紫式部 源氏物語 蓬生 1 與謝野晶子訳

順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | berry | 7997 | 神 | 8.1 | 98.4% | 439.9 | 3574 | 56 | 51 | 2025/03/21 |
2 | omochi | 7659 | 神 | 7.9 | 96.9% | 455.9 | 3604 | 112 | 51 | 2025/03/20 |
3 | はく | 7591 | 神 | 7.8 | 97.1% | 461.3 | 3607 | 105 | 51 | 2025/03/24 |
4 | subaru | 7568 | 神 | 7.9 | 95.6% | 452.0 | 3582 | 161 | 51 | 2025/03/25 |
5 | ヤス | 6825 | S++ | 7.3 | 93.7% | 491.4 | 3593 | 239 | 51 | 2025/03/21 |
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問題文
(みちもなきよもぎをわけてきみぞこしたれにもま さるみのここちする (あきこ))
道もなき蓬をわけて君ぞこし誰にもま さる身のここちする (晶子)
(げんじがすま、あかしにさすらっていたころは、きょうのほうにもかなしくおもいくらすひとの)
源氏が須磨、明石に漂泊っていたころは、京のほうにも悲しく思い暮らす人の
(たすうにあったなかでも、しかとしたたちばをもっているひとは、くるしいいちめんは)
多数にあった中でも、しかとした立場を持っている人は、苦しい一面は
(あっても、たとえばにじょうのふじんなどは、げんじがたびでのせいかつのようすもかなり)
あっても、たとえば二条の夫人などは、源氏が旅での生活の様子もかなり
(くわしくつうしんされていたし、べんぎがおおくててがみをかいてだすことも)
くわしく通信されていたし、便宜が多くて手紙を書いて出すことも
(よくできたし、とうじむかんになっていたげんじのむもんのいしょうもきせつにしたがってしたてて)
よくできたし、当時無官になっていた源氏の無紋の衣裳も季節に従って仕立てて
(おくるようななぐさみもあった。しんじつかなしいきょうぐうにおちたひとというのは、げんじがきょうを)
送るような慰みもあった。真実悲しい境遇に落ちた人というのは、源氏が京を
(しゅっぱつしたさいのこともよそにそうぞうするだけであったじょせいたち、むししていかれた)
出発した際のこともよそに想像するだけであった女性たち、無視して行かれた
(こいびとたちがそれであった。ひたちのみやのすえつむはなは、ちちぎみがおかくれになってから、)
恋人たちがそれであった。常陸の宮の末摘花は、父君がおかくれになってから、
(だれもほごするひとのないこころぼそいきょうぐうであったのを、おもいがけずしょうじたげんじとの)
だれも保護する人のない心細い境遇であったのを、思いがけず生じた源氏との
(かんけいから、それいらいぶっしつてきにほじょされることになって、げんじのとみからいえば)
関係から、それ以来物質的に補助されることになって、源氏の富からいえば
(もののかずでもないなさけをかけていたにすぎないのであったが、うけるほうのまずしい)
物の数でもない情けをかけていたにすぎないのであったが、受けるほうの貧しい
(にょおういっかのためには、たらいへほしがうつってきたほどのぼうがいのこうふくになって、)
女王一家のためには、盥へ星が映ってきたほどの望外の幸福になって、
(せいかつくからすくわれていくねんかをきたのであるが、あのじへんごのげんじは、いっさい)
生活苦から救われて幾年かを来たのであるが、あの事変後の源氏は、いっさい
(よのなかがいやになって、れんあいというほどのものでもなかったじょせいとのかんけいは)
世の中がいやになって、恋愛というほどのものでもなかった女性との関係は
(こころからけしもし、きえもしたふうで、とおくへたってからははるばるとてがみを)
心から消しもし、消えもしたふうで、遠くへ立ってからははるばると手紙を
(おくるようなこともしなかった。まだげんじからめぐまれたものがあってしばらくは)
送るようなこともしなかった。まだ源氏から恵まれた物があってしばらくは
(なくなくもまえのせいかつをつづけることができたのであるが、つぎのとしになり、)
泣く泣くも前の生活を続けることができたのであるが、次の年になり、
(またつぎのとしになりするうちにはまったくそこなしのまずしいみのうえに)
また次の年になりするうちにはまったく底なしの貧しい身の上に
(なってしまった。ふるくからいたにょうぼうたちなどは、 「ほんとうに)
なってしまった。古くからいた女房たちなどは、 「ほんとうに
(うんのわるいかたですよ。おもいがけなくかみかほとけのしゅつげんなすったようなしんせつを)
運の悪い方ですよ。思いがけなく神か仏の出現なすったような親切を
(おみせになるかたができて、ひとというものはどこにこううんがあるか)
お見せになる方ができて、人というものはどこに幸運があるか
