緋のエチュード 18

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タグ小説 文学
シャーロックホームズシリーズ第一弾

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問題文

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(「ああ」ほーむずがいった。)

「ああ」ホームズが言った。

(「きゃんばーうぇるろーど129の)

「キャンバーウェル・ロード129の

(じょんあんだーうっどあんどさんずせいだ」)

ジョン・アンダーウッド・アンド・サンズ製だ」

(ぐれっぐそんはかなりでばなをくじかれたようにみえた。)

グレッグソンはかなり出鼻をくじかれたように見えた。

(「あなたもそれにきづいたとはおもっていませんでした」かれはいった。)

「あなたもそれに気づいたとは思っていませんでした」彼は言った。

(「ぼうしやにいったんですか?」)

「帽子屋に行ったんですか?」

(「いや」)

「いや」

(「は!」ぐれっぐそんがあんしんしたようなこえでさけんだ。)

「ハ!」グレッグソンが安心したような声で叫んだ。

(「いかにちいさくみえようとも、ちゃんすをにがすべきではないですね」)

「いかに小さく見えようとも、チャンスを逃がすべきではないですね」

(「いだいなこころにはちいさなものなどない」ほーむずはかくげんのようにいった。)

「偉大な心には小さなものなどない」ホームズは格言のように言った。

(「わたしはあんだーうっどにいきました。)

「私はアンダーウッドに行きました。

(そしてかれにこのさいずとしゅるいのぼうしを)

そして彼にこのサイズと種類の帽子を

(うったことがあるかとたずねました。)

売ったことがあるかと尋ねました。

(かれはちょうぼをしらべてすぐにみつけました。)

彼は帳簿を調べてすぐに見つけました。

(かれはそのぼうしをとーきーてらすのしゃるぱんてぃえのげしゅくやにすむ)

彼はその帽子をトーキー・テラスのシャルパンティエの下宿屋に住む

(どればーというじんぶつにはいたつしていました。)

ドレバーという人物に配達していました。

(このようにしてわたしはかれのじゅうしょをみつけました」)

このようにして私は彼の住所を見つけました」

(「みごとだ、じつにみごとだ!」しゃーろっくほーむずはつぶやいた。)

「見事だ、 実に見事だ!」シャーロックホームズはつぶやいた。

(「わたしはつぎにしゃるぱんてぃえふじんをたずねました」けいぶはつづけた。)

「私は次にシャルパンティエ夫人を訪ねました」警部は続けた。

(「ふじんはまっさおでこんわくしているのがわかりました。)

「夫人は真っ青で困惑しているのが分かりました。

など

(むすめもおなじへやにいました、きわめてうつくしいじょせいでしたが、)

娘も同じ部屋にいました、 極めて美しい女性でしたが、

(かのじょはめのまわりをまっかにし、わたしがはなしかけるとくちびるがふるえていました。)

彼女は目の周りを真っ赤にし、私が話し掛けると唇が震えていました。

(わたしはそれをみのがしませんでした。わたしはどうもくさいとおもいはじめました。)

私はそれを見逃しませんでした。私はどうも臭いと思い始めました。

(そのかんかくはわかるでしょう、しゃーろっくほーむずさん。)

その感覚は分かるでしょう、シャーロックホームズさん。

(ほんすじのにおいをかいだときの、・・・せすじがぞくぞくするようなかんかくです。)

本筋の臭いを嗅いだ時の、・・・・背筋がゾクゾクするような感覚です。

(「あなたのもとげしゅくにん、くりーぶらんどのいーのっくj.どればーしが)

『あなたの元下宿人、クリーブランドのイーノックJ.ドレバー氏が

(なぞのしをとげたのはきいていますか」わたしはたずねました」)

謎の死を遂げたのは聞いていますか』私は尋ねました」

(「ははおやはうなずきました。かのじょはひとこともはなせないようすでした。)

「母親はうなずきました。彼女は一言も話せない様子でした。

(むすめはどっとなきだしました。わたしはいっそう、)

娘はどっと泣き出しました。私は一層、

(このふたりがじけんについてなにかしっているとかんじました」)

この二人が事件について何か知っていると感じました」

(「「どればーしがれっしゃにのるためにあなたのいえをでたのは)

「『ドレバー氏が列車に乗るためにあなたの家を出たのは

(いつごろでしたか?」わたしはたずねました」)

何時ごろでしたか?』私は尋ねました」

(「「はちじです」かのじょはどうようをおしころすように)

