緋のエチュード 7
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問題文
(わたしはじぶんにいった。「しかしあきらかにひじょうにおもいあがっている」)
私は自分に言った。「しかし明らかに非常に思い上がっている」
(「さいきんははんざいもはんざいしゃもごぶさただ」かれはふへいがましくいった。)
「最近は犯罪も犯罪者もご無沙汰だ」彼は不平がましく言った。
(「このしょくぎょうで、ちせいがあってもつかいみちがあるのか?)
「この職業で、知性があっても使い道があるのか?
(ぼくはじぶんがちせいをもち、それがぼくのなをたかめることをしっている。)
僕は自分が知性を持ち、それが僕の名を高めることを知っている。
(ぼくとおなじりょうのけんきゅうをし、)
僕と同じ量の研究をし、
(そしてぼくのようにはんざいをたんちできるさいのうにめぐまれたものは、)
そして僕のように犯罪を探知できる才能に恵まれた者は、
(げんざいどこにもそんざいしないし、かこにそんざいしたこともない。)
現在どこにも存在しないし、過去に存在した事も無い。
(そのけっかはどうだ?たんちするはんざいがない。せいぜい、)
その結果はどうだ?探知する犯罪がない。せいぜい、
(あまりにもどうきがみえすいた、ぶきようなあくじだ。)
あまりにも動機が見え透いた、不器用な悪事だ。
(ろんどんけいしちょうのけいぶでさえみぬくことができる」)
ロンドン警視庁の警部でさえ見抜くことができる」
(わたしはまだかれのおうへいなはなしかたにいらいらしていた。)
私はまだ彼の横柄な話し方にイライラしていた。
(わたしはわだいをかえるのがいちばんだとおもった。)
私は話題を変えるのが一番だと思った。
(「あのおとこはなにをさがしているんだろうな?」)
「あの男は何を捜しているんだろうな?」
(わたしはがんきょうなおとこをゆびさしてたずねた。そのおとこはかんそなふくそうのじんぶつで、)
私は頑強な男を指差して尋ねた。その男は簡素な服装の人物で、
(ふあんそうにちばんをみながらとおりのむかいがわをゆっくりとあるいていた。)
不安そうに地番を見ながら通りの向かい側をゆっくりと歩いていた。
(おとこはおおきなあおいふうとうをてにしており、)
男は大きな青い封筒を手にしており、
(どうやらてがみをはいたつしているようだった。)
どうやら手紙を配達しているようだった。
(「あのかいへいたいのぐんそうあがりのことか?」)
「あの海兵隊の軍曹上がりのことか?」
(しゃーろっくほーむずはいった。)
シャーロックホームズは言った。
(「じまんたらしいほらふきが!」わたしはこころのなかでおもった。)
「自慢たらしいホラ吹きが!」私は心の中で思った。
(「どんなでまかせでも、わたしがけんしょうできないとわかっていっているな」)
「どんな出まかせでも、私が検証できないと分かって言っているな」
(そのかんがえがわたしのこころをよぎったしゅんかん、みていたおとこは、)
その考えが私の心をよぎった瞬間、見ていた男は、
(このいえのとぐちのちばんをみつけて、どうろをいそぎあしでわたってきた。)
この家の戸口の地番を見つけて、道路を急ぎ足で渡って来た。
(おおきなのっくのおとがひびいて、かいかでひくいこえがした。)
大きなノックの音が響いて、階下で低い声がした。
(そしておもいあしおとがかいだんをあがってきた。)
そして重い足音が階段を上がってきた。
(「しゃーろっくほーむずさんあてです」かれはへやにはいってきて、)
「シャーロックホームズさん宛てです」彼は部屋に入って来て、
(ほーむずにてがみをわたしながらいった。)
ホームズに手紙を渡しながら言った。
(これはかれのはなをおる、ぜっこうのきかいだった。)
これは彼の鼻を折る、絶好の機会だった。
(かれはさっきのでたらめをいったとき、)
彼はさっきのデタラメを言った時、
(こんなことになるとはまずおもっていなかったはずだ。)
こんな事になるとはまず思っていなかったはずだ。
(「ちょっときいていいかな」わたしはひじょうにおだやかなこえでいった。)
「ちょっと訊いていいかな」私は非常に穏やかな声で言った。
(「きみのしごとはなにかな?」)
「君の仕事は何かな?」
(「べんりやです」かれはぶっきらぼうにいった。)
「便利屋です」彼はぶっきらぼうに言った。
(「せいふくはなおしにだしていて、きていませんが」)
「制服は直しに出していて、着ていませんが」
