卒業22
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問題文
(おさむさんから、としひこくんがきゅうせいはっけつびょうだときかされて、)
修さんから、俊彦君が急性白血病だと聞かされて、
(1しゅうかんがたった。)
一週間がたった。
(なつやすみもおわり、がっこうへゆきはじめてもとしひこくんはやすんだまま。)
夏休みも終わり、学校へ行きはじめても俊彦君は休んだまま。
(ぶかつのぶちょうも、ぶんかさいやていきえんそうかいがあるので、)
部活の部長も、文化祭や定期演奏会があるので、
(いまのところはふっきまちのじょうたいではあるものの、)
今のところは復帰待ちの状態ではあるものの、
(もしもえんそうができないばあいは、わたしがとしひこくんのぱーとを)
もしも演奏ができない場合は、私が俊彦君のパートを
(たんとうすることになっている。)
担当することになっている。
(としひこくんががっこうへくるようになったのは9がつもおわりのころ。)
俊彦君が学校へ来るようになったのは9月も終わりの頃。
(やせて、かおいろもすこしわるいでもわたしのまえではげんきにふるまっている。)
痩せて、顔色も少し悪いでも私の前では元気にふるまっている。
(おさむさんからはとしひこくんはびょうきのことはしらされていないので、)
修さんからは俊彦君は病気の事は知らされていないので、
(ぜったいになみだはみせないこと、いつもとかわらない)
絶対に涙は見せない事、いつもと変わらない
(せっしかたをしてほしいといわれた。)
接し方をして欲しいと言われた。
(「めぐみちゃんとれんしゅうしてたか?」)
「恵ちゃんと練習してたか?」
(「れんしゅうしてるよ。」)
「練習してるよ。」
(「きょうからまたみっちりおしえてやるからな。」)
「今日からまたみっちり教えてやるからな。」
(「でもたいいんしたばかりだからむりしないでね。」)
「でも退院したばかりだから無理しないでね。」
(「じかんがないんだよ、ぶんかさいとていきえんそうかいまでは。」)
「時間がないんだよ、文化祭と定期演奏会までは。」
(「そうだけど・・・。」)
「そうだけど・・・。」
(「おまえ、なんでみまいにこなかったんだよ。」)
「お前、なんで見舞いに来なかったんだよ。」
(「だって、ばいともはじめたし、)
「だって、バイトも始めたし、
(てすとのてんもわるいてんとるわけにいかないし・・・。」)
テストの点も悪い点とるわけにいかないし・・・。」
(「まあ、たいしたびょうきじゃないからな、ひんけつらしい。」)
「まあ、大した病気じゃないからな、貧血らしい。」
(「ひんけつ?」)
「貧血?」
(「ひとよりもはっけっきゅうのかずがいじょうにおおいとかすくないとか・・・。」)
「人よりも白血球の数が以上に多いとか少ないとか・・・。」
(「えっ?どっち?」)
「えっ?どっち?」
(「わすれた。びょういんのせんせいがなおしてくれるから。」)
「忘れた。病院の先生が直してくれるから。」
(「もう・・・。」)
「もう・・・。」
(つとめてあかるくふだんとかわらないようにふるまった。)
努めて明るく普段と変わらないように振舞った。
(10がつのなかばとしひこくんはこうねつをだして、さいにゅういんした。)
10月の半ば俊彦君は高熱を出して、再入院した。
(おさむさんがときどきびょういんへいってようすをおしえてくれる。)
修さんが時々病院へ行って様子を教えてくれる。
(「めぐみちゃん、こんどびょういんへいってみるかい?」)
「恵ちゃん、今度病院へ行ってみるかい?」
(「いいんですか?」)
「いいんですか?」
(「あーいまならまだ・・・。」)
「あー今ならまだ・・・。」
(「それって、どういう・・・。」)
「それって、どういう・・・・。」
(「むきんしつへはいるよていになってるんだ。」)
「無菌室へ入る予定になってるんだ。」
(「むきんしつ?」)
「無菌室?」
(「たいりょくのしょうもうがはげしくて、おかあさんにはもうはなしが)
「体力の消耗が激しくて、お母さんにはもう話が
(いっているらしい。かくごをしてくださいと。」)
言っているらしい。覚悟をしてくださいと。」
(「かくごって・・・、たすからないってことですか?」)
「覚悟って・・・・、助からないってことですか?」
(「わかいからしんこうがはやくて、やれることはやってるんだが・・・。」)
「若いから進行が早くて、やれることはやってるんだが・・・。」
(そういうとくやしそうにこぶしをにぎりしめた。)
そう言うと悔しそうに拳を握りしめた。
(「びょういんに・・・わたしをとしひこくんにあわせてください。」)
「病院に…私を俊彦君に合わせてください。」
(「そうだね、でもやくそくしてほしいことがあるんだけど、)
