人形-1-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ちゅけ 4618 C++ 4.7 97.3% 1069.8 5081 140 95 2024/10/22
2 daifuku 3723 D+ 3.9 94.9% 1301.6 5118 271 95 2024/10/20
3 daifuku 3681 D+ 3.9 94.2% 1304.4 5115 313 95 2024/11/13

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問題文

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(にんぎょうにまつわるはなしをしよう。だいがくにかいせいのはるだった。)

人形にまつわる話をしよう。大学2回生の春だった。

(とうじでいりしていたじもとのおかるとけいふぉーらむのじょうれんに、)

当時出入りしていた地元のオカルト系フォーラムの常連に、

(みかっちさんというじょせいがいた。たのしいというかさわがしいひとで、)

みかっちさんという女性がいた。楽しいというか騒がしい人で、

(おふかいではいつもちゅうしんになってはしゃいでいたのであるが、)

オフ会ではいつも中心になってはしゃいでいたのであるが、

(そのかのじょがあるとき、こういうのである。)

その彼女がある時、こう言うのである。

(「いまさ、ともだちとぐるーぷてんやってるんだけどみにこない?」)

「今さ、友だちとグループ展やってるんだけど見に来ない?」

(だいがくのせんぱいでもあるかのじょは(きゃんぱすであったことはほとんどないが))

大学の先輩でもある彼女は(キャンパスで会ったことはほとんどないが)

(びじゅつこーすだということでえをかくのはしっていたが、)

美術コースだということで絵を描くのは知っていたが、

(まださくひんをみせてもらったことはない。)

まだ作品を見せてもらったことはない。

(「いいですねえ」といいながら、ふとしゅういのざわめきがきになった。)

「いいですねえ」と言いながら、ふと周囲のざわめきが気になった。

(いざかやおふかいのまっただなかに、どうしておれだけをさそってきたのか。)

居酒屋オフ会の真っ只中に、どうして俺だけを誘ってきたのか。

(たしかによくおふでもあうが、それほどかのじょじしんとしたしいわけでもない。)

確かによくオフでも会うが、それほど彼女自身と親しいわけでもない。

(ふぉーらむのじょうれんぐるーぷのまっせきにくわえてもらっているので、)

フォーラムの常連グループの末席に加えてもらっているので、

(しぜんにあうきかいがふえるというていどだ。)

自然に会う機会が増えるという程度だ。

(なにかうらがあるにちがいないと、かぎつける。)

なにか裏があるに違いないと、嗅ぎつける。

(ついきゅうするとあっさりげろった。)

追求するとあっさりゲロった。

(「gekoちゃんのかれしをつれてきて」というのだ。)

「gekoちゃんの彼氏を連れてきて」と言うのだ。

(gekoちゃんとはそのじょうれんぐるーぷのなかでもおおぼすてきそんざいであり、)

gekoちゃんとはその常連グループの中でも大ボス的存在であり、

(そのいようなかんのよさでいちもくおかれているじょせいだった。)

その異様な勘の良さで一目置かれている女性だった。

(そのかれしというのはおれのおかるとどうのししょうでもあるへんじんで、)

その彼氏というのは俺のオカルト道の師匠でもある変人で、

など

(そのふぉーらむには「れべるがちがう」とばかりにはなでわらうのみで)

そのフォーラムには「レベルが違う」とばかりに鼻で笑うのみで

(さんかをしたことはなかった。)

参加をしたことはなかった。

(もっともかれはぱそこんなどもっていなかったのであるが。)

もっとも彼はパソコンなど持っていなかったのであるが。

(そのししょうをつれてきてとはいったいどういうこんたんなのか。)

その師匠を連れてきてとは一体どういう魂胆なのか。

(「いやあ、そのぐるーぷてんさあ、いつかかんのけいやくでばしょかりてて)

「いやあ、そのグループ展さあ、5日間の契約で場所借りてて

(きょうでみっかめだったんだけど・・・・・・なんかへんなんだよね」)

今日で3日目だったんだけど……なんか変なんだよね」

(きくところによると、かいがさくひんをならべているぎゃらりーで)

聞くところによると、絵画作品を並べているギャラリーで

(だれもいないはずのばしょからだれかのうめきごえがきこえたり、)

誰もいないはずの場所から誰かのうめき声が聞こえたり、

(けんぶつきゃくのきぶんがきゅうにわるくなったりするのだそうだ。)

見物客の気分が急に悪くなったりするのだそうだ。

(「きのうなんてさ、おわってかたづけしてそうじしてたらさ、)

「昨日なんてさ、終わって片付けして掃除してたらさ、

(ゆかにながくてくろいかみのけがやたらおちてんの。)

床に長くて黒い髪の毛がやたら落ちてんの。

(おきゃくさんっていっても、わたしのともだちとかばっかだし、)

お客さんっていっても、わたしの友だちとかばっかだし、

(たいていみんなかみそめてんのよ。)