(「もとのしょくぎょうは?」わたしはどうきょにんにちょっといじわるなしせんをむけてたずねた。)
「元の職業は?」私は同居人にちょっと意地悪な視線を向けて尋ねた。
(「ぐんそうです。えいこくかいへいたいけいほへいです。)
「軍曹です。英国海兵隊軽歩兵です。
(てがみのへんじはありませんか?わかりました」)
手紙の返事はありませんか?分かりました」
(かれはかかとをかちっとあわせ、てをあげてけいれいし、でていった。)
彼は踵をカチッと合わせ、手を挙げて敬礼し、出て行った。
(しょうじきにいおう。わたしは、)
正直に言おう。私は、
(にどまでもほーむずのりろんがいかにじつようてきかをしょうめいされ、ぎょうてんした。)
二度までもホームズの理論がいかに実用的かを証明され、仰天した。
(かれのぶんせきりょくにたいして、いけいのねんがわきおこった。しかし、)
彼の分析力に対して、畏敬の念がわき起こった。しかし、
(こころにはまだふっしょくしきれないぎねんがのこっていた。)
心にはまだ払拭しきれない疑念が残っていた。
(なにもかもわたしをこんらんさせるために)
何もかも私を混乱させるために
(あらかじめしくまれたできごとだったのではないだろうか。)
あらかじめ仕組まれた出来事だったのではないだろうか。
(しかしいったいなんのためにわたしをだますのか、まったくそうぞうもつかなかった。)
しかしいったい何のために私をだますのか、全く想像もつかなかった。
(かれをみると、すでにてがみをよみおわっていたが、)
彼を見ると、すでに手紙を読み終わっていたが、
(めはうつろでぼんやりしており、ほうしんしているようだった。)
目は虚ろでぼんやりしており、放心しているようだった。
(「いったいどうやってすいりしたんだ?」わたしはたずねた。)
「いったいどうやって推理したんだ?」私は尋ねた。
(「なにをすいりしたって?」かれはふきげんそうにいった。)
「何を推理したって?」彼は不機嫌そうに言った。
(「かれがかいへいたいのもとぐんそうだったということだよ」)
「彼が海兵隊の元軍曹だったということだよ」
(「つまらないことにかかわっているじかんはない」かれはぶあいそうにこたえた。)
「つまらないことに関わっている時間はない」彼は無愛想に答えた。
(そのあと、かれはえがおになった。「つれないへんじをしてすまない。)
その後、彼は笑顔になった。「つれない返事をしてすまない。
(きみにしこうのながれをちゅうだんされたからだが、まあ、そのはなしもいいだろう。)
君に思考の流れを中断されたからだが、まあ、その話もいいだろう。
(それでは、きみはほんとうにあのおとこが)
それでは、君は本当にあの男が
(かいへいたいのもとぐんそうだということがわからなかったんだな?」)
海兵隊の元軍曹だという事が分からなかったんだな?」
(「もちろんだ」)
「もちろんだ」
(「すいりそのものより、どうやってすいりしたかをせつめいするほうがややこしいな。)
「推理そのものより、どうやって推理したかを説明する方がややこしいな。
(もしきみがにたすにがよんになることをしょうめいしてくれといわれたら、)
もし君が二足す二が四になることを証明してくれと言われたら、
(それがまちがいのないじじつだとわかっていても、ちょっとこまるだろう。)
それが間違いのない事実だと分かっていても、ちょっと困るだろう。
(とおりのむこうがわにいても、かれのてのこうにおおきなあおいいかりのいれずみがみえた。)
通りの向こう側にいても、彼の手の甲に大きな青い錨の刺青が見えた。
(それはうみのかおりがする。しかしたいどはぐんじんふうで、きていどおりのほおひげだ。)
それは海の香りがする。しかし態度は軍人風で、規定どおりの頬髯だ。
(これでかいへいたいいんだとわかる。かれはちょっとそんだいで、)
これで海兵隊員だと分かる。彼はちょっと尊大で、
(しきめいれいをだしてきたふんいきがはっきりのこっている。)
指揮命令を出してきた雰囲気がはっきり残っている。
(きみも、あのおとこのむねをはったしせいとつえをふるしぐさをみたはずだ。)
君も、あの男の胸を張った姿勢と杖を振る仕草を見たはずだ。
(かおをみればおちついたひんのよいちゅうねんのおとこであることもわかる、)
顔を見れば落ち着いた品の良い中年の男であることも分かる、
(これらすべてからぼくはかくしんした。かれはかつてぐんそうだった」)
これら全てから僕は確信した。彼はかつて軍曹だった」
