『少年探偵団』江戸川乱歩2
○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | ぶす | 4900 | B | 5.2 | 93.6% | 868.5 | 4566 | 310 | 99 | 2024/10/24 |
2 | BE | 4198 | C | 4.5 | 92.4% | 1013.1 | 4633 | 380 | 99 | 2024/10/23 |
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問題文
(いんどじんやなんようのひとのくろさは、ほんとうのくろさでは)
インド人や南洋の人の黒さは、本当の黒さでは
(ありません。そのまもののからだは、どんなこいすみよりも、)
ありません。その魔物の体は、どんな濃い墨よりも、
(もっとくろく、くろさがぜっちょうにたっして、ついに)
もっと黒く、黒さが絶頂に達して、ついに
(ひとのめにもみえないほどになっているのにちがい)
人の目にも見えないほどになっているのに違い
(ありません。くろいまものは、やみのなかや、くろいはいけいのまえ)
ありません。 黒い魔物は、闇の中や、黒い背景の前
(では、にんじゅつつかいもどうようです。どんないたずらも)
では、忍術使いも同様です。どんなイタズラも
(おもうがままです。もしそいつが、なにかおそろしい)
思うがままです。もしそいつが、何かおそろしい
(あくじをたくらんだならどうでしょう。わるいことをして)
悪事をたくらんだならどうでしょう。悪いことをして
(おいて、とらえられそうになったら、いきなり)
おいて、とらえられそうになったら、いきなり
(やみのなかへとけこんで、すがたをけしてしまえばいいのです)
闇の中へ溶け込んで、姿を消してしまえばいいのです
(から、こんなやさしいことはありません。また、)
から、こんなやさしいことはありません。また、
(とらえるほうにしてみれば、こんなこまったあいては)
とらえるほうにしてみれば、こんな困った相手は
(ないのです。くろいまものとは、はたしてなにもの)
ないのです。 黒い魔物とは、果たして何者
(なのでしょうか。おとこでしょうか、おんなでしょうか、)
なのでしょうか。男でしょうか、女でしょうか、
(おとなでしょうか、こどもでしょうか。そしてまた、)
大人でしょうか、子どもでしょうか。そしてまた、
(このえたいのしれない、くろいかげぼうしは、いったいなにをしよう)
この得体の知れない、黒い影法師は、一体何をしよう
(というのでしょうか。ただくろいへいからとびだしたり、)
というのでしょうか。ただ黒い塀から飛び出したり、
(くろいみずのなかをおよいだり、ひとのかげになってじめんに)
黒い水の中を泳いだり、人の影になって地面に
(よこたわったりする、むじゃきないたずらをして)
横たわったりする、無邪気なイタズラをして
(よろこんでいるだけでしょうか。いやいや、そうでは)
喜んでいるだけでしょうか。いやいや、そうでは
(ないでしょう。やつはなにかしら、とほうもないあくじを)
ないでしょう。やつは何かしら、途方もない悪事を
(たくらんでいるにちがいありません。いったいぜんたい、)
たくらんでいるに違いありません。一体全体、
(どのようなあくじをはたらこうというのでしょうか。)
どのような悪事を働こうというのでしょうか。
(このあくまをあいてにたたかうものは、こばやししょうねんを)
この悪魔を相手にたたかう者は、小林少年を
(だんちょうとするしょうねんたんていだんです。じゅうにんのゆうかんなしょうがくせい)
団長とする少年探偵団です。十人の勇敢な小学生
(によってそしきされたしょうねんたんていだん、だんちょうはあけちたんていの)
によって組織された少年探偵団、団長は明智探偵の
(めいじょしゅとしてしられたこばやしよしおしょうねんです。)
名助手として知られた小林芳雄少年です。
(そのこばやししょうねんのせんせいはいうまでもなく、だいたんてい)
その小林少年の先生は言うまでもなく、大探偵
(あけちこごろうです。にほんいちのしりつめいたんていと、)
明智小五郎です。 日本一の私立名探偵と、
(そのはいかのしょうねんたんていだん、あいては、おばけのような)
