『マッチ売りの少女』アンデルセン1
関連タイピング
-
プレイ回数12万歌詞200打
-
プレイ回数4.4万歌詞1030打
-
プレイ回数77万長文300秒
-
プレイ回数97万長文かな1008打
-
プレイ回数125万歌詞かな1119打
-
プレイ回数3.8万歌詞かな830打
-
プレイ回数5.1万長文かな316打
-
プレイ回数2.6万長文かな779打
問題文
(それは、とてもさむいひでした。)
それは、とても寒い日でした。
(ゆきがふっていて、あたりはもうくらくなりかけていました。)
雪が降っていて、あたりはもう暗くなりかけていました。
(そのひは、いちねんのうちでいちばんおしまいの、おおみそかのばんでした。)
その日は、一年のうちで一番おしまいの、おおみそかの晩でした。
(このさむくて、うすぐらいゆうぐれのとおりを、)
この寒くて、うす暗い夕暮れの通りを、
(みすぼらしいみなりをしたしょうじょがひとり、)
みすぼらしい身なりをした少女が一人、
(ぼうしもかぶらず、くつもはかないで、とぼとぼとあるいていました。)
帽子もかぶらず、靴もはかないで、トボトボと歩いていました。
(でも、いえをでたときには、すりっぱをはいていたのです。)
でも、家を出たときには、スリッパをはいていたのです。
(けれども、そんなものがなんのやくにたつでしょう。)
けれども、そんなものがなんの役に立つでしょう。
(なぜって、とてもおおきなすりっぱでしたから。むりもありません。)
なぜって、とても大きなスリッパでしたから。無理もありません。
(おかあさんが、このあいだまでつかっていたものですもの。)
お母さんが、このあいだまで使っていたものですもの。
(ですから、とてもおおきかったのです。)
ですから、とても大きかったのです。
(それをしょうじょは、はいてでかけたのですが、)
それを少女は、はいて出かけたのですが、
(とおりをいそいでよこぎろうとしたとき、)
通りをいそいで横切ろうとしたとき、
(にだいのばしゃがおそろしいいきおいではしってきたので、)
二台の馬車がおそろしい勢いで走ってきたので、
(あわててよけようとしたひょうしに、なくしてしまったのです。)
あわててよけようとした拍子に、なくしてしまったのです。
(かたほうはそのままどこかへいき、もうかたほうはおとこのこがひろって、)
片方はそのままどこかへいき、もう片方は男の子がひろって、
(いまにあかんぼうでもうまれたら、ゆりかごにつかうんだ、といいながら、)
今に赤ん坊でも生れたら、ゆりかごに使うんだ、と言いながら、
(もっていってしまいました。こういうわけで、いまこのしょうじょは、)
持っていってしまいました。こういうわけで、今この少女は、
(かわいらしいはだしであるいているのでした。)
可愛らしいはだしで歩いているのでした。
(そのちいさなあしは、さむさのために、あかぐろくなっていました。)
その小さな足は、寒さのために、赤黒くなっていました。
(ふるぼけたえぷろんのなかには、たくさんのまっちがはいっていました。)
古ぼけたエプロンの中には、たくさんのマッチが入っていました。
(そして、てにもまっちのたばをもっていました。)
そして、手にもマッチの束を持っていました。
(きょうはいちにちじゅううりあるいても、だれひとりかってくれませんし、)
今日は一日中売り歩いても、だれひとり買ってくれませんし、
(いちえんのおかねでさえ、めぐんでくれるひとは、おりませんでした。)
一円のお金でさえ、めぐんでくれる人は、おりませんでした。
(おなかはへってしまい、からだはこおりのようにひえきって、)
お腹は減ってしまい、体は氷のように冷えきって、
(みるもあわれな、いたいたしいすがたをしていました。)
見るも哀れな、痛々しい姿をしていました。
(ゆきがひらひらと、しょうじょのながいぶろんどのかみのけに、ふりました。)
雪がヒラヒラと、少女の長いブロンドの髪の毛に、降りました。
(そのかみは、えりくびのところに、それはそれはうつくしくまいてありました。)
その髪は、えり首のところに、それはそれは美しく巻いてありました。
(けれども、いまはそんなじぶんのすがたのことなんか、)
けれども、今はそんな自分の姿のことなんか、
(とてもかまってはいられません。)
とてもかまってはいられません。
(みれば、まどというまどから、あかりがそとへさしています。)
見れば、窓という窓から、明かりが外へ差しています。
