悪霊 江戸川乱歩 4

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね2お気に入り登録
プレイ回数719難易度(4.5) 7281打 長文
江戸川乱歩の短編小説です
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 zero 6384 S 6.5 96.9% 1106.0 7290 229 99 2024/10/21
2 りく 5957 A+ 6.0 98.0% 1207.5 7339 145 99 2024/09/18
3 布ちゃん 5420 B++ 5.8 93.7% 1247.5 7244 482 99 2024/11/09

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問題文

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(そのひとつは、あねざきみぼうじんがまるはだかにされてころされていたことだ。おなじくらの)

その一つは、姉崎未亡人が丸裸にされて殺されていたことだ。同じ蔵の

(にかいのかたすみにかのじょのふだんぎがぬぎすててあったところをみると、ひがいしゃは)

二階の片隅に彼女の不断着が脱ぎ捨ててあった所を見ると、被害者は

(くらのなかへはいるまではちゃんときものをきていたことはたしかで、そのにかいへ)

蔵の中へ這入るまではちゃんと着物を着ていたことは確かで、その二階へ

(きてからみずからぬいだか、はんにんにぬがされたかしたものにそういないのだが、)

来てから自から脱いだか、犯人に脱がされたかしたものに相違ないのだが、

(それがこのさつじんじけんにどんないみをもっていたのかちょっとそうぞうが)

それがこの殺人事件にどんな意味を持っていたのかちょっと想像が

(つかないのだ。それからもうひとつのてんは、(このほうがいっそうきかいであって、)

つかないのだ。それからもう一つの点は、(この方が一層奇怪であって、

(あねざきふじんさつがいじけんちゅうでのもっともいちじるしいじじつなのだが)ふじんのしたいにはさきにしるした)

姉崎夫人殺害事件中での最も著しい事実なのだが)夫人の死体には先に記した

(ちめいしょうのほかに、ぜんしんにわたってろくかしょに、ちいさいきりきずが)

致命傷の外に、全身に亙[わた]って六ケ所に、小さい切斬り傷が

(あったことだ。かんていしょのくちょうをまねてくわしくいうと、みぎさんかくきんぶ、)

あったことだ。鑑定書の口調をまねて詳しく云うと、右三角筋部、

(ひだりぜんじょうはくぶ、さゆうでんぶ、みぎまえだいたいぶ、ひだりこうじつ ぶのろっかしょに、)

左前上膊部、左右臀部、右前大腿部、左後膝部の六ケ所に、

(ながささんせんちからいっせんちくらいまでの、かみそりようのきょうきによるものとおぼしき)

長さ三センチから一センチ位までの、剃刀様の兇器によるものと覚しき

(けいびなぎりきずがあって、そこからろっぽんのちのかわがぜんしんにいようなしまを)

軽微な斬り傷があって、そこから六本の血の河が全身に異様な縞を

(えがいていたのだ。だれもみなこれらのきずがあまりちいさすぎることをふしんにおもった。)

描いていたのだ。誰も皆これらの傷が余り小さ過ぎることを不審に思った。

(さつじんしゃがろくどきりつけてろくどしっぱいし、ななたびめにやっともくてきを)

殺人者が六度斬りつけて六度失敗し、七度目[たびめ]にやっと目的を

(たっしたとかんがえるためには、きずがふしぜんにちいさすぎた。いくらしくじったからと)

達したと考える為には、傷が不自然に小さ過ぎた。いくらしくじったからと

(いって、ろくどがろくどともこんなかすりきずのようなものしかつけえなかったとは)

云って、六度が六度ともこんなかすり傷の様なものしかつけ得なかったとは

(そうぞうできないことだ。またぎりきずのかしょがぜんごさゆうにとびはなれているのも)

想像出来ない事だ。又斬り傷の箇所が前後左右に飛び離れているのも

(ふしぜんであって、ひがいしゃがにげまわったりていこうしたためだとかいしゃくするにしても、)

