貯水池-5-(完)

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 だったかもしれな 7733 7.9 97.4% 225.9 1794 47 34 2024/04/25

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問題文

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(うそとわらえるしんけいがわからない。ふくのうちがわ、せなかいちめんにどろがついている。)

ウソと笑える神経が分からない。服の内側、背中一面に泥がついている。

(なぜきづかなかったのか。ちのこおるようなきょうふをかんじながら、)

なぜ気づかなかったのか。血の凍るような恐怖を感じながら、

(ぼくはせなかにてをやってもだえつづける。)

僕は背中に手をやって悶え続ける。

(きんぞくばっとにあしがあたって、がらんというおとをたてる。)

金属バットに足が当たって、ガランという音を立てる。

(うそだようそ・・・・・・ししょうのこえが、ぐるぐるとまわる。)

ウソだよウソ……師匠の声が、ぐるぐると回る。

(「このくそおんな!」たしか、そうさけんだはずだ。そのときのぼくは。)

「このクソ女!」確か、そう叫んだはずだ。その時の僕は。

(ししょうの、ながいはなしがおわった。だいがくいっかいせいのふゆのはじめだった。)

師匠の、長い話が終わった。大学1回生の冬の始めだった。

(おれはおかるとどうのししょうのあぱーとで、かれのおもいでばなしをきいていた。)

俺はオカルト道の師匠のアパートで、彼の思い出話を聞いていた。

(「これがそのときの、ばっとでついたきず。まったく、ただのどろに)

「これがその時の、バットでついた傷。まったく、ただの泥に

(えらいしゅうたいだった」そういってかべのそれたようなあとをゆびさす。)

えらい醜態だった」そう言って壁の削れたような跡を指さす。

(おれはまるででじゃヴのようなかんかくをおぼえていた。)

俺はまるでデジャヴのような感覚を覚えていた。

(「まるでいまのおれみたいですね」)

「まるで今の俺みたいですね」

(ししょうもいっかいせいのころは、そんななさけないせいねんだったのか。)

師匠も1回生の頃は、そんな情けない青年だったのか。

(いまからたったし,ごねんまえのはなしなのに。)

今からたった4,5年前の話なのに。

(「なさけなかったともおもわないけどなぁ。あのひとみたいなばけものと)

「情けなかったとも思わないけどなぁ。あの人みたいな化け物と

(いっしょにされると、そうきこえるかもしれないけど」)

一緒にされると、そう聞こえるかも知れないけど」

(ししょうのししょう、とうじだいがくいんせいだったというじょせいはかなこさんといったそうだ。)

師匠の師匠、当時大学院生だったという女性は加奈子さんといったそうだ。

(かのじょがいなくなったあと、ししょうはあきべやになったかのじょのへやに)

彼女がいなくなったあと、師匠は空き部屋になった彼女の部屋に

(うつりすんだらしい。つまりいまのこのへやだ。)

移り住んだらしい。つまり今のこの部屋だ。

(「でも、とうじのやちんがいちまんえんって、いまよりせんえんもたかいじゃないですか」)

「でも、当時の家賃が1万円って、今より千円も高いじゃないですか」

など

(ねあげするならまだしも、ねさげされるなんて、)

値上げするならまだしも、値下げされるなんて、

(よっぽどひどいぶっけんなのだろう。)

よっぽど酷い物件なのだろう。

(「そのかなこさんってひとは、いまはどうしてるんです」)

「その加奈子さんって人は、今はどうしてるんです」

(ししょうはきゅうにおしだまった。めが、くらいひかりをおびてくる。)

師匠は急に押し黙った。目が、昏い光を帯びてくる。

(そしてゆっくりとくちをひらき、しんだ、といった。)

そしてゆっくりと口を開き、死んだ、と言った。

(このへやのやちんが、さげられたりゆうがわかったきがした。)

この部屋の家賃が、下げられた理由が分かった気がした。

(けれど、いつどこで、どうしてということをつづけてはきけなかった。)

けれど、いつどこで、どうしてということを続けては聞けなかった。

(なにごとにもじゅんじょというものがあり、ししょうがししょうになるまでにしかるべき)

何事にも順序というものがあり、師匠が師匠になるまでにしかるべき

(だんかいがあったように、ひとりのにんげんがこのよからいなくなるのにも、)

段階があったように、一人の人間がこの世からいなくなるのにも、

(ふさわしいいんががあるのだろう。)

相応しい因果があるのだろう。

(そのかのじょのしは、ししょうのひみつのこんかんともいうべきあんぶであるという、)

その彼女の死は、師匠の秘密の根幹ともいうべき暗部であるという、

(かくしんにもにたよかんがあった。)

確信にも似た予感があった。

(ただそのとき、かのじょはまだ、すこしはにかみながらししょうがかたるおもいでばなしのなかで、)

ただその時、彼女はまだ、少しはにかみながら師匠が語る思い出話の中で、

(ふしぎなやくどうかんとともにいきづいていたのだった。)

不思議な躍動感とともに息づいていたのだった。

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