江戸川乱歩 D坂⑭
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 123 | 6391 | S | 6.6 | 96.5% | 341.1 | 2262 | 82 | 37 | 2024/10/22 |
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問題文
(「きみはきっと、それじゃ、そのはんにんはどこからはいって、)
「君はきっと、それじゃ、その犯人はどこから入って、
(どこからにげたかとはんもんするでしょう。たしかに、)
どこから逃げたかと反問するでしょう。確かに、
(そのてんがあきらかにならなければ、ほかのすべてのことがわかっても)
その点が明らかにならなければ、他の凡てのことが分っても
(なんのかいもないのですからね。だが、いかんながら、)
何の甲斐もないのですからね。だが、遺憾ながら、
(それもぼくがさぐりだしたのですよ。あのばんのそうさのけっかでは、)
それも僕が探り出したのですよ。あの晩の捜査の結果では、
(ぜんぜんはんにんのでていったけいせきがないようにみえました。しかし、)
全然犯人の出て行った形跡がない様に見えました。しかし、
(さつじんがあったいじょう、はんにんがでいりしなかったはずはないのですから、)
殺人があった以上、犯人が出入りしなかった筈はないのですから、
(けいじのそうさくにどこかぬけめがあったとかんがえるほかはありません。)
刑事の捜索にどこか抜目があったと考えるほかはありません。
(けいさつでもそれにはずいぶんくしんしたようすですが、ふこうにして、かれらは、)
警察でもそれには随分苦心した様子ですが、不幸にして、彼等は、
(ぼくといういっかいのしょせいにおよばなかったのですよ。)
僕という一介の書生に及ばなかったのですよ。
(なあに、じつはくだらぬことなんですがね、ぼくはこうおもったのです。)
ナアニ、実は下らぬ事なんですがね、僕はこう思ったのです。
(これほどけいさつがとりしらべているのだから、きんじょのひとたちにうたがうべきてんはまずあるまい。)
これ程警察が取調べているのだから、近所の人達に疑うべき点は先ずあるまい。
(もしそうだとすれば、はんにんは、なにか、ひとのめにふれても、それがはんにんだとは)
もしそうだとすれば、犯人は、何か、人の目にふれても、それが犯人だとは
(きづかれぬようなほうほうでとおったのじゃないだろうか、そして、)
気づかれぬ様な方法で通ったのじゃないだろうか、そして、
(それをもくげきしたひとはあっても、まるでもんだいにしなかったのではなかろうか、)
それを目撃した人はあっても、まるで問題にしなかったのではなかろうか、
(とね。つまり、にんげんのちゅういりょくのもうてん--われわれのめにもうてんがあるとおなじように、)
とね。つまり、人間の注意力の盲点--我々の目に盲点があると同じ様に、
(ちゅういりょくにもそれがありますよ--をりようして、てじなしがけんぶつのめのまえで、)
注意力にもそれがありますよ--を利用して、手品師が見物の目の前で、
(おおきなしなものをわけもなくかくすように、じぶんじしんをかくしたのかもしれませんからね。)
大きな品物を訳もなく隠す様に、自分自身を隠したのかも知れませんからね。
(そこで、ぼくがめをつけたのは、あのふるほんやのいっけんおいてとなりの)
そこで、僕が目をつけたのは、あの古本屋の一軒置いて隣の
(あさひやというそばやです」)
旭屋という蕎麦屋です」
(ふるほんやのみぎへとけいや、かしやとならび、ひだりへたびや、そばやとならんでいるのだ。)
古本屋の右へ時計屋、菓子屋と並び、左へ足袋屋、蕎麦屋と並んでいるのだ。
(「ぼくはあすこへいって、じけんのとうやはちじごろに、)
「僕はあすこへ行って、事件の当夜八時頃に、
(べんじょをかりていったおとこはないかときいてみたのです。)
便所を借りて行った男はないかと聞いて見たのです。
(あのあさひやはきみもしっているでしょうが、みせからどまつづきで、)
あの旭屋は君も知っているでしょうが、店から土間続きで、
(うらきどまでいけるようになっていて、そのうらきどのすぐそばに)
裏木戸まで行ける様になっていて、その裏木戸のすぐ側に
(べんじょがあるのですから、べんじょをかりるようにみせかけて、)
便所があるのですから、便所を借りる様に見せかけて、
(うらぐちからでていって、またはいってくるのはわけはありませんからね。)
裏口から出て行って、又入って来るのは訳はありませんからね。
(--れいのあいすくりーむやはろじをでたかどにみせをだしていたのですから、)
--例のアイスクリーム屋は路地を出た角に店を出していたのですから、
(みつかるはずはありません--それに、あいてがそばやですから、)
見つかる筈はありません--それに、相手が蕎麦屋ですから、
(べんじょをかりるということがきわめてしぜんなんです。きけば、)
便所を借りるということが極めて自然なんです。聞けば、
(あのばんはおかみさんはふざいで、しゅじんだけがみせのまにいたそうですから、)
あの晩はおかみさんは不在で、主人だけが店の間にいたそうですから、
(おあつらえむきなんです。きみ、なんとすてきな、おもいつきではありませんか。)
おあつらえ向きなんです。君、なんとすてきな、思いつきではありませんか。
(そして、あんのじょう、ちょうどそのじぶんにべんじょをかりたきゃくがあったのです。)
そして、案の定、丁度その時分に便所を借りた客があったのです。
(ただ、ざんねんなことには、あさひやのしゅじんは、そのおとこのかおかたちとかきもののしまがらなぞを)
ただ、残念なことには、旭屋の主人は、その男の顔形とか着物の縞柄なぞを
(すこしもおぼえていないのですがね。--ぼくはさっそくこのことをれいのともだちをつうじて、)
少しも覚えていないのですがね。--僕は早速この事を例の友達を通じて、
(こばやしけいじにしらせてやりましたよ。けいじはじぶんでも)
小林刑事に知らせてやりましたよ。刑事は自分でも
(そばやをしらべたようでしたが、それいじょうなにもわからなかったのです--」)
蕎麦屋を調べたようでしたが、それ以上何も分らなかったのです--」