『怪人二十面相』江戸川乱歩2
○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヌオー | 5921 | A+ | 6.4 | 92.4% | 709.8 | 4575 | 372 | 100 | 2024/12/09 |
2 | ねずみの小部屋 | 5786 | A+ | 6.1 | 93.9% | 734.3 | 4541 | 292 | 100 | 2024/12/12 |
3 | 白のバナナ | 4725 | C++ | 4.9 | 94.8% | 928.5 | 4642 | 254 | 100 | 2024/12/13 |
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問題文
(おとうさんも、おかあさんも、いもうとのさなえさんも、)
お父さんも、お母さんも、妹の早苗さんも、
(まだしょうがくせいのおとうとのそうじくんも、おおよろこびでした。)
まだ小学生の弟の壮二君も、大喜びでした。
(しものせきでふねをおりて、ひこうきでかえってくるというので、)
下関で船を降りて、飛行機で帰って来るというので、
(そのひがまちどおしくてしかたがありません。さて)
その日が待ち遠しくて仕方がありません。さて
(いっぽう、はしばけをおそった、ひじょうなきょうふと)
一方、羽柴家を襲った、非常な恐怖と
(いうのは、ほかならぬ「にじゅうめんそう」の)
いうのは、他ならぬ「二十面相」の
(おそろしいよこくじょうです。よこくじょうのぶんめんは、)
恐ろしい予告状です。予告状の文面は、
(「わたしがいかなるじんぶつであるかは、あなたもしんぶんにて)
「私がいかなる人物であるかは、あなたも新聞にて
(ごぞんじであろう。あなたは、かつてろまのふおうけの)
ご存知であろう。 あなたは、かつてロマノフ王家の
(かんむりをかざっていたおおきなだいやもんどろっこを、)
冠を飾っていた大きなダイヤモンド六個を、
(いえのかほうとして、たいせつにしまっているときいた。)
家の家宝として、大切にしまっていると聞いた。
(わたしはこのたび、このろっこのだいやもんどを、あなた)
私はこの度、この六個のダイヤモンドを、あなた
(からむしょうでゆずりうけるけっしんをした。きんじつちゅうに)
から無償で譲り受ける決心をした。近日中に
(ちょうだいにさんじょうするつもりである。せいかくなにちじは)
ちょうだいに参上するつもりである。 正確な日時は
(おってつうちする。ずいぶんごようじんなさるとよかろう」)
追って通知する。ずいぶんご用心なさるとよかろう」
(とあり、おわりに「にじゅうめんそう」としょめいしてありました。)
とあり、終わりに「二十面相」と署名してありました。
(そのだいやもんどというのは、ろしあのていせいぼつらくの)
そのダイヤモンドというのは、ロシアの帝政没落の
(のち、あるはっけいろしあじんが、きゅうろまのふけのかんむりをてに)
のち、ある白系ロシア人が、旧ロマノフ家の冠を手に
(いれて、かざりのほうせきだけをとりはずし、それを)
入れて、飾りの宝石だけを取り外し、それを
(ちゅうごくしょうにんにうりわたしたのがまわりまわって、にほんの)
中国商人に売り渡したのが回り回って、日本の
(はしばしにかいとられたもので、かちにしてにひゃくまんえん)
羽柴氏に買い取られた物で、価値にして二百万円
(という、きちょうなたからものでした。そのろっこのほうせきは)
という、貴重な宝物でした。 その六個の宝石は
(げんに、そうたろうしのしょさいのきんこのなかにおさまっている)
現に、壮太郎氏の書斎の金庫の中に収まっている
(のですが、かいとうはそのありかまで、ちゃんとしりぬいて)
のですが、怪盗はその在りかまで、ちゃんと知り抜いて
(いるようなぶんめんです。そのよこくじょうをうけとると、)
いるような文面です。 その予告状を受け取ると、
(しゅじんのそうたろうしはかおいろもかえませんでしたが、)
主人の壮太郎氏は顔色も変えませんでしたが、
(ふじんをはじめ、おじょうさんも、めしつかいなどまでも、)
夫人をはじめ、お嬢さんも、召使いなどまでも、
(ふるえあがってしまいました。ことにはしばけの)
震え上がってしまいました。 ことに羽柴家の
(しはいにんであるこんどうろうじんは、しゅじんのいえのいちだいじと)
