悪獣篇 泉鏡花 5

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね1お気に入り登録
プレイ回数214難易度(4.4) 4913打 長文
泉鏡花の中編小説です
「ぎっ'ちょ」って駄目なんだそうですね。虫の鳴き声なのに、、。という訳で「.」が間に入ってます。タイプのときも入れてやってください。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 やまちゃん 4328 C+ 4.4 97.6% 1100.5 4882 119 99 2025/12/03

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問題文

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(うすいけむりにつつまれて、ちゃはわいていそうだけれど、よしずばりがぼんやりして、) 薄い煙に包まれて、茶は沸いていそうだけれど、葦簀張がぼんやりして、 (かかるてんきに、なにごとぞ、うろにくちたりな。) かかる天気に、何事ぞ、雨露に朽ちたりな。 (「いいじゃありませんか、せんせい、びくはぼくがもっていますから、) 「可いじゃありませんか、先生、畚は僕が持っていますから、 (まつなんぞぐずぐずいったら、ぶっつけてやります。」) 松なんぞ愚図々々言ったら、ぶッつけてやります。」 (むにのみかたでたのもしくなぐさめた。) 無二の味方で頼母[たのも]しく慰めた。 (「いやまた、こうへきえきして、さおをたたんで、ふところへ) 「いやまた、こう辟易して、棹を畳んで、懐中[ふところ]へ (りしまいこんで、きせるづつをわすれた、というかおでかえるところも) 了[しま]い込んで、煙管筒を忘れた、という顔で帰る処も (おもしろいかんじがするで。) おもしろい感じがするで。 (それにのどもかわいた、ちゃをひとつのみましょう。まずやすんで、」) それに咽喉[のど]も乾いた、茶を一つ飲みましょう。まず休んで、」 (とみあしばかり、みちをよこへ、ちゃみせのまえの、ひとまばかりあしが) と三足[みあし]ばかり、路を横へ、茶店の前の、一間ばかり蘆が
(さゆうへわかれていた、ねがしろくぬれちがすいてみえて、) 左右へ分れていた、根が白く濡地[ぬれち]が透いて見えて、 (ぶくぶくとかにのあな、うたかたのあわれをふいて、あかねがさして、ひはいまだたかいが) ぶくぶくと蟹の穴、うたかたのあわれを吹いて、茜がさして、日は未だ高いが (むしのこえ、ろをこぐように、ぎい、ぎっ.ちょっ、ちょ。) 虫の声、艫[ろ]を漕ぐように、ギイ、ギッ.チョッ、チョ。 (「さあ、おかけ。」) 「さあ、お掛け。」 (としょうねんを、じぶんのしょうぎのわきにおらせて、) と少年を、自分の床几[しょうぎ]の傍[わき]に居[お]らせて、 (せんせいはかわくといった、そのくちびるをなでながら、) 先生は乾くと言った、その唇を撫でながら、 (「ちゃをひとつくださらんか。」) 「茶を一つ下さらんか。」 (くらいなかからしろいなり、あさのはいろのまきつけおびで、ぞうりのおと、) 暗い中から白い服装[なり]、麻の葉いろの巻つけ帯で、草履の音、 (ひたひた、ときゃくをみてはやよういをしたか、) ひたひた、と客を見て早や用意をしたか、 (きりぎりすのかじったぬりぼんに、あさがおぢゃわんのひびだらけ、) 蟋蟀[きりぎりす]の噛[かじ]った塗盆に、朝顔茶碗の亀裂[ひび]だらけ、
など
