銀河鉄道の夜 6

宮沢賢治 作
ジョバンニは靴をぬぎながらいいました。
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問題文
(さん、いえ)
三、家
(じょばんにがいきおいよくかえってきたのは、あるうらまちのちいさないえでした。)
ジョバンニが勢いよく帰ってきたのは、ある裏町の小さな家でした。
(そのみっつならんだいりぐちのいちばんひだりがわには、)
その三つならんだ入口の一番左側には、
(あきばこにむらさきいろのけーるやあすぱらがすがうえてあって、)
空箱に紫いろのケールやアスパラガスが植えてあって、
(ちいさなふたつのまどにはひおいがおりたままになっていました。)
小さな二つの窓には日覆いが下りたままになっていました。
(「おかあさん。いまかえったよ。ぐあいわるくなかったの。」)
「お母さん。いま帰ったよ。ぐあい悪くなかったの。」
(じょばんにはくつをぬぎながらいいました。)
ジョバンニは靴をぬぎながらいいました。
(「ああ、じょばんに、おしごとがひどかったろう。)
「ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。
(きょうはすずしくてね。わたしはずうっとぐあいがいいよ。」)
今日は涼しくてね。わたしはずうっとぐあいがいいよ。」
(じょばんにはげんかんをあがっていきますと、)
ジョバンニは玄関を上がって行きますと、
(じょばんにのおかあさんがすぐいりぐちのへやに)
ジョバンニのお母さんがすぐ入口の室(へや)に
(しろいきれをかぶってやすんでいたのでした。)
白いきれを被って寝んでいたのでした。
(じょばんにはまどをあけました。)
ジョバンニは窓をあけました。
(「おかあさん。きょうはかくざとうをかってきたよ。ぎゅうにゅうにいれてあげようとおもって。」)
「お母さん。今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って。」
(「ああ、おまえさきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから。」)
「ああ、おまえさきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから。」
(「おかあさん。ねえさんはいつかえったの。」)
「おかあさん。姉さんはいつかえったの。」
(「ああさんじころかえったよ。みんなそこらをしてくれてね。」)
「ああ三時ころ帰ったよ。みんなそこらをしてくれてね。」
(「おかあさんのぎゅうにゅうはきていないんだろうか。」)
「お母さんの牛乳はきていないんだろうか。」
(「こなかったろうかねえ。」)
「こなかったろうかねえ。」
(「ぼくいってとってこよう。」)
「ぼく行ってとってこよう。」
(「ああ、あたしはゆっくりでいいんだから、おまえさきにおあがり、)
「ああ、あたしはゆっくりでいいんだから、おまえさきにおあがり、
(ねえさんがね、とまとでなにかこしらえてそこへおいていったよ。」)
姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いていったよ。」
(「ではぼくたべよう。」)
「ではぼくたべよう。」
(じょばんにはまどのところからとまとのさらをとって)
ジョバンニは窓のところからトマトの皿をとって
(ぱんといっしょにしばらくむしゃむしゃたべました。)
パンといっしょにしばらくむしゃむしゃたべました。
(「ねえおかあさん。ぼくおとうさんはきっとまもなくかえってくるとおもうよ。」)
「ねえお母さん。ぼくお父さんはきっと間もなく帰ってくると思うよ。」
(「あああたしもそうおもう。けれどもおまえはどうしてそうおもうの。」)
「あああたしもそう思う。けれどもおまえはどうしてそう思うの。」
(「だってけさのしんぶんにことしはきたのほうのりょうは)
「だって今朝の新聞に今年は北の方の漁は
(たいへんよかったとかいてあったよ。」)
たいへんよかったと書いてあったよ。」
(「ああだけどねえ、おとうさんはりょうへはでていないかもしれない。」)
「ああだけどねえ、お父さんは漁へは出ていないかもしれない。」
(「きっとでているよ。おとうさんがかんごくへはいるような)
「きっと出ているよ。お父さんが監獄へ入るような
(そんなわるいことをしたはずがないんだ。)
そんな悪いことをしたはずがないんだ。
(このまえおとうさんがもってきてがっこうへきぞうした)
この前お父さんが持ってきて学校へ寄贈した
(おおきなかにのこうらだの、となかいのつのだの)
大きなカニの甲らだの、トナカイの角だの
(いまだってみんなひょうほんしつにあるんだ。)
今だってみんな標本室にあるんだ。
(ろくねんせいなんかじゅぎょうのとき、せんせいがかわるがわるきょうしつへもっていくよ。)
六年生なんか授業のとき、先生が代るがわる教室へ持って行くよ。
(おととししゅうがくりょこうで・・・」)
一昨年修学旅行で・・・」