『千羽鶴』小川未明1【完】
意味は、健康・長寿・幸福・災害・非核
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | subaru | 7329 | 光 | 7.7 | 95.3% | 548.9 | 4231 | 208 | 83 | 2024/10/29 |
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問題文
(とあるむらに、ひとのよいおばあさんがおりました。)
とある村に、人のよいおばあさんがおりました。
(あるとき、じんじゃのけいだいをとおりかかり、そのじんじゃがたいへんさびしく、)
ある時、神社の境内を通りかかり、その神社が大変さびしく、
(あれてしまっているのにきづきました。)
荒れてしまっているのに気づきました。
(おばあさんが、まだわかいむすめのころには、そんなことはなかったのです。)
おばあさんが、まだ若い娘の頃には、そんなことはなかったのです。
(おぼんには、このけいだいで、みんなとうたをうたったり、)
お盆には、この境内で、みんなと歌をうたったり、
(おどったりしたこともありました。)
踊ったりしたこともありました。
(このころには、みながよくおまいりにきておりました。)
この頃には、みながよくお参りに来ておりました。
(「よもすえだね。かみさまをだいじにしない。もったいないことだ」と、)
「世も末だね。神さまを大事にしない。もったいないことだ」と、
(おばあさんはおもいました。)
おばあさんは思いました。
(いえにかえってからもおばあさんは、そのことをおもっていました。)
家に帰ってからもおばあさんは、そのことを思っていました。
(「おばあさん、つるをおってよ」と、まごたちがいろとりどりのかみをもって、)
「おばあさん、鶴を折ってよ」と、孫たちが色とりどりの紙を持って、
(おばあさんのところへやってきました。)
おばあさんの所へやって来ました。
(おばあさんはつるをじょうずにおって、こどもたちによくあげていたのです。)
おばあさんは鶴を上手に折って、子供たちによくあげていたのです。
(「よしよし、おってやるよ」と、おばあさんはいいました。)
「よしよし、折ってやるよ」と、おばあさんは言いました。
(しなびたゆびさきで、めをしょぼしょぼさせながら、)
しなびた指先で、目をショボショボさせながら、
(おばあさんはあか、あお、きいろのかみで、いくつもちいさいつるをおりました。)
おばあさんは赤、青、黄色の紙で、いくつも小さい鶴を折りました。
(そのときふと、せんばづるをつくってじんじゃへささげたら、じぶんだけはかみさまを)
その時ふと、千羽鶴を作って神社へ捧げたら、自分だけは神さまを
(ありがたくおもっていることが、つうじるだろうとかんがえたのです。)
ありがたく思っていることが、通じるだろうと考えたのです。
(おばあさんはまごたちに、いくつもつくってやったあとで、)
おばあさんは孫たちに、いくつも作ってやったあとで、
(ねんをこめて、かみさまにささげるつるをつくりました。)
念を込めて、神さまに捧げる鶴を作りました。
(それをいとでつないで、じんじゃのはいでんのとびらのこうしにつるしました。)
それを糸でつないで、神社の拝殿の扉の格子につるしました。
(おばあさんは、てをあわせておがんで、)
おばあさんは、手を合わせて拝んで、
(「これですこしは、にぎやかになった」といいました。)
「これで少しは、にぎやかになった」と言いました。
(さびしいかみさまのめをたのしませることができれば、)
さびしい神さまの目を楽しませることができれば、
(じぶんのねがいはたっせいできるとおもったのです。)
自分の願いは達成できると思ったのです。
(おばあさんがつくったせんばづるは、さむいかぜにふかれてひらひらしていました。)
おばあさんが作った千羽鶴は、寒い風に吹かれてヒラヒラしていました。
(そのよる、おばあさんはいえにいながら、)