(ちゃしぶでさびたのをふたつのせて、) 茶渋で錆びたのを二つのせて、 (「あがりまし、」) 「あがりまし、」 (とすえてだし、こしをかがめたおうなをみよ。ひとすじごとにうつくしくくしのはをいれたように、) と据えて出し、腰を屈めた嫗を見よ。一筋ごとに美しく櫛の歯を入れたように、 (けすじがとおって、はえぎわのそろった、やわらかな、ちゃにややかばを) 毛筋が透って、生際[はえぎわ]の揃った、柔かな、茶にやや褐[かば]を (おびたかみのいろ。くろきけ、しらがのちりばかりをもまじえぬを、きりかみにぷつりとさげた、) 帯びた髪の色。黒き毛、白髪の塵ばかりをも交えぬを、切髪にプツリと下げた、 (いろのしろい、つやのある、ほそおもてのおとがいとがって、はなすじのつととおった、) 色の白い、艶のある、細面の頤[おとがい]尖って、鼻筋の衝[つ]と通った、 (どこかにけだかいところのある、としはたがめも) どこかに気高い処のある、年紀[とし]は誰[た]が目も (おなじ・・・・・・である。) 同一[おなじ]・・・・・・である。 (「びょうびょうことして、あしじゃ。おばあさん、) 九 「渺々乎[びょうびょうこ]として、蘆じゃ。お婆さん、 (いいけしきだね。にさんどきてみたところぢゃけれど、このみせのぐあいが) 好[いい]景色だね。二三度来て見た処ぢゃけれど、この店の工合が (いいせいか、きょうはかくべつにひろくかんじる。) 可いせいか、今日は格別に広く感じる。 (このうみのほかに、またこんなうみがあろうとはおもえんくらいじゃ。」) この海の他に、またこんな海があろうとは思えんくらいじゃ。」 (とうなずくようにちゃをひとくち。ちゃわんにかかるほど、しゃつのそでの) と頷くように茶を一口。茶碗にかかるほど、襯衣[しゃつ]の袖の (ふくらかなので、かいいだくていにちゃわんをもって。) 膨らかなので、掻抱[かいいだ]く体[てい]に茶碗を持って。 (しょうねんはうしろむきに、やまをながめて、おつきあいというかおつき。) 少年はうしろ向に、山を視[なが]めて、おつきあいという顔色[かおつき]。 (せんせいのかげにしゃくをへだてず、きゅうくつそうにただもじもじ。) 先生の影二尺を隔てず、窮屈そうにただもじもじ。 (おうなはいぎただしく、ひざのあたりまでてをたれて、) 嫗は威儀正しく、膝のあたりまで手を垂れて、 (「はい、もうされまするとおり、よがまだあけませぬどろぬまのときのような) 「はい、申されまする通り、世がまだ開けませぬ泥沼の時のような (あしはらでござるわや。) 蘆原でござるわや。 (このかわぞいは、どこもかしこも、あしがはえてあるなれど、わいが) この川沿は、どこもかしこも、蘆が生えてあるなれど、私[わい]が (こいえのまわりには、まだいこうしげってござる。) 小家[こいえ]のまわりには、まだ多[いこ]う茂ってござる。 (あきにもなってみやしゃりませ。たけがたこう、ほがのびて、こやはやねにつつまれる、) 秋にもなって見やしゃりませ。丈が高う、穂が伸びて、小屋は屋根に包まれる、 (やまのふところもかくれるけに、こいではいるふねのろかいのおとも、みずのそこに) 山の懐も隠れるけに、漕いで入る船の艫櫂[ろかい]の音も、水の底に (いんきにきこえて、さびしくなるがの。そのときいねがみのるでござって、おひよりじゃ、) 陰気に聞えて、寂しくなるがの。その時稲が実るでござって、お日和じゃ、 (ことしは、さくもとほうねんそうにござります。) 今年は、作も豊年そうにござります。 (もう、このようにおいくちて、あとをいただくごぼさつのつぶも、いつつななつと、) もう、このように老い朽ちて、あとを頂く御菩薩の粒も、五つ七つと、 (かぞえるようになったれども、しょうあるものはあさましゅうての、) 算[かぞ]えるようになったれども、生[しょう]あるものは浅間しゅうての、 (あしのしげるをみるにつけても、いねのふとるがうれしゅうてなりませぬ、はい、はい。」) 