魚のような顔

背景
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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。

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問題文

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(ああ、なつがおわるまえにすべてのはなしをかいてしまいたい。)

ああ、夏が終わる前にすべての話を書いてしまいたい。

(もうかかないといったきがするが、そうしておわりたい。)

もう書かないといった気がするが、そうして終わりたい。

(おれいろいろやばいことしたし、やばいところにもいったんだけどさいわい、)

俺色々ヤバイことしたし、ヤバイ所にも行ったんだけど幸い、

(とりつかれるなんてことはなかった。いちどだけのぞけば。)

とり憑かれるなんてことはなかった。一度だけ除けば。

(だいがくいちねんのあきごろ、さーくるのなかまとこっくりさんをやった。)

大学1年の秋ごろ、サークルの仲間とこっくりさんをやった。

(おれのげしゅくで。それもほんかくてきなやつ。)

俺の下宿で。それも本格的なやつ。

(おれにはさーくるのせんぱいでおかるとどうのししょうがいたのだが、かれがしっていた)

俺にはサークルの先輩でオカルト道の師匠がいたのだが、彼が知っていた

(やりかたで、はんしにすみであいうえおをかくんだけど、)

やり方で、半紙に墨であいうえおを書くんだけど、

(そのすみにさんかしゃのつばをまぜる。あと、とりいのそばにおくさけもふつかまえから)

その墨に参加者のツバをまぜる。あと、鳥居のそばに置く酒も2日前から

(なわをはってきよめたやつ。いつもはかるいきもちでやるんだけど、)

縄を張って清めたやつ。いつもは軽い気持ちでやるんだけど、

(ししょうがはいるだけでふんいきがちがってみんなしんみょうになっていた。はじめてじゅっぷんくらい)

師匠が入るだけで雰囲気が違ってみんな神妙になっていた。始めて10分くらい

(してなんのまえぶれもなくへやのかべからしろいふくのおとこがでてきた。)

してなんの前触れもなく部屋の壁から白い服の男がでてきた。

(あおじろいかおをしてむひょうじょうなんだけど、せつめいしにくいが「さかな」のようなかおだった。)

青白い顔をして無表情なんだけど、説明しにくいが「魚」のような顔だった。

(おれはかたまったが、ほかのれんちゅうはきづいていない。こっくりさんこっくりさんと)

俺は固まったが、他の連中は気付いていない。こっくりさん こっくりさんと

(つづけていると、おとこはこっちをじっとみていたがやがてまたかべにきえていった。)

続けていると、男はこっちをじっと見ていたがやがてまた壁に消えていった。

(きえるまえにめがねをずらしてみてみたが、りんかくはぼやけなかった。)

消える前にメガネをずらして見てみたが、輪郭はぼやけなかった。

(なんでそうなるのかしらないが、このよのものでないものはらがん、)

なんでそうなるのか知らないが、この世のものでないものは裸眼、

(こんたくとかんけいないみえかたをする。ないしんどきどきしながらも)

コンタクト関係ない見え方をする。内心ドキドキしながらも

(こっくりさんはぶじしゅうりょうし、かいさんになった。かえるまぎわにししょうに)

こっくりさんは無事終了し、解散になった。帰る間際に師匠に

(「あれ、なんですか」ときいた。)

「あれ、なんですか」と聞いた。

など

(おれにみえてししょうがみえてないなんてことはなかったから。)

俺に見えて師匠が見えてないなんてことはなかったから。

(しかし「わからん」のひとことだった。)

しかし「わからん」の一言だった。

(そのつぎのひからきみょうなことがおれのへやでおこりはじめた。)

その次の日から奇妙なことが俺の部屋で起こりはじめた。

(らっぷおんくらいならたえられたんだけど、こわいのはよるげーむとかしていて)

ラップ音くらいなら耐えられたんだけど、怖いのは夜ゲームとかしていて

(なにのきもなくふりかえるとべっとのもうふがひとのかたちにもりあがっていることが)

何の気もなく振りかえるとベットの毛布が人の形に盛りあがっていることが

(なんどもあった。それをみてびくっとすると、すぐにすぅっともうふはもとにもどる。)

何度もあった。それを見てビクッとすると、すぐにすぅっと毛布はもとに戻る。

(ほかにはみみなりがしてまどのそとをみると、だいたいあのさかなおとこがすっと)