不自然であって、被害者が逃げ廻ったり抵抗した為だと解釈するにしても、

(なんとなくしゅこうしがたいところがある。しかもふしぎはそればかりでは)

何となく首肯[しゅこう]し難い所がある。しかも不思議はそればかりでは

(なかった。これらのきずぐちから、ながれだしているちしおのかわのほうこうが、きずぐちの)

なかった。これらの傷口から、流れ出している血潮の河の方向が、傷口の

など

(ちいさすぎることなどよりはさらにいっそうきかいなかんじをあたえるのだ。といういみは、)

小さ過ぎる事などよりは更らに一層奇怪な感じを与えるのだ。と云う意味は、

(それらのちのながれのほうこうがまったくめちゃくちゃであって、たとえばみぎかたの)

それらの血の流れの方向が全く滅茶苦茶であって、例えば右肩の

(きずぐちからのものは、ひだりかたにむかっておうりゅうし、ひだりうでのきずぐちからのものは)

傷口からのものは、左肩に向って横流し、左腕の傷口からのものは

(てくびにむかってかりゅうし、ひだりあしからのものははんたいにからだのじょうぶにむかってぎゃくりゅうし、)

手首に向って下流し、左足からのものは反対に身体の上部に向って逆流し、

(またあるきずぐちからのものはななめにながれているというちょうしで、なかにも)

又ある傷口からのものは斜めに流れていると云う調子で、中にも

(いようにかんじられたのは、みぎでんぶからの(これがいちばんおおきいきずぐちなのだが))

異様に感じられたのは、右臀部からの(これが一番大きい傷口なのだが)

(ちのながれはよこにながれ、こしをとおってかふくぶのひだりのはじちかくまで、つまり )

血の流れは横に流れ、腰を通って下.腹部の左の端[はじ]近くまで、つまり

(こしのぶぶんをほとんどいっしゅうしているというありさまであった。いかにひがいしゃがていこうし、)

腰の部分を殆ど一周しているという有様であった。如何に被害者が抵抗し、

(もがきまわったにもせよ、こんなめちゃくちゃなちのながれかたがあるものでなく、)

もがき廻ったにもせよ、こんな滅茶苦茶な血の流れ方があるものでなく、

(さいばんいなどもまったくはじめてのけいけんだとおどろいていた。したいのしょけんはだいたいいじょうに)

裁判医なども全く初めての経験だと驚いていた。死体の所見は大体以上に

(つきている。ふじんのぜつめいした(あるいはきょうこうのおこなわれた)じかんは、いしのかんていでは)

尽きている。夫人の絶命した(或は兇行の行われた)時間は、医師の鑑定では

(そのひのごごというていどのばくぜんとしたことしかわからなかった。またのちに)

その日の午後という程度の漠然とした事しか分らなかった。又後[のち]に

(とりしらべられたところによると、きんじょのひとたちがふじんのひめいをきいていたというような)

取調べられた所によると、近所の人達が夫人の悲鳴を聞いていたという様な

(じじつもなく、けっきょくこのさつじんじけんは、じょちゅうがつかいをいいつけられてうちをでた)

事実もなく、結局この殺人事件は、女中が使を云いつけられて家[うち]を出た

(れいじはんごろからかのじょがきたくしたよじはんごろまでのあいだにおこなわれたものだといういじょうに)

零時半頃から彼女が帰宅した四時半頃までの間に行われたものだという以上に

(せいかくなじかんをけっていするざいりょうは、いまのところはっけんされていないのだ。なおみぼうじんの)

正確な時間を決定する材料は、今の所発見されていないのだ。なお未亡人の

(したいはのちにていだいかいぼうしつにはこばれることになったが、そのけっかについては)

屍体は後に帝大解剖室に運ばれることになったが、その結果については

(いずれかくきかいがあるとおもう。)

