『カラー』アンデルセン2【完】

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プレイ回数507難易度(4.4) 2581打 長文
見栄っぱりが、誰彼構わず結婚を申し込むと…
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

↓のURLからの続きですので、未プレイの方はプレイしてから
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問題文

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(こうして、とうとうからーは、おはらいばこになってしまいました。)

こうして、とうとうカラーは、お払い箱になってしまいました。

(「さてと、こうなったらくしにでもけっこんをもうしこむか。かわいいおじょうさん。)

「さてと、こうなったらクシにでも結婚を申しこむか。かわいいお嬢さん。

(あなたのはは、なんてきれいにならんでいるんでしょう」と、)

あなたの歯は、なんてきれいに並んでいるんでしょう」と、

(からーはいいました。「あなたは、いままでにこんやくということを)

カラーは言いました。「あなたは、今までに婚約ということを

(おかんがえになったことはありませんか」)

お考えになったことはありませんか」

(「もちろん、ありますわ」と、くしはいいました。)

「もちろん、ありますわ」と、クシは言いました。

(「だって、もう、くつぬぎさんとこんやくしているんですもの」)

「だって、もう、靴ぬぎさんと婚約しているんですもの」

(「こんやくしているって」と、からーはいいました。)

「婚約しているって」と、カラーは言いました。

(これでもう、けっこんをもうしこむあいては、ひとりもおりません。)

これでもう、結婚を申しこむ相手は、ひとりもおりません。

(そこでからーは、けっこんのことをけいべつするようになりました。)

そこでカラーは、結婚のことを軽蔑するようになりました。

(ながいねんげつがたちました。とうとうからーは、せいしこうじょうのはこのなかへ)

長い年月がたちました。とうとうカラーは、製糸工場の箱の中へ

(やってきました。そこにはぼろがたくさんあつまっていました。)

やってきました。そこにはボロがたくさん集まっていました。

(でも、じょうとうのものはじょうとうのもの、かとうのものはかとうのもの、というふうに、)

でも、上等のものは上等のもの、下等のものは下等のもの、という風に、

(べつべつにあつまっていました。みんなは、はなしをいっぱいもっていました。)

別々に集まっていました。みんなは、話をいっぱい持っていました。

(なかでもからーは、いちばんたくさんもっていました。)

なかでもカラーは、一番たくさん持っていました。

(なぜって、からーはとんでもないうそつきだったのです。)

なぜって、カラーはとんでもないウソつきだったのです。

(「ぼくには、こいびとがやまほどいたもんさ」と、からーはいいました。)

「ぼくには、恋人が山ほどいたもんさ」と、カラーは言いました。

(「おかげで、ぼくはおちつくこともできやしなかった。)

「おかげで、ぼくは落ち着くことも出来やしなかった。

(これでもぼくは、りっぱなしんしだったんだぜ。)

これでもぼくは、立派な紳士だったんだぜ。

(ちゃあんと、のりづけをしたしんしさ。)

ちゃあんと、のりづけをした紳士さ。

など

(それにぼくは、いちどもつかったことのない、くつぬぎとくしまでもっていたんだ。)

それにぼくは、一度も使ったことのない、靴ぬぎとクシまで持っていたんだ。

(あのころのぼくを、みんなにみせたかったなあ。)

あの頃のぼくを、みんなに見せたかったなあ。

(きちんとたたまれて、よこになっていた、あのころのぼくをさ。)

きちんとたたまれて、横になっていた、あの頃のぼくをさ。

(それはそうと、さいしょのこいびとのことは、わすれられないもんだね。)

それはそうと、最初の恋人のことは、忘れられないもんだね。

(あのひとは、とってもじょうひんでやさしくって、きれいなおびだったっけ。)

あの人は、とっても上品で優しくって、きれいな帯だったっけ。

(ぼくのために、せんたくおけのなかまで、とびこんできたもんさ。)

ぼくのために、洗濯おけの中まで、とびこんできたもんさ。

(そうそう、みぼうじんもいたよ。あのひとは、すっかりあつくなっちゃったが、)

そうそう、未亡人もいたよ。あの人は、すっかり熱くなっちゃったが、

(ぼくはほったらかしておいた。くろくなるまでね。)

ぼくはほったらかしておいた。黒くなるまでね。

(そのつぎがいちりゅうのおどりこさ。このおんなのおかげで、ぼくはきずをうけちまってね。)

その次が一流の踊り子さ。この女のおかげで、ぼくは傷を受けちまってね。

(これ、このとおり、そのあとがいまでものこっているしまつさ。)

これ、この通り、そのあとが今でも残っている始末さ。

(まったく、きのつよいおんなだったよ。)

まったく、気の強い女だったよ。

(するとこんどは、ぼくじしんのくしまでが、ぼくにこいしちまってね。)

すると今度は、ぼく自身のクシまでが、ぼくに恋しちまってね。

(そのこいのくるしさのために、すっかりはがぬけちまったよ。)

その恋の苦しさのために、すっかり歯が抜けちまったよ。

(こんなはなしなら、いくらでもあるよ。)

こんな話なら、いくらでもあるよ。

(しかし、ぼくがいちばんわるいことをしたとおもっているのは、あのくつしたどめ。)

しかし、ぼくが一番悪いことをしたと思っているのは、あの靴下止め。

(いや、せんたくおけのなかまでとびこんできた、あのおびのことだよ。)

いや、洗濯おけの中までとびこんできた、あの帯のことだよ。

(これには、ぼくもりょうしんのくるしみをおぼえているんだ。)

これには、ぼくも良心の苦しみを覚えているんだ。

(かんがえてみれば、いまぼくがしろいかみになるのも、しかたがないかもしれない」)

考えてみれば、今ぼくが白い紙になるのも、仕方がないかもしれない」

(そして、からーはそのとおりになりました。)

そして、カラーはその通りになりました。

(ほかのぼろたちも、みんなしろいかみになりました。)

ほかのボロたちも、みんな白い紙になりました。

(ところが、からーのなったしろいかみというのが、どうでしょう。)

ところが、カラーのなった白い紙というのが、どうでしょう。

(いまわたしたちがみているしろいかみ、このおはなしのいんさつされている、しろいかみなんです。)

今私たちが見ている白い紙、このお話の印刷されている、白い紙なんです。

(というのも、からーはあとになって、ありもしないことまで、)

というのも、カラーはあとになって、ありもしないことまで、

(とんでもないうそをついたからなんです。)

とんでもないウソをついたからなんです。

(わたしたちは、このことをよくおぼえておいて、)

私たちは、このことをよく覚えておいて、

(そんなことをしないようにきをつけましょう。)

そんなことをしないように気をつけましょう。

(なぜならばですよ、このわたしたちにしたって、)

なぜならばですよ、この私たちにしたって、

(いつかはぼろぼろのはこのなかにはいって、)

いつかはボロボロの箱の中に入って、

(しろいかみにされないともかぎりませんからね。)

白い紙にされないとも限りませんからね。

(それも、じぶんのはなしを、ごくごくないしょのことまでもいんさつされて、)

それも、自分の話を、ごくごく内緒のことまでも印刷されて、

(あっちこっちはなしまわらないともかぎらないんですから。)

あっちこっち話回らないとも限らないんですから。

(ちょうど、このからーのようにですよ。)

ちょうど、このカラーのようにですよ。

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