その夜、おばあさんは家にいながら、
(じんじゃのとびらにさがっているせんばづるが、どうなっただろうかとおもっていました。)
神社の扉に下がっている千羽鶴が、どうなっただろうかと思っていました。
(それから、おばあさんがねてからふしぎなことがおこりました。)
それから、おばあさんが寝てから不思議なことが起こりました。
(いちわのしろいつるがまどからとびこんできて、おばあさんにむかっていいました。)
一羽の白い鶴が窓から飛び込んできて、おばあさんに向かって言いました。
(「かみさまからいいつかってきた、つかいのものです。)
「神さまから言いつかってきた、使いのものです。
(さあはやく、わたしのせなかのうえにのってください。)
さあ早く、私の背中の上に乗ってください。
(いいところへつれていってあげますから」と、しろいつるはいいました。)
いい所へ連れていってあげますから」と、白い鶴は言いました。
(「おまえは、わたしがつくってかみさまにささげた、)
「おまえは、私が作って神さまに捧げた、
(せんばづるのなかのしろいつるか」と、おばあさんは、たずねました。)
千羽鶴の中の白い鶴か」と、おばあさんは、たずねました。
(「そうです。きょうはてんきがいいから、いっきにあちらへかけていくことが)
「そうです。今日は天気がいいから、一気にあちらへ駆けて行くことが
(できます」おばあさんは、つるのせなかにのりました。)
できます」 おばあさんは、鶴の背中に乗りました。
(よるだとおもっていましたが、いつのまにかおおぞらをかけると、)
夜だと思っていましたが、いつのまにか大空を駆けると、
(そらはあおあおとすんでいて、ひのひかりはいっぱいにかがやいており、)
空は青々と澄んでいて、日の光は一杯に輝いており、
(じつにうららかでいいてんきでした。)
じつにうららかでいい天気でした。
(そのご、つるはうみのうえをとび、ひろびろとしたのはらのうえへおりたのです。)
そのご、鶴は海の上を飛び、広々とした野原の上へ降りたのです。
(「さあ、ここがごくらくというところです」と、つるはいいました。)
「さあ、ここが極楽という所です」と、鶴は言いました。
(おばあさんは、はなしにきいている「ごくらく」とは、だいぶようすがちがうので、)
おばあさんは、話に聞いている「極楽」とは、だいぶ様子が違うので、
(びっくりしました。べつにりっぱなごでんのようなものも、)
ビックリしました。別に立派なご殿のようなものも、
(またえにあるてんじんのようなものもみえなかったからです。)
また絵にある天人のような者も見えなかったからです。
(ただうつくしくてあかいはながいちめんにさきみだれており、)
ただ美しくて赤い花が一面に咲き乱れており、
(それがどこまでもつづいていました。)
それがどこまでも続いていました。
(そして、あちらのほうはひかりのうみのように、ゆけばゆくほどあかるかったです。)
そして、あちらのほうは光の海のように、ゆけばゆくほど明るかったです。
(そのとき、あちらのほうのみちに、うまにまたがったこどもがとおりかかりました。)
その時、あちらのほうの道に、馬にまたがった子供が通りかかりました。
(おばあさんがよくみると、そのこはおばあさんがおよめにきてから、)
おばあさんがよく見ると、その子はおばあさんがお嫁にきてから、
(さいしょにうんだおとこのこでした。そのこはいつつになったとき、)
最初に生んだ男の子でした。その子は五つになった時、
(びょうきでしんだのですが、まちがいなくそのこなのです。)
病気で死んだのですが、間違いなくその子なのです。
(おばあさんは、このとしになっても、そのこをわすれることができませんでした。)
おばあさんは、この歳になっても、その子を忘れることができませんでした。
(うまもまた、おばあさんのいえでながくはたらいていた、みおぼえのあるうまです。)
馬もまた、おばあさんの家で長く働いていた、見覚えのある馬です。
