『マッチ売りの少女』アンデルセン1

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プレイ回数1275難易度(4.3) 3086打 長文
一般的な童話『マッチ売りの少女』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

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問題文

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(それは、とてもさむいひでした。)

それは、とても寒い日でした。

(ゆきがふっていて、あたりはもうくらくなりかけていました。)

雪が降っていて、あたりはもう暗くなりかけていました。

(そのひは、いちねんのうちでいちばんおしまいの、おおみそかのばんでした。)

その日は、一年のうちで一番おしまいの、おおみそかの晩でした。

(このさむくて、うすぐらいゆうぐれのとおりを、)

この寒くて、うす暗い夕暮れの通りを、

(みすぼらしいみなりをしたしょうじょがひとり、)

みすぼらしい身なりをした少女が一人、

(ぼうしもかぶらず、くつもはかないで、とぼとぼとあるいていました。)

帽子もかぶらず、靴もはかないで、トボトボと歩いていました。

(でも、いえをでたときには、すりっぱをはいていたのです。)

でも、家を出たときには、スリッパをはいていたのです。

(けれども、そんなものがなんのやくにたつでしょう。)

けれども、そんなものがなんの役に立つでしょう。

(なぜって、とてもおおきなすりっぱでしたから。むりもありません。)

なぜって、とても大きなスリッパでしたから。無理もありません。

(おかあさんが、このあいだまでつかっていたものですもの。)

お母さんが、このあいだまで使っていたものですもの。

(ですから、とてもおおきかったのです。)

ですから、とても大きかったのです。

(それをしょうじょは、はいてでかけたのですが、)

それを少女は、はいて出かけたのですが、

(とおりをいそいでよこぎろうとしたとき、)

通りをいそいで横切ろうとしたとき、

(にだいのばしゃがおそろしいいきおいではしってきたので、)

二台の馬車がおそろしい勢いで走ってきたので、

(あわててよけようとしたひょうしに、なくしてしまったのです。)

あわててよけようとした拍子に、なくしてしまったのです。

(かたほうはそのままどこかへいき、もうかたほうはおとこのこがひろって、)

片方はそのままどこかへいき、もう片方は男の子がひろって、

(いまにあかんぼうでもうまれたら、ゆりかごにつかうんだ、といいながら、)

今に赤ん坊でも生れたら、ゆりかごに使うんだ、と言いながら、

(もっていってしまいました。こういうわけで、いまこのしょうじょは、)

持っていってしまいました。こういうわけで、今この少女は、

(かわいらしいはだしであるいているのでした。)

可愛らしいはだしで歩いているのでした。

(そのちいさなあしは、さむさのために、あかぐろくなっていました。)

その小さな足は、寒さのために、赤黒くなっていました。

など

(ふるぼけたえぷろんのなかには、たくさんのまっちがはいっていました。)

古ぼけたエプロンの中には、たくさんのマッチが入っていました。

(そして、てにもまっちのたばをもっていました。)

そして、手にもマッチの束を持っていました。

(きょうはいちにちじゅううりあるいても、だれひとりかってくれませんし、)

今日は一日中売り歩いても、だれひとり買ってくれませんし、

(いちえんのおかねでさえ、めぐんでくれるひとは、おりませんでした。)

一円のお金でさえ、めぐんでくれる人は、おりませんでした。

(おなかはへってしまい、からだはこおりのようにひえきって、)

お腹は減ってしまい、体は氷のように冷えきって、

(みるもあわれな、いたいたしいすがたをしていました。)

見るも哀れな、痛々しい姿をしていました。

(ゆきがひらひらと、しょうじょのながいぶろんどのかみのけに、ふりました。)

雪がヒラヒラと、少女の長いブロンドの髪の毛に、降りました。

(そのかみは、えりくびのところに、それはそれはうつくしくまいてありました。)

その髪は、えり首のところに、それはそれは美しく巻いてありました。

(けれども、いまはそんなじぶんのすがたのことなんか、)

けれども、今はそんな自分の姿のことなんか、

(とてもかまってはいられません。)

とてもかまってはいられません。

(みれば、まどというまどから、あかりがそとへさしています。)

見れば、窓という窓から、明かりが外へ差しています。

(そして、がちょうのやきにくのおいしそうなにおいが、)

