紫式部 源氏物語 若紫 21 與謝野晶子訳(終)

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問題文

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(げんじはに、さんにちごしょへもでずにこのひとをなつけるのにいっしょけんめいだった。)

源氏は二、三日御所へも出ずにこの人をなつけるのに一所懸命だった。

(てほんちょうにとじさせるつもりのじやえをいろいろにかいてみせたりしていた。)

手本帳に綴じさせるつもりの字や絵をいろいろに書いて見せたりしていた。

(みなうるわしかった。「しらねどもむさしのといえばかこたれぬよしやさこそは)

みな美しかった。「知らねどもむさし野と云へばかこたれぬよしやさこそは

(むらさきのゆえ」といううたのむらさきのかみにかかれたことによくできたいちまいをてにもって)

紫の故」という歌の紫の紙に書かれたことによくできた一枚を手に持って

(ひめぎみはながめていた。またすこしちいさいじで、 )

姫君はながめていた。また少し小さい字で、

(ねはみねどあわれとぞおもうむさしののつゆわけわぶるくさのゆかりを )

ねは見ねど哀れとぞ思ふ武蔵野の露分けわぶる草のゆかりを

(ともかいてある。 「あなたもかいてごらんなさい」)

とも書いてある。 「あなたも書いてごらんなさい」

(とげんじがいうと、 「まだよくはかけませんの」)

と源氏が言うと、 「まだよくは書けませんの」

(みあげながらいうにょおうのかおがむじゃきでかわいかったから、)

見上げながら言う女王の顔が無邪気でかわいかったから、

(げんじはびしょうをしていった。 「まずくてもかかないのはよくない。)

源氏は微笑をして言った。 「まずくても書かないのはよくない。

(おしえてあげますよ」 からだをすぼめるようにしてじをかこうとするかたちも、)

教えてあげますよ」 からだをすぼめるようにして字をかこうとする形も、

(ふでのもちかたのこどもらしいのもただかわいくばかりおもわれるのを、)

筆の持ち方の子供らしいのもただかわいくばかり思われるのを、

(げんじはじぶんのこころながらふしぎにおもわれた。 「かきそこねたわ」)

源氏は自分の心ながら不思議に思われた。 「書きそこねたわ」

(といって、はずかしがってかくすのをしいてよんでみた。 )

と言って、恥ずかしがって隠すのをしいて読んでみた。

(かこつべきゆえをしらねばおぼつかないかなるくさのゆかりなるらん )

かこつべき故を知らねばおぼつかないかなる草のゆかりなるらん

(こどもらしいじではあるが、しょうらいのじょうたつがよそうされるような、ふっくりとした)

子供らしい字ではあるが、将来の上達が予想されるような、ふっくりとした

(ものだった。しんだあまぎみのじにもにていた。げんだいのてほんをならわせたなら)

ものだった。死んだ尼君の字にも似ていた。現代の手本を習わせたなら

(もっとよくなるだろうとげんじはおもった。ひななどもやねのあるいえなどもたくさんに)

もっとよくなるだろうと源氏は思った。雛なども屋根のある家などもたくさんに

(つくらせて、わかむらさきのにょおうとあそぶことはげんじのものおもいをまぎらすのに)

作らせて、若紫の女王と遊ぶことは源氏の物思いを紛らすのに

(もっともよいほうほうのようだった。 だいなごんけにのこっていたにょうぼうたちは、)

最もよい方法のようだった。 大納言家に残っていた女房たちは、

など

(みやがおいでになったときにごあいさつのしようがなくてこまった。)

宮がおいでになった時に御挨拶のしようがなくて困った。

(とうぶんはせけんにしらせずにおこうと、げんじもいっていたし、しょうなごんもそれと)

当分は世間に知らせずにおこうと、源氏も言っていたし、少納言もそれと

(どうかんなのであるから、ひみつにすることをくれぐれもいってやって、しょうなごんが)

同感なのであるから、秘密にすることをくれぐれも言ってやって、少納言が

(どこかへかくしたようにもうしあげさせたのである。みやはごらくたんあそばされた。)

どこかへ隠したように申し上げさせたのである。宮は御落胆あそばされた。

(あまぎみもかんていへひめぎみのうつっていくことをひじょうにきらっていたから、めのとのですぎた)

