人間失格(第一の手記)5
太宰治の人間失格
句読点や記号は除外しています。
| 順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | もっちゃん先生 | 4911 | B | 5.1 | 95.3% | 551.1 | 2847 | 140 | 54 | 2026/05/29 |
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問題文
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(またいっぽうじぶんはげなんやげじょたちをようしつにあつめて)
また一方、自分は、下男や下女たちを洋室に集めて、
(げなんのひとりにめちゃくちゃにぴあののきいをたたかせ)
下男のひとりに滅茶苦茶にピアノのキイをたたかせ、
(いなかではありましたがそのいえにはたいていのものがそろっていました)
(田舎ではありましたが、その家には、たいていのものが、そろっていました)
(じぶんはそのでたらめのきょくにあわせていんでやんのおどりをおどってみせて)
自分はその出鱈目の曲に合せて、インデヤンの踊りを踊って見せて、
(みなをおおわらいさせました)
皆を大笑いさせました。
(じけいはふらっしゅをたいてじぶんのいんでやんのおどりをさつえいして)
次兄は、フラッシュを焚いて、自分のインデヤンの踊りを撮影して、
(そのしゃしんができたのをみるとじぶんのこしぬのそれはさらさのふろしきでしたの)
その写真が出来たのを見ると、自分の腰布(それは更紗の風呂敷でした)の
(あわせめからちいさいおちんpoがみえていたのでこれがまたいえじゅうのおおわらいでした)
合せ目から、小さいお..が見えていたので、これがまた家中の大笑いでした。
(じぶんにとってこれまたいがいのせいこうというべきものだったかもしれません)
自分にとって、これまた意外の成功というべきものだったかも知れません。
(じぶんはまいつきしんかんのしょうねんざっしをじゅっさついじょうもとっていてまたそのほかにも)
自分は毎月、新刊の少年雑誌を十冊以上も、とっていて、またその他にも、
(さまざまのほんをとうきょうからとりよせてだまってよんでいたので)
さまざまの本を東京から取り寄せて黙って読んでいましたので、
(めちゃらくちゃらはかせだのまたなんじゃもんじゃはかせなどとは)
メチャラクチャラ博士だの、またナンジャモンジャ博士などとは、
(たいへんななじみでまたかいだんこうだんらくごえどこばなしなどのたぐいにも)
たいへんな馴染みで、また、怪談、講談、落語、江戸小咄などの類にも、
(かなりつうじていましたからひょうきんなことをまじめなかおをしていって)
かなり通じていましたから、剽軽な事をまじめな顔をして言って、
(いえのものたちをわらわせるのにはことをかきませんでした)
家の者たちを笑わせるのには事を欠きませんでした。
(しかしああがっこう)
しかし、嗚呼、学校!
(じぶんはそこではそんけいされかけていたのです)
自分は、そこでは、尊敬されかけていたのです。
(そんけいされるというかんねんもまたはなはだじぶんをおびえさせました)
尊敬されるという観念もまた、甚だ自分を、おびえさせました。
(ほとんどかんぜんにちかくひとをだましてそうして)
ほとんど完全に近く人をだまして、そうして、
(あるひとりのぜんちぜんのうのものにみやぶられこっぱみじんにやられて)
或るひとりの全知全能の者に見破られ、木っ葉みじんにやられて、
など
(しぬるいじょうのあかはじをかかせられるそれが)
死ぬる以上の赤恥をかかせられる、それが、
(そんけいされるというじょうたいのじぶんのていぎでありました)
「尊敬される」という状態の自分の定義でありました。
(にんげんをだましてそんけいされてもだれかひとりがしっている)
人間をだまして、「尊敬され」ても、誰かひとりが知っている、
(そうしてにんげんたちもやがてそのひとりからおしえられて)