「そうだね、でも約束してほしいことがあるんだけど、
(としひこのまえではぜったいになかないってやくそくできるかい?」)
俊彦の前では絶対に泣かないって約束できるかい?」
(「わかりました。やくそくします。」)
「わかりました。約束します。」
(どようび、おさむさんのくるまでびょういんへむかった。)
土曜日、修さんの車で病院へ向かった。
(びょういんのちゅうしゃじょうからびょうしつへむかいながら、)
病院の駐車場から病室へ向かいながら、
(じぶんじしんになくなとなんどもいいきかせた。)
自分自身に泣くなと何度も言い聞かせた。
(びょうしつのどあのまえでおさむさんが、まっているようにいった。)
病室のドアの前で修さんが、待っているように言った。
(おさむさんがさきにびょうしつへはいった。)
修さんが先に病室へ入った。
(「としひこ、ちょうしはどうだ?」)
「俊彦、調子はどうだ?」
(「おさむせんぱい、たいくつですよ。はやくたいいんしたんだけどな。」)
「修先輩、退屈ですよ。早く退院したんだけどな。」
(「あわてるな、めぐみちゃんはおれがちゃんとみている。」)
「慌てるな、恵ちゃんは俺がちゃんと見ている。」
(「それがしんぱいなの。」)
「それが心配なの。」
(「おちゃならのめるのか?」)
「お茶なら飲めるのか?」
(「だいじょうぶ。」)
「大丈夫。」
(おさむさんはびょうしつをでるときわたしにはいるようにてまねきした。)
修さんは病室を出るとき私に入るように手招きした。
(としひこくんはまどのそとをずっとみている。)
俊彦君は窓の外をずっと見ている。
(わたしはきづかれないようにそっとちかづいた。)
私は気づかれないようにそっと近づいた。
(ほそくなったうしろすがた、あおじろいかおいろ)
細くなった後ろ姿、青白い顔色
(あふれそうになるなみだをひっしでこたえ、)
溢れそうになる涙を必死で堪え、
(としひこくんのすぐそばまでちかづいた。)
俊彦君のすぐそばまで近づいた。
(「としひこくん。」)
「俊彦君。」
(おどろいたようにふりむくかおがほころんだ。)
驚いたように振り向く顔がほころんだ。
(「めぐみ・・。」)
「恵・・。」
(「おさむさんにつれてきてもらったの。」)
「修さんに連れてきてもらったの。」
(「いいせんぱいだろ?」)
「いい先輩だろ?」
(おさむさんがばいてんからかえってきてそういってわらった。)
修さんが売店から帰ってきてそう言って笑った。
(「じぶんでいわないよふつうは。」)
「自分で言わないよ普通は。」
(そういってとしひこくんもわらった。)
そう言って俊彦君も笑った。
(「あら~きょうはにぎわいやかいのね。」)
「あら~今日は賑やかいのね。」
(かんごしさんがはいってきて、)
看護師さんが入ってきて、
(「やましたくんけんおんね。」)
「山下君検温ね。」
(そういってとしひこくんのみゃくをはかりちょうしんきでこころねをきいている。)
そう言って俊彦君の脈を測り聴診器で心音を聞いている。
(「そろそろかえろうか。」)
「そろそろ帰ろうか。」
(「としひこくんまたくるね。」)
「俊彦君また来るね。」
(「わるいな。みんなによろしくな。」)
「悪いな。みんなによろしくな。」
(「つたえるね。」)
「伝えるね。」
(くるまにのりはしりだすと、なみだがいっきにあふれた。)
車に乗り走り出すと、涙が一気にあふれた。
(「よくがまんしたね。」)
「よく我慢したね。」
(おさむさんがやさしくいった。)
修さんが優しくいった。
(「どうして・・・。)
「どうして・・・・。
(まだ、17ねん・・・、17ねんしかいきていないのに・・・。」)
まだ、17年・・・、17年しか生きていないのに・・・・。」
(「りふじんだよね。」)
「理不尽だよね。」
(おさむさんはそういうとだまったまましゃをはしらせた。)
修さんはそう言うと黙ったまま車を走らせた。
(まえにつれていってくれた、うみぞいのかふぇへつれてきてくれた。)
前に連れて行ってくれた、海沿いのカフェへ連れてきてくれた。
(「いらっしゃい。」)
「いらっしゃい。」
(うみのよくみえるせきにすわって、しずかにはなしはじめた。)
海のよく見える席に座って、静かに話し始めた。
(「すこしはおちついたかい?」)
「少しは落ち着いたかい?」
(「ありがとうございます。」)
「ありがとうございます。」
(としひこくんはぶんかさいへのさんかはできなかった、)
俊彦君は文化祭への参加は出来なかった、
(12がつにあるていきえんそうかいにまにあうかどうか・・・。)
12月にある定期演奏会に間に合うかどうか・・・。
(としひこくんがむきんしつへはいって1かげつ。)
俊彦君が無菌室へ入って1か月。
(まちはくりすますかざりでにぎやかにはなやいでいた。)
待ちはクリスマス飾りで賑やかに華やいでいた。