その配下の少年探偵団、相手は、お化けのような
(へんげんじざいのくろいかいぶつ、ああ、このたたかいは)
変幻自在の黒い怪物、ああ、このたたかいは
(どうなるのでしょう。)
どうなるのでしょう。
(「かいぶつついせき」)
「怪物追跡」
(やみとおなじいろをしたかいぶつが、とうきょうとのあちこちに)
闇と同じ色をした怪物が、東京都のあちこちに
(すがたをあらわして、やみのなかでしろいはをむいてけらけら)
姿を現して、闇の中で白い歯をむいてケラケラ
(わらうという、うすきみわるいうわさが、たちまち)
笑うという、薄気味悪いウワサが、たちまち
(とうきょうじゅうにひろがり、しんぶんにもおおきくのるように)
東京中にひろがり、新聞にも大きく載るように
(なりました。としをとったひとたちは、きっと)
なりました。 歳をとった人たちは、きっと
(ましょうのものがいたずらをしているのだ、おばけに)
魔性のものがイタズラをしているのだ、お化けに
(ちがいないと、さもきみわるそうにうわさしあい)
違いないと、さも気味悪そうにウワサし合い
(ましたが、わかいひとたちは、おばけをしんじる)
ましたが、若い人たちは、お化けを信じる
(きにはなれませんでした。それは、やっぱり)
気にはなれませんでした。それは、やっぱり
(にんげんにきまっている。どこかのばかなやつが、)
人間に決まっている。どこかの馬鹿なやつが、
(そんなとほうもないまねをして、おもしろがっている)
そんな途方もない真似をして、面白がっている
(のだろうとかんがえていました。ところが、ひがたつに)
のだろうと考えていました。 ところが、日がたつに
(つれて、おばけやにんげんにせよ、そのくろいやつは、)
つれて、お化けや人間にせよ、その黒いやつは、
(ただいたずらをしているだけではない、なにかしら)
ただイタズラをしているだけではない、何かしら
(おそろしいあくじをたくらんでいるにちがいないという)
おそろしい悪事をたくらんでいるに違いないという
(ことが、だんだんわかってきたのです。あとになって)
ことが、段々わかってきたのです。 あとになって
(かんがえてみますと、このくろいかいぶつのしゅつげんは、)
考えてみますと、この黒い怪物の出現は、
(じつにいじょうなはんざいじけんのいとぐちとなったのでした。)
じつに異常な犯罪事件の糸口となったのでした。
(それは、とうきょうをちゅうしんにしておこったのですが、)
それは、東京を中心にして起こったのですが、
(それにかんけいしているじんぶつは、にほんじんばかりでは)
それに関係している人物は、日本人ばかりでは
(なく、いわばこくさいてきなはんざいじけんでした。では、)
なく、いわば国際的な犯罪事件でした。 では、
(これから、くろいまもののいたずらがだんだん、はんざいらしい)
これから、黒い魔物のイタズラが段々、犯罪らしい
(かたちにかわっていくできごとを、じゅんじょをおっておはなし)
形に変わっていく出来事を、順序を追ってお話
(しましょう。どくしゃしょくんがよくごしょうちの、こばやししょうねんを)
しましょう。 読者諸君がよくご承知の、小林少年を
(だんちょうにしたしょうねんたんていだんのなかに、かつらしょういちくんというしょうねんが)
団長にした少年探偵団の中に、桂正一君という少年が
(いました。かつらくんのおうちは、せたがやくのたまがわでんしゃの)
いました。桂君のおうちは、世田谷区の玉川電車の
(えんせんにあって、はしばそうじくんたちのがっこうとはちがいました)
沿線にあって、羽柴壮二君たちの学校とは違いました
(けれども、しょういちくんとそうじくんは、いとこどうしなものです)
けれども、正一君と壮二君は、いとこ同士なものです
(から、そうじくんにさそわれてしょうねんたんていだんにくわわった)
から、壮二君に誘われて少年探偵団に加わった
(のです。かつらくんは、じぶんがたんていだんにはいっただけ)
のです。 桂君は、自分が探偵団に入っただけ
(でなく、たまがわでんしゃのえんせんにおうちがある、きゅうゆうの)
でなく、玉川電車の沿線におうちがある、級友の
(しのざきはじめくんをさそって、ふたりでなかまいりをしたのです。)
篠崎始君を誘って、二人で仲間入りをしたのです。
