紫式部 源氏物語 明石 5 與謝野晶子訳

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1 subaru 7990 8.2 97.2% 365.8 3007 84 44 2025/02/04
2 おもち 7765 8.0 96.7% 375.5 3018 102 44 2025/02/16
3 ヤス 7433 7.8 94.5% 383.4 3024 174 44 2025/02/03
4 berry 7396 7.5 97.9% 397.1 3001 64 44 2025/03/05
5 はく 7125 7.5 94.1% 398.7 3030 189 44 2025/03/03

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問題文

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(あかしのうらのふうこうは、げんじがかねてきいていたようにうつくしかった。)

明石の浦の風光は、源氏がかねて聞いていたように美しかった。

(ただすまにくらべてすむにんげんのおおいことだけがげんじのほんいにはんしたことの)

ただ須磨に比べて住む人間の多いことだけが源氏の本意に反したことの

(ようである。にゅうどうのもっているとちはひろくて、かいがんのほうにも、やまてのほうにも)

ようである。入道の持っている土地は広くて、海岸のほうにも、山手のほうにも

(おおきなていたくがあった。なぎさにはふうりゅうなしょうていがつくってあり、やまてのほうには、)

大きな邸宅があった。渚には風流な小亭が作ってあり、山手のほうには、

(けいりゅうにそったばしょに、にゅうどうがこもってごせのいのりをするさんまいどうがあって、)

渓流に沿った場所に、入道がこもって後世の祈りをする三昧堂があって、

(ろうごのためにちくせきしてあるざいぶつのためのそうこまちもある。たかしおをおそれてこのごろは)

老後のために蓄積してある財物のための倉庫町もある。高潮を恐れてこのごろは

(むすめそのたのかぞくはやまてのいえのほうにうつらせてあったから、はまのほうのほんていに)

娘その他の家族は山手の家のほうに移らせてあったから、浜のほうの本邸に

(げんじいっこうはきらくにすんでいることができるのであった。ふねからくるまに)

源氏一行は気楽に住んでいることができるのであった。船から車に

(のりうつるころにようやくあさひがのぼって、ほのかにみることのできたげんじのびぼうに)

乗り移るころにようやく朝日が上って、ほのかに見ることのできた源氏の美貌に

(にゅうどうはおいをわすれることもでき、いのちものびるきがした。まんめんにえみをみせて)

入道は老いを忘れることもでき、命も延びる気がした。満面に笑みを見せて

(まずすみよしのかみをはるかにおがんだ。つきとひをてのひらのなかにえたようなよろこびをして、)

まず住吉の神をはるかに拝んだ。月と日を掌の中に得たような喜びをして、

(にゅうどうがげんじをだいじがるのはもっともなことである。おのずからふうけいの)

入道が源氏を大事がるのはもっともなことである。おのずから風景の

(めいびなとちに、りんせんのびがたくみにくわえられたにわがざしきのしゅういにあった。)

明媚な土地に、林泉の美が巧みに加えられた庭が座敷の周囲にあった。

(いりえのみずのすがたのおもむきなどはそうぞうりょくのとぼしいがかにはかけないであろうと)

入り江の水の姿の趣などは想像力の乏しい画家には描けないであろうと

(おもわれた。すまのいえにくらべるとここはひじょうにあかるくてほがらかであった。)

思われた。須磨の家に比べるとここは非常に明るくて朗らかであった。

(ざしきのなかのせつびにもかしゃがつくされてあった。せいかつぶりはみやこのだいきぞくと)

座敷の中の設備にも華奢が尽くされてあった。生活ぶりは都の大貴族と

(すこしもかわっていないのである。それよりもまだはでなところが)

少しも変わっていないのである。それよりもまだ派手なところが

(みえないでもない。 あかしへうつってきたはじめのおちつかぬこころが)

見えないでもない。 明石へ移って来た初めの落ち着かぬ心が

(すこしなおってから、げんじはきょうへてがみをかいた。 「こんなことになろうとは)

少しなおってから、源氏は京へ手紙を書いた。 「こんなことになろうとは

(しらずにきて、ここでしぬうんめいだった」 などといって、)

知らずに来て、ここで死ぬ運命だった」 などと言って、

など

(かなしんでいたきょうのつかいがすまにまだいたのをよんで、かぶんなものを)

