそれをしっているんです」)

「きみは、どうしてそれを知っているんです」

(「こばやしくんがぷらっとほーむでへんなことをしている)

「小林君がプラットホームで変なことをしている

(のをみつけたのです。あのこどもは、じつにごうじょうです)

のを見つけたのです。あの子どもは、実に強情です

(ねえ。いくらたずねても、なかなかいわないのです。)

ねえ。いくらたずねても、なかなか言わないのです。

(しかし、てをかえしなをかえて、とうとうはくじょうさせて)

しかし、手をかえ品をかえて、とうとう白状させて

(しまいましたよ。あなたが、がいむしょうのつじのというおとこと)

しまいましたよ。あなたが、外務省の辻野という男と

(いっしょにてつどうほてるへはいられたこと、そのつじのが)

一緒に鉄道ホテルへ入られたこと、その辻野が

(どうやらにじゅうめんそうのへんそうらしいことなどをね。)

どうやら二十面相の変装らしいことなどをね。

(さっそくがいむしょうへでんわをかけてみましたが、)

さっそく外務省へ電話をかけてみましたが、

(つじのさんはちゃんとしょうにいるんです。そいつは)

辻野さんはちゃんと省に居るんです。そいつは

(にせものにちがいありません。そこで、あなたにおうえんする)

偽者に違いありません。そこで、あなたに応援する

(ために、かけつけてきたというわけですよ」)

ために、駆けつけてきたという訳ですよ」

(「それはごくろうさま。だが、あのおとこはもうかえって)

「それはご苦労さま。だが、あの男はもう帰って

(しまいましたよ」「え、かえってしまったのか。)

しまいましたよ」「え、帰ってしまったのか。

(それじゃ、そいつはにじゅうめんそうではなかった)

それじゃ、そいつは二十面相ではなかった

(のですか」「にじゅうめんそうでした。なかなかおもしろいおとこ)

のですか」「二十面相でした。なかなか面白い男

(ですねえ」「あけちさん、あなたはなにをいって)

ですねえ」「明智さん、あなたは何を言って

(いるんです。にじゅうめんそうとわかっていながら、)

いるんです。二十面相と分かっていながら、

(けいさつへしらせもしないで、にがしてやったと)

警察へ知らせもしないで、逃がしてやったと

(おっしゃるのですか」いまにしけいじはあまりのことに、)

おっしゃるのですか」 今西刑事はあまりのことに、

(あけちたんていのしょうきをうたがいたくなるほどでした。)

明智探偵の正気を疑いたくなるほどでした。

(「ぼくにすこしかんがえがあるのです」あけちは、すまして)

「ぼくに少し考えがあるのです」 明智は、すまして

(こたえます。「かんがえがあるといって、そういうことを)

答えます。「考えがあると言って、そういうことを

(いちこじんのあなたが、かってにきめてはこまりますね。)

一個人のあなたが、勝手に決めては困りますね。

(いずれにしても、ぞくとわかっていながらにがすという)

いずれにしても、賊と分かっていながら逃がすという

(てはありません。ぼくはしょくむとして、やつをついせきしない)

手はありません。ぼくは職務として、奴を追跡しない

(わけにはいきません。やつはどちらへいきましたか。)

訳にはいきません。奴はどちらへ行きましたか。

(じどうしゃでしょうね」けいじは、みんかんたんていのどくだんの)

自動車でしょうね」 刑事は、民間探偵の独断の

(しょちに、しきりとふんがいしています。「きみがついせきする)

処置に、しきりと憤慨しています。「きみが追跡する

(というなら、それはじゆうですが、おそらくむだ)

と言うなら、それは自由ですが、恐らく無駄

(でしょうよ」「あなたのさしずはうけません。)

でしょうよ」「あなたの指図は受けません。

(ほてるへいってじどうしゃばんごうをしらべて、てはいします」)

ホテルへ行って自動車番号を調べて、手配します」

(「ああ、くるまのばんごうなら、ほてるへいかなくても、)

「ああ、車の番号なら、ホテルへ行かなくても、

(ぼくがしってますよ。いちまんさんぜんはっぴゃくはちじゅうななばんです」)

ぼくが知ってますよ。一万三千八百八十七番です」

(「え、あなたはくるまのばんごうまでしっているんですか。)

「え、あなたは車の番号まで知っているんですか。

(そして、あとをおおうともなさらないのですか」)

そして、あとを追おうともなさらないのですか」

(けいじはふたたびあっけにとられてしまいましたが、)

