黒い手-3-

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プレイ回数442難易度(4.5) 3699打 長文 長文モード推奨
師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 YUNICO 7804 8.1 96.2% 463.7 3765 146 67 2024/09/16
2 tetsumi 5240 B+ 5.3 97.4% 707.2 3806 100 67 2024/09/16
3 じゅん 3990 D++ 4.2 94.4% 865.4 3670 217 67 2024/09/17

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問題文

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(くろいてにであえたらねがいがかなう)

黒い手に出会えたら願いがかなう

(そのためにはくろいてをいっしゅうかんもっていないといけない)

そのためには黒い手を1週間持っていないといけない

(たとえどんなことがあってもしんじてないなら、もっていてもいいはずだ。)

たとえどんなことがあっても信じてないなら、持っていてもいいはずだ。

(あとたったいちにちなんだから。それでなにもおきなければ、)

あとたった1日なんだから。それでなにも起きなければ、

(「やっぱあれ、ただのうわさだった」といえるのだから。)

「やっぱあれ、ただの噂だった」と言えるのだから。

(しんじているなら、もっていなければならないはずだ。)

信じているなら、持っていなければならないはずだ。

(あとたったいちにちなんだから。それでねがいがかなうなら。)

あとたった1日なんだから。それで願いがかなうなら。

(どうしてあとたったのいちにち、もっていられなかったんだろう。)

どうしてあとたったの1日、持っていられなかったんだろう。

(あたまのなかに、はこをもったぼくをふぁみれすのがらすごしに)

頭の中に、箱を持った僕をファミレスのガラス越しに

(じっとみていたおんきょうのすがたがうかぶ。とうじそんなじゃんるのそんざいすら)

じっと見ていた音響の姿が浮かぶ。当時そんなジャンルの存在すら

(しらなかったごしっくろりーたちょうのかっこうで、たしかにこっちをみていた。)

知らなかったゴシックロリータ調の格好で、確かにこっちを見ていた。

(そのにんぎょうのようなかおが、ふあんげに。ただのまねきんのうでなのに。)

その人形のような顔が、不安げに。ただのマネキンの腕なのに。

(ぼくはしらずしらずのうちにさわっていたみぎほおに、ぎくりとする。)

僕は知らず知らずのうちに触っていた右頬に、ギクリとする。

(わすれそうになっていたが、さっきのつめたいてのかんかくはなんなのだ。)

忘れそうになっていたが、さっきの冷たい手の感覚はなんなのだ。

(ふりかえると、はこはてーぶるのうえにあった。くろいてははこのなかに、そしてふたのしたに。)

振り返ると、箱はテーブルの上にあった。黒い手は箱の中に、そして蓋の下に。

(いっしゅんびくっとする。ぼくはぞくぞくしながらおもいだそうとする。)

一瞬びくっとする。僕はゾクゾクしながら思い出そうとする。

(「ほうりだした」というのはもちろんれとりっくで、てきとうにおいた)

「放り出した」というのはもちろんレトリックで、適当に置いた

(というのがただしいのだが、ぼくははたしてくろいてをはこにもどしたのだったか。)

というのが正しいのだが、僕は果たして黒い手を箱に戻したのだったか。

(はこはぴっちりとふたがされて、あたりまえのようにてーぶるに)

箱はぴっちりと蓋がされて、当たり前のようにテーブルに

(よこたわっている。おもいだせない。むいしきに、ふたをしたのかもしれない。)

横たわっている。思い出せない。無意識に、蓋をしたのかも知れない。

など

(でもたしかなことは、ぼくにはもうあのふたをあけられないということだ。)

でも確かなことは、僕にはもうあの蓋を開けられないということだ。

(じょじょにつめたさがうすれかけているほおをなでながらなまつばをのんだ。)

徐々に冷たさが薄れかけている頬を撫でながら生唾を飲んだ。

(ごかっけいとごほんのぼう。いっぽんだけふとくてごかっけいのへんひとつにまるまるめんしている。)

5角形と5本の棒。1本だけ太くて5角形の辺1つに丸々面している。

(おやゆびのいちがわかればどっちかくらいはわかる。)

親指の位置が分かればどっちかくらいは分かる。

(そのほおのつめたいぶぶんはみぎてのかたちをしていた。つぎのひ、つまりいつかめ。)

その頬の冷たい部分は右手の形をしていた。次の日、つまり5日目。

(ぼくはししょうのいえへむかった。おんきょうはいつかめめまではもっていた。)

僕は師匠の家へ向かった。音響は5日目までは持っていた。

(せいかくにはむいかめまでだが、すくなくともいつかめまではもっていられた。)

正確には6日目までだが、少なくとも5日目までは持っていられた。

(ぼくはこれからおこることがおそろしかった。)

僕はこれから起こることが恐ろしかった。

(たぶん、はこのいちがかわったり、ほおをなでられたりといったことは)

多分、箱の位置が変わったり、頬を撫でられたりといったことは

(もじどおりさわりにすぎないのではないかというよかんがする。)

文字通り触りに過ぎないのではないかという予感がする。

(こんなものはあのひとにおしつけるにかぎる。)

こんなものはあの人に押し付けるに限る。

(ししょうのげしゅくのどあをのっくすると、「あいてるよ」という)

師匠の下宿のドアをノックすると、「開いてるよ」という

(まのぬけたこえがしたので「しってますよ」といいながらはこをもって)