悲しんでいた京の使いが須磨にまだいたのを呼んで、過分な物を

(ほうしゅうにあたえたうえで、きょうでするいろいろのようがめいぜられた。たのみつけの)

報酬に与えた上で、京でするいろいろの用が命ぜられた。頼みつけの

(いのりのそうたちやてらでらへはこのあいだからのことがいいやられ、あらたないのりが)

祈りの僧たちや寺々へはこの間からのことが言いやられ、新たな祈りが

(いらいされたのである。しじんにはにゅうどうのみやへだけ、けうにしていのちをまっとうした)

依頼されたのである。私人には入道の宮へだけ、稀有にして命をまっとうした

(すまのせいかつのおわりをげんじはおしらせした。にじょうのいんのあわれなてがみのへんじは)

須磨の生活の終わりを源氏はお知らせした。二条の院の憐れな手紙の返事は

(いっきにはかかれずに、いっしょうをかいてはなきいっしょうをかいてはなみだをふきして)

一気には書かれずに、一章を書いては泣き一章を書いては涙を拭きして

(かいているようすにもげんじがそのひとをおもうふかさがみられるのであった。)

書いている様子にも源氏がその人を思う深さが見られるのであった。

(あとへあとへとかなしいことがおこってきて、もうくるしいけいけんはしつくしたような)

あとへあとへと悲しいことが起こってきて、もう苦しい経験はし尽くしたような

(わたくしですからしきりにしゅっけしたいこころもわきますが、かがみをみてもとおいいになった)

私ですからしきりに出家したい心も湧きますが、鏡を見てもとお言いになった

(あなたのおもかげがめをはなれないのですから、あなたにさいかいをしないでは、)

あなたの面影が目を離れないのですから、あなたに再会をしないでは、

(それをじっこうすることもできません。なんのくるしみよりもわたくしには)

それを実行することもできません。何の苦しみよりも私には

(あなたとはなれているくつうがもっともつらいことにおもわれます。あなたにまた)

あなたと離れている苦痛が最もつらいことに思われます。あなたにまた

(あうことができれば、ほかのいとわしいことはみなしのんでいこうとおもいます。 )

逢うことができれば、ほかのいとわしいことは皆忍んでいこうと思います。

(はるかにもおもいやるかなしらざりしうらよりおちをうらづたいして )

はるかにも思ひやるかな知らざりし浦より遠を浦づたひして

(まだゆめのつづきで、あかしのうらにまできているようなきがしてなりません。)

まだ夢の続きで、明石の浦にまで来ているような気がしてなりません。

(こんなときにかくてがみはまちがったこともあるでしょうがゆるしてください。)

こんな時に書く手紙はまちがったこともあるでしょうが許してください。

(ただしくはかかれずにみだれがきになっているようなうつくしいてがみを、)

正しくは書かれずに乱れ書きになっているような美しい手紙を、

(よこからみていて、げんじがにじょうのいんのふじんをあいするふかさをこれみつたちはおもった。)

横から見ていて、源氏が二条の院の夫人を愛する深さを惟光たちは思った。

(そうしたひとたちもわがやへのおんしんをこのつかいへたくした。)

そうした人たちもわが家への音信をこの使いへ託した。

(あのはれまもないようだったてんきはなごりなくはれて、あかしのうらのそらは)

あの晴れ間もないようだった天気は名残なく晴れて、明石の浦の空は

(すみかえっていた。ここのぎょぎょうをするひとたちはとくいそうだった。すまはさびしく)

澄み返っていた。ここの漁業をする人たちは得意そうだった。須磨は寂しく

(しずかで、りょうしのいえもまばらにしかなかったのである。さいしょここへきたときには)

静かで、漁師の家もまばらにしかなかったのである。最初ここへ来た時には

(それとかわったぎょそんのにぎやかにみえるのを、いとわしくおもったげんじも、)

それと変わった漁村のにぎやかに見えるのを、いとわしく思った源氏も、

(ここにはまたとくしゅないろいろのよさのあるのが、はっけんされていってなぐさんでいた。)

ここにはまた特殊ないろいろのよさのあるのが、発見されていって慰んでいた。

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