そうして、人間たちも、やがて、そのひとりから教えられて、
(だまされたことにきづいたときそのときにんげんたちのいかりふくしゅうは)
だまされた事に気づいた時、その時人間たちの怒り、復讐は、
(いったいまあどんなでしょうか)
いったい、まあ、どんなでしょうか。
(そうぞうしてさえみのけがよだつここちがするのです)
想像してさえ、身の毛がよだつ心地がするのです。
(じぶんはかねもちのいえにうまれたということよりも)
自分は、金持ちの家に生れたという事よりも、
(ぞくにいうできることによってがっこうじゅうのそんけいをえそうになりました)
俗にいう「できる」事に依って、学校中の尊敬を得そうになりました。
(じぶんはこどものころからびょうじゃくでよくひとつきふたつきまたいちがくねんちかくも)
自分は、子供の頃から病弱で、よく一つき二つき、また一学年ちかくも
(ねこんでがっこうをやすんだことさえあったのですがそれでも)
寝込んで学校を休んだ事さえあったのですが、それでも、
(やみあがりのからだでじんりきしゃにのってがっこうへいきがくねんまつのしけんをうけてみると)
病み上りのからだで人力車に乗って学校へ行き、学年末の試験を受けてみると、
(くらすのだれよりもいわゆるできているようでした)
クラスの誰よりも所謂「できて」いるようでした。
(からだぐあいのよいときでもじぶんはさっぱりべんきょうせず)
からだ具合いのよい時でも、自分は、さっぱり勉強せず、
(がっこうへいってもじゅぎょうじかんにまんがなどをかき)
学校へ行っても授業時間に漫画などを書き、
(きゅうけいじかんにはそれをくらすのものたちにせつめいしてきかせてわらわせてやりました)
休憩時間にはそれをクラスの者たちに説明して聞かせて、笑わせてやりました。
(またつづりかたにはこっけいばなしばかりかきせんせいからちゅういされても)
また、綴り方には、滑稽噺ばかり書き、先生から注意されても、
(しかしじぶんはやめませんでした)
しかし、自分は、やめませんでした。
(せんせいはじつはこっそりじぶんのこっけいばなしをたのしみにしていることをじぶんは)
先生は、実はこっそり自分の滑稽噺を楽しみにしている事を自分は、
(しっていたからでした)
知っていたからでした。
(あるひじぶんはれいによってじぶんがははにつれられてじょうきょうのとちゅうのきしゃで)
或る日、自分は、れいに依って、自分が母に連れられて上京の途中の汽車で、
(おしっこをきゃくしゃのつうろにあるたんつぼにしてしまったしっぱいだん)
おしっこを客車の通路にある痰壺にしてしまった失敗談
(しかしそのじょうきょうのときに)
(しかし、その上京の時に、
(じぶんはたんつぼとしらずにしたのではありませんでした)
自分は痰壺と知らずにしたのではありませんでした。
(こどものむじゃきさをてらってわざとそうしたのでしたを)
子供の無邪気さをてらって、わざと、そうしたのでした)を、
(ことさらにかなしそうなひっちでかいてていしゅつし)
ことさらに悲しそうな筆致で書いて提出し、
(せんせいはきっとわらうというじしんがありましたので)
先生は、きっと笑うという自信がありましたので、
(しょくいんしつにひきあげていくせんせいのあとをそっとつけていきましたら)
職員室に引き揚げて行く先生のあとを、そっとつけて行きましたら、
(せんせいはきょうしつをでるとすぐじぶんのそのつづりかたを)
先生は、教室を出るとすぐ、自分のその綴り方を、
(ほかのくらすのものたちのつづりかたのなかからえらびだし)
他のクラスの者たちの綴り方の中から選び出し、
(ろうかをあるきながらよみはじめてくすくすわらい)
廊下を歩きながら読みはじめて、クスクス笑い、
(やがてしょくいんしつにはいってよみおえたのかかおをまっかにしておおごえをあげてわらい)
やがて職員室にはいって読み終えたのか、顔を真赤にして大声を挙げて笑い、
(ほかのせんせいにさっそくそれをよませているのをみとどけ)
他の先生に、さっそくそれを読ませているのを見とどけ、
(じぶんはたいへんまんぞくでした)
自分は、たいへん満足でした。
