緋のエチュード 6

背景
投稿者投稿者水銀いいね0お気に入り登録
プレイ回数1201難易度(4.9) 4990打 長文
タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(どんなばあいでもゆうのうなにんげんちょうさいんがかいどくにしっぱいするとは、)

どんな場合でも有能な人間調査員が解読に失敗するとは、

(まずかんがえられない」)

まず考えられない」

(「なんという、たわごとだ!」)

「なんという、たわ言だ!」

(わたしはざっしをてーぶるのうえにたたきつけてさけんだ。)

私は雑誌をテーブルの上に叩きつけて叫んだ。

(「うまれてから、これほどくだらないきじはよんだことがない」)

「生まれてから、これほどくだらない記事は読んだことがない」

(「そうか?」しゃーろっくほーむずがたずねた。)

「そうか?」シャーロックホームズがたずねた。

(「どうしてだ、このきじは」わたしはちょうしょくのせきにつくとき、)

「どうしてだ、この記事は」私は朝食の席につくとき、

(えっぐすぷーんでさしていった。「きみがしるしをつけているから、)

エッグスプーンで指して言った。「君が印をつけているから、

(よんだはずだ。こうみょうにかいてあることはじじつだが、)

読んだはずだ。巧妙に書いてあることは事実だが、

(しゃくにさわるないようだ。これはぜったいにあんらくいすのなまけもののりろんだ。)

しゃくにさわる内容だ。これは絶対に安楽椅子の怠け者の理論だ。

(ちょしゃはこのすばらしくきょうみぶかいぎゃくせつを、しょさいにこもって、)

著者はこの素晴らしく興味深い逆説を、書斎にこもって、

(ひとりでつみあげてきただけだとおもう。)

ひとりで積み上げてきただけだと思う。

(じつようてきなうらづけなどあるものか。)

実用的な裏づけなどあるものか。

(ちょしゃをちかてつのさんとうしゃりょうのなかにほうりこんで、)

著者を地下鉄の三等車両の中に放り込んで、

(じょうきゃくぜんいんのしょくぎょうをたずねてみたい。)

乗客全員の職業をたずねてみたい。

(こたえられないほうにせんぽんどかけてもいい」)

答えられない方に千ポンド賭けてもいい」

(「おかねをうしなうことになるだろうな」ほーむずはしずかにいった。)

「お金を失うことになるだろうな」ホームズは静かに言った。

(「そのきじのことだが、かいたのはぼくだ」)

「その記事のことだが、書いたのは僕だ」

(「きみが!」)

「君が!」

(「そうだ。ぼくはかんさつとすいりのりょうほうのてんぶんにめぐまれている。)

「そうだ。僕は観察と推理の両方の天分に恵まれている。

など

(ぼくがそこにかいたりろんは、)

僕がそこに書いた理論は、

(きみにとってはとんでもなくくうそうてきにおもえるかもしれないが、)

君にとってはとんでもなく空想的に思えるかもしれないが、

(まちがいなくひじょうにじつようてきだ。じつようてきだからこそ、)

間違いなく非常に実用的だ。実用的だからこそ、

(ぼくはなんとかせいかつしていけているわけだ」)

僕はなんとか生活していけているわけだ」

(「どうやって?」わたしはおもわず、こうたずねた。)

「どうやって?」私は思わず、こうたずねた。

(「ぼくはとくしゅなじえいぎょうしゃだ。おそらくせかいでただひとりだとおもう。)

「僕は特殊な自営業者だ。おそらく世界でただ一人だと思う。

(きみにせつめいしてもりかいしてもらえるかわからないが、)

君に説明しても理解してもらえるかわからないが、

(せんもんてきなじょげんをするたんていだ。こころんどんには、)

専門的な助言をする探偵だ。ここロンドンには、

(こうきょうちょうさかんやしりつたんていがいっぱいいるが、おてあげになると、)

公共調査官や私立探偵がいっぱいいるが、お手上げになると、

(ぼくのところにくる。そのとき、ただしいてがかりをたどれるように、)

僕のところに来る。そのとき、正しい手掛かりをたどれるように、

(できるだけのしどうする。)

できるだけの指導する。

(かれらがもっているしょうこをぜんぶざっとつくえのうえにならべてくれさえすれば、)

彼らが持っている証拠を全部ザッと机の上に並べてくれさえすれば、

(ほとんどのばあい、ぼくははんざいしのちしきをかつようして、)

ほとんどの場合、僕は犯罪史の知識を活用して、

(それをじゅんじょよくならべなおしてやることができるのさ。)

それを順序よく並べなおしてやることができるのさ。

(はんざいにはつよいけいとうてきるいじせいがあるから、)

