病院-2-
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | daifuku | 3785 | D++ | 4.0 | 93.9% | 810.7 | 3280 | 211 | 60 | 2024/10/19 |
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問題文
(そして、いまめがあけられないのは、そこにそのひとがいるからだった。)
そして、いま目が開けられないのは、そこにその人がいるからだった。
(そのころはいようにれいかんがたかまっていたじきで、けっしてのぞんでいる)
その頃は異様に霊感が高まっていた時期で、けっして望んでいる
(わけでもないのに、しんだひとがみえてしまうことがよくあった。)
わけでもないのに、死んだ人が見えてしまうことがよくあった。
(こうこうじだいまではそれほどでもなかったのに、だいがくにはいってから)
高校時代まではそれほどでもなかったのに、大学に入ってから
(れいかんのつよいひとにちかづきすぎたせいだろうか。)
霊感の強い人に近づきすぎたせいだろうか。
(「じゃあ、これでしつれいします。おつかれさまでした」)
「じゃあ、これで失礼します。お疲れ様でした」
(なーすがかえりじたくをするのをおとだけできいていた。)
ナースが帰り支度をするのを音だけで聞いていた。
(そしてはえがうなっているようなみみなりがさるのをじっとまった。)
そして蝿が唸っているような耳鳴りが去るのをじっと待った。
(ふたつのけはいがどあをぬけてろうかへきえていった。)
二つの気配がドアを抜けて廊下へ消えていった。
(おれはようやくふかいいきをはくと、あせをぬぐった。)
俺はようやく深い息を吐くと、汗を拭った。
(たぶんさっきのは、とりついたというわけでもないのだろう。)
たぶんさっきのは、とり憑いたというわけでもないのだろう。
(ただ「のこっている」だけだ。あしたにはもうつれてくることはないだろう。)
ただ「残っている」だけだ。明日にはもう連れて来ることはないだろう。
(おれは、ここに「のこらなかった」ことをしんそこあんどしていた。)
俺は、ここに「残らなかった」ことを心底安堵していた。
(そのひもよるおそくまでざんぎょうしなければならなかったから。)
その日も夜遅くまで残業しなければならなかったから。
(そのつぎのひ。もうしゅうぎょうまぢかというころ。)
その次の日。もう終業間近という頃。
(ふきんしんなきがして、しんだひとのことをあれこれきけないでいると、)
不謹慎な気がして、死んだ人のことをあれこれ聞けないでいると、
(しょちょうのほうからはなしかけてきた。「あなたみえるんでしょう」どきっとした。)
所長の方から話しかけてきた。「あなた見えるんでしょう」ドキっとした。
(じむしょにはおれとしょちょうしかいなかった。)
事務所には俺と所長しかいなかった。
(「わたしはね、みえるわけじゃないけど、そこにいるってことはかんじる」)
「私はね、見えるわけじゃないけど、そこにいるってことは感じる」
(しょちょうはやさしいこえでいった。そういえば、このひとはあのししょうの)
所長は優しい声で言った。そういえば、この人はあの師匠の
(しりあいなのだった。「じゃあ、きのうてをあわせていたのは」)
知り合いなのだった。「じゃあ、昨日手を合わせていたのは」
(「ええ。でもあれはいつでもするわたしのくせね」)
「ええ。でもあれはいつでもする私の癖ね」
(そういってそっとてをあわせるしぐさをした。)
そう言ってそっと手を合わせる仕草をした。
(おれはまずいかなとおもいつつも、どうしてもききたかったことをくちにした。)
俺は不味いかなと思いつつも、どうしても聞きたかったことを口にした。
(「あの、よなかにひとのいないべっどからなーすこーるがなるって、)
「あの、夜中に人のいないベッドからナースコールが鳴るって、
(ほんとうにあったんですか」しょちょうはためいきをついたあと、こたえてくれた。)
本当にあったんですか」所長は溜息をついたあと、答えてくれた。
(「あった。なかまからもきいたし。わたしじしんもなんどもあるわ。)
「あった。仲間からも聞いたし。私自身も何度もあるわ。
(でもそのすべてがおかしいわけでもないとおもう。けいきのせっしょくふりょうで)
でもそのすべてがおかしいわけでもないと思う。計器の接触不良で
(なってしまうこともたしかにあったから。でもすべてが)
鳴ってしまうことも確かにあったから。でもすべてが
(こしょうというわけでもないのもたしかね」「じゃ、じゃあこれは?」)