(わからないなどと、わたくしたちはありがたくおもったのですがね、じんせいというものは)
わからないなどと、私たちはありがたく思ったのですがね、人生というものは
(うつりかわりがあるものだといっても、またまたこんなたよりないごみぶんに)
移り変わりがあるものだといっても、またまたこんな頼りない御身分に
(なっておしまいになるって、かなしゅうございますね、よのなかは」)
なっておしまいになるって、悲しゅうございますね、世の中は」
(となげくのであった。むかしはながいまずしいせいかつになれてしまって、だれにもあきらめが)
と歎くのであった。昔は長い貧しい生活に慣れてしまって、だれにもあきらめが
(できていたのであるが、なかでいちどげんじのほごがくわわって、せけんなみのくらしが)
できていたのであるが、中で一度源氏の保護が加わって、世間並みの暮らしが
(できたことによって、いまのくつうはいっそうはげしいものにかんぜられた。)
できたことによって、今の苦痛はいっそう烈しいものに感ぜられた。
(よかったじだいにむかしからえんこのあるにょうぼうははじめてここに)
よかった時代に昔から縁故のある女房ははじめてここに
(みないつくことにもなって、かずがおおくなっていたのも、またちりぢりに)
皆居つくことにもなって、数が多くなっていたのも、またちりぢりに
(ほかへいってしまった。そしてまたろうすいしてしぬおんなもあって、つきひとともに)
ほかへ行ってしまった。そしてまた老衰して死ぬ女もあって、月日とともに
(うえからしたまでめしつかいのかずがすくなくなっていく。もとからこうはいしていたやしきはいっそう)
上から下まで召使の数が少なくなっていく。もとから荒廃していた邸はいっそう
(きつねのすのようになった。きみわるくおおきくなったこだちになくふくろうのこえを)
狐の巣のようになった。気味悪く大きくなった木立ちになく梟の声を
(まいにちやしきのひとはきいていた。ひとがおおければそうしたものはかげもみせない)
毎日邸の人は聞いていた。人が多ければそうしたものは影も見せない
(こだまなどというあやしいものもしだいにかたちをあらわしてきたりするふかいなことが)
木精などという怪しいものも次第に形を顕わしてきたりする不快なことが
(かずしらずあるのである。まだすこしばかりのこっているにょうぼうは、)
数しらずあるのである。まだ少しばかり残っている女房は、
(「これではしようがございません。ちかごろはちほうかんなどがよいやしきを)
「これではしようがございません。近ごろは地方官などがよい邸を
(じまんにつくりますが、こちらのおにわのきなどにめをつけて、おうりになりませんか)
自慢に造りますが、こちらのお庭の木などに目をつけて、お売りになりませんか
(などときんじょのものからいわせてまいりますが、そうあそばして、こんなおそろしいところは)
などと近所の者から言わせてまいりますが、そうあそばして、こんな怖しい所は
(おすてになってほかへおうつりなさいましよ。いつまでものこっているわたくしたちだって)
お捨てになってほかへお移りなさいましよ。いつまでも残っている私たちだって
(たまりませんから」 などとおんなしゅじんにすすめるのであったが、)
たまりませんから」 などと女主人に勧めるのであったが、
(「そんなことをしてはたいへんよ。せけんていもあります。わたくしがいきているあいだは)
「そんなことをしてはたいへんよ。世間体もあります。私が生きている間は
(やしきをひとでにわたすなどということはできるものでない。こんなにこわいきがするほど)
邸を人手に渡すなどということはできるものでない。こんなに恐い気がするほど
(あれていても、おとうさまのたましいがのこっているとおもうてんで、わたくしはあちこちをながめても)
荒れていても、お父様の魂が残っていると思う点で、私はあちこちをながめても
(こころがなぐさむのだからね」 にょおうはなきながらこういって、にょうぼうたちのしんげんを)
心が慰むのだからね」 女王は泣きながらこう言って、女房たちの進言を
(おもいもよらぬことにしていた。てどうぐなどもむかしのしなのつかいならしたりっぱなものの)
思いも寄らぬことにしていた。手道具なども昔の品の使い慣らしたりっぱな物の
(あるのを、なまものしりのこっとうずきのひとが、だれにせいさくさせたもの、なにがしのけっさくがあると)
あるのを、生物識りの骨董好きの人が、だれに製作させた物、某の傑作があると
(きいて、ゆずりうけたいと、そうぞうのできるびんぼうさをけいべつしてもうしこんでくるのを、)
聞いて、譲り受けたいと、想像のできる貧乏さを軽蔑して申し込んでくるのを、
(れいのようににょうぼうたちは、 「しかたのないことでございますよ。こまればどうぐを)
例のように女房たちは、 「しかたのないことでございますよ。困れば道具を
(おてばなしになるのは」 といって、それをかねにかえてもくぜんのきゅうはくから)
お手放しになるのは」 と言って、それを金にかえて目前の窮迫から
(すくわれようとするときがあると、すえつむはなはがんきょうにそれをこばむ。)
救われようとする時があると、末摘花は頑強にそれを拒む。