犯罪には強い系統的類似性があるから、

(せんけんのしょうさいがすべてあたまのなかにつまっているのに、)

千件の詳細がすべて頭の中に詰まっているのに、

(せんいっけんめがかいけつできないなんて、つじつまのあわないはなしだ。)

千一件目が解決できないなんて、つじつまの合わない話だ。

(れすとれーどはけっこうゆうめいなけいじだ。)

レストレードはけっこう有名な刑事だ。

(さいきんのぎぞうじけんがてにおえなくなって、ここにくることになったんだ」)

最近の偽造事件が手に負えなくなって、ここに来ることになったんだ」

(「じゃあ、ほかのひとは?」)

「じゃあ、他の人は?」

(「ほとんどこうしんじょからおくられてきたれんちゅうだ。みんな、)

「ほとんど興信所から送られてきた連中だ。みんな、

(なにかのもんだいをかかえていて、すこしおしえをこいたいじんぶつだ。)

何かの問題を抱えていて、すこし教えを請いたい人物だ。

(ぼくはかれらのはなしをきき、かれらはぼくのいけんをきく。それでぼくのふところがうるおう」)

僕は彼らの話を聞き、彼らは僕の意見を聞く。それで僕の懐が潤う」

(「しかしきみはほんきでいっているのか」わたしはいった。)

「しかし君は本気で言っているのか」私は言った。

(「じぶんのへやをはなれることなく、)

「自分の部屋を離れることなく、

(きみはほかのにんげんがてにおえなかったなぞをかいけつできるのか。)

君は他の人間が手におえなかった謎を解決できるのか。

(あいてはじぶんのめでしょうさいをくまなくみてきているんだぞ?」)

相手は自分の目で詳細をくまなく見てきているんだぞ?」

(「もちろんとける。)

「もちろん解ける。

(ぼくはそのほうめんではひらめきのようなものがあるのさ。ときおり、)

僕はその方面ではひらめきのようなものがあるのさ。時折、

(もうすこしふくざつなじけんがもちこまれることもある。そのときは、)

もう少し複雑な事件が持ち込まれることもある。その時は、

(ぼくもかけまわってじぶんのめでじょうきょうをかくにんしなければならない。)

僕も駆け回って自分の目で状況を確認しなければならない。

(きみはぼくがたりょうにとくしゅなちしきをもっているのをしっているだろう。)

君は僕が多量に特殊な知識を持っているのを知っているだろう。

(ぼくはそれをじけんにてきようしているが、)

僕はそれを事件に適用しているが、

(そのおかげですばらしくことがよういになっている。)

そのおかげで素晴らしく事が容易になっている。

(そのきじのなかにしめしたすいりのてつづきをきみはあざわらったが、)

その記事の中に示した推理の手続きを君はあざ笑ったが、

(ぼくのじつむにははかりしれないかちがある。)

僕の実務には計り知れない価値がある。

(かんさつはぼくにとってはだいにのてんせいだ。きみとはじめてあったとき、)

観察は僕にとっては第二の天性だ。君と初めて会った時、

(ぼくがきみはあふがにすたんからもどってきたといったら、)

僕が君はアフガニスタンから戻ってきたと言ったら、

(きみはおどろいたようだった」)

君は驚いたようだった」

(「きっとそうきいていたんだろう」)

「きっとそう聞いていたんだろう」

(「とんでもない。ぼくはじぶんできみがあふがにすたんからきたとわかった。)

「とんでもない。僕は自分で君がアフガニスタンから来たと分かった。

(ながいあいだのしゅうかんになっているから、)

長い間の習慣になっているから、

(ぼくのこころにうかぶしこうのれんさはひじょうにすばやい。)

僕の心に浮かぶ思考の連鎖は非常に素早い。

(ぼくはちゅうかんのだんかいをいしきすることなくけつろんをみちびきだしている。)

僕は中間の段階を意識することなく結論を導き出している。

(しかし、それでもだんかいはふんでいるのだ。すいりのれんさはこうだ。)

しかし、それでも段階は踏んでいるのだ。推理の連鎖はこうだ。

(「いしゃっぽいたいぷのしんしがいる。しかしぐんじんのようなふんいきがある。)

『医者っぽいタイプの紳士がいる。しかし軍人のような雰囲気がある。

(ということは、あきらかにぐんいだ。かれはねったいからきたばかりだ。)

ということは、明らかに軍医だ。彼は熱帯から来たばかりだ。

(かれのかおはくろい。しかしそれはかれのはだのしぜんのいろあいではない。)

彼の顔は黒い。しかしそれは彼の肌の自然の色合いではない。

(てくびはいろじろのためだ。かれはくなんとびょうきをたいけんしている。)