そして、ガチョウの焼肉のおいしそうな匂いが、

(とおりまでぷんぷんとにおっています。)

通りまでプンプンと匂っています。

(それもそのはず、きょうは、おおみそかのばんですもの。)

それもそのはず、今日は、おおみそかの晩ですもの。

(「そうだわ。きょうは、おおみそかのばんなんだもの」と、しょうじょはおもいました。)

「そうだわ。今日は、おおみそかの晩なんだもの」と、少女は思いました。

(ちょうど、いえがにけんならんでいました。)

ちょうど、家が二軒並んでいました。

(いっけんはとなりのいえよりもとおりのほうへつきでており、)

一軒は隣の家よりも通りのほうへ突き出ており、

(そのかげのすみっこに、しょうじょはからだをちぢめて、うずくまりました。)

その影のすみっこに、少女は体を縮めて、うずくまりました。

(ちいさなあしをからだのしたにひっこめてみましたが、さむさは、しのげません。)

小さな足を体の下にひっこめてみましたが、寒さは、しのげません。

(それどころか、もっとさむくなるばかりです。)

それどころか、もっと寒くなるばかりです。

(それでも、しょうじょはいえへかえろうとはしませんでした。)

それでも、少女は家へ帰ろうとはしませんでした。

(まっちはひとつもうれてませんし、おかねだっていちえんももらっていないのですから。)

マッチは一つも売れてませんし、お金だって一円も貰っていないのですから。

(このままいえへかえれば、おとうさんにたたかれるにきまっています。)

このまま家へ帰れば、お父さんに叩かれるにきまっています。

(それに、いえへかえったところで、やっぱりさむいのはおんなじです。)

それに、家へ帰ったところで、やっぱり寒いのはおんなじです。

(やねはあっても、ただあるというだけです。)

屋根はあっても、ただあるというだけです。

(おおきなすきまには、わらやぼろきれがつめてはありますけれど、)

大きなすきまには、ワラやボロキレが詰めてはありますけれど、

(それでも、かぜはぴゅーぴゅーふきこんでくるのです。)

それでも、風はピューピュー吹きこんでくるのです。

(しょうじょのちいさなては、さむさのために、もうしんだようになっていました。)

少女の小さな手は、寒さのために、もう死んだようになっていました。

(ああ、こんなときには、たったいっぽんのちいさなまっちであっても、)

ああ、こんなときには、たった一本の小さなマッチであっても、

(どんなにありがたいか、しれたものではありません。)

どんなにありがたいか、しれたものではありません。

(まっちのたばからいっぽんとりだして、それをかべにすりつけて、)

マッチの束から一本取り出して、それを壁にすりつけて、

(ひをつければ、つめたいゆびはあたたかくなるだろうとおもいました。)

火をつければ、冷たい指は暖かくなるだろうと思いました。

(とうとう、しょうじょはいっぽんひきぬきました。)

とうとう、少女は一本引き抜きました。

(しゅっというおととともにひばながちって、やがてまっちにひがつきました。)

シュッという音と共に火花が散って、やがてマッチに火がつきました。

(あたたかくあかるいひは、まるでちいさなろうそくのひのようでした。)

暖かく明るい火は、まるで小さなロウソクの火のようでした。

(しょうじょは、そのうえにてをかざしました。それは、ほんとうにふしぎなひかりでした。)

少女は、その上に手をかざしました。それは、本当に不思議な光でした。

(なんだか、ぴかぴかひかるおおきなてつのすとーぶのまえに)

なんだか、ピカピカ光る大きな鉄のストーブの前に

(すわっているようなきがしました。ひは、なんてよくもえるのでしょう。)

座っているような気がしました。火は、なんてよく燃えるのでしょう。

(そして、きもちよくて、あたたかいのでしょう。ほんとうにふしぎです。)

そして、気持よくて、暖かいのでしょう。本当に不思議です。

(しょうじょはあしもあたためようとおもって、てをのばしました。)

少女は足も暖めようと思って、手を伸ばしました。

(するとそのとたんに、ひはきえてしまいました。)

するとそのとたんに、火は消えてしまいました。

(すとーぶも、かきけすようにみえなくなりました。)

ストーブも、かき消すように見えなくなりました。

(しょうじょのてには、まっちのもえさしが、のこっているだけでした。)

少女の手には、マッチの燃えさしが、残っているだけでした。

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