紫式部 源氏物語 明石 1 與謝野晶子訳

順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | おもち | 7899 | 神 | 8.1 | 96.6% | 289.5 | 2368 | 81 | 35 | 2025/02/03 |
2 | subaru | 7890 | 神 | 8.1 | 97.4% | 291.5 | 2362 | 62 | 35 | 2025/02/04 |
3 | berry | 7640 | 神 | 7.7 | 98.9% | 304.7 | 2352 | 24 | 35 | 2025/03/04 |
4 | ヤス | 7528 | 神 | 7.9 | 95.3% | 300.2 | 2376 | 116 | 35 | 2025/02/01 |
5 | はく | 7259 | 光 | 7.5 | 95.8% | 314.5 | 2386 | 103 | 35 | 2025/03/03 |
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問題文
(わりなくもわかれがたしとしらたまのなみだ をながすことのいとかな (あきこ))
わりなくもわかれがたしとしら玉の涙 をながす琴のいとかな (晶子)
(まだあめかぜはやまないし、らいめいがしじゅうすることもおなじでいくにちかたった。いまはきょくどに)
まだ雨風はやまないし、雷鳴が始終することも同じで幾日かたった。今は極度に
(わびしいすまのひとたちであった。きょうまでのこともあすからのことも)
侘しい須磨の人たちであった。今日までのことも明日からのことも
(こころぼそいことばかりで、げんじもれいせいにはしていられなかった。どうすれば)
心細いことばかりで、源氏も冷静にはしていられなかった。どうすれば
(いいであろう、きょうへかえることもまだめんしょくになったままでほんかんにふくしたわけでも)
いいであろう、京へ帰ることもまだ免職になったままで本官に復したわけでも
(なんでもないのであるからみぐるしいけっかをうむことになるであろうし、)
なんでもないのであるから見苦しい結果を生むことになるであろうし、
(まだもっとふかいやまのほうへはいってしまうこともなみかぜにいかくされて)
まだもっと深い山のほうへはいってしまうことも波風に威嚇されて
(きょうふしたこういだとひとにみられ、こうせいにあやまられることもたえられないことで)
恐怖した行為だと人に見られ、後世に誤られることも耐えられないことで
(あるからとげんじははんもんしていた。このごろのゆめはあやしいものがきてさそおうとする)
あるからと源氏は煩悶していた。このごろの夢は怪しい者が来て誘おうとする
(はじめのよるにみたのとおなじゆめばかりであった。いくにちもくものきれめがないような)
初めの夜に見たのと同じ夢ばかりであった。幾日も雲の切れ目がないような
(そらばかりをながめてくらしているときょうのことがきがかりになって、)
空ばかりをながめて暮らしていると京のことが気がかりになって、
(じぶんというものはこうしたこころぼそいなかでしんでいくのかと)
自分という者はこうした心細い中で死んで行くのかと
(げんじはおもわれるのであるが、くびだけでもそとへだすことのできない)
源氏は思われるのであるが、首だけでも外へ出すことのできない
(てんきであったからきょうへつかいのだしようもない。にじょうのいんのほうからそのなかを)
天気であったから京へ使いの出しようもない。二条の院のほうからその中を
(ひとがきた。ぬれねずみになったつかいである。あまぐでなんじゅうにもみをかためているから、)
人が来た。濡れ鼠になった使いである。雨具で何重にも身を固めているから、
(とちゅうでいきあってもにんげんかなにかわからぬかたちをした、まずきかいなものとして)
途中で行き逢っても人間か何かわからぬ形をした、まず奇怪な者として
(おいはらわなければならないしもさぶらいにしたしみをかんじるてんだけでも、)
追い払わなければならない下侍に親しみを感じる点だけでも、
(じぶんはみじめなものになったとげんじはみずからおもわれた。ふじんのてがみは、)
自分はみじめな者になったと源氏はみずから思われた。夫人の手紙は、
(もうしようのないながあめはそらまでもなくしてしまうのではないかというきがしまして)
申しようのない長雨は空までもなくしてしまうのではないかという気がしまして
(すまのほうがくをながめることもできません。 )
須磨の方角をながめることもできません。
(うらかぜやいかにふくらんおもいやるそでうちぬらしなみまなきころ )
浦風やいかに吹くらん思ひやる袖うち濡らし波間なき頃
(というようなみにしむことがかずかずかかれてある。かいふうしたときからもうげんじのなみだは)
というような身にしむことが数々書かれてある。開封した時からもう源氏の涙は
(しおどきがきたようないきおいで、うちからわきあがってくるきがしたものであった。)
潮時が来たような勢いで、内から湧き上がってくる気がしたものであった。
(「きょうでもこのあめかぜはてんぺんだともうして、なんらかをあんじするものだとかいしゃくして)
「京でもこの雨風は天変だと申して、なんらかを暗示するものだと解釈して
(おられるようでございます。にんおうえをきゅうちゅうであそばすようなことも)
おられるようでございます。仁王会を宮中であそばすようなことも
(うけたまわっております。たいかんがたがさんだいもできないのでございますから、)
承っております。大官方が参内もできないのでございますから、
(せいじもあめかぜのためにちゅうしのかたちでございます」 こんなはなしを、)
政治も雨風のために中止の形でございます」 こんな話を、
(はかばかしくもなくかしきゅうのあたまでりかいしているだけのことをいうのであるが、)
はかばかしくもなく下士級の頭で理解しているだけのことを言うのであるが、
(きょうのことにむかんしんでありえないげんじは、いまのちかくへそのおとこをよびだして)
京のことに無関心でありえない源氏は、居間の近くへその男を呼び出して
(いろいろなしつもんをしてみた。 「ただれいのようなあめがすこしのたえまもなく)
いろいろな質問をしてみた。 「ただ例のような雨が少しの絶え間もなく
(ふっておりまして、そのなかにかぜもときどきふきだすというようなひがいくにちも)
降っておりまして、その中に風も時々吹き出すというような日が幾日も
(つづくのでございますから、それでみなさまのごしんぱいがはじまったものだとぞんじます。)
続くのでございますから、それで皆様の御心配が始まったものだと存じます。
(こんどのようにちのそこまでもとおるようなあらいひょうがふったり、)
今度のように地の底までも通るような荒い雹が降ったり、
(らいめいのしずまらないことはこれまでにないことでございます」)
雷鳴の静まらないことはこれまでにないことでございます」
(などというおとこのひょうじょうにもしんこくなきょうふのいろのみえるのもげんじをよりこころぼそくさせた。)
などと言う男の表情にも深刻な恐怖の色の見えるのも源氏をより心細くさせた。