支配人である近藤老人は、主人の家の一大事と
(ばかりにさわぎたてて、けいさつへしゅっとうしてほごを)
ばかりに騒ぎたてて、警察へ出頭して保護を
(ねがうやら、あたらしくもうけんをかうやら、あらゆるしゅだんを)
願うやら、新しく猛犬を買うやら、あらゆる手段を
(めぐらして、ぞくのしゅうらいにそなえました。はしばけの)
巡らして、賊の襲来に備えました。 羽柴家の
(きんじょは、おまわりさんのいっかがすんでおりましたが、)
近所は、お巡りさんの一家が住んでおりましたが、
(こんどうしはいにんは、そのおまわりさんにたのんで、)
近藤支配人は、そのお巡りさんに頼んで、
(ひばんのともだちをこうたいによんでもらい、いつもていない)
非番の友だちを交代に呼んでもらい、いつも邸内
(にはに、さんにんのおまわりさんがいてくれるように)
には二、三人のお巡りさんが居てくれるように
(はからいました。そのうえ、そうたろうしのひしょがさんにん)
はからいました。 その上、壮太郎氏の秘書が三人
(おります。おまわりさんとひしょともうけんの、)
おります。お巡りさんと秘書と猛犬の、
(このげんじゅうなぼうびのなかへ、いくら「にじゅうめんそう」のかいぞく)
この厳重な防備の中へ、いくら「二十面相」の怪賊
(にもせよ、しのびこむなんて、おもいもよらぬことで)
にもせよ、忍び込むなんて、思いもよらぬことで
(しょう。それにしてもまたれるのは、ちょうなんそういちくん)
しょう。 それにしても待たれるのは、長男壮一君
(のきたくでした。じぶんのみひとつでなんようのしまへわたって、)
の帰宅でした。自分の身一つで南洋の島へ渡って、
(せいこうをおさめたほどのかいだんじですから、このひとさえ)
成功を収めたほどの快男児ですから、この人さえ
(かえってくれたら、かないのものはどんなにこころづよいか)
帰ってくれたら、家内の者はどんなに心強いか
(しれません。さて、そのそういちくんが、はねだくうこうへつく)
知れません。 さて、その壮一君が、羽田空港へ着く
(というひのそうちょうのことです。あかあかとあきのあさひが)
という日の早朝のことです。 あかあかと秋の朝日が
(さしているはしばけのくらのなかから、ひとりのしょうねんが)
差している羽柴家の蔵の中から、一人の少年が
(すがたをあらわしました。しょうがくせいのそうじくんです。)
姿を現しました。小学生の壮二君です。
(まだちょうしょくのよういもできないそうちょうですから、ていないは)
まだ朝食の用意も出来ない早朝ですから、邸内は
(ひっそりとしずまりかえっていました。はやおきのすずめ)
ヒッソリと静まり返っていました。早起きのスズメ
(だけがいせいよく、きのえだやくらのやねで)
だけが威勢良く、木の枝や蔵の屋根で
(さえずっています。そのそうちょう、そうじくんがたおるの)
さえずっています。 その早朝、壮二君がタオルの
(ねまきすがたで、しかもりょうてにはなにかおそろしげな、)
寝巻姿で、しかも両手には何か恐ろしげな、
(てつせいのきかいのようなものをだいて、くらのいしだんを)
鉄製の機械のような物を抱いて、蔵の石段を
(にわへおりてきたのです。いったい、どうしたと)
庭へ下りて来たのです。一体、どうしたと
(いうのでしょう。おどろいたのは、すずめだけでは)
いうのでしょう。驚いたのは、スズメだけでは
(ありません。そうじくんはゆうべ、おそろしいゆめを)
ありません。 壮二君はゆうべ、恐ろしい夢を
(みました。にじゅうめんそうのぞくが、どこからかようかんの)
見ました。二十面相の賊が、どこからか洋館の
(にかいのしょさいへしのびこみ、たからものをうばいさるゆめです。)
二階の書斎へ忍び込み、宝物を奪い去る夢です。
(ぞくは、おとうさんのいまにかけてあるのうめんのように、)
賊は、お父さんの居間に掛けてある能面のように、
(ぶきみにあおざめた、むひょうじょうなかおをしていました。)
不気味に青ざめた、無表情な顔をしていました。
(そいつがたからものをぬすむと、いきなりにかいのまどを)
そいつが宝物を盗むと、いきなり二階の窓を
(ひらいて、まっくらなにわへとびおりたのです。)
ひらいて、真っ暗な庭へ飛び降りたのです。
(わっといってめがさめると、それはさいわい)
ワッと言って目が覚めると、それはさいわい