(そして、がちょうのやきにくのおいしそうなにおいが、)
そして、ガチョウの焼肉のおいしそうな匂いが、
(とおりまでぷんぷんとにおっています。)
通りまでプンプンと匂っています。
(それもそのはず、きょうは、おおみそかのばんですもの。)
それもそのはず、今日は、おおみそかの晩ですもの。
(「そうだわ。きょうは、おおみそかのばんなんだもの」と、しょうじょはおもいました。)
「そうだわ。今日は、おおみそかの晩なんだもの」と、少女は思いました。
(ちょうど、いえがにけんならんでいました。)
ちょうど、家が二軒並んでいました。
(いっけんはとなりのいえよりもとおりのほうへつきでており、)
一軒は隣の家よりも通りのほうへ突き出ており、
(そのかげのすみっこに、しょうじょはからだをちぢめて、うずくまりました。)
その影のすみっこに、少女は体を縮めて、うずくまりました。
(ちいさなあしをからだのしたにひっこめてみましたが、さむさは、しのげません。)
小さな足を体の下にひっこめてみましたが、寒さは、しのげません。
(それどころか、もっとさむくなるばかりです。)
それどころか、もっと寒くなるばかりです。
(それでも、しょうじょはいえへかえろうとはしませんでした。)
それでも、少女は家へ帰ろうとはしませんでした。
(まっちはひとつもうれてませんし、おかねだっていちえんももらっていないのですから。)
マッチは一つも売れてませんし、お金だって一円も貰っていないのですから。
(このままいえへかえれば、おとうさんにたたかれるにきまっています。)
このまま家へ帰れば、お父さんに叩かれるにきまっています。
(それに、いえへかえったところで、やっぱりさむいのはおんなじです。)
それに、家へ帰ったところで、やっぱり寒いのはおんなじです。
(やねはあっても、ただあるというだけです。)
屋根はあっても、ただあるというだけです。
(おおきなすきまには、わらやぼろきれがつめてはありますけれど、)
大きなすきまには、ワラやボロキレが詰めてはありますけれど、
(それでも、かぜはぴゅーぴゅーふきこんでくるのです。)
それでも、風はピューピュー吹きこんでくるのです。
(しょうじょのちいさなては、さむさのために、もうしんだようになっていました。)
少女の小さな手は、寒さのために、もう死んだようになっていました。
(ああ、こんなときには、たったいっぽんのちいさなまっちであっても、)
ああ、こんなときには、たった一本の小さなマッチであっても、
(どんなにありがたいか、しれたものではありません。)
どんなにありがたいか、しれたものではありません。
(まっちのたばからいっぽんとりだして、それをかべにすりつけて、)
マッチの束から一本取り出して、それを壁にすりつけて、
(ひをつければ、つめたいゆびはあたたかくなるだろうとおもいました。)
火をつければ、冷たい指は暖かくなるだろうと思いました。
(とうとう、しょうじょはいっぽんひきぬきました。)
とうとう、少女は一本引き抜きました。
(しゅっというおととともにひばながちって、やがてまっちにひがつきました。)
シュッという音と共に火花が散って、やがてマッチに火がつきました。
(あたたかくあかるいひは、まるでちいさなろうそくのひのようでした。)
暖かく明るい火は、まるで小さなロウソクの火のようでした。
(しょうじょは、そのうえにてをかざしました。それは、ほんとうにふしぎなひかりでした。)
少女は、その上に手をかざしました。それは、本当に不思議な光でした。
(なんだか、ぴかぴかひかるおおきなてつのすとーぶのまえに)
なんだか、ピカピカ光る大きな鉄のストーブの前に
(すわっているようなきがしました。ひは、なんてよくもえるのでしょう。)
座っているような気がしました。火は、なんてよく燃えるのでしょう。
(そして、きもちよくて、あたたかいのでしょう。ほんとうにふしぎです。)
そして、気持よくて、暖かいのでしょう。本当に不思議です。
(しょうじょはあしもあたためようとおもって、てをのばしました。)
少女は足も暖めようと思って、手を伸ばしました。
(するとそのとたんに、ひはきえてしまいました。)
するとそのとたんに、火は消えてしまいました。
(すとーぶも、かきけすようにみえなくなりました。)
ストーブも、かき消すように見えなくなりました。
(しょうじょのてには、まっちのもえさしが、のこっているだけでした。)
少女の手には、マッチの燃えさしが、残っているだけでした。