手首は色白のためだ。彼は苦難と病気を体験している。

(かれのやつれたかおがめいはくにかたっている。かれのひだりうではきずついている。)

彼のやつれた顔が明白に語っている。彼の左腕は傷ついている。

(かれはこわばったふしぜんなほうほうでこていしている。ねったいのどのばしょが、)

彼はこわばった不自然な方法で固定している。熱帯のどの場所が、

(あるえいこくぐんいに、こんなくなんとうでのきずをあたえうるか。)

ある英国軍医に、こんな苦難と腕の傷を与えうるか。

(あきらかにあふがにすたんだ」)

明らかにアフガニスタンだ』

(ぜんたいのしこうのれんさはいちびょうとかからなかった。そのあと、)

全体の思考の連鎖は一秒とかからなかった。その後、

(ぼくはきみがあふがにすたんからきたといった。そしてきみはおどろいた」)

僕は君がアフガニスタンから来たと言った。そして君は驚いた」

(「せつめいされるとたんじゅんなことだな」わたしはわらいながらいった。)

「説明されると単純なことだな」私は笑いながら言った。

(「きみをみているとえどがーあらんぽーのでゅぱんをれんそうするよ。)

「君を見ているとエドガー・アラン・ポーのデュパンを連想するよ。

(しょうせついがいにあんなにんげんがいるとはおもってもみなかった」)

小説以外にあんな人間がいるとは思ってもみなかった」

(しゃーろっくほーむずはたちあがってぱいぷにひをつけた。)

シャーロックホームズは立ち上がってパイプに火をつけた。

(「きみはでゅぱんとぼくをくらべることで、)

「君はデュパンと僕を比べる事で、

(まちがいなくおせじをいっているつもりだろう」かれはいった。)

間違いなくお世辞を言っているつもりだろう」彼は言った。

(「そこでひとこといわせてもらえば、でゅぱんはひじょうにむのうなじんぶつだ。)

「そこで一言言わせてもらえば、デュパンは非常に無能な人物だ。

(15ふんかんなにもいわずにおいて、そのあと、)

15分間何も言わずにおいて、その後、

(だしぬけにゆうじんのかんがえにわりこんだ、)

出し抜けに友人の考えに割り込んだ、

(あのいたずらはひじょうにはででうすっぺらなやりかただ。もちろん、)

あのいたずらは非常に派手で薄っぺらなやり方だ。もちろん、

(かれにはあるていどのぶんせきてきさいのうがある。)

彼にはある程度の分析的才能がある。

(しかしぽーがそうぞうしているようなひぼんなにんげんではまったくない」)

しかしポーが想像しているような非凡な人間では全く無い」

(「がぼりおのさくひんをよんだことがあるか?」わたしはたずねた。)

「ガボリオの作品を読んだことがあるか?」私は尋ねた。

(「るこっくはたんていとしてきみのめがねにかなうかね?」)

「ルコックは探偵として君の眼鏡にかなうかね?」

(しゃーろっくほーむずはひにくっぽくはなでわらった。)

シャーロックホームズは皮肉っぽく鼻で笑った。

(「るこっくはみじめなほどぶきようだ」かれはおこったくちょうでいった。)

「ルコックは惨めなほど不器用だ」彼は怒った口調で言った。

(「かれをほめるとすればただいってん、あのかつりょくだけだな。)

「彼を誉めるとすればただ一点、あの活力だけだな。

(かれのほんをよむとはっきりときぶんがわるくなる。あれは、)

彼の本を読むとはっきりと気分が悪くなる。あれは、

(どのようにしてはんにんをとくていするかというじけんだったな。)

どのようにして犯人を特定するかという事件だったな。

(ぼくならにじゅうよじかんでかいけつできた。るこっくはろっかげつほどもかかった。)

僕なら二十四時間で解決できた。ルコックは六ヶ月程もかかった。

(してはならないことをおしえるたんていきょうかしょとしてかかれたのかもしらんな」)

してはならない事を教える探偵教科書として書かれたのかもしらんな」

(わたしは、じぶんのしょうさんしていたじんぶつふたりが、)

私は、自分の称賛していた人物二人が、

(こんなおうへいにあしらわれるのをきいてすこしいきどおりをおぼえた。)

こんな横柄にあしらわれるのを聞いて少し憤りを覚えた。

(わたしはまどのそばまであるいていき、たったまま、)

私は窓の側まで歩いて行き、立ったまま、

(あわただしいとおりをみていた。「このおとこはひじょうにかしこいかもしれん」)

あわただしい通りを見ていた。「この男は非常に賢いかもしれん」

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告

水銀のタイピング

オススメの新着タイピング

タイピング練習講座 ローマ字入力表 アプリケーションの使い方 よくある質問

人気ランキング

注目キーワード