(あるばんのこと、かつらしょういちくんは、でんしゃでひとえきほど)
ある晩のこと、桂正一君は、電車で一駅ほど
(へだたったところにある、しのざきくんのおうちをたずねて、)
へだたった所にある、篠崎君のおうちをたずねて、
(しのざきくんのべんきょうべやで、いっしょにしゅくだいをといたり、)
篠崎君の勉強部屋で、一緒に宿題をといたり、
(おはなしをしたりして、はちじごろまであそんでいましたが、)
お話をしたりして、八時頃まで遊んでいましたが、
(それから、おうちにかえるとちゅうで、おそろしいものに)
それから、おうちに帰る途中で、おそろしいものに
(であってしまったのです。もし、おくびょうなしょうねん)
出会ってしまったのです。 もし、臆病な少年
(でしたら、すこしまわりみちをしておもてどおりをあるくのです)
でしたら、少しまわり道をして表通りを歩くのです
(けれど、かつらくんはがっこうではしょうねんずもうのせんしゅをしている)
けれど、桂君は学校では少年相撲の選手をしている
(ほどで、うでにおぼえのあるごうたんなしょうねんでしたから、)
ほどで、腕におぼえのある豪胆な少年でしたから、
(うらどおりのちかみちを、てくてくとあるいていきました。)
裏通りの近道を、テクテクと歩いて行きました。
(りょうがわはながいへいや、こんくりーとべいや、いけがき)
両側は長い塀や、コンクリート塀や、生け垣
(ばかりで、がいとうもほのぐらく、よふけでもないのに、)
ばかりで、街灯もほの暗く、夜ふけでもないのに、
(まったくひとどおりもないさびしさです。はるのことでした)
まったく人通りもないさびしさです。 春のことでした
(から、きこうはちっともさむくないのですが、そうして、)
から、気候はちっとも寒くないのですが、そうして、
(まるでしにたえたようなよるのまちをあるいていますと、)
まるで死に絶えたような夜の町を歩いていますと、
(なんとなくくびすじのところが、ぞくぞくとさむくかんじます。)
なんとなく首すじの所が、ゾクゾクと寒く感じます。
(ひとつのまがりかどをまがって、ひょいとまえをみますと、)
一つの曲がり角を曲がって、ヒョイと前を見ますと、
(にじゅうめーとるほどむこうのがいとうのしたを、くろいひとかげが)
二十メートルほど向こうの街灯の下を、黒い人影が
(あるいていきます。それは、おかしなことに、)
歩いて行きます。それは、おかしなことに、
(ぼうしもかぶらず、きものもきていない、そのくせ、)
帽子もかぶらず、着物も着ていない、そのくせ、
(あたまのてっぺんからあしのさきまで、すみのようにまっくろな)
頭のてっぺんから足の先まで、墨のように真っ黒な
(ひとのすがたなのです。さすがのかつらしょうねんも、このいような)
人の姿なのです。 さすがの桂少年も、この異様な
(ひとかげをひとめみると、ぞーっとしてたちすくんで)
人影を一目見ると、ゾーッとして立ちすくんで
(しまいました。「あいつかもしれない。うわさの)
しまいました。「あいつかもしれない。ウワサの
(くろいまものかもしれない」しんぞうがどきどきとなって)
黒い魔物かもしれない」 心臓がドキドキと鳴って
(きました。せすじをこおりのようにつめたいものが、)
きました。背すじを氷のように冷たいものが、
(すーっとはしりました。かつらくんは、いちもくさんにうしろへ)
スーッと走りました。桂君は、一目散にうしろへ
(にげだそうとしました。しかし、にげなかった)
逃げ出そうとしました。しかし、逃げなかった
(のです。やっとのことでふみとどまったのです。)
のです。やっとのことで踏みとどまったのです。
(かつらくんは、じぶんがめいよあるしょうねんたんていだんのいちいんである)
桂君は、自分が名誉ある少年探偵団の一員である
(ことを、おもいだしました。しかも、たったいま、)
ことを、思い出しました。しかも、たった今、
(しのざきくんのいえで、くろいまもののはなしをして、「ぼくが、)
篠崎君の家で、黒い魔物の話をして、「ぼくが、
(もしそいつにであったら、しょうたいをみやぶってやるんだが)
もしそいつに出会ったら、正体を見破ってやるんだが
(なあ」と、おおきなことをいってきたばかりです。)
なあ」 と、大きなことを言ってきたばかりです。