『死神の名づけ親』別verグリム1
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問題文
(あるおんなのひとが、つぎのようなはなしをしてきました。)
ある女の人が、次のような話をしてきました。
(あるまずしいおとこにむすこがうまれましたが、なにしろひどいびんぼうなので、)
ある貧しい男に息子が生まれましたが、なにしろひどい貧乏なので、
(なづけおやになってやろうというひとが、だれひとりみつかりません。)
名づけ親になってやろうという人が、誰一人見つかりません。
(いっけんいっけんあるいてみましたけれど、むだぼねおりでした。)
一軒一軒歩いてみましたけれど、無駄骨折りでした。
(だれかとおりがかりのひとがきのどくにおもって、しょうちしてくれるかもしれないと、)
だれか通りがかりの人が気の毒に思って、承知してくれるかもしれないと、
(そんなことをあてにして、おおどおりへこしをおろしました。)
そんなことを当てにして、大通りへ腰をおろしました。
(まもなくやってきたのは、けだかいふくそうをしたうつくしいおんなです。)
まもなくやって来たのは、けだかい服装をした美しい女です。
(びんぼうにんがようじをたのんでみると、そういうごようならやってあげましょうと、)
貧乏人が用事を頼んでみると、そういうご用ならやってあげましょうと、
(はっきりうけあってくれました。)
はっきりうけあってくれました。
(「おなまえをおっしゃっていただきたいのですが」と、おとこがいいました。)
「お名前をおっしゃっていただきたいのですが」と、男が言いました。
(「あたくしは、みじめなくらしをしておりますが、)
「あたくしは、みじめな暮らしをしておりますが、
(あなたがどなたか、うかがわないうちは、)
あなたがどなたか、うかがわないうちは、
(なづけおやになっていただくわけにいかないので」)
名づけ親になっていただくわけにいかないので」
(おんなは、きんしでほしがいくつもぬいとりしてあるべーるを、ぱっとはらいのけて、)
女は、金糸で星がいくつもぬいとりしてあるベールを、パッとはらいのけて、
(「わたしはせいぼまりあです」といいました。)
「私は聖母マリアです」と言いました。
(「それでは、あなたにようはない」と、おとこはこたえました。)
「それでは、あなたに用はない」と、男は答えました。
(「あなたのむすこさんは、ただしいことをしない。)
「あなたの息子さんは、正しいことをしない。
(それにくわえ、みんなをえこひいきなく、いちようにあつかうことをしない。)
それに加え、みんなをえこひいきなく、一様に扱うことをしない。
(ちがうとおっしゃるなら、なぜわたしはこんなにびんぼうで、ふしあわせなのでしょうか」)
違うとおっしゃるなら、なぜ私はこんなに貧乏で、不幸せなのでしょうか」
(せいぼはとおりすぎました。)
聖母は通り過ぎました。
(それからまもなくきたのは、またおんなで、)
それからまもなく来たのは、また女で、
(せがたかく、おそろしいくらいやせており、くろいべーるにつつまれていました。)
背が高く、おそろしいくらいやせており、黒いベールに包まれていました。
(びんぼうにんがれいのようじをたのむと、おんなはなづけおやになるとやくそくしました。)
貧乏人が例の用事を頼むと、女は名づけ親になると約束しました。
(「だが、あなたはどなたですか」と、おとこがいいました。)
「だが、あなたはどなたですか」と、男が言いました。
(「あたくしはたにんからさげすまれ、なさけないくらしをしておりますが、)
「あたくしは他人からさげすまれ、情けない暮らしをしておりますが、
(だからといって、あなたがただしいことをなさるおかたでなければ、)
だからといって、あなたが正しいことをなさるお方でなければ、
(なづけおやには、なっていただくわけにはいきませんので」)
名づけ親には、なっていただくわけにはいきませんので」
(「あたしは、しにがみだよ」)
「あたしは、死神だよ」
(へんなかたちをしたものは、こうへんじをするなり、)
変な形をした者は、こう返事をするなり、
(くろいべーるをぱっとうしろへはねて、かさかさにひからびたがいこつをみせました。)
黒いベールをパッとうしろへはねて、カサカサにひからびた骸骨を見せました。
(「あなたなら、だいかんげいですよ」と、びんぼうにんがいいました。)
「あなたなら、大歓迎ですよ」と、貧乏人が言いました。
(「あなたは、だれにむかってもただしいかたで、)
「あなたは、誰に向かっても正しいかたで、
(だれかれのさべつなく、おんなじにあつかいなさるからね。)
だれかれの差別なく、おんなじに扱いなさるからね。
(ぜひいらして、むすこのせんれいをやっていただきます」)
ぜひいらして、息子の洗礼をやっていただきます」
(しにがみはたのまれたないようをしょうだくし、それからおとこにいいました。)
死神は頼まれた内容を承諾し、それから男に言いました。
(「おまえのむすこがおおきくなったら、あたしがいしゃにしてやる。)
「おまえの息子が大きくなったら、あたしが医者にしてやる。
(むすこがびょうにんのところへよばれるたんびに、あたしもでかけていく。)
息子が病人の所へ呼ばれるたんびに、あたしも出かけていく。
(あたしがびょうにんのあたまのそばにたっていたら、びょうにんはしぬし、)
あたしが病人の頭のそばに立っていたら、病人は死ぬし、
(あたしがしんだいのあしのほうにたっていたら、びょうにんはまだしなないから、)
あたしが寝台の足のほうに立っていたら、病人はまだ死なないから、
(むすこはそのつもりで、でたらめなてあてをすればいい」)
息子はそのつもりで、でたらめな手当てをすればいい」
(やがて、しにがみがいったとおり、せいねんはおいしゃさまになりました。)
やがて、死神が言った通り、青年はお医者さまになりました。
(そして、なづけおやがまくらもとにたっているのがみえると、)
そして、名づけ親が枕元に立っているのが見えると、
(「もうておくれです。ごびょうにんはもうたすかりません」といって、たちさります。)
「もう手遅れです。ご病人はもう助かりません」と言って、立ち去ります。
(なづけおやがあしのほうにたっていると、おもいつきのいいかげんなしょほうをして、)
名づけ親が足のほうに立っていると、思いつきのいいかげんな処方をして、
(それでびょうにんは、けろけろとなおるのでした。)
それで病人は、けろけろと治るのでした。
(おいしゃさんは、そこいらじゅうのひょうばんになって、)
お医者さんは、そこいらじゅうの評判になって、
(「めいい」と、もてはやされ、おかねもおもうぞんぶんもらいました。)
「名医」と、もてはやされ、お金も思う存分もらいました。
(あるひのこと、おいしゃさんは、おかねをいしころのように)
ある日のこと、お医者さんは、お金を石ころのように
(ざくざくもっているひとのところへよばれました。)
ザクザク持っている人の所へ呼ばれました。
(いってみると、しにがみがまくらもとにたっていたので、)
行ってみると、死神が枕元に立っていたので、
(「あなたはたすからない」と、あからさまにびょうにんにしらせました。)
「あなたは助からない」と、あからさまに病人に知らせました。