千年後の世界 2 海野十三

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昭和初期の作家が書いた近未来のはなし

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(それもそうであろう。このわかいかがくしゃふるはたのじっけんは、かれひとりのちからによった)

それもそうであろう。この若い科学者フルハタの実験は、彼一人の力によった

(ものではなく、「いっせんねんにんげんれいとうじぎょうけんきゅういいんかい」というながたらしいなの)

ものではなく、「一千年人間冷凍事業研究委員会」という長たらしい名の

(かがくしゃだんたいがあって、そのきょうりょくによっておこなわれたものである。)

科学者団体があって、その協力によって行われたものである。

(いまもいったように、ひつぎのなかは、しかくなへやになっているが、そとはきゅうじょうを)

今もいったように、棺の中は、四角な部屋になっているが、外は球状を

(なしていて、どのほうがくからのあつりょくにもたえるようになっていた。)

なしていて、どの方角からの圧力にも耐えるようになっていた。

(いっせんねんごのかくせいののちなのかたってふるはたのひろうはすっかりかいふくし、このかんおけに)

一千年後の覚醒ののち七日たってフルハタの疲労はすっかり回復し、この棺桶に

(はいったときのことが、まるできのうのようにおもわれるのであった。)

入ったときのことが、まるで昨日のように思われるのであった。

(まったくいっせんねんというものを、よくねむったものであった。 だが、はたして、)

まったく一千年というものを、よく眠ったものであった。 だが、果たして、

(いっせんねんをねむりつづけたか。それはかべにかけられているらじうむとけいが、)

一千年を眠りつづけたか。それは壁にかけられているラジウム時計が、

(ちゃんとほしょうをしていてくれる。このとけいは、らじうむがたえざるほうしゃによって)

ちゃんと保証をしていてくれる。この時計は、ラジウムがたえざる放射によって

(ほうかいするじょうたいをそくていし、それによってこのながいねんすうがじきせられるように)

崩壊する状態を測定し、それによってこの永い年数が自記せられるようにな

(なっていた。ふるはたはおきあがったさいしょに、そのとけいのまえにとんでいって、)

なっていた。フルハタはおきあがった最初に、その時計の前にとんでいって、

(けいかじかんをよんだ。これによると、いっせんねんよりもすこしねむりすぎていた。)

経過時間を読んだ。これによると、一千年よりもすこし眠りすぎていた。

(とけいのよみは、いっせんねんとひゃくろくじゅうくにちめになっており、きげんでいうとさんぜんろっぴゃくねんの)

時計の読みは、一千年と百六十九日目になっており、紀元でいうと三千六百年の

(ふゆにがつにそうとうしている。つまりひゃくろくじゅうくにちだけ、このかんおけきかいはごさを)

冬二月に相当している。つまり百六十九日だけ、この棺桶機械は誤差を

(うんだわけである。だがそれにしてもいっせんねんにたいしひゃくろくじゅうくにちのごさであるから)

生んだわけである。だがそれにしても一千年に対し百六十九日の誤差であるから

(たいしたごさではない。ことに、かれふるはたがれいとうじょうたいにおいて、かんぜんに)

大した誤差ではない。ことに、彼フルハタが冷凍状態において、完全に

(そのせいめいをいっせんねんごにまでたもつことができたので、そのきかいのゆうしゅうさはじゅうぶんに)

その生命を一千年後にまで保つことができたので、その機械の優秀さは充分に

(ほめていいだろう。ただこのうえのふあんは、いっせんねんごになって、このかんおけをそとから)

ほめていいだろう。ただこの上の不安は、一千年後になって、この棺桶を外から

(たたくものがなければならないのであるがそののっくのおとがまだきかれない)

叩く者がなければならないのであるがそのノックの音がまだ聞かれない

など

(ことだった。しようしょによると、このげんじゅうないっせんねんふかかいのかんおけは、そとからひらく)

ことだった。仕様書によると、この厳重な一千年不可開の棺桶は、外から開く

(のでなければ、ぜったいにひらかないしかけになっていたのである。かんおけのこうぞうを)

のでなければ、絶対に開かない仕掛けになっていたのである。棺桶の構造を

(けんろうにするうえからいって、どうしてもそのようにするほかみちがなかったのだ。)

堅牢にするうえからいって、どうしてもそのようにするほか道がなかったのだ。

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