交差点の着信
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問題文
(ほこうしゃしんごうがあおになると、ひとびとはあるきだす。)
歩行者信号が青になると、人々は歩き出す。
(こうさてんにひとがむらがれば、くろかみやすーつにより、)
交差点に人が群がれば、黒髪やスーツにより、
(みるみるくろくぬりたくられていく。)
みるみる黒く塗りたくられていく。
(そんなこうさてんを、つうきんじにわたしはとおる。)
そんな交差点を、通勤時に私は通る。
(いつものようにむれにまぎれこうさてんをわたっていると、そのちゃくしんはなった。)
いつものように群れに紛れ交差点を渡っていると、その着信は鳴った。
(しらないばんごうだった。)
知らない番号だった。
(「どちらさまですか」)
「どちら様ですか」
(すうびょう、むごんがつづいたのち、そのおとこはくちをひらいた。)
数秒、無言が続いたのち、その男は口を開いた。
(「きょうもきれいだね」)
「今日もキレイだね」
(なにこれ?)
なにこれ?
(きみがわるい・・・・・・。)
気味が悪い……。
(わたしはつうわをきり、けいたいをかばんへとしまった。)
私は通話を切り、携帯を鞄へとしまった。
(つぎのひも、またおなじばんごうからかかってきた。)
次の日も、また同じ番号から掛かってきた。
(むししてもよかった。むしろ、むしすべきだろう。)
無視してもよかった。むしろ、無視すべきだろう。
(ただ、ひとつきになることがあった。)
ただ、ひとつ気になることがあった。
(きのうとおなじたいみんぐにかかってきたことだ。)
昨日と同じタイミングに掛かってきたことだ。
(こうさてんをわたっている、まさにそのたいみんぐだ。)
交差点を渡っている、まさにそのタイミングだ。
(まさか、どこからかかんしされている?)
まさか、どこからか監視されている?
(それとも、ただおなじようなじこくにかけてきただけだろうか。)
それとも、ただ同じような時刻にかけてきただけだろうか。
(つうきんじ、このこうさてんをわたるじこくはだいたいきまっている。)
通勤時、この交差点を渡る時刻は大体決まっている。
(きがかりだった。)
気がかりだった。
(かけてきたあいてに、しつもんしてみたい。)
掛けてきた相手に、質問してみたい。
(ちゃくしんをうけとった。)
着信を受け取った。
(「きみにふれたいよ」)
「君に触れたいよ」
(でんわをきった。)
電話を切った。
(しつもんするのは、やめた。)
質問するのは、辞めた。
(ねちっこいこえしつもまた、きしょくわるいのだ。)
ねちっこい声質もまた、気色悪いのだ。
(さらにそのよくじつ。)
さらにその翌日。
(ぜんじつ、ざんぎょうでおそくまではたらいたわたしはごぜんのやすみをもらっていた。)
前日、残業で遅くまで働いた私は午前の休みをもらっていた。
(なので、ごごからのしゅっきんである。)
なので、午後からの出勤である。
(こうさてんをわたっていた。)
交差点を渡っていた。
(ひるまもやはり、ひとでむれていた。)
昼間もやはり、人で群れていた。
(ちゃくしんがなった。)
着信が鳴った。
(おもわず、からだがびくっとふるえた。)
思わず、体がびくっと震えた。
(けいたいをかくにんすると、あのばんごうだ。)
携帯を確認すると、あの番号だ。
(じかんたいでかけてくるわけじゃない。)
時間帯でかけてくるわけじゃない。
(きのうはごぜん、きょうはごごである。)
昨日は午前、今日は午後である。
(わたしがこうさてんをわたるころあいを、しっかりみはからっているのだ。)
私が交差点を渡る頃合いを、しっかり見計らっているのだ。
(つけられてる?)
つけられてる?
(わたしはたちどまり、まわりをみわたした。)
私は立ち止まり、周りを見渡した。
(ただただひとびとがとだえなく、とおりすぎていくばかりだ。)
ただただ人々が途絶えなく、通り過ぎていくばかりだ。
(そしておおきなびるぐんが、わたしをみおろしている。)
そして大きなビル群が、私を見下ろしている。
(ちゃくしんにでて、そのおとこがはなしだすまえにわたしはまくしたてた。)
着信に出て、その男が話しだす前に私はまくしたてた。
(「どういうこと?あなただれなの?どこからかみてるの?」)
「どういうこと?あなた誰なの?どこからか見てるの?」
(「きみをつかまえちゃいたいよ」)
「君を捕まえちゃいたいよ」
(「なにいってんのきもちわるい、またでんわかけたらけいさつにれんらくするよ」)
「何言ってんの気持ち悪い、また電話かけたら警察に連絡するよ」
(「もう、つかまえちゃおうかな」)
「もう、捕まえちゃおうかな」
(「つかまえる?ばかじゃないの」)
「捕まえる?バカじゃないの」
(「うん、きめたよ。いますぐきみをつれさっちゃうね」)
「うん、決めたよ。今すぐ君を連れ去っちゃうね」
(「は?こんなひとごみでひとをつれさろうとしたら、)
「は?こんな人混みで人を連れ去ろうとしたら、
(だれかがとめるにきまってるでしょ。)
誰かが止めるに決まってるでしょ。
(あんたのほうこそけいさつにつかまっておわりだよ」)
アンタの方こそ警察に捕まって終わりだよ」
(「わかってないなあ、きみは。)
「わかってないなあ、君は。
(むれのなかにいるひとりのことなんて、だれもきにしちゃいないんだよ。)
群れの中にいる一人のことなんて、誰も気にしちゃいないんだよ。
(ひとりきえたところで、だれもきづかないさ。)
一人消えたところで、誰も気づかないさ。
(きみをみているのは、ぼくだけなんだからね」)
君を見ているのは、僕だけなんだからね」
(ごとっ、とちかくでおとがした。)
ごとっ、と近くで音がした。
(それとどうじに、わたしのあしくびはつかまれていた。)
それと同時に、私の足首は掴まれていた。
(しせんをしたにむけると、まんほーるのふたがあがっていた。)
視線を下に向けると、マンホールの蓋が上がっていた。
(そのおくに、あやしくめがひかっている。)
その奥に、怪しく目が光っている。
(こえをあげるまもなく、わたしはくらやみへとおちていった。)
声を上げる間もなく、私は暗闇へと落ちて行った。