ボヘミアの醜聞 2
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問題文
(「このうえなくたんじゅんだ」かれはいった。「みればわかる。)
「この上なく単純だ」彼は言った。「見れば分かる。
(きみのひだりのくつのうちがわ、ちょうどだんろのひかりがあたっているところのかわに)
君の左の靴の内側、ちょうど暖炉の光が当たっているところの革に
(ほぼへいこうなひっかききずが6ほんある。そのきずは、あきらかにだれか)
ほぼ平行なひっかき傷が6本ある。その傷は、明らかに誰か
(ひじょうにふちゅういなじんぶつが、かたまったどろをとりのぞこうとして、)
非常に不注意な人物が、固まった泥を取り除こうとして、
(くつぞこにせっするぶぶんにそってこすったためにできたものだ。)
靴底に接する部分に沿ってこすったためにできたものだ。
(それゆえ、あきらかにふたつのすいりがなりたつ。)
それゆえ、明らかに二つの推理が成り立つ。
(きみはひじょうなあくてんこうにがいしゅつしていた。そしてまったくそざつな、くつをだいなしに)
君は非常な悪天候に外出していた。そしてまったく粗雑な、靴を台無しに
(してしまうような、てんけいてきなろんどんのしたばたらきをやとっている。)
してしまうような、典型的なロンドンの下働きを雇っている。
(きみのかいぎょうについてはこうだ。もしひとりのおとこがぼくのへやにあるいてはいってきて、)
君の開業についてはこうだ。もし一人の男が僕の部屋に歩いて入って来て、
(そのおとこがよーどほるむのにおいをさせ、みぎてのおやゆびにしょうさんぎんのくろいしみをつけ、)
その男がヨードホルムの臭いをさせ、右手の親指に硝酸銀の黒い染みをつけ、
(しるくはっとのみぎがわにこぶがあってそこにちょうしんきをしのばせたことを)
シルクハットの右側にコブがあってそこに聴診器を忍ばせたことを
(あらわしているというのに、そのおとこをいしかいのげんえきかいいんだと)
表しているというのに、その男を医師会の現役会員だと
(だんていできなければ、ぼくはほんとうにどんかんなにんげんにちがいない」)
断定できなければ、僕は本当に鈍感な人間に違いない」
(わたしはかれがせつめいしたすいりのかていがあまりにもかんたんなので、)
私は彼が説明した推理の過程があまりにも簡単なので、
(わらいをこらえられなかった。「きみのすいりのせつめいをきくと」わたしはいった。)
笑いをこらえられなかった。「君の推理の説明を聞くと」私は言った。
(「はなしはいつもばかばかしいほどたんじゅんで、じぶんでもかんたんにできそうにおもえる。)
「話はいつもばかばかしいほど単純で、自分でも簡単にできそうに思える。
(だがきみがすいりのてじゅんをひとつひとつせつめいしてくれるまで、)
だが君が推理の手順を一つ一つ説明してくれるまで、
(わたしはぽかんとしているだけだ。)
私はぽかんとしているだけだ。
(それでも、わたしのめはきみとおなじくらいによいとおもっているのだが」)
それでも、私の目は君と同じくらいに良いと思っているのだが」
(「そうだろうな」かれはたばこにひをつけて、ひじかけいすにふかぶかと)
「そうだろうな」彼はタバコに火をつけて、肘掛け椅子に深々と
(すわりながらこたえた。「きみはみているがかんさつしていない。そのさはめいはくだ。)
座りながら答えた。「君は見ているが観察していない。その差は明白だ。
(たとえば、きみはげんかんからこのへやにつづくかいだんをひんぱんにみているはずだ」)
例えば、君は玄関からこの部屋に続く階段を頻繁に見ているはずだ」
(「ひんぱんにみているな」「どれくらい」)
「頻繁に見ているな」「どれくらい」
(「そうだな、なんびゃっかいとなく」「ではなんだんある?」)
「そうだな、何百回となく」「では何段ある?」
