司る意味(運命の輪の正位置)
面白いと思ってもらえたり、カードのことを知っていただけると嬉しいです!
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問題文
(「こんにちはうんめいのわさん、きょうもいいてんきね」)
「こんにちは運命の輪さん、今日もいい天気ね」
(そうこえをかけたわたしに、かのじょはすこしおどろきふかぶかとあたまをさげた。)
そう声をかけた私に、彼女は少し驚き深々と頭を下げた。
(さらさらときぬのようなながいかみが、かのじょのかおをおおいかくす。)
さらさらと絹のような長い髪が、彼女の顔を覆い隠す。
(「あいかわらずていねいなのね、かおをあげて?」)
「相変わらず丁寧なのね、顔を上げて?」
(わたしがそういうと、かのじょはゆっくりかおをあげ)
私がそういうと、彼女はゆっくり顔を上げ
(もっていたすけっちぶっくに、えんぴつをはしらせる。)
持っていたスケッチブックに、鉛筆を走らせる。
(しばらくして、かきあがったらしいすけっちぶっくをわたしにみせてきた。)
暫くして、書きあがったらしいスケッチブックを私に見せてきた。
(「こんにちは、あるじさま。ごあいさつにきてくださりありがとうございます」)
『こんにちは、主様。ご挨拶に来てくださりありがとうございます』
(かのじょのなは「うんめいのわ」のせいいち、かーどばんごうは「10」で)
彼女の名は『運命の輪』の正位置、カード番号は『10』で
(おもないみは「てんき・よそく・へんか」である。)
主な意味は『転機・予測・変化』である。
(かのじょはみてのとおり、ことばをはっすることができないため)
彼女は見ての通り、言葉を発することができないため
(ひつだんでこみゅにけーしょんをとっている。)
筆談でコミュニケーションをとっている。
(「ひさしぶりにおはなししたいなっておもったの。ちょうしはかわりない?」)
「久しぶりにお話したいなって思ったの。調子は変わりない?」
(「はい、おかげさまでかわりございません。)
『はい、お陰様で変わりございません。
(きづかってくださりありがとうございます。)
気遣ってくださりありがとうございます。
(ときに、あるじさまにごいけんをいただきたいはなしがあるのですが)
時に、主様にご意見を頂きたい話があるのですが
(きいていただけますか?」)
聞いて頂けますか?』
((かのじょからいけんをもとめてくるのはめずらしい。)
(彼女から意見を求めてくるのは珍しい。
(なにかじゅうようなことなのだろうか・・・・・・?))
何か重要なことなのだろうか・・・・・・?)
(そうかんがえていると、うんめいのわさんはまたえんぴつをはしらせ)
そう考えていると、運命の輪さんはまた鉛筆を走らせ
(すけっちぶっくをわたしにみせてきた。そこには、こうかかれていた。)
スケッチブックを私に見せてきた。そこには、こう書かれていた。
(「うんめいとは、いったいなんなのでしょうか?」)
『運命とは、一体何なのでしょうか?』
(かのじょからのしつもんに、わたしはかたまった。)
彼女からの質問に、私は固まった。
(ふだんなにげなくつかっている「うんめい」ということばだが、)
普段何気なく使っている『運命』という言葉だが、
(じっさいになにかときかれるとこたえにくいものである。)
実際に何かと聞かれると答えにくいものである。
(うんめいのであい・・・・・・というようにうんめいということばは)
運命の出会い・・・・・・というように運命という言葉は
(ぽじてぃぶひょうげんでよくつかわれるいめーじがこじんてきにはある。)
ポジティブ表現でよく使われるイメージが個人的にはある。
(だが、じっさいそのうんめいがなにをぐたいてきにあらわしているのかは)
だが、実際その運命が何を具体的に表しているのかは
(かんがえたことがなかった。)
考えたことがなかった。
(「えっと・・・・・・」)
「えっと・・・・・・」
(へんとうにこまっていると、かのじょはこまったようなかおをしながら)
返答に困っていると、彼女は困ったような顔をしながら
(えんぴつをはしらせ、またわたしにすけっちぶっくをみせてきた。)
鉛筆を走らせ、また私にスケッチブックを見せてきた。
(「こまらせてしまい、もうしわけございません。)
『困らせてしまい、申し訳ございません。
(わたしはたろっとかーどのいちまいとしてげんざいせいをうけていますが)
私はタロットカードの一枚として現在生を受けていますが
(じしんのなのいみがわからずにいるのです。)
自身の名の意味が分からずにいるのです。
(わたしのなには、どのようないみがこめられていて)
私の名には、どのような意味が込められていて
(ひとにたいしなにができるのか、なにをもとめられているのか。)