(たにんのてにわたってから、どうなっただろうと、つねにおもっていたうまです。)
他人の手に渡ってから、どうなっただろうと、つねに思っていた馬です。
(そしてふしぎなことに、そのうまにそのこがのっていたものですから、)
そして不思議なことに、その馬にその子が乗っていたものですから、
(おばあさんはおおいそぎであとをおいかけました。)
おばあさんは大急ぎであとを追いかけました。
(こどもは、こちらをふりかえってにっこりとわらい、)
子供は、こちらを振り返ってニッコリと笑い、
(あかるくてまぶしい、あちらのほうへはしっていきました。)
明るくてまぶしい、あちらのほうへ走って行きました。
(「はやく、わたしをあちらへつれていっておくれ」と、)
「早く、私をあちらへ連れて行っておくれ」と、
(おばあさんはつるにむかっていいました。)
おばあさんは鶴に向かって言いました。
(しろいつるはおばあさんをせなかにのせて、おおぞらをとびました。)
白い鶴はおばあさんを背中に乗せて、大空を飛びました。
(おばあさんはたかくなったりひくくなったりして、)
おばあさんは高くなったり低くなったりして、
(からだがゆれたかとおもうと、いつしかゆめからさめたのです。)
体が揺れたかと思うと、いつしか夢から覚めたのです。
(「じんじゃへささげたせんばづるはどうなっただろう」と、おばあさんはおもいました。)
「神社へ捧げた千羽鶴はどうなっただろう」と、おばあさんは思いました。
(に、さんにちたってから、おばあさんはじんじゃへいってみました。)
二、三日たってから、おばあさんは神社へ行ってみました。
(ちょうどはいでんのへりに、あかんぼうをせおったおんなのこじきが、)
ちょうど拝殿のへりに、赤ん坊を背負った女の乞食が、
(こしをかけてやすんでいました。そして、あかんぼうのてには、)
腰をかけて休んでいました。そして、赤ん坊の手には、
(おばあさんがささげた、せんばづるのなかのいちわがだいじそうににぎられていました。)
おばあさんが捧げた、千羽鶴の中の一羽が大事そうに握られていました。
(あかんぼうは、それにどれほどよろこんでいたでしょう。)
赤ん坊は、それにどれほど喜んでいたでしょう。
(ははおやが、いまどんなにつかれているか、またくうふくになやんでいるか、)
母親が、今どんなに疲れているか、また空腹に悩んでいるか、
(そんなこともしらずに、むじゃきにつるをもって、わらっていました。)
そんなことも知らずに、無邪気に鶴を持って、笑っていました。
(このありさまをみると、おばあさんはふかくあわれにかんじたのです。)
この有り様を見ると、おばあさんは深く哀れに感じたのです。
(じぶんがかみさまにささげたせんばづるのなかのいちわを、)
自分が神さまに捧げた千羽鶴の中の一羽を、
(かみさまがこのあかんぼうにくれたにちがいないとおもいました。)
神さまがこの赤ん坊にくれたに違いないと思いました。
(おばあさんは、かみさまをよろこばしただけでなく、)
おばあさんは、神さまを喜ばしただけでなく、
(あかんぼうもよろこばしたので、たいへんいいことをしたとおもいました。)
赤ん坊も喜ばしたので、大変いいことをしたと思いました。
(おばあさんはふところからさいふをだして、おかねをおんなのこじきにあげました。)
おばあさんは懐から財布を出して、お金を女の乞食にあげました。
(そのこじきは、たいそうよろこびました。)
その乞食は、たいそう喜びました。
(そしてなんかいもあたまをさげて、おばあさんのしんせつにかんしゃしました。)
そして何回も頭を下げて、おばあさんの親切に感謝しました。
(おばあさんが、じんじゃのけいだいからでていくうしろすがたを、)
おばあさんが、神社の境内から出ていく後ろ姿を、
(こじきはみおくっていましたが、やがてみえなくなると、)
乞食は見送っていましたが、やがて見えなくなると、
(かみさまにむかって、おばあさんにしあわせなことがあるよういのったのでした。)
神さまに向かって、おばあさんに幸せなことがあるよう祈ったのでした。