紫式部 源氏物語 澪標 8 與謝野晶子訳

背景
投稿者投稿者文吾いいね0お気に入り登録
プレイ回数3難易度(4.2) 2465打 長文 かな 長文モードのみ

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(げんじはいまもないしのかみをこいしくおもっていた。こりたことのないひとのように、)

源氏は今も尚侍を恋しく思っていた。懲りたことのない人のように、

(またあぶないこともしかねないほどねっしんになっているが、かんきょうのために)

また危ないこともしかねないほど熱心になっているが、環境のために

(こいにはほんぽうなちからをみせたおんなもつつましくなっていて、むかしのようにげんじのゆうわくに)

恋には奔放な力を見せた女もつつましくなっていて、昔のように源氏の誘惑に

(はんきょうをみせるようなこともない。げんじはじしんのちいができてよのなかが)

反響を見せるようなこともない。源氏は自身の地位ができて世の中が

(きゅうくつになり、つめたいものになり、ものたりなくなったとかんじていた。)

窮屈になり、冷たいものになり、物足りなくなったと感じていた。

(いんはのんきにおなりあそばされて、よくおすきのおんがくのかいなどをあそばして)

院は暢気におなりあそばされて、よくお好きの音楽の会などをあそばして

(ふうりゅうにくらしておいでになった。にょごもこういもございいのときのままに)

風流に暮らしておいでになった。女御も更衣も御在位の時のままに

(じしているが、とうぐうのははぎみのにょごだけは、いぜんとりたてて)

侍しているが、東宮の母君の女御だけは、以前取り立てて

(ごちょうあいがあったというのではなく、ないしのかみにけおされた)

御寵愛があったというのではなく、尚侍にけおされた

(こうきゅうのひとりにすぎなかったが、おもいがけぬこうふくにめぐまれたけっかになって、)

後宮の一人に過ぎなかったが、思いがけぬ幸福に恵まれた結果になって、

(ひとりだけはなれてごしょのなかのとうぐうのございしょにじしているのである。)

一人だけ離れて御所の中の東宮の御在所に侍しているのである。

(げんじのげんざいのとのいどころもやはりむかしのきりつぼであって、なしつぼにとうぐうはすんでおいでに)

源氏の現在の宿直所もやはり昔の桐壺であって、梨壺に東宮は住んでおいでに

(なるのであったから、ごきんじょであるためにげんじはそのごてんとおしたしくして、)

なるのであったから、御近所であるために源氏はその御殿とお親しくして、

(しぜんとうぐうのごこうけんもするようになった。 にゅうどうのみやをまたあらたにごぼこうのくらいに)

自然東宮の御後見もするようになった。 入道の宮をまた新たに御母后の位に

(あそばすことはむりであったから、たいじょうてんのうにじゅんじてにょいんにあそばされた。)

あそばすことは無理であったから、太上天皇に準じて女院にあそばされた。

(ほうこくがきまり、いんしのにんめいがあって、これはまたいちだんたちまさった)

封国が決まり、院司の任命があって、これはまた一段立ちまさった

(ごりっぱなおみのうえとみえた。ぶっぽうにかんけいしたぜんこうくどくをおいとなみになることを)

ごりっぱなお身の上と見えた。仏法に関係した善行功徳をお営みになることを

(てんしょくのようにおぼしめして、せいれいしておいでになった。ながいあいだごしょへのでいりも)

天職のように思召して、精励しておいでになった。長い間御所への出入りも

(ごえんりょしておいでになったが、いまはそうでなくじゆうなおきもちで)

御遠慮しておいでになったが、今はそうでなく自由なお気持ちで

(きゅうちゅうへおはいりになり、おでになりあそばすのであった。)

宮中へおはいりになり、お出になりあそばすのであった。

など

(こうたいごうはじんせいをうらんでおいでになった。なにかのばあいにげんじはこのかたにも)

皇太后は人生を恨んでおいでになった。何かの場合に源氏はこの方にも

(こういのあるはからいをしてけいいをひょうしていた。)

好意のある計らいをして敬意を表していた。

(たいこうとしてはおつらいことであろうとささやくものがおおかった。ひょうぶきょうしんのうは)

太后としてはおつらいことであろうとささやく者が多かった。兵部卿親王は

(げんじのかんいはくだつじだいにれいたんなたいどをおみせになって、ただせけんのきこえばかりを)

源氏の官位剥奪時代に冷淡な態度をお見せになって、ただ世間の聞こえばかりを

(はばかって、みむすめにたいしてもなんらのほごをおあたえにならなかったことで、)

はばかって、御娘に対してもなんらの保護をお与えにならなかったことで、

(とうじのげんじはうらめしいおもいをさせられて、もうむかしのようにしたしいごこうさいは)

当時の源氏は恨めしい思いをさせられて、もう昔のように親しい御交際は

(していなかった。いっぱんのひとにはあまねくじひをわかとうとするひとであったが、)

していなかった。一般の人にはあまねく慈悲を分かとうとする人であったが、

(ひょうぶきょうのみやいっかにだけはややふくしゅうてきなあつかいをするのを、にゅうどうのみやはくるしく)

兵部卿の宮一家にだけはやや復讐的な扱いをするのを、入道の宮は苦しく

(おぼしめされた。げんだいにはふたつのおおきなせいりょくがあって、ひとつはだじょうだいじん、)

思召された。現代には二つの大きな勢力があって、一つは太政大臣、

(ひとつはげんじのないだいじんがそれで、このふたりのいしでなにごともだんぜられ、)

一つは源氏の内大臣がそれで、この二人の意志で何事も断ぜられ、

(なにごともけっせられるのであった。ごんのちゅうなごんのむすめがそのとしのはちがつにこうきゅうへはいった。)

何事も決せられるのであった。権中納言の娘がその年の八月に後宮へはいった。

(すべてのせわはそふのだいじんがしていてはなやかなしたくであった。ひょうぶきょうしんのうも)

すべての世話は祖父の大臣がしていてはなやかな仕度であった。兵部卿親王も

(だいにのひめぎみをこうきゅうへいれるしぼうをもっておいでになって、だいじにおかしずきになる)

第二の姫君を後宮へ入れる志望を持っておいでになって、大事にお傳ずきになる

(ひょうばんのあるのを、げんじはそのひめぎみにこうえいあれともおもわれないのであった。)

評判のあるのを、源氏はその姫君に光栄あれとも思われないのであった。

(げんじはまたどんなひとをこうきゅうへすいせんしようとしているかそれはわからない。)

源氏はまたどんな人を後宮へ推薦しようとしているかそれはわからない。

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告

文吾のタイピング

オススメの新着タイピング

タイピング練習講座 ローマ字入力表 アプリケーションの使い方 よくある質問

人気ランキング

注目キーワード