(にもゆめでした。しかし、なんだかゆめとおなじことが)
にも夢でした。しかし、なんだか夢と同じことが
(おこりそうなきがしてしかたがありません。)
起こりそうな気がして仕方がありません。
(「にじゅうめんそうのやつは、きっと、あのまどからとびおりる)
「二十面相の奴は、きっと、あの窓から飛び降りる
(にちがいない。そして、にわをよこぎってにげるに)
に違いない。そして、庭を横切って逃げるに
(ちがいない」そうじくんは、そんなふうにしんじこんで)
違いない」 壮二君は、そんな風に信じこんで
(しまいました。「あのまどのしたにはかだんがある。かだんが)
しまいました。「あの窓の下には花壇がある。花壇が
(ふみあらされるだろうなあ」そこまでくうそうしたとき、)
踏み荒らされるだろうなあ」そこまで空想した時、
(そうじくんのあたまに、ひょいときみょうなかんがえがうかびました。)
壮二君の頭に、ヒョイと奇妙な考えが浮かびました。
(「うん、そうだ。こいつはめいあんだ。あのかだんのなかへ)
「うん、そうだ。こいつは名案だ。あの花壇の中へ
(わなをしかけておいてやろう。もし、ぼくのおもって)
罠を仕掛けておいてやろう。もし、ぼくの思って
(いるとおりのことがおこるとしたら、ぞくは、あの)
いる通りのことが起こるとしたら、賊は、あの
(かだんをよこぎるにちがいない。そこにわなを)
花壇を横切るに違いない。そこに罠を
(しかけておけば、ぞくのやつはうまくかかるかも)
仕掛けておけば、賊のやつは上手くかかるかも
(しれないぞ」そうじくんがおもいついたわなというのは、)
しれないぞ」 壮二君が思いついた罠というのは、
(きょねんでしたか、おとうさんのおともだちで、さんりんを)
去年でしたか、お父さんのお友だちで、山林を
(けいえいしているひとがてつのわなをつくりたいといって、)
経営している人が鉄の罠を作りたいと言って、
(あめりかせいのみほんをもってきたことがあって、それが)
アメリカ製の見本を持ってきたことがあって、それが
(そのままくらにしまってあるのを、よくおぼえていた)
そのまま蔵にしまってあるのを、よく覚えていた
(のです。そうじくんは、そのおもいつきにむちゅうになって)
のです。 壮二君は、その思いつきに夢中になって
(しまいました。ひろいにわのなかに、ひとつぐらいわなを)
しまいました。広い庭の中に、一つぐらい罠を
(しかけておいたところで、はたしてぞくがそれに)
仕掛けておいたところで、果たして賊がそれに
(かかるかどうかうたがわしいはなしですが、そんなことを)
かかるかどうか疑わしい話ですが、そんなことを
(かんがえるよゆうはありません。ただもう、むしょうにわなを)
考える余裕はありません。ただもう、無性に罠を
(しかけてみたくなったのです。そこで、いつもより)
仕掛けてみたくなったのです。そこで、いつもより
(はやおきをして、そっとくらにしのびこんで、おおきなてつの)
早起きをして、ソッと蔵に忍び込んで、大きな鉄の
(どうぐを、えっちらおっちらもちだしたというわけ)
道具を、エッチラオッチラ持ち出したという訳
(なのです。そうじくんは、いつかいちどけいけんした、ねずみ)
なのです。 壮二君は、いつか一度経験した、ネズミ
(とりをしかけたときの、なんだかわくわくするような、)
捕りを仕掛けた時の、なんだかワクワクするような、
(ゆかいなきもちをおもいだしました。しかしこんどは、あいてが)
愉快な気持ちを思い出しました。しかし今度は、相手が
(ねずみではなくてにんげんなのです。しかもにじゅうめんそう)
ネズミではなくて人間なのです。しかも二十面相
(という、ふしぎなぞくなのです。わくわくするきもちは、)
という、不思議な賊なのです。ワクワクする気持ちは、
(ねずみのときのじゅうばいも、にじゅうばいもおおきいものでした。)
ネズミの時の十倍も、二十倍も大きいものでした。
(てつのわなをかだんのまんなかまではこぶと、おおきな)
鉄の罠を花壇の真ん中まで運ぶと、大きな
(のこぎりのついたふたつのわくを、ちからいっぱいぐっとひらいて、)
ノコギリのついた二つの枠を、力一杯グッとひらいて、
(うまくすえつけたうえ、わなにみえないように、)
上手く据え付けた上、罠に見えないように、
(そのへんのかれくさをあつめて、おおいかくしました。)
その辺の枯れ草を集めて、覆い隠しました。