先頭に立つ者の覚悟(戦車の正位置)
面白いと思ってもらえたり、カードのことを知っていただけると嬉しいです!
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問題文
(おもえば、かれにはいつもまよいがなかった。)
思えば、彼には何時も迷いがなかった。
(そのすがたをかっこいいと、ただたんにそんけいしていたわたしはしらなかった。)
その姿をかっこいいと、ただ単に尊敬していた私は知らなかった。
(かれのそのまよいのなさにかくされた、かくごを・・・・・・)
彼のその迷いのなさに隠された、覚悟を・・・・・・
(「あるじではないか!こんなところでどうした?」)
「主ではないか! こんなところでどうした?」
(「あ、おにいさん!ひさしぶり!」)
「あ、お兄さん! 久しぶり!」
(あるはっぴょうのりーだーにえらばれ、きんちょうでいっぱいなわたしのまえに、かれはあらわれた。)
ある発表のリーダーに選ばれ、緊張でいっぱいな私の前に、彼は現れた。
(おもわずかんきのこえをあげるわたしに、かれはさわやかなえがおをうかべた。)
思わず歓喜の声を上げる私に、彼は爽やかな笑顔を浮かべた。
(かれのなは「せんしゃ」のせいいち、かーどばんごうは7で)
彼の名は『戦車』の正位置、カード番号は7で
(おもないみは「せっきょくせい・りーだーしっぷ・たよりがいのあるじんぼう」など。)
主な意味は『積極性・リーダーシップ・頼りがいのある人望』など。
(かれじしんのせいかくもあってか、だんせい・じょせいともににんきのあるひとである。)
彼自身の性格もあってか、男性・女性共に人気のある人である。
(そんなつねにやさしくちからづよいかれを「おにいさん」のあいしょうでいつもよんでいる。)
そんな常に優しく力強い彼を『お兄さん』の愛称でいつも呼んでいる。
(「なにかあったようだな、かおのきんにくがしょうしょうこわばっているようだぞ?」)
「何かあったようだな、顔の筋肉が少々強張っているようだぞ?」
((さすがはおにいさん、なんでもおみとおしみたいだ))
(流石はお兄さん、なんでも御見通しみたいだ)
(わたしはかんしんしながらも、かれにはっぴょうかいのりーだーにえらばれたことをはなした。)
私は感心しながらも、彼に発表会のリーダーに選ばれたことを話した。
(はなしをききおえたかれは、とうとつにわたしをだきあげた。)
話を聞き終えた彼は、唐突に私を抱き上げた。
(びっくりするわたしをよそに、かれはうれしそうにしている。)
びっくりする私をよそに、彼は嬉しそうにしている。
(「きゃっ・・・・・・!」)
「きゃっ・・・・・・!」
(「わがあるじがめいよあることがらにえらばれたときいて、だまっていられるはずがないだろう!)
「我が主が名誉ある事柄に選ばれたと聞いて、黙っていられる筈がないだろう!
(ひごろのわがあるじのどりょくがこうしてみをつけたのだ!)
日頃の我が主の努力がこうして実を付けたのだ!