人に対し何ができるのか、何を求められているのか。
(それがわからずにいるのです。)
それが分からずにいるのです。
(わたしはなんのためにせいをうけたのでしょうか・・・・・・?」)
私は何のために生を受けたのでしょうか・・・・・・?』
(かのじょがうらないけっかにでたとき)
彼女が占い結果に出たとき
(たしかにかいしゃくにこまることがおおい。)
確かに解釈に困ることが多い。
(ちゃんすとよめるときもあれば)
チャンスと読める時もあれば
(ながれにみをまかせるしかないとよめるときもある。)
流れに身を任せるしかないと読める時もある。
(りょうほうのめんをもちあわせているからこそ、むずかしいのだ。)
両方の面を持ち合わせているからこそ、難しいのだ。
(うんめいは、かならずひとをしあわせにみちびくものではない。)
運命は、必ず人を幸せに導くものではない。
(うけとるひとによってしあわせをもたらすときもあれば)
受け取る人によって幸せをもたらす時もあれば
(ぎゃくにふこうをもたらすこともある。)
逆に不幸をもたらすこともある。
(かのじょにとって、じしんがつたえることのじゅうようせいやいみは)
彼女にとって、自身が伝えることの重要性や意味は
(そうとうのものなのだろう。)
相当のものなのだろう。
(「わたしこじんのいけんだけど・・・・・・)
「私個人の意見だけど・・・・・・
(うんめいってじぶんできめるものだとおもうの。)
運命って自分で決めるものだと思うの。
(ことばってね、ひとがことがらをひょうげんするためにつくりだしたものだとおもうの。)
言葉ってね、人が事柄を表現するために創り出したものだと思うの。
(だから、うんめいってことばもふかいいみがあるわけじゃなくて)
だから、運命って言葉も深い意味があるわけじゃなくて
(じぶんがかんじたことにたいしてとくべつないみがあるっていうのを)
自分が感じたことに対して特別な意味があるっていうのを
(ひょうげんするためにつかうんじゃないかな?)
表現するために使うんじゃないかな?
(うんめいがよいいみをさすのなら)
運命が良い意味を指すのなら
(あなたにはそのとくべつないみをつたえられるちからがある。)
貴女にはその特別な意味を伝えられる力がある。
(ほんにんたちがわすれかけていた、あのときにかんじたとくべつなおもいを)
本人たちが忘れかけていた、あの時に感じた特別な想いを
(おもいださせることができる。)
思い出させることができる。
(ぎゃくにうんめいがわるいいみをさすのなら)
逆に運命が悪い意味を指すのなら
(あなたにはそのれんさをきるほうほうをみいだしつたえられるちからがある。)
貴女にはその連鎖を切る方法を見出し伝えられる力がある。
(うんめいはけっか、そのかていをつくりだすのはひと。)
運命は結果、その過程を作り出すのは人。
(そしてそのかていを、よいほうこうにすすむようにみちびくのが、あなた。)
そしてその過程を、良い方向に進むように導くのが、貴女。
(・・・・・・こたえになっていないかもしれないけど)
・・・・・・答えになっていないかもしれないけど
(わたしはそんなおもいであなたのことをかいしゃくしてる」)
私はそんな思いで貴女のことを解釈してる」
(かのじょのもとめるこたえをいえたかどうかはふめいだったものの)
彼女の求める答えを言えたかどうかは不明だったものの
(ききおえたかのじょのひょうじょうははればれしていてまぶしくかがやいていた。)
聞き終えた彼女の表情は晴れ晴れしていて眩しく輝いていた。
(かのじょなりに、じしんのさだめらしきものがみいだせたのかもしれない。)
彼女なりに、自身の定めらしきものが見出せたのかもしれない。
(そうおもうとちょっとうれしいきもちになった。)
そう思うとちょっと嬉しい気持ちになった。
(「あるじさま、ありがとうございます。)
『主様、ありがとうございます。
(わたしなりに、もうすこしかんがえてみます。)
私なりに、もう少し考えてみます。
(もしこたえがみつかったら、あるじさまにまっさきにごほうこくにあがります。)
もし答えが見つかったら、主様に真っ先にご報告に上がります。
(ですので、いましばらくおまちくださいね?」)
ですので、今しばらくお待ちくださいね?』
(すけっちぶっくをみせながら、まんめんのえみをうかべるかのじょに)
スケッチブックを見せながら、満面の笑みを浮かべる彼女に
(わたしはうなずいた。)
私はうなずいた。
(ごじつ、きねんというわけではないが、かのじょのためになればと)
後日、記念というわけではないが、彼女のためになればと
(あたらしいすけっちぶっくとえんぴつをぷれぜんとしたのだった。)
新しいスケッチブックと鉛筆をプレゼントしたのだった。