いずれ書く機会があると思う。

(つぎにけんしょうのひとびとは、そのどぞうのにかいをしゅとして、あねざきていのしつない、ていえんをとわず、)

次に検証の人々は、その土蔵の二階を主として、姉崎邸の室内、庭園を問わず、

(さつじんきょうきそのたはんにんのいりゅうひん、しもん、あしあと、はんにんのしんにゅうとうそうのけいろなどを)

殺人兇器その他犯人の遺留品、指紋、足跡、犯人の侵入逃走の経路などを

(はっけんするためのめんみつなそうさくをおこなったが、そのけっかはほとんどとろうであったと)

発見する為の綿密な捜索を行ったが、その結果は殆ど徒労であったと

(いってもよかった。けんじやけいさつかんたちのこころのなかまでみぬくことはできないけれど、)

云ってもよかった。検事や警察官達の心の中まで見抜くことは出来ないけれど、

(すくなくともかれらがとりかわしていたかいわや、ぼくがわたぬきけんじからききだしたところによって)

少くとも彼等が取交していた会話や、僕が綿貫検事から聞出した所によって

(そうぞうすれば、そうさくのけっかかれらのしゅうしゅうしえたじじつは)

想像すれば、捜索の結果彼等の蒐集[しゅうしゅう]し得た事実は

(さのしょてんにつきていた。)

左[さ]の諸点に尽きていた。

(かみそりとそうぞうされるさつじんきょうきはどぞうのなかはもちろん、ていないのどこにもみいだすことは)

剃刀と想像される殺人兇器は土蔵の中は勿論、邸内のどこにも見出すことは

(できなかった。もっともあねざきふじんのけしょうだいとしょせいのつくえのひきだしとから)

出来なかった。尤も姉崎夫人の化粧台と書生の机の抽斗[ひきだし]とから

(かみそりがはっけんされはしたけれど、それはりょうほうともさつじんのきょうきとしては)

剃刀が発見されはしたけれど、それは両方とも殺人の兇器としては

(しようできそうもないあんぜんかみそりであって、かえばにもべつだんのいじょうをみとめることは)

使用出来相もない安全剃刀であって、替刃にも別段の異常を認めることは

(できなかった。つまりきょうきははんにんじしんのものであって、かれはそれをげんばに)

出来なかった。つまり兇器は犯人自身のものであって、彼はそれを現場に

(いきしてたちさるほどおろかでなかったのにちがいない。はんにんのあしあととしもんも)

遺棄して立去る程愚かでなかったのに違いない。犯人の足跡と指紋も

(まったくみいだすことができなかった。ていえんのつちはやわらかだったけれど、そこには)

全く見出すことが出来なかった。庭園の土は軟かだったけれど、そこには

(にわげたいがいのあとはなく、げんかんまえにはしきいしがしきつめてあった。どぞうのいたのまには)

庭下駄以外の跡はなく、玄関前には敷石が敷きつめてあった。土蔵の板の間には

(うすくほこりがつもっていて、それがひどくかきみだされたあとはみえたが、めいりょうなあしあとは)

薄く埃が積っていて、それがひどく掻き乱された跡は見えたが、明瞭な足跡は

(なかった。しもんのほうは、はんこうげんばのどうぐるいのなめらかなおもてには)

無かった。指紋の方は、犯行現場の道具類の滑かな面[おもて]には

(かないのひとびとのしもんがわずかにのこっているばかりだったし、また、ぼくがさいしょ)

家内の人々の指紋が僅かに残っているばかりだったし、又、僕が最初

(いじょうをはっけんしたくらのじょうまえのてついたのひょうめんにも、これこそはと)

異常を発見した蔵の錠前の鉄板[てついた]の表面にも、これこそはと

(いきごんでかんしきかへまわされたが、なんのあとものこっていないことがわかった。それでは)

意気込んで鑑識課へ廻されたが、何の跡も残っていないことが分った。それでは

(はんにんはようじんぶかくてぶくろをはめていたのであろうが。だが、もしそうだとすると、)