尼君も官邸へ姫君の移って行くことを非常に嫌っていたから、乳母の出すぎた

(かんがえから、しょうめんからはこばまずにおいて、そっとかってにひめぎみを)

考えから、正面からは拒まずにおいて、そっと勝手に姫君を

(つれだしてしまったのだとおおもいになって、みやはなくなく)

つれ出してしまったのだとお思いになって、宮は泣く泣く

(おかえりになったのである。 「もしいどころがわかったらしらせてよこすように」)

お帰りになったのである。 「もし居所がわかったら知らせてよこすように」

(みやのこのおことばをにょうぼうたちはくるしいきもちできいていたのである。みやはそうずの)

宮のこのお言葉を女房たちは苦しい気持ちで聞いていたのである。宮は僧都の

(ところへもおさがしにおやりになったが、ひめぎみのゆくえについてはなにもえるところが)

所へもお捜しにおやりになったが、姫君の行くえについては何も得る所が

(なかった。うるわしかったしょうにょおうのかおをおおもいだしになってみやはかなしんで)

なかった。美しかった小女王の顔をお思い出しになって宮は悲しんで

(おいでになった。ふじんはそのははぎみをねたんでいたこころもながいじかんにわすれていって、)

おいでになった。夫人はその母君をねたんでいた心も長い時間に忘れていって、

(じしんのことしてそだてるのをたのしんでいたことがすいほうにきしたのをざんねんにおもった。)

自身の子として育てるのを楽しんでいたことが水泡に帰したのを残念に思った。

(そのうちにじょうのいんのにしのたいににょうぼうたちがそろった。わかむらさきのおあいてのこどもたちは、)

そのうち二条の院の西の対に女房たちがそろった。若紫のお相手の子供たちは、

(だいなごんけからきたのはわかいげんじのきみ、ひがしのたいのはきれいなにょおうといっしょに)

大納言家から来たのは若い源氏の君、東の対のはきれいな女王といっしょに

(あそべるのをよろこんだ。わかむらさきはげんじがるすになったりしたゆうがたなどには)

遊べるのを喜んだ。若紫は源氏が留守になったりした夕方などには

(あまぎみをこいしがってなきもしたが、ちちみやをおもいだすふうもなかった。はじめから)

尼君を恋しがって泣きもしたが、父宮を思い出すふうもなかった。初めから

(まれまれにしかみなかったちちみやであったから、いまはだいにのちちとおもっている)

稀々にしか見なかった父宮であったから、今は第二の父と思っている

(げんじにばかりなじんでいった。そとからげんじのかえってくるときは、じしんがだれよりも)

源氏にばかり馴染んでいった。外から源氏の帰って来る時は、自身がだれよりも

(さきにでむかえてかわいいふうにいろいろなはなしをして、ふところのなかにだかれてすこしも)

先に出迎えてかわいいふうにいろいろな話をして、懐の中に抱かれて少しも

(きまりわるくもはずかしくもおもわない。こんなふうがわりなこうじょうがここにだけ)

きまり悪くも恥ずかしくも思わない。こんな風変わりな交情がここにだけ

(みられるのである。 おとなのこいびととのこうしょうにはびみょうなめんどうがあって、)

見られるのである。 大人の恋人との交渉には微妙な面倒があって、

(こんなしょうがいでこいまでもそこねられるのではないかとわれながらふあんにかんじることが)

こんな障害で恋までもそこねられるのではないかと我ながら不安に感じることが

(あったり、おんなのほうはまたねんじゅううらみぐらしにくらすことになって、)

あったり、女のほうはまた年じゅう恨み暮らしに暮らすことになって、

(ほかのこいがそのあいだにめばえてくることにもなる。このあいてにはそんなおそれは)

ほかの恋がその間に芽ばえてくることにもなる。この相手にはそんな恐れは

(すこしもない。ただうつくしいこころのなぐさめであるばかりであった。むすめというものも、)

少しもない。ただ美しい心の慰めであるばかりであった。娘というものも、

(これほどおおきくなればちちおやはこんなにもせっきんしてせわができず、よるもおなじしんしつに)

これほど大きくなれば父親はこんなにも接近して世話ができず、夜も同じ寝室に

(はいることはゆるされないわけであるから、こんなおもしろいあいだがらというものはないと)

はいることは許されないわけであるから、こんな面白い間柄というものはないと

(げんじはおもっているらしいのである。)

源氏は思っているらしいのである。

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