たいていみんな髪染めてんのよ。

(せんせいとかおっさんれんちゅうはそんなかみながくないしね。きみわるくてさあ」)

先生とかオッサン連中はそんな髪長くないしね。気味悪くてさあ」

(みかっちさんはえんぎかじょうなこわがりかたで、かたをかかえてみせた。)

みかっちさんは演技過剰な怖がり方で、肩を抱えてみせた。

(「こういうときたよりになるgekoちゃん、このあいだからなんか)

「こういう時頼りになるgekoちゃん、この間からなんか

(じっかにかえってていないし。きょーすけはとうきょうにでていっちゃったし」)

実家に帰ってていないし。キョースケは東京に出て行っちゃったし」

(ひじをついてぶつぶつという。)

肘をついてブツブツと言う。

(「というわけで、うわさのgekoちゃんのかれししかいないわけよ」)

「というワケで、噂のgekoちゃんの彼氏しかいないワケよ」

(みかっちさんはししょうとちょくせつあったことはないようだが、)

みかっちさんは師匠と直接会ったことはないようだが、

(やはりうわさはもれきいているみたいだ。どんなうわさかはさだかではないが。)

やはり噂は漏れ聞いているみたいだ。どんな噂かはさだかではないが。

(「とにかくこれ、あんないじょう。あしたきてよね。わたし、あしたはあさからひるまで)

「とにかくコレ、案内状。明日来てよね。私、明日は朝から昼まで

(とうばんだから、ひるまえにきて」ずいぶんごういんだ。)

当番だから、昼前に来て」ずいぶん強引だ。

(「あしたはへいじつなんですけど」というと、めったにこうぎでないんでしょと)

「明日は平日なんですけど」と言うと、めったに講義出ないんでしょと

(こづかれた。よくじつ、いちおうししょうをさそうと「おもしろそうだ」とのこのこついてきた。)

小突かれた。翌日、一応師匠を誘うと「面白そうだ」とノコノコついて来た。

(ふたりであんないじょうをみながらまちをあるき、たどりついたさきは)

二人で案内状を見ながら街を歩き、たどり着いた先は

(しにせでぱーとのそばにあるはんちかのこじんまりとしたぎゃらりーだった。)

老舗デパートのそばにある半地下のこじんまりとしたギャラリーだった。

(すこしそとにでればあーけーどがいがあり、へいじつのひるでもひとどおりが)

少し外に出ればアーケード街があり、平日の昼でも人通りが

(たえないのであるが、ここはやけにしずかでおちついたふんいきがただよっていた。)

絶えないのであるが、ここはやけに静かで落ち着いた雰囲気が漂っていた。

(なかにはいると、がくせいらしきしょーとぼぶのじょせいが)

中に入ると、学生らしきショートボブの女性が

(「いらっしゃいませ」とえがおをこちらにむけてくれた。)

「いらっしゃいませ」と笑顔をこちらに向けてくれた。

(みかっちさんとおなじびじゅつこーすのひとだろうか。)

みかっちさんと同じ美術コースの人だろうか。

(くらめのしょうめいに、へきちゅうにだいしょうさまざまなえがかざられたてんないがてらしだされている。)

暗めの照明に、壁中に大小様々な絵が飾られた店内が照らし出されている。

(「あ、ほんとにきたんだ」よんでおいてほんともなにもないとおもうが、)

「あ、ホントに来たんだ」呼んでおいてホントもなにもないと思うが、

(みかっちさんがぎゃらりーのおくからでてきた。)

みかっちさんがギャラリーの奥から出てきた。

(そしてししょうをみるなりめをみひらいてつぶやく。)

そして師匠を見るなり目を見開いて呟く。

(「ちょっと、gekoちゃん。みせないわけだわ・・・・・・」)

「ちょっと、gekoちゃん。見せないワケだわ……」

(ししょうはそれをむしして、しせんをぎゃらりーないにはしらせる。)

師匠はそれを無視して、視線をギャラリー内に走らせる。

(ここにくるまでひやかしぎみだったふんいきがすこしへんかしていた。)

ここに来るまで冷やかし気味だった雰囲気が少し変化していた。

(「ここってなんにんぐらいでかりてるの」)

「ここって何人ぐらいで借りてるの」

(ししょうのといかけに、みかっちさんは「ろくにん」とこたえる。)

師匠の問いかけに、みかっちさんは「6人」と答える。

(「こーすのなかまと、こうはい。がくわりがきくんですよ、ここ」)

「コースの仲間と、後輩。学割が効くんですよ、ココ」

(「で、じぶんたちでえがいたえをきかんちゅう、おいてもらうわけか」)

「で、自分たちで描いた絵を期間中、置いてもらうわけか」

(「そうです。で、ろくにんでじゅんばんにとうばんきめておきゃくさまたいおう」)

「そうです。で、6人で順番に当番決めてお客様対応」

(ふうん。ししょうはもういちど、しせんをひとまわりさせる。)

ふうん。師匠はもう一度、視線を一回りさせる。

(「あ、そうそう。わたしはんにんっぽいのわかっちゃったかも。こっちこっち」)

