夢の記録④
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問題文
((おとなげとこどもらしさ))
(大人げと子どもらしさ)
(がっきゅうほうかいがおきていた。)
学級崩壊が起きていた。
(といっても、がっこうにこないせいとはひとりもいなかったし、)
といっても、学校に来ない生徒は一人もいなかったし、
(じゅぎょうちゅうにたちあるいたりがやがやとにぎやかにぼうがいするわけでもない、)
授業中に立ち歩いたりガヤガヤと賑やかに妨害するわけでもない、
(とてもしずかながっきゅうほうかいだった。)
とても静かな学級崩壊だった。
(わたしはいま、こうこうせいで、きょうしはちゅうがくじだいのおんなきょうしだった。)
わたしは今、高校生で、教師は中学時代の女教師だった。
(そのおんなきょうしはせいとたちにすかれてはいなかったが、とくべつに)
その女教師は生徒たちに好かれてはいなかったが、特別に
(きらわれてもいなかったとおもう。ただ、かげでわるぐちをいったりすることは、)
嫌われてもいなかったと思う。ただ、陰で悪口を言ったりすることは、
(おうおうにしてあることだ。じぶんのきげんのわるさをもろにじゅぎょうちゅうのたいどにだすところが、)
往々にしてあることだ。自分の機嫌の悪さをもろに授業中の態度に出す所が、
(せいとたちはとくにきにいらなかった。)
生徒たちは特に気に入らなかった。
(そのきょうしが、「せいしんをやんだおんなのこ」のはなしをした。)
その教師が、「精神を病んだ女の子」の話をした。
(どうきいても、えいがやなんかのうけうりだったが、そのおんなのこのまつろに、)
どう聞いても、映画やなんかの受け売りだったが、その女の子の末路に、
(わたしはとてもはらがたった。どこからえたちしきなのかしらないが、)
わたしはとても腹が立った。どこから得た知識なのか知らないが、
(こういうはなしをせいとのまえでするそのこころもちがりかいできなかった。)
こういう話を生徒の前でするその心持ちが理解できなかった。
(いったいなんのきょういくだろう。)
一体何の教育だろう。
(それいらい、せいとたちはしずかなていこうをするようになったのだった。)
それ以来、生徒たちは静かな抵抗をするようになったのだった。
(ほうかご、えきのえれべーたーをあがっていると、うえからぎゃっこうしてくる)
放課後、駅のエレベーターを上がっていると、上から逆行して来る
(しょうがくせいがたくさんいた。あぶないし、じゃまだからちゅういをすると、)
小学生がたくさんいた。危ないし、邪魔だから注意をすると、
(ぎゃくぎれしてきた。いらっとして、「おまえらなんねんなんくみだ」というと、)
逆ギレしてきた。イラっとして、「お前ら何年何組だ」と言うと、
(わるびれもせずくちぐちに「いちねんいちくみ」「にくみ」「さんくみ」とこたえる。)
悪びれもせず口々に「一年一組」「二組」「三組」と答える。
(「せんせいにいいつけるよ」「だまれぶす」)
「先生に言いつけるよ」「黙れブス」
(さらにはらがたったので、そのままなんにんかつきおとしてやろうかとおもった。)
更に腹が立ったので、そのまま何人か突き落としてやろうかと思った。
(おとなげもなくこころのなかであくたいをつき、したうちをした。)
大人げもなく心の中で悪態をつき、舌打ちをした。
(あるたいかいがあってそれにさんかするため、とあるたてものへむかう。)
ある大会があってそれに参加するため、とある建物へ向かう。
(ふとみると、どあのかぎあなにかぎがささったままだった。)
ふと見ると、ドアの鍵穴に鍵がささったままだった。
(なぜだろうとおもいながらもへやにはいろうとすると、あやしいおとこが)
なぜだろうと思いながらも部屋に入ろうとすると、怪しい男が
(ばいくからおりてこちらへやってくる。いやなよかんがしてあわててはいって)
バイクから降りてこちらへやって来る。いやな予感がして慌てて入って
(かぎをしめようとすると、むこうがわからそのおとこがそれをそししようとしてきた。)
鍵を閉めようとすると、向こう側からその男がそれを阻止しようとしてきた。
(どあをあけられまいとかくとうしていると、おとこのはいごに、tくんがあらわれて)
ドアを開けられまいと格闘していると、男の背後に、T君が現われて
(ほっとする。おとこはいいわけのように)
ホッとする。男は言い訳のように
(「いや、かぎあなにかぎがささったまんまだってつうほうがあって」という。)