刑事は再び呆気にとられてしまいましたが、

(いっこくをあらそうこのさい、むえきなもんどうをつづけている)

一刻を争うこの際、無益な問答を続けている

(わけにはいきません。ばんごうをてちょうにかきとめると、)

訳にはいきません。番号を手帳に書きとめると、

(すぐまえにあるこうばんへ、とぶようにはしっていきました。)

すぐ前にある交番へ、飛ぶように走って行きました。

(けいさつでんわによって、このことがとないのかくけいさつしょや)

警察電話によって、このことが都内の各警察署や

(こうばんに、またたくうちにつたえられました。)

交番に、またたくうちに伝えられました。

(「いちまんさんぜんはっぴゃくはちじゅうななばんをつかまえよ。そのくるまに、)

「一万三千八百八十七番を捕まえよ。その車に、

(にじゅうめんそうががいむしょうのつじのしにばけてのっているのだ」)

二十面相が外務省の辻野氏に化けて乗っているのだ」

(このめいれいが、とうきょうぜんとのおまわりさんのこころを)

この命令が、東京全都のお巡りさんの心を

(どれほどおどらせたことでしょう。われこそは)

どれほど躍らせたことでしょう。我こそは

(そのじどうしゃをつかまえて、ぞくたいほのめいよをになわん)

その自動車を捕まえて、賊逮捕の名誉をになわん

(ものと、こうばんというこうばんのけいかんがちゅういぶかくみる)

ものと、交番という交番の警官が注意深く見る

(ようにし、てきをまちかまえたことは、もうすまでも)

ようにし、敵を待ち構えたことは、申すまでも

(ありません。かいとうがほてるをしゅっぱつしてから)

ありません。 怪盗がホテルを出発してから

(にじゅっぷんもしたころ、こううんにもいちまんさんぜんはっぴゃくはちじゅうななばんの)

二十分もした頃、幸運にも一万三千八百八十七番の

(じどうしゃをはっけんしたのは、しんじゅくくとつかまちのこうばんにきんむ)

自動車を発見したのは、新宿区戸塚まちの交番に勤務

(しているひとりのけいかんでした。それはまだわかくて、)

している一人の警官でした。 それはまだ若くて、

(ゆうきにとんだおまわりさんでしたが、こうばんのまえを)

勇気に富んだお巡りさんでしたが、交番の前を

(きていいじょうのはやさで、やのようにはしりぬけたいちだいの)

規定以上の速さで、矢のように走り抜けた一台の

(じどうしゃをひょいとみると、そのばんごうが)

自動車をヒョイと見ると、その番号が

(いちまんさんぜんはっぴゃくはちじゅうななばんだったのです。)

一万三千八百八十七番だったのです。

(わかいおまわりさんははっとして、おもわずむしゃぶるいを)

若いお巡りさんはハッとして、思わず武者震いを

(しました。そして、そのあとからはしってくるくうしゃを)

しました。そして、そのあとから走ってくる空車を

(よびとめるなりとびのって、「あのくるまだ、あのくるまに)

呼び留めるなり飛び乗って、「あの車だ、あの車に

(ゆうめいなにじゅうめんそうがのっているんだ。はしってくれ。)

有名な二十面相が乗っているんだ。走ってくれ。

(すぴーどはいくらだしてもかまわん、えんじんが)

スピードはいくら出しても構わん、エンジンが

(はれつするまではしってくれ」とさけぶのでした。しあわせと、)

破裂するまで走ってくれ」と叫ぶのでした。 幸せと、

(そのじどうしゃのうんてんしゅがまた、きのきいたわかものでした。)

その自動車の運転手がまた、気の利いた若者でした。

(くるまはあたらしく、えんじんにもうしぶんはありません。)

車は新しく、エンジンに申し分はありません。

(はしるはしる、まるでてっぽうだまみたいにはしりだしたのです。)

走る走る、まるで鉄砲玉みたいに走りだしたのです。

(あくまのようにしっそうするにだいのじどうしゃは、みちいくひとの)

悪魔のように疾走する二台の自動車は、道行く人の

(めをみはらせないではおきませんでした。みれば)

目を見張らせないではおきませんでした。 見れば

(うしろのくるまには、ひとりのおまわりさんが)

後ろの車には、一人のお巡りさんが

(へっぴりごしになって、いっしんふらんにぜんぽうをみつめ、)

へっぴり腰になって、一心不乱に前方を見つめ、

(なにかおおごえにわめいているではありませんか。)

なにか大声にわめいているではありませんか。

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