「『八時です』彼女は動揺を押し殺すように

(のどをごくりとならしながらいいました。「ひしょのすたんがーそんしは、)

喉をゴクリと鳴らしながら言いました。『秘書のスタンガーソン氏は、

(にほんのれっしゃがあるといっていました。)

二本の列車があると言っていました。

(いっぽんは9:15でもういっぽんは11:00です。)

一本は9:15でもう一本は11:00です。

(どればーさんはさいしょのれっしゃにのろうとしていました」」)

ドレバーさんは最初の列車に乗ろうとしていました』」

(「「かれをみたのはそれがさいごでしたか?」」)

「『彼を見たのはそれが最後でしたか?』」

(「わたしがこのしつもんをするとじょせいのかおにおそろしいへんかがあらわれました。)

「私がこの質問をすると女性の顔に恐ろしい変化が現れました。

(かおいろはまっさおになりました。)

顔色は真っ青になりました。

(ひとこと「はい」とくちにだせるまでにすうびょうかかりました、)

一言『はい』と口に出せるまでに数秒かかりました、

(・・・そしてやっとことばがでても、かすれた、ふしぜんなくちょうでした」)

・・・・そしてやっと言葉が出ても、かすれた、不自然な口調でした」

(「しばらくちんもくがありました。そのとき、)

「しばらく沈黙がありました。その時、

(むすめがしずかなはっきりしたこえではなしました」)

娘が静かなはっきりした声で話しました」

(「「うそをついてもなにもいいことはないわ、おかあさん」)

「『嘘をついても何もいいことはないわ、お母さん』

(かのじょはいいました。「このひとにはそっちょくにはなしましょう。)

彼女は言いました。『この人には率直に話しましょう。

(わたしたちはもういちどどればーさんをみました」」)

私たちはもう一度ドレバーさんを見ました』」

(「「かみよ、おゆるしを!」)

「『神よ、お許しを!』

(しゃるぱんてぃえふじんはりょうてをさっとあげていすにしずみこむと、)

シャルパンティエ夫人は両手をさっと上げて椅子に沈み込むと、

(こうさけびました。「おまえはあにのいのちをうばったのよ」」)

こう叫びました。『お前は兄の命を奪ったのよ』」

(「「あーさーはむしろわたしたちにほんとうのことをいってほしいはずよ」)

「『アーサーはむしろ私たちに本当の事を言って欲しいはずよ』

(むすめはきっぱりとこたえました」)

娘はきっぱりと答えました」

(「「いますぐ、なにもかもはなすのがいちばんです」わたしはいいました。)

「『今すぐ、何もかも話すのが一番です』私は言いました。

(「ちゅうとはんぱにうちあけるのは、もくひよりもわるい。それに、)

『中途半端に打ち明けるのは、黙秘よりも悪い。それに、

(あなたはわれわれがどこまでしっているか、ごぞんじないでしょう」」)

あなたは我々がどこまで知っているか、ご存知ないでしょう』」

(「「これはおまえのせいですよ、ありす!」ははおやはさけびました。)

「『これはお前のせいですよ、アリス!』母親は叫びました。

(それから、わたしのほうをみました。「すべておはなしします。)

それから、私の方を見ました。『全てお話します。

(わたしがむすこをおもってどうようしているのは、)

私が息子を思って動揺しているのは、

(むすこがこのおそろしいじけんにかかわっていることをしんぱいしているからだと、)

息子がこの恐ろしい事件に関わっていることを心配しているからだと、

(そうぞうなさらないでください。むすこはかんぜんにむじつです。しかし、)

想像なさらないでください。息子は完全に無実です。しかし、

(わたしがこわかったのは、)

私が怖かったのは、

(あなたやほかのかたのめにむすこがあやしくみえるかもしれないことです。)

あなたや他の方の目に息子が怪しく見えるかもしれないことです。

(しかし、それはまったくありえません。むすこのせいかく、しごと、けいれき、)

しかし、それはまったくありえません。息子の性格、仕事、経歴、

(ぜんぶがそれをゆるしません」」)

全部がそれを許しません』」

(「「つつみかくさずにしんじつをかたるのがいちばんです」わたしはこたえました。)

「『包み隠さずに真実を語るのが一番です』私は答えました。

(「だいじょうぶ、もしあなたのむすこさんがむじつならなにももんだいはない」」)

『大丈夫、もしあなたの息子さんが無実なら何も問題はない』」

(「「ありす、おまえはせきをはずしてちょうだい」ははおやがいうと、)