(「なんだん?わからない」「そういうことだ!きみはかんさつしていない。)
「何段?分からない」「そういう事だ!君は観察していない。
(それでもみてはいる。ぼくのしてきしたいのはそのてんだ。いいか、)
それでも見てはいる。僕の指摘したいのはその点だ。いいか、
(ぼくはかいだんが17だんあることをしっている。なぜならぼくはみて)
僕は階段が17段あることを知っている。なぜなら僕は見て
(かんさつしているからだ。それはそうと、きみはこういうちいさいもんだいに)
観察しているからだ。それはそうと、君はこういう小さい問題に
(きょうみがあって、ぼくのつまらないたいけんを1つ2つほんにかいてくれるほどの)
興味があって、僕のつまらない体験を1つ2つ本に書いてくれるほどの
(ものずきだから、これにもきょうみがあるかもしれないな」かれは)
物好きだから、これにも興味があるかもしれないな」彼は
(てーぶるのうえにおかれていたぶあついぴんくがかったびんせんをなげてよこした。)
テーブルの上に置かれていた分厚いピンクがかった便箋を投げてよこした。
(「さっきゆうびんでとどいた」かれはいった。「よみあげてみてくれないか」)
「さっき郵便で届いた」彼は言った。「読み上げてみてくれないか」
(そのてがみはひづけがなく、じゅうしょもなまえもなかった。)
その手紙は日付がなく、住所も名前もなかった。
(「こんやひじょうにじゅうようなもんだいできでんにそうだんしたいとねがうしんしが、)
「今夜非常に重要な問題で貴殿に相談したいと願う紳士が、
(8じ15ふんまえに、ほうもんするだろう。きでんのさいきんのよーろっぱおうけのしごとは、)
8時15分前に、訪問するだろう。貴殿の最近のヨーロッパ王家の仕事は、
(こちょうしようのないほどじゅうようなもんだいをまかせるにあたり、きでんがあんしんして)
誇張しようのないほど重要な問題を任せるにあたり、貴殿が安心して
(しんらいできるひとりであることをしめした。きでんのこのひょうかは)
信頼できる一人であることを示した。貴殿のこの評価は
(あらゆるほうめんからうけとっている。そのじこくにざいたくあることをねがう。)
あらゆる方面から受け取っている。その時刻に在宅あることを願う。
(もしほうもんしゃがふくめんをかぶっていてもわるくとらないようにねがいたい」)
もし訪問者が覆面を被っていても悪くとらないように願いたい」
(「たしかにこれはなぞめいているな」わたしはいった。)
「確かにこれは謎めいているな」私は言った。
(「このないようについてどうそうぞうする?」「まだでーたがない。)
「この内容についてどう想像する?」「まだデータがない。
(でーたがないときにりろんをくみたてるのはじゅうだいなあやまりだ。)
データがないときに理論を組み立てるのは重大な誤りだ。
(じじつにあうようにりろんをくみたてるかわりに、じじつをりろんにあうように)
事実に合うように理論を組み立てる代わりに、事実を理論に合うように
(ゆがめてしまう。きがつかないうちにね。しかし、そのびんせんじたいはべつだ。)
ゆがめてしまう。気が付かないうちにね。しかし、その便箋自体は別だ。
(きみはそこからどうすいろんをみちびくかね?」わたしはしんちょうにひっせきとかかれている)
君はそこからどう推論を導くかね?」私は慎重に筆跡と書かれている
(かみをしらべた。「これをかいたおとこはかねまわりがよい」)
紙を調べた。「これを書いた男は金回りが良い」
(わたしはがんばってほーむずのしゅほうをまねながらいった。「いっさつ)
私は頑張ってホームズの手法を真似ながら言った。「一冊
(はんくらうんいかではこんなかみはかえない。みょうにつよくてごわごわしている」)
半クラウン以下ではこんな紙は買えない。妙に強くてごわごわしている」
(「みょうなーーまさしくそれだ」ほーむずはいった。)