蘆の茂るを見るにつけても、稲の太るが嬉しゅうてなりませぬ、はい、はい。」 (とほそいがきくもののみみにひびく、とおるこえでいいながら、どこをどうしたら) と細いが聞くものの耳に響く、透る声で言いながら、どこをどうしたら (わらえよう、つらきうきよのしおかぜに、つめたくだいりせきに) 笑えよう、辛き浮世の汐風[しおかぜ]に、冷[つめた]く大理石に (なったような、そのほとけつくったかおに、さびしげににっこりわらった。) なったような、その仏造った顔に、寂しげに莞爾[にっこり]笑った。 (かねをふくんだはがそろって、かいのようにうつくしい。) 鉄漿[かね]を含んだ歯が揃って、貝のように美しい。 (それとなおめについたは、かおのいろのしろいのに、そのねむったような) それとなお目についたは、顔の色の白いのに、その眠ったような (ほそいめの、くれないのいと、とみるばかり、あかくせんをひいていたのである。) 繊[ほそ]い目の、紅の糸、と見るばかり、赤く線を引いていたのである。 (「なるほど、はあ、いかにも、」) 「成程、はあ、いかにも、」 (といったばかり、おうなのことばは、このけいにたいするものをして、) と言ったばかり、嫗の言[ことば]は、この景に対するものをして、 (やくはんときのあいだ、みらいのあきをそうぞうせしむるにあまりあって、せんせいはてなるちゃわんを) 約半時の間、未来の秋を想像せしむるに余りあって、先生は手なる茶碗を (したにもおかず、しばらくあしをみて、やがてそのほのひとのたけよりも) 下にも措[お]かず、しばらく蘆を見て、やがてその穂の人の丈よりも (たかかるべきをおもい、しろあわのずぶずぶと、ぬれつちにつぶやくかにの、やがてさらさらと) 高かるべきを思い、白泡のずぶずぶと、濡土に呟く蟹の、やがてさらさらと (ほによじて、はさみにつきをまねくやなど、ぼうぜんとして) 穂に攀[よ]じて、鋏[はさみ]に月を招くやなど、呆然として (ながめたのであった。) 視[なが]めたのであった。 (あしのなかにみちがあって、さらさらとはずれのおと、よしずのそとへまたひとり、) 蘆の中に路があって、さらさらと葉ずれの音、葦簀[よしず]の外へまた一人、 (くろいきもののおうながでてきた。) 黒い衣[きもの]の嫗が出て来た。 (ちゃいろのおびをまえむすび、かたのはばひろく、みもややこえて、かみはまだくろかったが、) 茶色の帯を前結び、肩の幅広く、身もやや肥えて、髪はまだ黒かったが、 (うすさはすじをそろえたばかり。はえぎわがぬけあがってつむりのなかばから) 薄さは条[すじ]を揃えたばかり。生際が抜け上って頭[つむり]の半ばから (ひっつめた、ぼんのくどにてちいさなおばこに、かいのかたちのこうがい) 引詰[ひッつ]めた、ぼんのくどにて小さなおばこに、櫂の形の笄[こうがい] (さした、かたほやせて、かたほこふとく、) さした、片頬[かたほ]痩せて、片頬肥[ふと]く、 (めもはなもくちもあごも、いびつけなりゆがんだが、かたもよこに、) 目も鼻も口も頤[あご]も、いびつ形[なり]に曲[ゆが]んだが、肩も横に、 (むねもよこに、こしぼねのあたりもよこに、だるそうにてをくんだ、これでつりあいを) 胸も横に、腰骨のあたりも横に、だるそうに手を組んだ、これで釣合いを (とるのであろう。ただそのままではねからくずれて、うみのほうへ) 取るのであろう。ただそのままでは根から崩れて、海の方へ (よこだおれにならねばならぬ。) 横倒れにならねばならぬ。 (かたとくびとで、うそうそと、ななめにこやをさしのぞいて、) 肩と首とで、うそうそと、斜めに小屋を差覗[さしのぞ]いて、 (「ござるかいの、おばあさん。」) 「ござるかいの、お婆さん。」 (とかたほゆうひにまぶしそう、ふくれたかたほはいろのわるさ、あおざめてあいのよう、) と片頬夕日に眩しそう、ふくれた片頬は色の悪さ、蒼ざめて藍のよう、 (ぎんいろのどろりとしため、またたきをしながらよんだ。) 銀色のどろりとした目、瞬[またたき]をしながら呼んだ。 (だがしのはこをならべただいの、かげにはいってしゃがんでいた、) 駄菓子の箱を並べた台の、陰に入って踞[しゃが]んで居た、 (こなたのおうながかおをだして、) 此方[こなた]の嫗が顔を出して、 (「ぬしか。やれもやれも、おたっしゃでござるわや。」) 「主[ぬし]か。やれもやれも、お達者でござるわや。」 (と、ぬいとたつと、そのべにいとのめがうごく。) と、ぬいと起[た]つと、その紅糸の目が動く。 (きたのがくちもあけず、のどでものをいうように、) 十 来たのが口もあけず、咽喉[のど]でものを云うように、 (かおもじっとかたむいたるまま、) 顔も静[じっ]と傾いたるまま、 (「ぬしもそくさいでめでたいぞの。」) 「主もそくさいでめでたいぞの。」 (「おてんきもようでござるわや。あつさにはあえぎ、さむさにはなやみ、のう、) 「お天気模様でござるわや。暑さには喘ぎ、寒さには悩み、のう、 (じこうよければかわずのように、くらしのへびにおわれるに、) 時候よければ蛙[かわず]のように、くらしの蛇に追われるに、 (このとしになるまでも、かんろのひよりときくけれども、) この年になるまでも、甘露の日和と聞くけれども、 (あまいつゆはのまぬわよ、ほほほ、」) 甘い露は飲まぬわよ、ほほほ、」 (とうすわらいした、またはがくろい。) と薄笑いした、また歯が黒い。 (「おいの、さればいの、おたがいにいさごのかずほどくるしみのたねはつきぬこといの。) 「おいの、さればいの、お互に沙の数ほど苦しみのたねは尽きぬ事いの。 (やれもやれも、」といいながら、ななめにたったひさごのした、なにをのぞくか) やれもやれも、」と言いながら、斜めに立った廂[ひさご]の下、何を覗くか (つまだつがごとくにして、しかもかたこしはつくりつけたもののよう、) 爪立[つまだ]つがごとくにして、しかも肩腰は造りつけたもののよう、 (うごかざることくちきのごとし。) 動かざること如朽木[くちきのごとし]。 (「わかいしゅのぐちよりとしよりのぐちじゃ、きくひともうるさかろ、) 「若い衆[しゅ]の愚痴より年よりの愚痴じゃ、聞く人も煩さかろ、 (おかっしゃれ、ほほほ。のう、おばあさん。ぬしはされどこへなにをこころざして) 措[お]かっしゃれ、ほほほ。のう、お婆さん。主はされどこへ何を志して (でてござった、やまかいの、かわかいの。」) 出てござった、山かいの、川かいの。」 (「いんにゃの、おそろしゅうはがうずいて、きりきりのみでえぐるようじゃ、と) 「いんにゃの、恐しゅう歯がうずいて、きりきり鑿[のみ]で抉るようじゃ、と (くるしむものがあるによって、わしがまじのうてしんじょうと、) 苦しむ者があるによって、私[わし]がまじのうて進じょうと、 (はまへえいのはりほりにでたらばよ、りょうしどものうわさを) 浜へ鱏[えい]の針掘りに出たらばよ、漁師共の風説[うわさ]を (きかっしゃれ。こころざすひとがあって、このかわぞいのみつまたへ、) 聞かっしゃれ。志す人があって、この川ぞいの三股[みつまた]へ、 (いしじぞうがたつというわいの。」) 石地蔵が建つというわいの。」
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