『三人の糸くり女』グリム2【完】
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問題文
(さんにんのおんなたちは、おんなのこのこまっているわけをききますと、)
三人の女たちは、女の子の困っているわけを聞きますと、
(「おまえさんがわたしたちを、こんれいのせきによんでくれてね。)
「おまえさんが私たちを、婚礼の席に呼んでくれてね。
(わたしたちのことをはずかしがらずに、おばさんたちだといって、)
私たちのことを恥ずかしがらずに、おばさんたちだと言って、
(おまえさんのしょくたくにつかせてくれるなら、)
おまえさんの食卓につかせてくれるなら、
(そのあさをかたっぱしからつむいであげよう。)
そのアサを片っ端からつむいであげよう。
(それも、なんにちもたたないうちにやってしまうよ」といいました。)
それも、何日もたたないうちにやってしまうよ」と言いました。
(「ええ、おねがいするわ」と、おんなのこはこたえました。)
「ええ、お願いするわ」と、女の子は答えました。
(「さあさあ、はいってきて。すぐにしごとをはじめてちょうだい」)
「さあさあ、入ってきて。すぐに仕事を始めてちょうだい」
(そこでおんなのこは、このさんにんのきみょうなおんなたちをなかにいれて、)
そこで女の子は、この三人の奇妙な女たちを中に入れて、
(さいしょのへやに、すこしばかりのばしょをつくってやりました。)
最初の部屋に、少しばかりの場所を作ってやりました。
(すると、おんなたちはそこにこしをおろして、さっそく、いとをつむぎはじめました。)
すると、女たちはそこに腰をおろして、早速、糸をつむぎ始めました。
(ひとりがいとをひきだして、くるまをふみました。)
一人が糸を引き出して、車を踏みました。
(するともうひとりが、そのいとをしめらして、)
するともう一人が、その糸をしめらして、
(さんにんめのおんながそれをぐるぐるまわして、いとをつむいでいきました。)
三人目の女がそれをグルグル回して、糸をつむいでいきました。
(それは、とてもみごとにつむいであるのでした。)
それは、とても見事につむいであるのでした。
(おんなのこは、このさんにんのいとくりおんなをかくしておいて、)
女の子は、この三人の糸くり女を隠しておいて、
(おきさきさまがくるたびに、つむぎあがったものをたくさんみせました。)
お妃さまが来る度に、つむぎあがったものをたくさん見せました。
(ですからおきさきさまは、ありったけのことばでおんなのこをほめました。)
ですからお妃さまは、ありったけの言葉で女の子をほめました。
(さいしょのへやがからになりますと、こんどはにばんめのへやにうつりました。)
最初の部屋が空になりますと、今度は二番目の部屋に移りました。
(こうして、とうとうさんばんめのへやになりましたが、)
こうして、とうとう三番目の部屋になりましたが、
(これもたちまちのうちに、かたづいてしまいました。)
これもたちまちのうちに、片付いてしまいました。
(そこで、さんにんのおんなたちはおんなのことおわかれをして、)
そこで、三人の女たちは女の子とお別れをして、
(「わたしたちとやくそくしたことをわすれるんじゃないよ。)
「私たちと約束したことを忘れるんじゃないよ。
(おまえさんもしあわせになることだからね」といいました。)
おまえさんも幸せになることだからね」と言いました。
(おんなのこがおきさきさまに、からっぽになったへやと、)
女の子がお妃さまに、空っぽになった部屋と、
(つむぎおわったものがつまれているおおきなやまをみせますと、)
つむぎ終わったものが積まれている大きな山を見せますと、
(おきさきさまはこんれいのしたくをしました。)
お妃さまは婚礼の支度をしました。
(はなむこも、こんなにきようで、はたらきもののおよめさんをもらうのをよろこんで、)
花婿も、こんなに器用で、働き者のお嫁さんをもらうのを喜んで、
(おんなのこのことを、それはそれはほめました。)
女の子のことを、それはそれはほめました。
(「じつは、あたくしには、おばがさんにんございます」と、おんなのこがいいました。)
「実は、あたくしには、おばが三人ございます」と、女の子が言いました。
(「いままで、あたくしにたいへんしんせつにしてくれておりましたので、)
「今まで、あたくしに大変親切にしてくれておりましたので、
(こういうしあわせなみになりましても、)
こういう幸せな身になりましても、
(おばたちのことをわすれたくはございません。)
おばたちのことを忘れたくはございません。
(つきましては、おばたちをこんれいのせきによんで、)
つきましては、おばたちを婚礼の席に呼んで、
(いっしょのしょくたくにつかせてやりたいとおもいますが、おゆるしねがえませんでしょうか」)
一緒の食卓につかせてやりたいと思いますが、お許し願えませんでしょうか」
(「ゆるしてあげますとも」と、おきさきさまとはなむこがいいました。)
「許してあげますとも」と、お妃さまと花婿が言いました。
(さて、いよいよ、おいわいがはじまりました。)
さて、いよいよ、お祝いが始まりました。
(そのとき、みょうなかっこうをしたさんにんのおんながはいってきました。)
そのとき、妙なかっこうをした三人の女が入ってきました。
(するとはなよめは「おばさまがた、よくおいでくださいました」と、いいました。)
すると花嫁は「おばさまがた、よくおいでくださいました」と、言いました。
(「いやはや、どうも」と、はなむこがいいました。)
「いやはや、どうも」と、花婿が言いました。
(「おまえはまた、ずいぶんみっともないれんちゅうとしりあいなんだねえ」)
「おまえはまた、ずいぶんみっともない連中と知り合いなんだねえ」
(それからはなむこは、ひらべったいあしをしているおんなのところへいって、たずねました。)
それから花婿は、平べったい足をしている女の所へ行って、尋ねました。
(「あなたは、どうしてそんなひらべったいあしをしているのですか」)
「あなたは、どうしてそんな平べったい足をしているのですか」
(「ふむからだよ」と、そのおんなはこたえました。)
「踏むからだよ」と、その女は答えました。
(そのつぎに、はなむこはもうひとりのおんなのところへいって、たずねました。)
その次に、花婿はもう一人の女の所へ行って、尋ねました。
(「あなたは、どうしてそんなにたれさがったくちびるをしているのですか」)
「あなたは、どうしてそんなに垂れ下がったくちびるをしているのですか」
(「なめるからだよ」と、そのおんなはこたえました。)
「なめるからだよ」と、その女は答えました。
(さいごに、はなむこはさんにんめのおんなのところへいって、たずねました。)
最後に、花婿は三人目の女の所へ行って、尋ねました。
(「あなたは、どうしてそんなにはばのひろいおやゆびをしているのですか」)
「あなたは、どうしてそんなに幅の広い親指をしているのですか」
(「いとをまわすからだよ」と、そのおんなはこたえました。)
「糸を回すからだよ」と、その女は答えました。
(それをきくと、おうじはびっくりして、)
それを聞くと、王子はびっくりして、
(「それなら、わたしのうつくしいはなよめには、もうこれからは)
「それなら、私の美しい花嫁には、もうこれからは
(けっしていとぐるまにてをふれさせないことにする」といいました。)
決して糸車に手をふれさせないことにする」と言いました。
(おかげではなよめは、あのいやないとくりをしないでもいいことになりました。)
おかげで花嫁は、あの嫌な糸くりをしないでもいいことになりました。