ほかには耳鳴りがして窓の外を見ると、だいたいあの魚男がスっと

(とおるところだったりした。みえるだけならまだいいが、)

通るところだったりした。見えるだけならまだいいが、

(もうふがじっさいにうごいているのはせいしんてきにきつかった。)

毛布が実際に動いているのは精神的にきつかった。

(もうげっそりしてししょうになきついた。)

もうゲッソリして師匠に泣きついた。

(しかしししょうがいうには、あれはひとのれいじゃないと。ひとのれいならなにがしたいのか、)

しかし師匠がいうには、あれは人の霊じゃないと。人の霊なら何がしたいのか、

(なにをおもっているのかだいたいわかるがあれはわからない。)

何を思っているのか大体わかるがあれはわからない。

(たんじゅんなどうぶつれいともちがう。いったいなんなのか、しょうたいというとへんなかんじだが)

単純な動物霊とも違う。一体なんなのか、正体というと変な感じだが

(とにかくまったくなにもわからないそうだ。ときどきそういうものがいるそうだが、)

とにかくまったく何もわからないそうだ。時々そういうものがいるそうだが、

(ぜったいにちかよりたくないという。たよりにしているししょうがそういうのである。)

絶対に近寄りたくないという。頼りにしている師匠がそう言うのである。

(こっちはいきたここちがしなかった。こっくりさんでよんでしまった)

こっちは生きた心地がしなかった。こっくりさんで呼んでしまった

(としかかんがえられないから、またやればなんとかなるかとおもったけど、)

としか考えられないから、またやればなんとかなるかと思ったけど、

(「それはやめとけ」とししょう。けっきょくはんつきほどなやまされた。)

「それはやめとけ」と師匠。結局半月ほど悩まされた。

(ときどきみえるさかなおとこはうらめしいかんじでもなく、しいていえばきょうみほんいの)

時々見える魚男はうらめしい感じでもなく、しいて言えば興味本意の

(ようなあくいをかんじたが、それもどうだかわからない。)

ような悪意を感じたが、それもどうだかわからない。

(ひとがたのもうふもきつかったが、)

人型の毛布もきつかったが、

(よるしめたどあのかぎがあさになるとあいているのもかんべんしてほしかった。)

夜締めたドアの鍵が朝になると開いているのも勘弁して欲しかった。

(よなかふとめがさめると、くらやみのなかでどあのぶをにぎっていたことがあった。)

夜中ふと目が覚めると、暗闇の中でドアノブを握っていたことがあった。

(じぶんであけていたらしい。これはもうのいろーぜだとおもって、)

自分で開けていたらしい。これはもうノイローゼだと思って、

(へやをひっこそうとかんがえてたとき、ししょうがふらっとやってきた。)

部屋を引っ越そうと考えてた時、師匠がふらっとやってきた。

(みっかほどとめろという。そのあいだ、なぜかいちどもさかなおとこはでずかいげんしょうもなかった。)

3日ほど泊めろという。その間、なぜか一度も魚男は出ず怪現象もなかった。

(かえるとき「たぶんもうでない」といわれた。そしてやたらとためいきをつく。)

帰るとき「たぶんもう出ない」といわれた。そしてやたらと溜息をつく。

(からだがおもそうだった。なにがどうなってるんですか、ときくと)

体が重そうだった。何がどうなってるんですか、と聞くと

(しぶしぶおしえてくれた。)

しぶしぶ教えてくれた。

(「まるまるやまのどうそじんっての、あるだろ」けっこうゆうめいなしんれいすぽっとだった。)

「○○山の隠れ道祖神っての、あるだろ」結構有名な心霊スポットだった。

(かなりやばいところらしい。うなずくと、「あれ、ぶっこわしてきた」)

かなりヤバイところらしい。うなずくと、「あれ、ぶっこわしてきた」

(ぜっくした。もっとやばいのがついてるひとがきたからさかなおとこはきえたらしい。)

絶句した。もっとヤバイのが憑いてる人が来たから魚男は消えたらしい。

(はんぶんやけくそぎみでついでにおれのもんだいをかいけつしてくれたという。)

半分やけくそ気味でついでに俺の問題を解決してくれたという。

(なんでそんなものこわしたのかはおしえてくれなかった。)

なんでそんなもの壊したのかは教えてくれなかった。

(ししょうは「まあこっちはなんとかする」といってちからなくわらった。)

師匠は「まあこっちはなんとかする」と言って力なく笑った。

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