犯人は用心深く手袋をはめていたのであろうが。だが、若しそうだとすると、

(そのてぶくろはどうみゃくからふきだしたちしおのためにべとべとにぬれていたはずではないか。)

その手袋は動脈から吹き出した血潮の為にベトベトに濡れていた筈ではないか。

(それについてぼくはふとこんなことをくうそうした。はんにんはきょうこうにとりかかるまえに)

それについて僕はふとこんなことを空想した。犯人は兇行に取りかかる前に

(てぶくろをぬぎ、きょうこうをおわってちのりをふきとったあとでまたそれをはめたのだと。)

手袋を脱ぎ、兇行を終って血のりを拭きとったあとで又それをはめたのだと。

(さらにすすんで、かれがぬいだものはただてぶくろだけではなかったのではないかと。)

更らに進んで、彼が脱いだものはただ手袋丈けではなかったのではないかと。

(これはひじょうにきかいなくうそうかもしれない。そしてきみはたぶん、ぼくのれいのくせが)

これは非常に奇怪な空想かも知れない。そして君は多分、僕の例の癖が

(はじまったというかもしれない。だが、ひがいしゃのふじんがぜんらたいであったこと、)

始まったと云うかも知れない。だが、被害者の夫人が全.裸体であったこと、

(ちめいしょういがいのきずとちのながれかたがじつにいようであったことなどから、ぼくにはなんとなく)

致命傷以外の傷と血の流れ方が実に異様であったことなどから、僕には何となく

(そんなふうにおもわれたのだ。じつをいうと、いまのところぼくのこのくうそうにはほとんどさんせいしゃが)

そんな風に思われたのだ。実を云うと、今の所僕のこの空想には殆ど賛成者が

(ないのだが、ぼくじしんはまだそれをすてかねている。むだことのようだけれど、)

ないのだが、僕自身はまだそれを捨て兼ねている。無駄事の様だけれど、

(このみょうなかんがえをしるしてきみにおぼえておいてもらいたいとおもうのだ。ぼくはいまはんにんが)

この妙な考えを記して君に覚えて置いて貰いたいと思うのだ。僕は今犯人が

(きょうこうのときのかえりちをふきとったとかいたが、これだけはくうそうではなかった。)

兇行の時の返り血を拭き取ったと書いたが、これ丈けは空想ではなかった。

(というのは、さきにもちょっとしるしたとおりきょうこうげんばのどぞうのにかいには、したいから)

と云うのは、先にもちょっと記した通り兇行現場の土蔵の二階には、死体から

(とおくはなれたすみのほうに、あねざきみぼうじんのふだんぎがぬぎすててあったが、それは)

遠く離れた隅の方に、姉崎未亡人の不断着が脱ぎ捨ててあったが、それは

(そでだたみにしたのではなく、ごくらんぼうにまるめたもので、ぼくがひとめみてこいつは)

袖畳みにしたのではなく、ごく乱暴に丸めたもので、僕が一目見てこいつは

(そえこさんじしんがまるめたものではないなとかんがえたとおり、しらべてみると、)

曽恵子さん自身が丸めたものではないなと考えた通り、検[しら]べて見ると、

(そのしまめいせんのひとえもののなかには、くしゃくしゃになったふじんじょうようのしぼりはぶたえの)

その縞銘仙の単衣ものの中には、クシャクシャになった夫人常用の絞羽二重の

(ながじばんがつつみこんであって、それにちをふきとったあとがおびただしく)

長襦袢が包みこんであって、それに血を拭き取った跡が夥しく

(ふちゃくしていたからだ。もしやそこにしもんがのこされているのではないかと)

附着していたからだ。若しやそこに指紋が残されているのではないかと

(おもわれたが、ちゅういぶかいはんにんにそんなてぬかりはなかった。で、ながじゅばんのけっこんは、)