(「すばらしい!」わたしはさけんだ。)
「素晴らしい!」私は叫んだ。
(「たいしたことはない」ほーむずはいった。しかしひょうじょうをみると、)
「たいしたことはない」ホームズは言った。しかし表情を見ると、
(わたしがそっちょくにおどろいてしょうさんしたことがうれしかったようにおもえた。)
私が率直に驚いて称賛した事が嬉しかったように思えた。
(「ぼくはついさっきはんざいがないといった。どうやらまちがっていたようだ、)
「僕はついさっき犯罪がないと言った。どうやら間違っていたようだ、
(これをみてみろ」かれはべんりやがはこんできたてがみをなげてよこした。)
これを見てみろ」彼は便利屋が運んできた手紙を投げてよこした。
(「え」わたしはざっとめをはしらせてさけんだ。「これはおそろしいじけんじゃないか!」)
「え」私はざっと目を走らせて叫んだ。「これは恐ろしい事件じゃないか!」
(「すこしばかりじょうきをいっしているようにみえるな」かれはしずかにいった。)
「少しばかり常軌を逸しているように見えるな」彼は静かに言った。
(「よみあげてもらえないか?」)
「読み上げてもらえないか?」
(わたしがかれによんだてがみはつぎのようなものだった。)
私が彼に読んだ手紙は次のようなものだった。
(「しゃーろっくほーむずさま」)
「シャーロックホームズ様」
(「ぶりくすとんろーど、ろーりすとんがーでんさんばんで)
「ブリクストンロード、ローリストン・ガーデン三番で
(さくやきょうあくなじけんがはっせいしました。ごぜんにじごろ、じゅんかいちゅうのじゅんさが、)
昨夜凶悪な事件が発生しました。午前二時ごろ、巡回中の巡査が、
(このあきやにあかりがついているのをもくげきし、)
この空き家に明かりがついているのを目撃し、
(なにかあやしいことがおきたのではないかといううたがいをもちました。)
何か怪しい事が起きたのではないかという疑いを持ちました。
(かれはとびらがあけはなたれ、)
彼は扉が開け放たれ、
(おもてにめんしたかぐなしのへやのなかにだんせいのしたいがあるのをはっけんしました。)
表に面した家具なしの部屋の中に男性の死体があるのを発見しました。
(ふくそうはきちんとしており、ぽけっとにいーのっくjどればー、)
服装はきちんとしており、ポケットにイーノック・J・ドレバー、
(あめりか、おはいお、くればーらんどというめいしがありました。)
アメリカ、オハイオ、クレバーランドという名刺がありました。
(とうなんにあったようすはなく、)
盗難に遭った様子はなく、
(このだんせいのしいんにかんするてがかりもありませんでした。)
この男性の死因に関する手がかりもありませんでした。
(へやにはちのあとがありましたが、したいにはきずがみつかりませんでした。)
部屋には血の跡がありましたが、死体には傷が見つかりませんでした。
(どうやってこのおとこがこのあきやにはいったか、まったくけんとうがつきません。)
どうやってこの男がこの空家に入ったか、全く見当がつきません。
(じっさい、じけんぜんたいがなぞです。もし12じまでにこちらにおこしいただければ、)
実際、事件全体が謎です。もし12時までにこちらにお越しいただければ、
(わたしはげんばにいます。あなたかられんらくがあるまで、)
私は現場にいます。あなたから連絡があるまで、
(すべてをげんじょうのままとしておきます。もしこられないなら、)
全てを現状のままとしておきます。もし来られないなら、
(わたしはもっとくわしいじょうきょうをせつめいします。)
私はもっと詳しい状況を説明します。
(そしてあなたのごいけんをうかがうことができれば)
そしてあなたのご意見を伺う事ができれば
(ひじょうにありがたいこととぞんじます」)
非常にありがたい事と存じます」
(「けいぐ」)
「敬具」
(「とばいあすぐれっぐそん」)
「トバイアス・グレッグソン」
(「ぐれっぐそんはろんどんけいしちょうでもっともきれるおとこだ」ゆうじんはいった。)
「グレッグソンはロンドン警視庁で最も切れる男だ」友人は言った。
(「かれとれすとれーどはわるいくじをひいたな。)
「彼とレストレードは悪いクジを引いたな。
(かれらはふたりともすばやくかつどうてきだ。しかしつきなみだ、おどろくほどな。)
彼らは二人とも素早く活動的だ。しかし月並みだ、 驚くほどな。
(それにおたがいにはんもくしあっている。)
それにお互いに反目し合っている。