「あ、そうそう。わたし犯人っぽいのわかっちゃったかも。こっちこっち」

(みかっちさんはおれたちをぎゃらりーのおくまったいっかくにあんないした。)

みかっちさんは俺たちをギャラリーの奥まった一角に案内した。

(それまでばすけっとのふるーつなど、せいぶつがをちゅうしんにならんでいたのに、)

それまでバスケットのフルーツなど、静物画を中心に並んでいたのに、

(ひとつあきらかにいしつなえがしゅつげんした。それはにんぎょうのえだった。ぜんたいてきにあおく)

一つ明らかに異質な絵が出現した。それは人形の絵だった。全体的に青く

(くらいはいけいのなか、おかっぱあたまのにんぎょうのえがまるでひとのしょうぞうがのように)

暗い背景の中、オカッパ頭の人形の絵がまるでヒトの肖像画のように

(えがかれている。あきらかににんげんをでふぉるめしたものではなく、)

描かれている。明らかに人間をデフォルメしたものではなく、

(しゃじつてきなひょうげんでひとめみてにんぎょうとわかるようにできている。)

写実的な表現で一目見て人形と分かるように出来ている。

(くろかみのあたまにあかいきもの。それらがみょうにすすけたかんじで、ちいさながくにおさまっていた。)

黒髪の頭に赤い着物。それらが妙に煤けた感じで、小さな額に納まっていた。

(「ね」とみかっちさんはちいさなこえでいった。たしかにぶきみなえだ。)

「ね」とみかっちさんは小さな声で言った。確かに不気味な絵だ。

(いちまつにんぎょうというのだろうか。)

市松人形というのだろうか。

(かわいらしいにんぎょうをえがいたえとはすこしいいがたい。)

可愛らしい人形を描いた絵とは少し言い難い。

(なぜかはじぶんでもよくわからないが、にんげんではないものがにんげんをぎして)

何故かは自分でもよくわからないが、人間ではないものが人間を擬して

(そこにいるようなけんおかんがあった。「これはだれのえ?」「わたし」)

そこにいるような嫌悪感があった。「これは誰の絵?」「わたし」

(みかっちさんはうしろあたまをわざとらしくかく。)

みかっちさんは後ろ頭をわざとらしく掻く。

(こまったようなひょうじょうもうかべている。「もでるがあるね」)

困ったような表情も浮かべている。「モデルがあるね」

(「・・・・・・ともだちのもってるにんぎょう。すっごくふるいの。)

「……友だちの持ってる人形。すっごく古いの。

(ちょっときょうみがあってえがかせてもらったんだけど」)

ちょっと興味があって描かせてもらったんだけど」

(ふしめがちなどうじょのふっくらしたかおがぶきみなかげをおびている。)

伏目がちな童女のふっくらした顔が不気味な翳を帯びている。

(むなもとをしめるあさぎいろのおびがところどころはげてしまって、どこかあわれなふぜいだった。)

胸元を締める浅葱色の帯が所々剥げてしまって、どこか哀れな風情だった。

(ししょうはしんけんなひょうじょうでえにかおをちかづけ、なにごとかぶつぶついっている。)

師匠は真剣な表情で絵に顔を近づけ、何事かぶつぶつ言っている。

(「やっぱこれかなあ。どうしよう。けっこうきにいってるんだけど」)

「やっぱこれかなあ。どうしよう。結構気に入ってるんだけど」

(「なにかいわくがあるにんぎょうなんですか」)

「なにか曰くがある人形なんですか」

(「あるよ。すっごいの。でもこれはたかがわたしがえがいたえだし、)

「あるよ。すっごいの。でもこれはタカガわたしが描いた絵だし、

(ぜんぜんきにしてなかったんだよね」「そのいわくって、どんなのですか」)

全然気にしてなかったんだよね」「その曰くって、どんなのですか」

(おれがそうくちにしたところで、ししょうがかおをはなし、むずかしいかおで「ぎゃくだ」とつぶやいた。)

俺がそう口にしたところで、師匠が顔を離し、難しい顔で「逆だ」と呟いた。

(「え?」ときくと、えからめをそらさないまま「いや」といいよどみ、)

「え?」と訊くと、絵から目を逸らさないまま「いや」と言い淀み、

(くびをふってから「やっぱり、よくわからないな。これがげんいんだとしても、)

首を振ってから「やっぱり、よくわからないな。これが原因だとしても、

(ただのばいたいにすぎない。ほんたいのほうをみたいな」という。)

ただの媒体にすぎない。本体の方を見たいな」と言う。

(みかっちさんは「う~ん」といったあと、にっとくちびるのはしをあげた。)

みかっちさんは「う~ん」と言ったあと、ニッと唇の端をあげた。

(「こみいったはなしだとここじゃちょっとね。ちかくのきっさてんではなさない?」)

「込み入った話だとここじゃちょっとね。近くの喫茶店で話さない?」

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