思われたが、注意深い犯人にそんな手抜かりはなかった。で、長襦袢の血痕は、

(ひとびとをいっしゅんかんはっとさせたばかりで、べつにはんにんそうさくのちょくせつのてがかりとは)

人々を一瞬間ハッとさせたばかりで、別に犯人捜索の直接の手掛りとは

(ならなかったが、しかしそうしてまるめたきものをとりのけたことが、じつにきみょうな)

ならなかったが、併しそうして丸めた着物をとりのけた事が、実に奇妙な

(しょうこひんらしいものをはっけんするきえんとなった。)

証拠品らしいものを発見する機縁となった。

(おなじいたのまのすみっこの、いままではきもののためにかくれていたぶぶんに、ちいさくまるめた)

同じ板の間の隅っこの、今までは着物の為に隠れていた部分に、小さく丸めた

(かみきれがおちていたのだ。そのかみきれはこのさつじんじけんでのしょうこらしいしょうこひんの)

紙切れが落ちていたのだ。その紙切れはこの殺人事件での証拠らしい証拠品の

(ゆいいつのものであって、そのすじのひとたちもこれにはひじょうにきょうみをもったように)

唯一のものであって、その筋の人達もこれには非常に興味を持った様に

(おもわれるし、ぼくじしんにも、なんとなくこれがのちにじゅうだいないみを)

思われるし、僕自身にも、何となくこれが後に重大な意味を

(もってくるのではないかというよかんがあるので、そのかみきれについてなるべく)

持ってくるのではないかという予感があるので、その紙切れについてなるべく

(くわしくかいておこうとおもう。さいしょそれをはっけんしたしょかつけいさつのしほうしゅにんが、)

詳しく書いて置こうと思う。最初それを発見した所轄警察の司法主任が、

(ちいさくまるめられたままのかみきれをちゅういぶかくかんさつして、これはいぜんからそこに)

小さく丸められたままの紙切れを注意深く観察して、これは以前からそこに

(あったのではなくて、はんざいのさいにおとされたものにちがいないとちゅういした。なぜかと)

在ったのではなくて、犯罪の際に落されたものに違いないと注意した。なぜかと

(いうと、そのへやはゆかのうえにも、ならんでいるどうぐるいのうえにも、めにみえるほどほこりが)

云うと、その部屋は床の上にも、並んでいる道具類の上にも、目に見える程埃が

(つもっていたのに、まるめられたかみきれのしわのなかにはどこにもまったくほこりが)

積もっていたのに、丸められた紙切れの皺の中にはどこにも全く埃が

(なかったからだ。ごうらにそれをひろげてみると、かんしんなしほうしゅにんのかんさつが)

なかったからだ。更らにそれを拡げて見ると、感心な司法主任の観察が

(まちがっていなかったことがいっそうはっきりした。というのは、かみきれにはみょうな)

間違っていなかったことが一層はっきりした。というのは、紙切には妙な

(ふごうみたいなものがしるしてあったのだが、それがひじょうにふかかいな)

符号みたいなものが記してあったのだが、それが非常に不可解な

(ひみつめいたせいしつをもっていて、さつじんじけんになにかのかんけいがあるらしく)

秘密めいた性質を持っていて、殺人事件に何かの関係があるらしく

(おもわれたからだ。ついでにあとになってわかったことをつけくわえて)

思われたからだ。序[ついで]にあとになって分ったことをつけ加えて

(おくならば、あねざきけのじょちゅうをはじめしょせいやこどものちゅうがくせいなどにただした)

置くならば、姉崎家の女中を始め書生や子供の中学生などに糺[ただ]した

(けっかをそうごうするのに、そのかみきれはみぼうじんがもっていたのではなくて、)

結果を綜合するのに、その紙切れは未亡人が持っていたのではなくて、

(どうかしてはんにんがおとしていったものとしかかんがえられなかった。)

どうかして犯人が落して行ったものとしか考えられなかった。

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