故障というわけでもないのも確かね」「じゃ、じゃあこれは?」
(としょちょうのくちがとじてしまわないうちにおれはいままでにきいたうわさばなしをあげていった。)
と所長の口が閉じてしまわないうちに俺は今までに聞いた噂話をあげていった。
(しょちょうはくしょうしながらも、いちいち「それはちがうわね」「それはあるとおもう」)
所長は苦笑しながらも、一々「それは違うわね」「それはあると思う」
(とていねいにこたえてくれた。)
と丁寧に答えてくれた。
(いまかんがえれば、こんなきょうみほんいなだけのげせわでしつれいなしつもんを)
今考えれば、こんな興味本位なだけの下世話で失礼な質問を
(よくならべられたものだとおもう。しかしたぶんしょちょうは、ししょうからおれを)
よく並べられたものだと思う。しかしたぶん所長は、師匠から俺を
(しょうかいされたとき、なにかししょうにふくめられていたのではないだろうか。)
紹介された時、なにか師匠に含められていたのではないだろうか。
(ところが、あるしつもんをしたときにしょちょうのこわいろがかわった。)
ところが、ある質問をしたときに所長の声色が変わった。
(「それはだれからきいたの?」おれはおどろいておもわず「すみません」と)
「それは誰から聞いたの?」俺は驚いて思わず「済みません」と
(あやまってしまった。「あやまることはないけど、だれがそんなことをいったの」)
謝ってしまった。「謝ることはないけど、誰がそんなことを言ったの」
(しょちょうにつよいくちょうでそういわれたけれど、おれはこたえられなかった。)
所長に強い口調でそう言われたけれど、俺は答えられなかった。
(どんなしつもんだったのか、はっきりおもいだせないのだが、)
どんな質問だったのか、はっきり思い出せないのだが、
(このびょうとうにかんするかいきじみたうわさばなしだったことはたしかだ。)
この病棟に関する怪奇じみた噂話だったことは確かだ。
(ふしぎなことに、そのほうもんかんごすてーしょんのばいとをやめてすぐに、)
不思議なことに、その訪問看護ステーションのバイトを止めてすぐに、
(このうわさについてのきおくがさだかでなくなった。)
この噂についての記憶が定かでなくなった。
(だがそのときははっきりおぼえていたはずなのだ。)
だがその時ははっきり覚えていたはずなのだ。
(ついさっきじぶんでしたしつもんなのだからあたりまえであるが。)
ついさっき自分でした質問なのだから当たり前であるが。
(しかしだれからそのうわさをきいたのかはそのときもおもいだせなかった。)
しかし誰からその噂を聞いたのかはその時も思い出せなかった。
(なーすのだれかだったか。それともptか、otか。びょういんのしょくいんか・・・・・・)
ナースの誰かだったか。それともPTか、OTか。病院の職員か・・・・・・
(しょちょうは、おだやかではあるがつよいくちょうで「わすれなさい」というとかえりじたくを)
所長は、穏やかではあるが強い口調で「忘れなさい」と言うと帰り支度を
(はじめた。おれはひとりのこされたじむしょで、いよいよせっぱつまったれせぷとせいきゅうの)
始めた。俺は一人残された事務所で、いよいよ切羽詰ったレセプト請求の
(しあげとかくとうしなければならなかった。)
仕上げと格闘しなければならなかった。
(やたらとうきあしだってしまったこころのままで。)
やたらと浮き足立ってしまった心のままで。
(なきそうになりながら、へらないしょるいのやまにむかってひたすらてをうごかす。)
泣きそうになりながら、減らない書類の山に向かってひたすら手を動かす。
(よるぜみもなきやんだしずけさのなかでひとり、なにかとてもおそろしい)
夜蝉も鳴き止んだ静けさの中で一人、なにかとても恐ろしい
(げんそうがやってくるのをひっしでふりはらっていた。)
幻想がやってくるのを必死で振り払っていた。
(よりによって、つぎのひは10にちのしめきりだった。)
よりによって、次の日は10日の締め切りだった。
(どんなにおそくなってもれせぷとをおわらせなくてはならない。)
どんなに遅くなってもレセプトを終わらせなくてはならない。
(ちっちっちっというとけいのおとだけがへやにみちて、おれはそのたんしんのいちを)
チッチッチッという時計の音だけが部屋に満ちて、俺はその短針の位置を
(かくにんするのがこわかった。たぶんひづけかわってるなぁ、とおもいながら)
確認するのが怖かった。多分日付変わってるなぁ、と思いながら
(だんだんのうみそのはたらきがにぶくなっていくのをかんじていた。)
段々脳みその働きが鈍くなっていくのを感じていた。