「妙な――まさしくそれだ」ホームズは言った。
(「それはいぎりすのかみではない。ひかりにかざしてみろ」)
「それはイギリスの紙ではない。光にかざしてみろ」
(いわれたようにすると、eg、p、gt、というすかしもじがみえた。)
言われたようにすると、Eg、P、Gt、という透かし文字が見えた。
(「それをどうはんだんする?」ほーむずはいった。)
「それをどう判断する?」ホームズは言った。
(「きっと、めーかーのなまえだな。いや、もしかするとおとこのいにしゃるか」)
「きっと、メーカーの名前だな。いや、もしかすると男のイニシャルか」
(「ぜんぜんちがう。gとこもじのtはgesellschaftのりゃくごで、)
「全然違う。Gと小文字のtはGesellschaftの略語で、
(どいつごの「かいしゃ」だ。かんしゅうてきなたんしゅくでえいごのco.のようなものだ。)
ドイツ語の「会社」だ。慣習的な短縮で英語のCo.のようなものだ。
(pはもちろん、papier(かみ)のいみだ。さてegだが、)
Pはもちろん、Papier(紙)の意味だ。さてEgだが、
(よーろっぱちめいじてんをちょっとみてみよう」)
ヨーロッパ地名辞典をちょっと見てみよう」
(かれはほんだなからぶあついちゃいろのほんをとりだした。)
彼は本棚から分厚い茶色の本を取り出した。
(「eglow、eglonitz、、これだ、egria。)
「Eglow、Eglonitz、、これだ、Egria。
(ぼへみあのどいつごけんのちほうだ。かーるずばっどからそうとおくない。)
ボヘミアのドイツ語圏の地方だ。カールズバッドからそう遠くない。
(うぉーれんすたいんがしんだばしょ、たくさんのがらすがいしゃと)
ウォーレンスタインが死んだ場所、沢山のガラス会社と
(せいしこうじょうがあるばしょとしてもゆうめい。は、は、どうだ。これをどうおもう」)
製紙工場がある場所としても有名。ハ、ハ、どうだ。これをどう思う」
(かれはめをかがやかせた。そしてたばこからあおいしょうりのけむりをはでにふきだした。)
彼は目を輝かせた。そしてタバコから青い勝利の煙を派手に吹き出した。
(「ぼへみあせいのかみか」わたしはいった。)
「ボヘミア製の紙か」私は言った。
(「そのとおり。そしてそのてがみをかいたのはどいつじんだ。)
「その通り。そしてその手紙を書いたのはドイツ人だ。
(きみはこのぶんしょうのきみょうなこうせいにきづいたか?)
君はこの文章の奇妙な構成に気付いたか?
(「このきでんのひょうばんはあらゆるほうめんからうけとっている」ふらんすじんや)
『この貴殿の評判はあらゆる方面から受け取っている』フランス人や
(ろしあじんはこうはかけない。どうしをこんなにれいぐうするのはどいつじんだ。)
ロシア人はこうは書けない。動詞をこんなに冷遇するのはドイツ人だ。
(したがって、のこるのは、このぼへみあのかみにてがみをかき、)
したがって、残るのは、このボヘミアの紙に手紙を書き、
(かおをますくでかくしたがるどいつじんがなにをのぞんでいるかをみつけることだ。)
顔をマスクで隠したがるドイツ人が何を望んでいるかを見つけることだ。
(ああ、もしぼくのかんちがいでなければ、ほんにんがきたようだから、)
ああ、もし僕の勘違いでなければ、本人が来たようだから、
(このぎもんはすべてかいしょうしそうだな」ほーむずがはなしていると、)
この疑問はすべて解消しそうだな」ホームズが話していると、
(うまのひづめのするどいおとがきこえたあと、しゃりんがえんせきにあたってきしむおとがした。)
馬の蹄の鋭い音が聞こえた後、車輪が縁石に当たってきしむ音がした。
(それにつづいてべるをするどくひくおとがきこえた。ほーむずはくちぶえをふいた。)
それに続いてベルを鋭く引く音が聞こえた。ホームズは口笛を吹いた。