(わたしはおおいにほこりにおもうぞ、よくやった!」)
私は大いに誇りに思うぞ、良くやった!」
(おにいさんはじぶんのことのようにわたしをほめたたえ、たかだかとわたしをかかげていた。)
お兄さんは自分の事のように私を褒め称え、高々と私を掲げていた。
(しんそこうれしそうなかれをまえに、わたしはいっそうきんちょうとふあんであふれかえりそうになっていた。)
心底嬉しそうな彼を前に、私は一層緊張と不安で溢れ返りそうになっていた。
(「どうしたのだ、そのようなうかないかおをして」)
「どうしたのだ、そのような浮かない顔をして」
(「きたいにこたえられるかがふあんで、どうしたらいいのかわからなくなって。)
「期待に応えられるかが不安で、どうしたらいいのか分からなくなって。
(それでなやんでるというか・・・・・・よわいんだよね」)
それで悩んでるというか・・・・・・弱いんだよね」
(「・・・・・・あるじよ、それはいささかことなるとおもうぞ」)
「・・・・・・主よ、其れは些か異なると思うぞ」
(わたしのことばに、おにいさんはすこしこまったひょうじょうをうかべた。)
私の言葉に、お兄さんは少し困った表情を浮かべた。
(ことなるとは、いったいなにがちがうのだろうか。)
異なるとは、一体何が違うのだろうか。
(「なにかにえらばれるということは、どうじになにかをせおうかくごがひつようということだ。)
「何かに選ばれるということは、同時に何かを背負う覚悟が必要ということだ。
(それはよういにもてるものではない、ゆえにあるじのちからがよわいわけではないとわたしはおもう。)
それは容易に持てるものではない、故に主の力が弱いわけではないと私は思う。
(わたしもそうだ、つねにみなをみちびくたちばにありながら、ないしんはふるえているのだ。)
私もそうだ、常に皆を導く立場にありながら、内心は震えているのだ。
(ほんとうにじぶんのかんがえでいいのか、ただしいせんたくをつねにえらべているのか。)
本当に自分の考えでいいのか、正しい選択を常に選べているのか。
(みなのいけんをまとめ、とりしきり、せきにんをせおう。)
皆の意見をまとめ、取り仕切り、責任を背負う。
(それがいかにむずかしくじゅうだいであるのか・・・・・・)
それが如何に難しく重大であるのか・・・・・・
(なったものにしかわからないものだ」)
なったものにしか分からないものだ」
(ふだん、どうどうとしているようにみえるおにいさん・・・・・・)
普段、堂々としているように見えるお兄さん・・・・・・
(そのうらではだれにもそうだんできずかかえこんでいるよわいいちめんがあった。)
その裏ではだれにも相談できず抱え込んでいる弱い一面があった。
(つねにじぶんとむきあい、じもんじとうをいったうえでのおもみのあるせんたく。)
常に自分と向き合い、自問自答を行ったうえでの重みのある選択。
(そのせんたくのさきになにがまちうけていようとも、にげることはゆるされない。)
その選択の先に何が待ち受けていようとも、逃げることは許されない。
(そんなはざまにつねにたたされながらも)
そんな狭間に常に立たされながらも
(ひとをせおいすすんでいこうとするすがたは、ほんとうにかんめいをうける。)
人を背負い進んでいこうとする姿は、本当に感銘を受ける。
(「わたしに、できるのかな・・・・・・」)
「私に、できるのかな・・・・・・」
(「あるじにはわたしたちがついている、ひとにはなせないのであればわたしたちにはなせばいい。)
「主には私たちがついている、人に話せないのであれば私達に話せばいい。
(ひとりでせおうのではなく、わたしたちとともにすすめていこう。)
一人で背負うのではなく、私たちと共に進めていこう。
(それはわたしには、なしえなかったものであるからな。)
それは私には、なしえなかったものであるからな。
(わがあるじには、おなじようにはなってほしくないのだ。)
我が主には、同じようにはなって欲しくないのだ。
(ともにすすもう、えらんでくれたものへのかんしゃと、じしんのちょうせんしんをむねに!」)
共に進もう、選んでくれたものへの感謝と、自身の挑戦心を胸に!」
(わたしがそんけいするおにいさんは、だれよりもしっぱいをおそれるおくびょうでぶきようなひと。)
私が尊敬するお兄さんは、誰よりも失敗を恐れる臆病で不器用な人。
(そんなひとだからこそ、よわきこころをもったひとによりそい)
そんな人だからこそ、弱き心を持った人に寄り添い
(はげますことができるのだろうとおもう。)
励ますことができるのだろうと思う。
(いつか、おにいさんのようなひとをささえられるようなそんざいになりたいと)
いつか、お兄さんのような人を支えられるような存在になりたいと
(たからかなこえをだしてはげましてくれるおにいさんをみつめながら)
高らかな声を出して励ましてくれるお兄さんを見つめながら
(そうおもったのだった。)
そう思ったのだった。