「『アリス、お前は席をはずしてちょうだい』母親が言うと、

(むすめはでていきました。「じつは」かのじょはつづけました。)

娘は出て行きました。『実は』彼女は続けました。

(「わたしはあなたにこれをぜんぶはなすつもりはありませんでした。)

『私はあなたにこれを全部話すつもりはありませんでした。

(しかしむすめがうちあけたので、ほかにどうすることもできません。)

しかし娘が打ち明けたので、他にどうすることもできません。

(いったんはなすときめたいじょう、わたしはどんなちいさなこともはぶかずに、)

いったん話すと決めた以上、私はどんな小さなことも省かずに、

(なにもかもおはなしします」」)

何もかもお話しします』」

(「「それがいちばんけんめいです」わたしはいいました」)

「『それが一番賢明です』私は言いました」

(「「どればーさんはここにさんしゅうかんちかくいました。)

「『ドレバーさんはここに三週間近くいました。

(かれとひしょのすたんがーそんさんは、たいりくをりょこうしていました。)

彼と秘書のスタンガーソンさんは、大陸を旅行していました。

(ふたりのかばんに、ちょくぜんにたいざいしていたこぺんはーげんのらべるが)

二人の鞄に、直前に滞在していたコペンハーゲンのラベルが

(はってあるのにきづきました。)

張ってあるのに気付きました。

(すたんがーそんさんはものしずかでひかえめなひとでした。)

スタンガーソンさんは物静かで控えめな人でした。

(しかしかれのやといぬしは、もうしあげにくいですが、まったくぎゃくでした。)

しかし彼の雇い主は、申し上げにくいですが、全く逆でした。

(どればーさんはげひんなせいかくで、ふるまいもそぼうでした。)

ドレバーさんは下品な性格で、振る舞いも粗暴でした。

(ここにとうちゃくしたそのよる、かれはへべれけによっぱらって、じっさい、)

ここに到着したその夜、彼はへべれけに酔っ払って、実際、

(ひるのじゅうにじすぎになっても、よいがぬけていませんでした。)

昼の十二時過ぎになっても、酔いが抜けていませんでした。

(めいどにたいするたいどは、いまいましいほどかってでなれなれしいものでした。)

メイドに対する態度は、忌々しいほど勝手でなれなれしいものでした。

(さいあくなことに、かれはすぐむすめのありすにもおなじたいどをとりはじめました。)

最悪なことに、彼はすぐ娘のアリスにも同じ態度をとり始めました。

(そしていちどならずかれはむすめに、あるひょうげんではなしかけました。さいわい、)

そして一度ならず彼は娘に、ある表現で話しかけました。幸い、

(むすめはうぶでりかいできませんでしたが。あるとき、)

娘はうぶで理解できませんでしたが。ある時、

(かれはほんとうにむすめのてをつかんでだきしめました。)

彼は本当に娘の手をつかんで抱きしめました。

(かれのひしょもこのぼうきょには、)

彼の秘書もこの暴挙には、

(はずべきふるまいをたしなめました」」)

恥ずべき振る舞いをたしなめました』」

(「「しかしどうしてそんなじたいをがまんしていたんですか?」)

「『しかしどうしてそんな事態を我慢していたんですか?』

(わたしはたずねました。)

私は尋ねました。

(「そのきになればいつでもげしゅくにんをおいだせたようにおもいますがね」」)

『その気になれば何時でも下宿人を追い出せたように思いますがね』」

(「しゃるぱんてぃえふじんはかくしんをついたしつもんにかおをあかくしました。)

「シャルパンティエ夫人は核心を突いた質問に顔を赤くしました。

(「きたそのひにきっぱりとことわっておけばよかったのにとおもいます」)

『来たその日にきっぱりと断っておけば良かったのにと思います』

(かのじょはいいました。「しかしくるしいほどのゆうわくでした。)

彼女は言いました。『しかし苦しい程の誘惑でした。

(かれらはそれぞれいちにちいちぽんどしはらっていました、)

彼らはそれぞれ一日一ポンド支払っていました、

(・・・いっしゅうかんでじゅうよんぽんどです。そしていまはかんさんきです。わたしはみぼうじんで、)

・・・・一週間で十四ポンドです。そして今は閑散期です。私は未亡人で、

(かいぐんにいるむすこはかねがかかります。)

海軍にいる息子は金がかかります。

(わたしはおかねをうしないたくありませんでした。)

私はお金を失いたくありませんでした。

(わたしはばんじよかれとおもってこうどうしました。)

私は万事よかれと思って行動しました。

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