間の抜けた声がしたので「知ってますよ」と言いながら箱を持って

(なかにはいる。あぐらをくんでひげをぬいていたししょうが、こちらをふりむいた。)

中に入る。胡坐を組んでひげを抜いていた師匠が、こちらを振り向いた。

(「かえせよ」え?なにをいわれたかよくわからなくてききかえすと、)

「かえせよ」え?何を言われたかよくわからなくて聞き返すと、

(ししょうは「おれいまなにかいったか?」とぎゃくにきいてくる。)

師匠は「俺いまなにか言ったか?」と逆に聞いてくる。

(よくわからないが、とりあえずくろいてのはいったはこをししょうのまえにおく。)

よくわからないが、とりあえず黒い手の入った箱を師匠の前に置く。

(なにもいわないでいると、ししょうは「はは~ん」とわざとらしくつぶやいた。)

なにも言わないでいると、師匠は「はは~ん」とわざとらしく呟いた。

(「これかぁ」さすがししょう。かんがするどい。しかしつづけてよそうがいのことをいう。)

「これかぁ」さすが師匠。勘が鋭い。しかし続けて予想外のことを言う。

(「おれのかのじょが、「にげろ」っていってたんだが、このことか」)

「俺の彼女が、『逃げろ』って言ってたんだが、このことか」

(そのときはなんのことかわからなかったが、あとにしるししょうのかのじょはいじょうにかんが)

その時はなんのことかわからなかったが、後に知る師匠の彼女は異常に勘が

(するどいへんなひとだった。「で、なにこれ」というので、いちからせつめいをした。)

鋭い変な人だった。「で、なにこれ」と言うので、一から説明をした。

(なにもかくさずに。ふつうはかくすからこそつぎのひとにわたせるのだろう。)

なにも隠さずに。普通は隠すからこそ次の人に渡せるのだろう。

(しかしこのひとだけはかくさないほうが、うけとってくれるかのうせいがたかいのだった。)

しかしこの人だけは隠さないほうが、受け取ってくれる可能性が高いのだった。

(ところがここまでのことをぜんぶはなしおえると、ししょうはいった。)

ところがここまでのことを全部話し終えると、師匠は言った。

(「おれ、にげていい?」そしてこしをうかしかけた。)

「俺、逃げていい?」そして腰を浮かしかけた。

(ぼくはあせって「ちょっと、ちょっとまってください」ととめにはいる。)

僕は焦って「ちょっと、ちょっと待ってください」と止めに入る。

(このひとにまでみすてられたら、ぼくはどうなってしまうのか。)

この人にまで見捨てられたら、僕はどうなってしまうのか。

(「だけどさぁ、これはやばすぎるぜ」)

「だけどさぁ、これはやばすぎるぜ」

(「おはらいでもなんでもして、なんとかしてくださいよ」)

「お払いでもなんでもして、なんとかしてくださいよ」

(「おれはぼうさんじゃないんだから・・・・・・」)

「俺は坊さんじゃないんだから・・・・・・」

(そんなもんどうのすえ、ししょうはようやく「わかった」といった。)

そんな問答の末、師匠はようやく「わかった」と言った。

(そして「もったいないなあ」といいながらおしいれにくびをつっこんで)

そして「もったいないなあ」と言いながら押入れに首をつっこんで

(ごそごそとさぐる。「おはらいなんてごたいそうなことはできんから、)

ゴソゴソと探る。「お払いなんてご大層なことはできんから、

(こうかがあるかどうかはほしょうしないし、あらりょうじだからなにかおこっても)

効果があるかどうかは保障しないし、荒療治だからなにか起こっても

(しらんぞ」そんなもったいぶったことをいいながら、てにはくちたなわが)

知らんぞ」そんなもったいぶったことを言いながら、手には朽ちた縄が

(にぎられていた。「それ、じんじゃとかでけっかいにつかうしめなわですか」と)

握られていた。「それ、神社とかで結界につかう注連縄ですか」と

(といかけるが、くびをふられた。「むしろぎゃく」)

問いかけるが、首を振られた。「むしろ逆」

(そういいながらししょうは、くろいてのおさまったはこをそのなわで)

そう言いながら師匠は、黒い手のおさまった箱をその縄で

(ぐるぐるとしばりはじめた。「ふじさんのふもとにはさぁ。じゅかいっていう、)

ぐるぐると縛り始めた。「富士山の麓にはさぁ。樹海っていう、

(じさつすぽっとていうかぞーんがあるだろ。そこでどうやって)

自殺スポットていうかゾーンがあるだろ。そこでどうやって

(しぬかっていったら、まあおおかたはくびつりだ。なんねんも、へたしたら)

死ぬかっていったら、まあ大方は首吊りだ。何年も、へたしたら

(なんじゅうねんもたってしたいがくびつりなわからおちて、のざらしになってるとそのまま)

何十年も経って死体が首吊り縄から落ちて、野ざらしになってるとそのまま

(ふうかしていこつもこなごなになってどっかいっちまうことがある。)

風化して遺骨もコナゴナになってどっかいっちまうことがある。

(でもなわだけは、ぶらぶらゆれてんだよ。いつまでたっても。)

でも縄だけは、ぶらぶら揺れてんだよ。いつまで経っても。

(これからくびをつろうってにんげんが、しっかりしたきのしっかりしたえだを)

これから首を吊ろうって人間が、しっかりした木のしっかりした枝を

(えらぶからだろうな」)

選ぶからだろうな」

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