「いや、鍵穴に鍵がささったまんまだって通報があって」と言う。
(たしかにそのささったままのかぎはふしぎなものではあった。)
たしかにそのささったままの鍵は不思議なものではあった。
(「このかぎのこと、みんなしってる?」ときくが、みんな、しらないという。)
「この鍵のこと、みんな知ってる?」と聞くが、みんな、知らないと言う。
(おとこはくちのなかでなにかもごもごいいながら、くびをかしげかしげさっていった。)
男は口の中で何かモゴモゴ言いながら、首を傾げ傾げ去って行った。
(「たいかい」というのは、こうしきなものでもなんでもない、「けんかたいかい」だった。)
「大会」というのは、公式なものでも何でもない、「喧嘩大会」だった。
(るーるは、ぶきはつかわない、それだけだった。)
ルールは、武器は使わない、それだけだった。
(さんかしゃは、おんなはわたしとrとyとrのあね、おとこはtとm。)
参加者は、女はわたしとRとYとRの姉、男はTとM。
(みんながじゅんびをすすめるなか、わたしは、おとことかくとうしたときにはずれた)
みんなが準備を進めるなか、わたしは、男と格闘した時に外れた
(どあのあみどをなおそうとおもったが、なかなかうまくはまらない。)
ドアの網戸を直そうと思ったが、なかなか上手く嵌まらない。
(そもそもこれはほんとうにここのあみどなのかなどとおもっていると、)
そもそもこれは本当にここの網戸なのかなどと思っていると、
(しょうがくせいくらいのおとこのこがやってきて、てつだってくれた。)
小学生くらいの男の子がやって来て、手伝ってくれた。
(えれべーたーをぎゃっこうしてぎゃくぎれするようなにくたらしいこどもがいるなかで、)
エレベーターを逆行して逆ギレするような憎たらしい子供がいるなかで、
(こんなにやさしいしょうねんもいるんだな。)
こんなに優しい少年もいるんだな。
(「きみはなんねんせい?」「しょうがっこういちねんです」)
「君は何年生?」「小学校一年です」
(さっきのこどもとおなじじゃないか。)
さっきの子供と同じじゃないか。
(なのに、ことばづかいやはなしかた、ふるまいが、やけにおとなびてみえた。)
なのに、言葉づかいや話し方、振る舞いが、やけに大人びて見えた。
(ありがとう、とれいをいってみんなのほうへもどろうとするが、そのしょうねんは)
ありがとう、と礼を言ってみんなの方へ戻ろうとするが、その少年は
(そのばをたちさろうとしなかった。ものいいたげに、こちらをみている。)
その場を立ち去ろうとしなかった。物言いたげに、こちらを見ている。
(「どうしたの?」ときくと、ここでいまからなにをするのかとたずねてくるので)
「どうしたの?」と聞くと、ここで今から何をするのかと訊ねてくるので
(くわしくせつめいすると、じぶんもけんかたいかいにさんかしたいともうしでてきた。)
詳しく説明すると、自分も喧嘩大会に参加したいと申し出てきた。
(きょとんとした。)
キョトンとした。
(なにをいいだすのか。これはこどものおあそびではないのだ。ほんきのたたかいなのだ。)
何を言い出すのか。これは子供のお遊びではないのだ。本気の闘いなのだ。
(しかもすこしばかりひごうほうてきでもあるのだ。)
しかも少しばかり非合法的でもあるのだ。
(「あそびじゃないんだよ?」)
「遊びじゃないんだよ?」
(「だからこそさんかしたいんです」)
「だからこそ参加したいんです」
(きけば、このしょうねんはにさいからからてをならっているのだという。)
聞けば、この少年は二歳から空手を習っているのだという。
(だとしても、しょうがくいちねんせいとこうこうせいとではからだのおおきさもちからもちがうし、)
だとしても、小学一年生と高校生とでは体の大きさも力も違うし、
(さんかさせられるわけがない。なんといってもほんきのたたかいなのだから。)
参加させられるわけがない。なんといっても本気の闘いなのだから。
(しかし、しょうねんはいっこうにひこうとはしない。そのかたくななしょうねんのたいどを、)
しかし、少年は一向に引こうとはしない。その頑なな少年の態度を、
(すくなからずけげんにおもいながらこうたずねた。)
少なからず怪訝に思いながらこう訊ねた。
(「どうしてそんなにさんかしたい?」)
「どうしてそんなに参加したい?」
(「おねえさんをまもりたいから」)
「おねえさんを守りたいから」
(ときがとまった。わたしは、しょうがくせいにうちおとされた。)
時が止まった。わたしは、小学生に打ち落とされた。